lyrical school・hanaのコラム『“スキ”は細部に宿る』第19回「ピンク」。hanaが出会った古今東西の“スキ”を掘り下げていくとともに、撮り下ろし写真も掲載。出会った時、靄のかかった生活に光が刺すようなその一文、一瞬、一枚を紹介していきます。(Qetic編集部)
春一番に吹き飛ばされていくかのように、目まぐるしく、あっという間に日々が過ぎていく。
4月に、私が所属するグループ lyrical schoolのファーストアルバムが発売される。レコーディングや撮影をこなしていく毎日。そんな人生初のアルバム制作期間中に、人生最大級の意識改革を経験した。
ずっと苦手で避けていたピンク色が、いつしか自分の気持ちを普段よりも前向きにさせてくれる存在になったのだ。
幼い頃、私がピンク色に抱いていたイメージはただ、“かわいい”そのもの。
好きな色としてピンク色を選ぶ子は、生まれつきピンク色が似合うような、いつもふわふわとした笑顔でその場に華を添えてくれる、明るい子ばかりだった。
私は決してピンク色が嫌いな訳ではなかった。むしろ憧れていたし、洋服屋さんでも文房具屋さんでも、店内を見渡した時にパッと一瞬で惹かれるものはピンク色をしていることが多かった。
しかし、それらに似合う見た目も性格もしていない私がピンク色が好きと言ってしまえば、ぶりっ子だと思われてしまう。そう思って、ずっと興味がないフリをすることにした。
その考え方はエスカレートして、ピンク色どころか暖色を身につけることすら嫌煙するようになってしまった。
小学生の頃は、多くの同級生が赤色のランドセルを使っていたのをよそに、私は両親の反対を押し退けて水色のものを選んだ。
友人と交換していたプロフィール帳の「好きな色」の欄。必ずピンク色が頭をよぎるが、その場しのぎで「水色」や「モノクロ」などと書いていた。
そして去年、lyrical schoolの新体制初の顔合わせの時に、私のメンバーカラーがピンク色だと伝えられた。
デビュー後、一番最初の衣装では特別メンバーカラーを意識していた衣装ではなかったけれど、長年コンプレックスを抱きまくっていた色が、自分を表す色になることに不安を隠せなかった。
正直に言ってしまうと、本格的に活動が始まってからは、なるべく自分がピンク色担当だと気づかれないように無意識に行動を取ってしまっていた。一部のファンの方からも、ピンク色というよりはもっとクールなイメージがあるよね、と言われることも少なくなかった。なかなかピンク色の呪いから解き放たれずにいた。
ピンク色に対する自分の思いが変わったのは最近。とある撮影中に担当のヘアメイクさんに「ピンクがメンバーカラーなんです、でもかわいらしいイメージより、クールな方が自分に似合うような気がしていて……。」とお話ししたところ、
「ピンクを“かわいい”にしないで、自信を持ってキメてきて」
このような言葉をかけていただいたことは初めてだった。
あぁ、ピンク色に対するイメージを勝手に決めつけていたのは自分だったんだな。どんな色を身につけていたとしても、その色をどう魅せることができるかは自分次第。その瞬間、魔法がかかったように、鏡にうつるピンクを纏った自分も愛したい、と思えるようになった。その日の撮影は、ギアが何段階にも上がったような感覚のまま終えることができた。
lyrical schoolのピンク色担当であることに誇りを持って、これからも駆け抜けていきたい。