2020年3月、イヤなニュースばかり続く中、清涼剤のようにドロップされたのが<FUJI ROCK FESTIVAL’20>の第一弾ラインナップ発表。
中でもヘッドライナーのテーム・インパラ(Tame Impara)は、世界のメジャー・フェスの大歓迎ぶりを思えばある程度想定内であったこととはいえやっぱり決まれば嬉しく、一気に気分は盛り上がる。
最新作『The Slow Rush』が早くも出た年間ベスト1・クラスの大傑作アルバムで、アーティストとして大きな前進を強烈に印象づけ、聴くたびに今も興奮に拍車をかけてくれる。カラフルでサイケデリック感たっぷりなサウンド・ディコレーションの奥から立ち上ってくるソフト・ロック、AOR、ディスコといった音が溶け合う感覚は最高だし、そんな音と身体にフジロック以上のシチュエーションはないだろう。
オーストラリア、バース出身のテーム・インパラは、現在34歳となるケヴィン・パーカー(Kevin Parker)のソロ・プロジェクトで、バンドはライブの必要に応じて招集されるが(現在は5人組編成)録音物は、基本的にケヴィン一人が創り上げていく。ネオ・サイケ・グループとして登場し、もう5年も前となる前作の『カレンツ』では洗練されたダンサブルなサウンドへと変貌を遂げて全米4位、全英3位の大ヒット(日本との人気&評価の落差巨大!)。
どこか懐かしいエレクトロ・サウンドに、オーガニックでフレンドリーなメロディは広く愛され、<コーチェラ・フェスティバル (Coachella Valley Music and Arts Festival)>を始め世界各地のフェスのトリを飾る人気者となった。
Tame Impala – Patience(Live At Coachella 2019)
また人気のラッパー、トラヴィス・スコット(Travis Scott)の『アストロワールド』では一緒に曲を書いたり、『ダム』リリース前のケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)とセッションしたりカニエ・ウェスト(Kanye West)といった人たちと密接にコラボも重ねれば、リアーナ(Rihanna)は『アンチ』のなかで『カレンツ』のナンバーをカバーしたりと、とにかくジャンルを超えた人々がケヴィンの才能を認め、ハイブリッドな交流を重ねてきた。
SKELETONS/トラヴィス・スコット
Same Ol’ Mistakes/リアーナ
そんなすべてが盛り込まれてもいるのが『The Slow Rush』だ。今作もケヴィン一人で曲を書き、サウンドも構築されていっている。70年代前半のテイストがこぼれ出るようなダンサブルなチューンや人工的なファンク・ベース、ソフト・ロックなニュアンスを振りまくギター、そこにかぶさるセンシティブなボーカルなどに浸っていると、これはいったいいつの音なんだろうとも思い出す。
ケヴィンは、本作のテーマは「時の流れ」だと言う。実際、《Time》、《Yesterday》、《Tomorrow》、《Year》といった言葉が曲タイトルに散見するし、収められたインナースリーブの歌詞は1992年のカレンダーに書かれている(2020年と同曜日なのだ)など、自在に「時」を行き来することで新しいパワーを得ていこうとする姿勢が強烈に印象づけられるし、ダリやマルグリッドの絵画を連想させるジャケットにもそれが鮮明に表れている。
The Slow Lush/テーム・インパラ
残念ながら彼らがトリを務める予定であった6月の<ボナルー・フェスティバル(Bonnaroo Music and Arts Festival)>は延期になってしまったが、新しいツアーは非営利環境保護団体「REVERB」に協力して環境廃棄物の減少や募金活動を積極的に働きかけていくという。
また密かに進んでいるコラボは順次、明らかになってくるだろうが、いま噂されているのはゴリラズ(Gorillaz)の新プロジェクト「Song Machine」で、いつ突然出てきても不思議じゃない。
アクティヴに多彩な活動を続け、多様な人たちと交流する姿こそ、いまの時代ならではだし、カラフルで多数のレーザーが飛び交う中で浮かび上がるポップでサイケなサウンドの魔力は、こんな時期だからこそとてつもない力を与えるはずだ。
Text by 大鷹俊一
Live Photo from Coachella by Pooneh Ghana
Tame Impala
Tame ImpalaはKevin Parker(ケヴィン・パーカー)である。2008年、EP『Tame Impala』をリリース後、MGMT等とのツアーを経て、2009年にはアルバム・リリース前ながらもサマーソニックに出演。2010年には待望のデビュー・アルバム『Innerspeaker』をリリースし、世界中のメディアから高評価を得ては、2012年リリースの2nd アルバム『Lonerism』ではNME年間ベスト・アルバム・ランキング1位を飾り、2015年リリースの『Currents』はBRIT AWARDのBest International Groupを受賞し、2作続けてグラミー賞にもノミネートされている。作詞作曲家/プロデューサーとして、Kevin Parkerは過去にTravis Scott, SZA, レディー・ガガ、マーク・ロンソン、カニエ・ウェスト、Kali Uchis, ミゲル、A$AP Rockyなどともコラボしている。
2019年3月に配信されたシングル「Patience」に続いて、ニュー・シングル「Borderline」配信後、コーチェラ、ロラパルーザ、ACL等数々の音楽フェスのヘッドライナーを務める他、全米人気TV番組Saturday Night Liveに出演し、勢力的にワールドツアーで世界中を駆け巡って来た中、遂に2020年待望の4thアルバムをリリースする。
INFORMATION
The Slow Lush
2020.02.14(金) on sale
track list
01. One More Year
02. Instant Destiny
03. Borderline
04. Posthumous Forgiveness
05. Breathe Deeper
06. Tomorrow’s Dust
07. On Track
08. Lost In Yesterday
09. Is It True
10. It Might Be Time
11. Glimmer
12. One More Hour
INFORMATION
FUJI ROCK FESTIVAL ’20
2020.08.21(金)22(土)23(日)
OPEN 9:00/START 11:00(23:00 終演予定)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
2020.08.21(金)
TAME IMPALA
DISCLOSURE/MURA MASA
CLAIRO/CORY WONG/JACKSON BROWNE/TOM MISCH
BLACK PUMAS/DERRICK MAY/DONAVON FRANKENREITER/ELEPHANT GYM
FUTURE ISLANDS/GEORGIA/HINDS/LINDSTRØM(LIVE)/MEN I TRUST
METRONOMY/milet/NEAL FRANCIS/ROMY/TENDOUJI/手嶌葵
YOGEE NEW WAVES
2020.08.22(土)
THE STROKES
MAJOR LAZER
FOUR TET/KING GNU/NUMBER GIRL/ROVO
THE BAWDIES/CELESTE/DENIMS/FANTASTIC NEGRITO/FONTAINES D.C.
FRENTE CUMBIERO/GRYFFIN/KEMURI/光風&Green Massive/MONOEYES/ReN
THE SKA FLAMES/YUMI ZOUMA
2020.08.23(日)
忌野清志郎 Rock’n’Roll FOREVER/電気グルーヴ
FKA twigs
FLOATING POINTS(LIVE)/RUFUS WAINWRIGHT/VOODOO DEAD
ALTIN GUN/BLACKBEAR/THA BLUE HERB/BRUNO MAJOR/カルメン・マキ&OZ
COLIN BENDERS/EMOTIONAL ORANGES/GOGO PENGUIN/羊文学
MONO NO AWARE
MUSCLE SHOALS SOUL REVUE featuring Willie Hightower, Charles Hodges & Scott Sharrard
折坂悠太
SUMMIT(PUNPEE、GAPPER、OMSB、MARIA、SIMI LAB、DyyPRIDE、BIM、VaVa、in-d、C.O.S.A. × KID FRESINO、BLYY、TWINKLE+)
サニーデイ・サービス
and more artists to be announced