ザ・リーサルウェポンズの“さよならロックスター”が注目を集めている。
Billboard JAPANの「Heatseekers Songs」(ラジオ、ダウンロード、ストリーミング、週間動画再生数を集計し、急上昇中のアーティストを抽出したチャート)で3週連続ランクインを果たし、全国のラジオでも大量にオンエアされているこの曲は、80年代を象徴するギターヒーローへの尊敬と哀悼の意を込めた楽曲。《斬新 new style hard rock in synthesizer》《Tapping 前人未踏 歴史の分水嶺》というフレーズからは、偉大なギタリストであり、アメリカンロックの新たな潮流を生み出した音楽家への強い思いが伝わってくる。ついJump!したくなる有名なシンセのフレーズをオマージュした、80‘s全開のサウンドメイクも最高だ。
COLUMN:ザ・リーサルウェポンズ
星野源のラジオでの紹介、上坂すみれへの楽曲提供
注目度を高めながらもブレないスタイル
アメリカ生まれの人造人間、サイボーグジョー(V)、そして、ももいろクローバーZや上坂すみれらへの楽曲提供でも知られるアイキッド(G)からなるザ・リーサル・ウェポンズは、2019年の初めに東京都中野区で結成(メンバーの最寄り駅は西武新宿線の都立家政駅)。そもそもの始まりは、映像制作も手掛けるアイキッドの“外国人を主役にしたコメディ映画を作りたい”というアイデアだったのだが、地元のブックマートの店長に“店の曲を作ってよ”と頼まれ「都立家政のブックマート」を制作したことをきっかけに、ジョーをボーカリストに据えた音楽ユニットとして活動をスタートさせた。ユニット名の由来はもちろん、メル・ギブソン主演のアクション超大作『リーサル・ウェポン』(1987年)だ。
Lethal Weapon (1987) Official Trailer – Mel Gibson, Danny Glover Action Movie HD
2019年1月に公開された最初の楽曲“80年代アクションスター”は、ハードロック×シンセポップなサウンド、シルベスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ブルース・ウィルスなどの80‘sアクションスターをネタにした歌詞を軸にしたナンバー。《アニキ!アニキ!アニキ!》のコールからはじまり、《エイドリアン!エイドリアン!》《アイルービーバック!アイルビーバック!》というシンガロング必至のフレーズが炸裂するこの曲はライブアンセムとしてポンズ(ファンの総称)に親しまれている。
[MV] ザ・リーサルウェポンズ『80年代アクションスター』THE LETHAL WEAPONS – 80’s Action Star [EngSub]
同年4月に1stアルバム『Back To The 80’s』を発表。80年代のハードロック、シンセポップ、ディスコ、プログレなどを色濃く反映したサウンドメイク、「給料日」「ホッピー」などをテーマにしたユーモアとシニカルを行き来する歌詞が話題を集め、なんとiTunesロック部門で1位を獲得。収録曲“きみはマザーファッカー”を星野源が自身のラジオ番組で紹介し、「めちゃくちゃ怒ってめちゃくちゃ汚い言葉がいっぱい出てくるのに、筋が通っているんですよね。この曲の歌詞は。なにかの間違いでめちゃくちゃ流行ってほしい!」というコメントとともにさらに注目度を高めた。
[MV] ザ・リーサルウェポンズ『きみはマザーファッカー』THE LETHAL WEAPONS – You are Mother Fucker [EngSub]
2020年8月にシングル“半額タイムセール”でメジャーデビューを果たした後も、その音楽的スタイル(≒芸風)はまったく変わらず。地方のヤンキーたちの成人式を描いた“特攻!成人式”、DJに対する複雑な思いをぶちまけた“押すだけDJ”(MVではDJ KOOと共演!)などを次々とリリース。さらに9月にはCAPCOM『ストリートファイター』開発チームの全面協力のもと、“スト㈼”ステージの背景を使用した無観客ライブ<しんの ワンマン へのみちは まだ とおい… はいしん あるのみ!!>をYouTubeで無料配信するなど、活動の幅を拡げた。
そして今年2月に待望のメジャー1stアルバム『アイキッドとサイボーグジョー』1stシングル“半額タイムセール”から今年6月発売の音源集『94年のジュニアヘビー』までの表題曲、さらに戦国時代をテーマにした新曲“川中島の戦い”、アイキッドが上坂すみれに楽曲提供をした“快走!ラスプーチン”のセルフカバーなどを収めた本作は、彼らの最初の集大成だ。
上坂すみれ – 快走!ラスプーチン
[MV] ザ・リーサルウェポンズ『快走!ラスプーチン』 THE LETHAL WEAPONS – Rasputin
世界的な80‘sのムーブメント、
小ネタ溢れるMV
アルバム収録曲のMVも充実。ザ・リーサル・ウェポンズの楽曲は“MVありき”(アイキッドは楽曲制作中にMVの絵コンテも同時に進めているという)。B級ムービーのオフビート感に溢れたMVにこそ、このユニットの魅力が詰まっているのだ。
たとえば“デンジャーゾーン”(映画『トップガン』主題歌の替え歌カバー)のMVは、《メシ食って財布を持ってなひ》など日常のなかにある危険をテーマにした歌詞に合わせて(?)、群馬県と長野県の境にある“関東の秘境”毛無峠で撮影。「この先危険につき関係者以外立入禁止」と書かれた看板の前でのパフォーマンスはSNSでも話題となった。
80年代〜90年代のテレビ番組をモチーフにした“ポンズのテーマ”のMVは、ブラウン管テレビと同じ 16:9サイズの画面による映像。アナログ的な画質を含めて、ザ・リーサル・ウェポンズの世界観をストレートに表した作品に仕上がっている。「暴力は何も生み出さない」というメッセージを掲げた“快走!ラスプーチン”には、80年代から舞台、映画など圧倒的な存在感を放ち続けている俳優・大久保千代太夫が出演。また“さよならロックスター”の新MVにはハリウッドザコシショウが登場し、55個の小ネタを披露するなど、意外性に溢れたコラボーションも魅力的だ。
[MV] ザ・リーサルウェポンズ『デンジャーゾーン』 (映画「 トップガン 」非公式ソング) THE LETHAL WEAPONS – Danger Zone
[MV] ザ・リーサルウェポンズ『さよならロックスター』ハリウッドザコシショウ ver. THE LETHAL WEAPONS – Sayonara Rock Star [EngSub]
3月には初の全国ツアー<ポンズの野望・全国版〜もうがまんできねえ〜>を開催。コロナ禍による2度の中止、ツアー初日の大阪公演がサイボーグジョーの半導体がコロナに侵される延期になるなど、数々のトラブルを乗り越えて辿り着いた最終公演(3月21日/東京・恵比寿LIQUIDROOM)はソールドアウトを記録し、熱気と興奮と笑いに溢れたステージが繰り広げられた。9月には彼らの地元・中野サンプラザでのワンマン公演も決定している。
80年代シティポップの大流行、The WeekndやDua Lipaなどが80‘sポップへの愛着を公言し、『トップガン』『ゴーストバスターズ』の新作が公開されるなど、世界的ムーブメントとなっている1980年代のカルチャー。その“ダサカッコいい”側面をクローズアップし、誰もが楽しめるエンタメに昇華するザ・リーサル・ウェポンズはここから、さらなる飛躍を遂げるはず。元ネタを知らなくても楽しめ(知ってればもっと楽しい)、掘れば掘るほど深みを増すサイボーグジョー&アイキッドの音楽、じっくりと堪能してほしい。
Text:森朋之
PROFILE
ザ・リーサル・ウェポンズ
2019年1月、突如として出現。狂気の発明家アイキッドが最終兵器サイボーグジョーとともに、1980年代~1990年代のカルチャーをテーマにした衝撃エンターテインメントを展開する。2020年8月26日にメジャーデビュー。
INFORMATION
大コンバンワンマン ~ オレたち中野を大事にするぜ!地元のライブはハンパねぇ ~
チケット先行受付は3月25日(金)20時スタート
2022年9月30日(金)
OPEN 18:00/START 19:00
会場:東京・中野サンプラザ(〒164-8512 東京都中野区中野4-1-1)
チケット:¥6,500(tax incl.)