近年、他記事でも取り上げてきているが、ビジネス創造の場づくりや支援プログラムの提供が活発化している。
この領域のキープレイヤーの1つとして注目されているのが、三井不動産のベンチャー共創事業 「31VENTURES」だ。
今回は、31VENTURESが運営を行う数あるオフィス/コワーキングスペース群の中でも、リニューアルを経て更に脚光を浴びて拡大している「Clipニホンバシ」について紹介したい。
「イントレプレナーを応援する」というユニークなコンセプト
コワーキングスペースというとフリーランスの仕事場だと思われがちだが、Clipニホンバシは、日本橋という立地も手伝ってか、利用者の半数を企業の新規事業担当者が占めているという。
いわゆる「イントレプレナー(社内起業家)」のビジネス拠点となっているのだ。
2014年の開設から3年経った今年、リニューアルによってセミナースペースの収容人数を以前の2倍(100名)へと拡大。
これまで以上の利便性の向上はもちろん、活発なイベント展開や利用者の交流によるビジネス機会の拡大が期待されている。
Clipニホンバシがイントレプレナーから支持されている理由は複数ある。
一つは、大企業が抱える新規事業やイノベーションに関する課題を解決するアイデアをビジネスモデルに育てる仕掛けがあることだ。
例えば、企業が持ち込んだ事業上の課題をスタートアップに公開し、解決法を募集する検討中の事業アイデアを元にブレストを行う「モチコミnight」、イントレプレナーとスタートアップののコラボの可能性を生み出す「イントレnight」などが挙げられる。
もう一つは、幅広い相談をワンストップで受け付けるサポートを行うプライベートコンサルタントが付いていること。
加えて、日本橋や東京駅周辺で事業活動を行う大企業からアクセスしやすいこともある。
なお、Clipニホンバシへの利用入居は、使い放題プランで月額15,000円。
最小で1時間からの利用もできる。
3年間の積み重ねの上に勝ち取った新装リニューアル
今回のリニューアル移転の背景について、Clipニホンバシの立ち上げから運用まで携わってきた、三井不動産の光村圭一郎氏(以下、光村氏)にコメントをいただいた。
光村氏 2014年にClipニホンバシをオープンさせてから丸3年。会員数の増加や、来訪頻度の向上、滞在時間の長期化により、物理的に手狭になったことが(リニューアルの)大きな要因になっています。
そして、この3年間で積んできた実績、信用、勝ち取った認知地位、世間一般のオープンイノベーションへの認知拡大等々の効果により、社内でのClipのポジションが確立され、堂々1階にオープンしたという形になっています。
後付け的に言うのであれば、レイアウト面で「集中作業」と「共創」という2つの利用シーンを想定し、大きく区画を2つに分けています。窓も大きくとっているため、開放感が味わえると思います。シンプルにしたというのはありますね
しかしながら。、三井不動産にとっては、このClipニホンバシ自体が新規事業という位置づけ。収益的にもまだまだ発展途上のため、ふんだんに予算があるわけではありませんし、お金の使い方にたいする社内説明も求められる。今回の移転に際しても、内装、デザインについては、あまり尖ったことはできませんでした。サービス向上とコスト増大のバランスや、マネタイズの実現という、事業づくりの根本の部分には悩みが多いというのが本当のところです。
(コメント原文ママ)
コワーキングスペースにも一気通貫の仕組みが求められる
都内のコワーキングスペースは群雄割拠といえる現代、「場所貸しだけ/無料簡易サポートだけ/有料サービスのみ」というメニューは多数存在する。そのような中で、Clipニホンバシには新規事業の立ち上げに必要なサポートが揃えられており、一気通貫のサービスを作ろうとしている点が印象的だった。
オープンイノベーションを活用した事業作りが増えている現代、このようなワンストップサービスの重要性は一層増していくだろう。
1時間400円という安価で利用できるため、興味のある方はぜひ一度使ってみてほしい。
ビルや建物という国内最大手ディベロッパーとしての強みを活かしてのサービスへの垂直展開に今後に期待。