ケイティは『American Weekend』を完成させた後、ブルックリンへと移りアリソンと再会した。翌年にはフィラデルフィアに活動の拠点を変え、アリソンやバンド仲間との共同生活を開始。そしてフィラデルフィアのDIYシーンでケイティはWaxahatcheeとして、アリソンは自身のバンドswearin’で精力的に活動。そして2013年にリリースされたWaxahatcheeの2ndアルバム『Cerulean Salt』は、バンドサウンドへと進化した。アルバムの全曲をフィラデルフィアの自宅で録音し、バンドメイトでもあるボーイフレンドがプロデュースを務めた。家族や生い立ち、ホームタウンについて歌われた楽曲が収録されたアルバムをアリソンは自分の経験と重ねて何度も聴き込んだという。そんな2ndアルバムに収録された楽曲のMVは、幼少の頃に練習していたタップダンスを披露したり、自らのプロジェクト名にもしたワクサハッチー川をロケーションに選んだりと、自らのルーツに迫っている。そして、このアルバムは名実共にWaxahatcheeの存在を世に知らしめる結果となった。
Waxahatchee – Coast To Coast
Waxahatchee – Misery Over Dispute
2014年、2ndアルバム『Cerulean Salt』を引っさげた半年に渡るWaxahatcheeのツアーを終えたケイティは、ニューヨーク州郊外のロングアイランドにいた。フィラデルフィアを離れ、ボーイフレンドと共に小さな家を借りて新たな生活を始めたケイティは、ライブ活動の合間を縫って3rdアルバムに向けての楽曲制作を開始した。これまでのアルバムで“自分自身”を歌い続けてきたケイティが今回のアルバムで歌おうとしたのは“自分達の世代の価値観”だった。ケイティはメディアのインタビューに対して「結婚して子供を産んで、辛らくても死ぬまで結婚生活を続ける…。そんな生活をしている人は私の回りにはいないわ。そんな価値観はもう死んだのよ。」と語っており、既存の価値観にとらわれない“方向性を決めないライフスタイル”を意味する造語「Ivy Tripp」をアルバムのコンセプトに掲げた。それはまるで“25歳で結婚して欲しい”と願う父親へ、25歳となったケイティからのメッセージのようにも取れる。そして、ゆっくりとしたペースで楽曲制作を続けたというケイティは、これまでと同じ様にスタジオを使わず、自分が自分らしくいれる環境の中で、楽曲の録音を開始した。ドラムは近くの小学校の体育館でたたき、シンセサイザーはガレージで弾き、小さな家の中で作業を進めたアルバム『Ivy Tripp』は完成した。
Waxahatchee – Under A Rock(Official Video)
4月9日、ブルックリンのコンサートホールのステージ上にケイティが現れると、カリスマ性をまとったその姿に観客からため息が漏れた。そして、さらに観客を釘付けにしたのは姉のアリソンの存在だった。今回のツアーでアリソンはWaxahatcheeのメンバーとして加入。ケイティの横でギターを弾き、コーラスを担当しているのだ。ステージ上で共演する2人の姿は微笑ましく、アイコンタクトをしながら演奏をする姿に、ケイティとアリソンのこれまでのストーリーを重ねた人も少なくなかったはずだ。それはまるで、自宅の地下室で切磋琢磨していた”あの頃”の2人を観ているようだった。この日19曲を演奏したWaxahatchee。アンコールでは、ケイティ1人がステージ上へと立ち、『American Weekend』からの楽曲を披露し、満員の観客はその世界観に酔いしれた。
Waxahatchee – Grass Stain 04/09/15 Brooklyn
(左)アリソン (右)ケイティ
10代でパンクに出会ったアラバマ州バーミングハムの双子の姉妹。自宅の地下室で音楽を作り始めた2人は現在ワールドツアー真っ最中、その音楽は今、世界中の観客に響き始めているのだ。ちなみに、2人の父親は今ではすっかり娘たちのファンだという。