貴方はマリオ・ルチアーノさんですね。私は高岩遼。My name is Ryo Takaiwa. ナイストゥーミーチュー。
固い握手を交わす。この強い握力と皮膚の分厚さは、壮絶な人生を歩んできた男の証であろうな。袖からチラリとギンギラギンの腕時計が覗く。
高岩遼のよろしくホリデイ。デイ・ツー!は東京は日本橋、茅場町にあるイタリアンレストラン『ウ・パドリーノ』にてディナーを楽しんでるぜ。Part 1はこちら!
ここに訪れたのは訳がある。俺は無類の映画好きであり、特にもマフィア映画を愛してるんだ。その類のDVDはほぼ揃え、ここにてファッションや美学を学んだと言っても過言ではない(笑)。そして俺のスーパースター、フランク・シナトラはシチリア系アメリカ人であり、マフィアとの関わりが噂されていた。というかマフィアだった。
この『ウ・パドリーノ』のオーナー、マリオ氏は元マフィアである。家業を辞めた後、レストランオーナーとしてビジネスマンとして伊達男として本国にて人生を謳歌している。この料理と人の出会いを大切にするマリオ氏に会うため、全国から人が訪れる。若いOLの女の子から各議員、他VIPまで、そういうことっ。彼の自叙伝も発売されてるからお店行く前に読んでみるとオモロイかもしれない。
ひとまず、話せる内容のみ、この先はインタビュー形式で楽しんでもらおう。
俺「とても美味しいです。本当に美味しい。今日出てきたお料理は、いわゆる家庭料理ですか?」
マリオ氏「大体はね。家で食べるものだよ。」
俺「お店のこだわりというか、マリオさんが守られてるルールとかはありますか?」
マリオ氏「自分で選ぶこと(ん? 聞き取れない)。お料理じゃなくて、自分の(聞き取れない……)。何を食べたとしても何よりリラックスできること。それが一番大事。誰と食べても、どこで食べてもおいしいよ。雰囲気も大事。お店の雰囲気が良くないと、何食べても美味しくないし。ここのお店はパンとチーズと生ハム。そういうナチュラルな私が食べてきた料理なんですよ。」
ーーお声が小さいでごわす。正に映画の世界。周りに話を聞かれないように、顔を近づけウィスパーボイスで囁くように話す。これもまた、スタイルなのかな。尚、日本語はもちろん話せる。時々登場する横文字はネイティヴで、アメリカでの生活が見え隠れする。
俺「お店は何年になるんですか?」
マリオ氏「今年は14年目になります。」
俺「なんでまたこの場所だったんですか?」
マリオ氏「隠れ場。どこでもあるかもですが、ここは東京ステーションが近い。銀座も近い。銀座は好きだから。」
俺「似合うなぁルチアーノさんは銀座が。」
マリオ氏「ほとんど銀座しか行かないよ。」
俺「かっけーっす。」
マリオ氏「お店もあるよ。」
俺「あっ、銀座にお店あるんですか?」
マリオ氏「ありますよ。何軒もあります。」
俺「か、かっくいい。」
マリオ氏「でもここが好きだね。このお店を開くまではすごく大変だった。元々は0からスタートですからね。ここの店はこんなに小さくて、こんな雰囲気だけど、銀座はまた違うよ。」
俺「銀座にはどういったお客さんが集まるんですか?」
マリオ氏「本当にVIPだけ。予約のみ。」
俺「一見さんはお断りなんですね。」
マリオ氏「予約だけど、それもメンバーの予約だけね。」
俺「僕もぜひそのお店に。」
マリオ氏「勿論。」
ーーははっ、やったね!
マリオ氏「大体は知ってる人しか来ない。どこでもいる金持ちのVIPではなくって。」
俺「本当の意味での、ルチアーノさんにとってのVIP。」
マリオ氏「その人に大事にしてもらえれば、私も大事にします。会社の金持ち社長だとか、そういうのはどうでもいい。関係ないです。」
俺「僕は銀座で、22歳の頃からフランク・シナトラを歌っていたんですよ。ジャズ倶楽部で。」
俺「僕は18歳の頃に岩手県から上京してきまして。田舎モンですよ。ポリポリ。」
マリオ氏「私も田舎者だよ。でも素晴らしいよね、18歳がフランク・シナトラ憧れてスターに成りたくて上京だなんて。日本ではなかなかいないですよ。」
俺「今日のBGMはずっとディーン・マーティンですよね。なぜだか分からないけど、イタリア系アメリカ人て、」
マリオ氏「シチリア系、アメリカ人。」
俺「……失礼。シチリア系アメリカ人の文化というか、映画もムービーも音楽も、僕はずっと大好きでここに来たかった。そういう映画は全部DVDで持ってますよ。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』も全部、『モブスターズ』も全部。素晴らしい。そこでファッションも学びましたし。にしてもルチアーノさん、ストライプがお似合いだもんな。」
マリオ氏「装いは本当に大切。今日も3回着替えてますよ。朝の打ち合わせはまた違うスーツだった。お昼もそうですね。」
俺「スーツは何着持ってるんですか?」
マリオ氏「たくさんありますよ。」
俺「大事にされてるブランドとかありますか?」
マリオ氏「日本のテーラーメイドは最高。イタリアのブランドはまあまあかな。フェレも好きだし、アルマニーノも好きだけど。やっぱり日本が作ったオリジナルかな。でもデザインはコピーですね。イタリアのものを日本の技術で。これが良い。」
俺「他に好きなもの、あります?」
マリオ氏「ファッションとコロンが好きです。もちろんこれは好きだけど(小指)。けどやっぱりハプニングにならないから、ファッションと車。」
俺「車は何がお好きなんですか? というか何台持ってるんですか?笑」
マリオ氏「センチュリーのハイクラス2台。あとは、メルセデス・マイバッハ。」
俺「あのね、僕は気づいてましたよ、外に止まるあのマイバッハを。」
俺「シチリア系アメリカ人としてのプライド、何か大事にされてるものはありますか?僕は自分の地元や家族が大事ですし、そこで生まれ育ったプライドがあります。ここ東京には10年住んでいますが、やっぱり地元の郷土料理、母の味が一番ですね。そういう大事にされているものはありますか?」
マリオ氏「素晴らしいですね。リスペクト。私はシチリアも前から捨てちゃったでしょ。全然戻らなかったし、すごく悲しいことですよね。一番大切なものは自分の仲間。それでリスペクト。」
俺「それが一番大事ですよね。」
マリオ氏「はい。それが一番大事だと思うんですよ。」
俺「僕は全身タトゥーだらけでなんですよ。ほら、これはシナトラですよ。同じ東北の先輩の彫り師“NABE”氏によるワークスです。」
マリオ氏「わぉ、そうなんですか。僕はあの好きな人、もう亡くなった人、薔薇とエンジェルが入ってます。」
俺「僕は父がいなくて。母と祖父母に育てられたけど、その二人が亡くなってしまったから。二人の姿を入れました。二人の愛はずっと心にありますよ。」
マリオ氏「全く同じ気持ちです。」
いつの間に時間は過ぎ、憧れた世界の話を聞きまくった俺のハートはビートしていた。
おっと、そろそろ時間かね。この後は銀座の方に一杯呑みに行こうよ。最後にこのお店でどうしても飲んでおきたいカクテルがあるんだ。
俺「マリオさん。ラストにカクテルをいいですか。」
マリオ氏「えぇ、わかってますよ。」
俺&マリオ氏「ゴッド・ファーザー!」
ホリデイというには相応しくないホリデイだったが、なんとも刺激的でムーディな夜だった。ルチアーノさんの言葉がずっと頭でガンガン響いてやがる。「仲間が一番大切」と。
俺、高岩遼は沢山の仲間に囲まれている。俺のやりたいことに乗っかってくれて命を懸けて戦う仲間がいる。ある日は一人悩み苦しみ、その仲間に迷惑を掛けてきたことも多々あったが、俺は必ず仲間達に恩返しする。俺の力で会をデカくすると、改めて心に誓った。髙岩家の家紋は丸に四つ目菱。これは”仲間”を意味している。忘れちゃいけねぇ。
マリオ氏「君は各バンドでショーを持ってるんだろう。君はジャズを歌うと聞いた。君の音楽はあるのかい?」
俺「ルチアーノさん、今年、フル編成のビッグバンドで、ついに高岩遼ソロとしてのストーリーがはじまるんですよ。落ち着いたら、CD持って遊びきますね。その時は銀座のVIP、連れてってください。」
マリオ氏「それは凄い。楽しみだね。勿論電話して。私が料理を作ってあげまょう。あなたのショウがあるときは必ず行きます。あなたはもう私の仲間だ。教えてね。」
俺「マリオさん来たら皆がビビっちゃいますよ!笑 もちろんご招待させてもらいますよ。VIPでね。必ずスターになります。」
高岩遼のよろしくHOLIDAY
高岩遼
岩手県宮古市出身。ヒップホップチーム「SANABAGUN.」、ロックバンド「THE THROTTLE」のフロントマン。謎多き表現者集団「SWINGERZ」の座長。ソロ活動ではジャズを唄い、2018年10月にビッグバンド率いたソロデビューアルバム『10』を発売。“平成のスター”に相応しい圧倒的存在感、スキル、ショウマンシップで大衆を魅了する。
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Photo by 横山マサト