呆れる程に、痛かった。

ま最も話題の女優と言っても過言ではない、演技派女優・安藤サクラ。今回、彼女が挑んだ役は、長らく親のスネに齧りついてきた独身・31歳の女、一子(いちこ)。その一子があることをきっかけにプロのボクサーを目指す転身ストーリーだ。相手役には、話題作に数多く出演する演技派俳優・新井浩文。様々な不器用な人が登場し、そのなかで出会った主役の二人が、決して大層な思いを抱えているわけではないが、自分なりに変わろうとする、そんな物語である。

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本作は、松田優作賞のグランプリを受賞した脚本を基に『イン・ザ・ヒーロー』の監督でもある、武 正晴がメガホンをとった。

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作中に出てくる100円ショップではチープなBGMが、変わろうとする一子をあざ笑うように流れている。しかしだんだんと、それとは対照的に変わりゆく一子を印象的に映し出してゆくように感じた。

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“百円”の価値はどれほどなのだろう。百円で彼女は何を買い、何を手にしたのだろう。作中のクライマックスシーンでの台詞、「私は百円ぐらいの価値だから」といった彼女自身が、その“百円”によって新たな可能性を手に入れたことができたのではないのだろうか。

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突然出会った人たちに触発され、“新たな自分”に出会う。どこか変わっていても憎めない、そんな奴らだって沢山いる。ロマンスだけじゃない、ビターな部分もギュッとつめこんだ、人生ってそんなもんじゃないのか。そんなことを思わせてくれる、濃厚な113分。

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安藤サクラ演じる一子の自堕落な生活からのボクサーを目指す変貌っぷりが凄まじく、どちらの状態でも感じたリアルさが、この役が彼女である必然性を物語っていた。彼女の華麗なステップは惚れ惚れするものがあり、身体を動かすことを始めてみようかと、そうやって自分も変わってみとうかと、そんなことを、ふと思わせてくれた。
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text by Rina Kawarai(Qetic)

『百円の恋』

12月20日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー

監督:武 正晴
脚本:足立 紳(「第一回松田優作賞」グランプリ受賞作)
出演:安藤サクラ 新井浩文 他
主題歌:クリープハイプ「百八円の恋」(ユニバーサルシグマ)
製作プロダクション:スタジオブルー
製作:東映ビデオ
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
(C)2014 東映ビデオ