アリについてのイメージが変わりつつある。始まりは恐らく、『HUNTER×HUNTER』からだ。それまで“最強”の存在として描かれていた、ネテロを凌ぐ力を見せた敵、メルエム。彼の生物としての正式な表記は、「キメラ=アント」、つまりはアリ、だった。さらに、現在人気爆発中の漫画、『テラフォーマーズ』のミッシェル・K・デイヴス、は爆弾アリと、サシハリアリ、2つのアリの能力を有し、敵であるテラフォーマー(人間の姿をしたゴキブリ)を殺しに殺しまくり、圧倒的な力を見せている。そう、これまでの「集団で動き、単体だと弱い」といったイメージから「集団で動き、単体でも強い」、というイメージへと変貌を遂げているのだ。

世界中の誰もがアリに夢中!?映画アントマンの多彩な魅力とは! film150917_antman_2

そんな風潮を知ってか知らずか、マーベル・スタジオから届けられた新作の名は、『アントマン』。これには心が躍った。しかも、今後『アベンジャーズ』にも参加予定という話まで……! これはマーベルファンとしては期待せざるを得ない。また、私たちの、いや、俺たちのハートを鷲掴みにしてくれるはずだ。さらに、今人気の青文字系モデルも『アントマン』を絶賛しているというではないか。「俺たち」だけでなく、「彼女たち」の心まで掴むとは一体どうなっているんだ『アントマン』!? ということでQeticのマーベル好き編集部特攻隊長として、胸の高鳴りを抑えられず、映画館へ足を運んでみた。

マーベル作品の入り口としてGoodな作品だった!

まずはアントマンを観てない人のために簡単にストーリーを説明しておこう。まず、主人公のスコットはこれまでのマーベル作品の中でも指折りの残念な人間である。刑務所から出所するシーンから始まるヒーローは中々お目にかかれないはずだ。彼には最愛の娘がいるが、前妻には新しい男がいて、もう一緒に暮せはしない。しかもその男は警察官というオチまで付いている。前科者故、仕事もろくに見つからないし、娘の養育費も払えないし、娘のバースデーパーティーにも満足に参加できない。その閉塞感を打破するため、一発逆転をかけ、悪友とまた犯罪に手を染めるが……。ここまでにしておこう。詳細が気になる方は劇場で。その後、そんなどん底のスコットに「アントマン」の職を与える天才科学者のピム博士が現れ、博士の娘であるホープに鍛えられながら、スコットは娘が望む本当のヒーローになるため、世界の平和を脅かす悪に立ち向かう決意をする。といったストーリーである。

世界中の誰もがアリに夢中!?映画アントマンの多彩な魅力とは! music150918_antman_11

娘のために戦う、それが『アントマン』の戦う全ての理由だ。これまでのマーべルヒーローにはなかったささやかな戦う動機。「世界のために」とか「全人類のために」といったこれまでのヒーロー像とは一線を画し、それがこの映画の窓口を広げている大きな要因である。

そしてエモーショナルになり過ぎない、というのも今作の素晴らしいポイント。監督のペイトン・リード作、『イエスマン“YES”は人生のパスワード』(09年)でハイライトのシーンである、ジム・キャリー扮するカール・アレンがヒロインと和解するシーンで、そこに第三者を配することでユーモアを差し込んだように、今作も恐らく一番の感動的であろうシーンにも同じ手法が取られている。そのことによって作品自体に風通しのよさが生みだされ、テンポ良くストーリーは進む。お涙ちょうだいな展開やアツいマッチョ感溢れるヒーロー像が苦手な人も、気軽に観ることができるので、マーベル作品への入り口としても良いかも?

これは新しい!伸縮自在のアクションシーンに驚愕。

少し事情は異なるが、『ジャックと天空の巨人』(13年)のように、これまでも主人公が小さい、という設定の映画は多くあった。そしてそういった映画のアクションシーンは総じて迫力がある。だが、それだけなら目の肥えた観客はもう驚かないはずだ。

世界中の誰もがアリに夢中!?映画アントマンの多彩な魅力とは! antman

だがしかし! 『アントマン』戦闘シーン、一番の魅力はアントマンが、小さいサイズと人間サイズを自由自在にサイズ変換できるところにその神髄がある。小さいサイズのまま、相手の意図せぬ所に潜り込む、というのは小さき者の戦い方としてデフォルト。ただし、ジャックと違って小さいながらも人を殺せるほどのパンチを打てるアントマンは、小さいまま攻撃ができる。さらに、消えたかと思うと、敵の背後に人間サイズとして現れ、投げることもできる。そのサイズ変換を駆使したアクションが抜群にカッコいいのだ。だが、消えているようでもそこに「存在している」ので、見える相手には攻撃を受けてしまう。そのせいでアントマンにピンチが訪れるのだが……。

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