『舟を編む』で日本アカデミー賞監督賞を最年少で受賞したほか、完全オリジナル脚本で挑んだ『生きちゃった』の公開を今年の秋に控える石井裕也監督の最新作『アジアの天使』が、2021年にテアトル新宿他にて全国公開されることに。
石井裕也監督作『アジアの天使』が公開決定
本作は、石井監督が自身のやり方、考えがなかなか通用しない難関に遭遇しながらも、3年という年月をかけて、映画という自由な可能性に真っ向から挑んだ一作。それぞれが心に傷を持つ家族が出会い、新しい家族の形を模索する人間ドラマであり、誰も見たことのない“アジアの家族映画”が誕生した。
ひとり息子の学を持つ青木剛は、病気で妻を亡くし、疎遠になっていた兄が住むソウルへ渡る。「韓国で仕事がある」と兄から告げられていた剛だったが、兄の生活はその日暮らしで貧しく、想像していたものとは違うものだった。そして殆ど韓国語も話せない中、怪しい化粧品の輸入販売を手伝う羽目に……。
一方、ソウルでタレント活動を行っているが、市場のステージで誰も聞いていない歌を歌う仕事しかないチェ・ソルは、所属事務所の社長と関係を持ちながら、自分の歌を歌えない環境や、うまくいかない兄や妹との関係に心を悩ませていた……。しかし、事業に失敗した青木と兄、学たちと、資本主義社会に弾かれたソルと兄、妹たちという、どん底に落ちた2つの家族はやがて共に運命を歩んでいき、“奇跡”を目の当たりにすることになる……。
本作の主役・青木剛役は、石井監督と数々の作品でタッグを組んできた池松壮亮が演じており、その兄役には日本映画を牽引するオダギリジョーが抜擢された。
ヒロインであるチェ・ソル役は、長編映画初主演を務めた『金子文子と朴烈』では韓国での公開当時に“今年一番の新人”と呼ばれ、2018年の第23回釜山国際映画祭では俳優賞を受賞している実力派女優、チェ・ヒソが演じている。また今回の発表に伴い、監督とキャスト陣のコメントも到着したので、合わせてチェックしてほしい。
とびきり自由で全く新しい映画を作るためにちょっとした冒険をしました。つまらない常識は一旦全部ぶっ壊してみよう、という挑戦的な映画です。撮影期間中、コロナによって世界の状況がどんどん悪化していきましたが、スタッフたちの努力により奇跡的に無事にクランクアップできました。日本語と韓国語と英語が飛び交う現場の中で、池松君とオダギリさんのコンビの芝居は抜群に面白く、考えてみれば日本の天才2人が韓国で兄弟を演じているだけで物凄く価値があるなと思いました。韓国人俳優たちは強烈でパワフルで純粋で、日本人には出せないオーラがやっぱり確かにありました。
別種の凄みが1本の映画の中で見られると思います。
監督・石井裕也
いつからか真実を見失った者達が、国を超え、こびりついた価値を捨て、互いを見つめ、痛みに共感し、共に旅をして、共に生まれ変わるまでについての映画です。
脚本を渡された時、震えました。来たる新しい時代の夜明けの前に、それぞれの後悔の日々と、二度と戻らない時間を取り返しにいくこの映画の挑戦にかけてみようと思いました。
石井監督とはこれまで沢山の仕事を共にしてきましたが、そのあくなき探究心と、他者の心を想う映画作家としての力は、やはり圧倒的です。世界が新たなステージの分断に乗り出しつつある今、誰が何と言おうとこの映画で出会い、受け入れてくれたチェヒソさんをはじめとする素晴らしい韓国キャストの方々、愛情深い韓国スタッフの方々には感謝してもしきれません。
この映画の天使がきっと、良き時代の到来を告げてくれると信じています。
池松壮亮
明らかにこの作品からは石井監督の“挑戦”が感じ取れました。ありふれた映画ではなく、何かを飛び越えてくれそうな、何か新しい感覚をくれそうな、そんな映画になりそうで、僕は喜んで参加する事にしました。監督や俳優、ほんの数人の日本人が韓国に乗り込んで行ったわけですが、コロナも含め、色んな危機を乗り越えながら、僕らは国を超えて大きな家族になれた気がしました。
オダギリジョー
国も文化も違う人々が一緒に旅に出ました。映画という共通言語を信じてみよう。みんなでひとつの物語を作ってみよう。
その一心で毎日現場へ向かいました。
石井監督の無限の想像力と、映画に対する愛情と確信は私にとって大きなインスピレーションでした。監督の現場で私は、毎日、他の撮影現場では出来なかった数々の挑戦に出会い、新たな発見をする事が出来ました。池松壮亮さんの映画を作る仲間に対する愛情深い、まっすぐな眼差し。オダギリジョーさんの抜群のウィットと優しさ。
一緒に映画を撮る人々を徹底的に信じて下さった三人のお陰で私は、役者としていつよりも自由に、私自身を解放することができました。
私たちは何のためにこんなに必死に生きてるんだろう。何に向かって戦ってるんだろう。常にその様な問いを抱き芝居をしてきましたが、今作を通じて、ソルと共に、私はその問いの原点に辿り着いたような気がします。
チェ・ヒソ
INFORMATION
アジアの天使
2021年 テアトル新宿他、全国公開
キャスト:池松壮亮、チェ・ヒソ、オダギリジョー
脚本・監督:石井裕也
エグゼクティブプロデューサー:飯田雅裕
プロデューサー:永井拓郎、パク・ジョンボム、オ・ジユン
撮影監督:キム・ジョンソン
音楽:パク・イニョン
制作プロダクション:RIKI プロジェクト、SECONDWIND FILM
製作:『アジアの天使』フィルムパートナーズ
配給・宣伝:クロックワークス
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会、KOFIC、ソウルフィルムコミッション、カンウォンドフィルムコミッション