2008年、『アイアンマン』よりスタートした「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の集大成『アベンジャーズ/エンドゲーム』が遂に公開を迎えた。前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のラスト、6つのインフィニティ・ストーンを集めたサノスの“指パッチン”により、全宇宙の生命の半分を失うという決定的敗北を喫したアベンジャーズ。塵となり消えたヒーローたちはどうなったのか……。そして、ドクター・ストレンジ曰く「1400万605通りの未来のうちの1つ」という勝利のパターンはどのようなもので、それをたぐり寄せることはできるのか……。恐らく、多くの人が一刻も速く観たいと願う反面、ロバート・ダウニー・Jr.(トニー・スターク/アイアンマン)、クリス・エヴァンス(スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ)、クリス・ヘムズワース(ソー)らのMCU功労者の引退作とも言われているため、それを迎えるのは怖い、という感覚も持ち合わせていたのではないだろうか。筆者もまさに同じ気持ち。もちろん戦いは見届けたいものの、“ロス”に陥るのが恐ろしく、公開日は「ついにやって来た」という複雑なものだった。

4月22日(月)21:00
チケット争奪戦

日本公開日は4月26日。鑑賞予定のTOHOシネマズ新宿の窓口に出向き、最速上映の時間とその予約開始時間をしっかりとリサーチした。26日になった瞬間の0時に最速上映がスタート。しかし厳密には25日24時扱いのため、その2日前21時に一般ネット予約開始、シネマイレージ会員であれば3日前21時にネット予約開始だと教えていただく。つまり、22日(月)の21時が勝負。速攻でシネマイレージに入会し、念のため22日はPCの前に張り付き、リロードを繰り返し、21時になった瞬間に震える手でマウス操作し、無事に激戦を乗り越え予約することができた。予約完了メール受信後は、緊張から解放されたことで貧血となり、布団へと倒れ込んでしまった……。

4月25日(木)00:00
TOHOシネマズ新宿 最速上映

そして運命の公開日。さすが最速上映だけあり、コスプレ勢も数多く出動。とても華やかな雰囲気に包まれていた。さあ、前置きは長くなったが、ここからネタバレなしのレビューをしていく。しかし、これが困りもの。事前に全編ネタバレなので発言に注意という公式アナウンスがあったが、これは事実。本当に「何も言えない」。冒頭はもちろん、予告編で宇宙を彷徨っていたトニー・スタークの帰還方法、白い新しいスーツの謎、アントマンの量子世界からの帰還、そして塵と消えたヒーローたちのその後など、何もかもがネタバレになってしまう。ただ『エンドゲーム』の内容について同じくMCUファンと幾度となく論戦してきたが、そんな素人予想など何にも意味も持たないほど、あらゆる面で想像を超えてくる、とは言っておきたい。いつも通り、ルッソ兄弟(監督)とケヴィン・ファイギ(マーベルスタジオ社長)を信じてさえいればいい。『エンドゲーム』という節目の作品であっても、この3人の天才の手にかかれば大作が歴史的未曾有の名作超大作になるのは必然。全ての登場キャラクターに愛情たっぷりの見せ場はあるし、過去経験したことのないカタルシスが味わえる激戦もある。

ひとつ注意がある。よくMCUは1本だけ見てもおもしろい、とか言われることがあるが、『エンドゲーム』に限っては、過去のMCUを愛していれば愛しているほど、楽しめる内容になっているのだ(もちろん、初見でも楽しいはず!)。そして、3時間を超える上映時間のうち、案外会話を中心に進行するシーンも多いのだが、この一語一句が、過去のMCUにおけるキャラクターの苦悩などと繋がる深いものばかりで、とてもヒーロー映画とは思えないほど激しい感情移入が引き起こされる。何気ないセリフひと言から、過去のシーンが想起され、もう魂が揺さぶられっぱなし。筆者は劇場で最多涙量を記録した。長らく1位だった『トイ・ストーリー3』を超える涙量を、まさかヒーロー映画が塗り替えるとは…。ただし、ギャグも相当に冴えていて、決して暗い映画ではない。

少し踏み込んだことに触れると、対サノス対策としてアベンジャーズが採る作戦は、ともすればツッコミどころ満載かもしれないし、たぶんそういう声も上がってくると予想される。でも、そんな評価を恐れるより、MCUを11年間に渡って支えてきてくれたファンの人が最も喜ぶであろうストーリーを選んだ結果が『エンドゲーム』だ。そのくらい、ファンには嬉しい展開が待っている。シーンが切り替わる度に、MCUを追ってきて良かったという熱い気持ちがほとばしるのだ。もし、会話が冗長と感じられるなら、それは理解が足りないと思ったほうがいい。もし展開のつじつま合わせに目が行くなら、MCUを愛し切れていないと思ったほうがいい。ちょっとキツイ言い方かもしれないけれど、MCUは連続性を大切にしてきたシリーズであるし、ファンの期待に応えるため、きっと頭から湯気が出そうなほど考え抜いて作られているのだから、安易に「シリーズ知らなくても大丈夫!」などは口が裂けても言いたくない。そのくらい練られているし、全シーンで議論ができるほど「理由」や「回収」がある。

では、最も気になる「MCUの集大成にしていったんの完結か?」と問われれば、「YES」だ。完璧で、凄まじくエモーショナルなエンディングを迎える。よく、「●●ロス」みたいな言われ方をするが、多くの人が「MCUロス」を患うだろう。MCUは続く。『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』も夏に控えており、間違いなく楽しい映画になるだろうが、『エンドゲーム』はやはり完結編としての性格が強い。見届けなければいけないけれど、覚悟も必要。そして、観れば泣いてしまうけれど、劇場でみんなに会いたくなる。そんな映画だ。きっと、『エンドゲーム』でヒーロー映画はひとつの到達点を迎えた。いや、世界をここまで巻き込んだムーブメントは二度と起きないかもしれない。この歴史的な出来事をリアルタイムで体感できることに感謝し、上映終了まで可能な限りリピートしよう。

Text by Fumihiko Suzuki

アベンジャーズ/エンド・ゲーム
大ヒット公開中

監督:アンソニー&ジョー・ルッソ
製作:ケヴィン・ファィギ
出演:ロバート・ダウニーJr.、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、ポール・ラッド、ブリー・ラーソン
原題:Avengers: Endgame
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2019Marvel

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