SKY-HI ソーがカッコよかったね……渋かった。
SALU そうだね。あとスカーレット・ヨハンソンが可愛かった。
SKY-HI ブラック・ウィドウ? ワンダも可愛かったよね。あとバッキーね……今日はヘアスタイルもバッキーを意識してきたんだ。まあ……映画4本分ぐらいの情報量と“感情の揺れ”があったね。展開が多いけど飽きないし、J-POPみたいだった。
SALU すごいですよね……この詰め込み方は。でも芸術として成立してる。
SKY-HI あと空気を変えたり、緩急をつけたりをすべてキャラでできちゃうのがすごい。
SALU 音楽に頼ったのはガーディアンズの場面だけでしたね。
SKY-HI ガーディアンズとかスパイダーマンとかがコミカルな役割をするから、映画的な手法で空気を変えたりしなくても展開できる。キャラの強さを感じたな……。
さまざまな予想・予測が渦巻く中、ついに、とうとう、4月27日(金)に日米同時公開されたマーベル・スタジオの最新作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』。Qeticを始め、早速さまざまなメディアでレビューが公開される中、今回はアベンジャーズ=最強チーム&タッグという点に紐付けて、今のHIPHOPシーンを牽引するSKY-HI×SALUが登場! 先行上映会を観終わった直後、“ほっかほか”の状態の彼らにインタビューを敢行した。
『ブラックパンサー』のCMでオリジナルラップを披露したSKY-HIと、『ブラックパンサー』をきっかけにマーベル作品に触れたSALU。話は作品の魅力に留まらず、愛や善悪、生き死にといった深いテーマから、同じモノ作りとして共感するクリエイションやエンタテインメントの核心の部分まで。さらに彼らが“HIPHOPアベンジャーズ”を結成!? 話があちこち飛びまくる “レア”の状態でのインタビューは、マーベル好きはもちろん、まだあまりマーベルを知らない人にこそ読んでほしい。(ちなみにこの日の取材場所はグリル料理が有名なお店で、彼らはレアの肉をバクバク食べながらの対談となった)。
Interview:SKY-HI×SALU
——ふたりはこれまでマーベル作品を好きで観てたんですか?
SKY-HI 俺の方が少しだけ観てたけど、それでも『ブラックパンサー』後に手に入れられる映像と情報を集めた感じなので、どちらかと言えば後追いですよ。
——『ブラックパンサー』のCMでオリジナルラップを披露した時は、やっぱり反響が大きかったですか?
SKY-HI 大きかったですね、想像以上に。
——あの時、SALUさんから見てどうでしたか?
SALU それ僕に聞いちゃいます? 悔しいに決まってるじゃないですか。
SKY-HI でもけっこうな数のラッパーがあの作品に関わった気がする。
SALU 僕はもう『ブラックパンサー』以外は観てないです。
SKY-HI 潔いな〜。
——でも『インフィニティ・ウォー』はそういう方にもぜひ観てほしい作品なので。
SKY-HI 今回はヒーローたちが登場する時に説明的なものがほぼなかったじゃないですか? セリフでちょっと言ったりはしますけど。だからそういう意味では……。
SALU ただ大事な要素はこの作品の中に集約されていることが、僕みたいなあまり知らない人が観てもわかった。それぞれのヒーローに人間ドラマがあって、さらにそれらを司っているドラマがあるんだなって。
——一人ひとりのキャラクターの登場シーンは必然的に限られますが、その中でも丁寧に描いていたし、初めて観る人が想像しても楽しめる演出がされてるなと思いました。
SKY-HI 確かに。テンポいいしね。BPMめっちゃ早いよね?
SALU シーケンスの組み方もけっこう荒いですよね。
SKY-HI 荒い荒い。カメラワークとかも監督の好みがあると思うんですけど、NYのシーンとか、どれだけの技巧をやれば気が済むのかってレベル。マーベルは作品ごとに雰囲気も全然違うじゃないですか? それらをひとつにする技量の大変さたるや……観る前は単純にワクワクしてたんですけど、観終わった後はクリエイションとしてのすごさを感じました。
SALU あれだけ情報量の多いものをシンプルに描くのって、“雑味”が入りがちなのでめちゃくちゃ難しいはずなんですよ。雑味がほとんど無かったよね?
SKY-HI うん。あと言葉を選ばずに言うと、“あざとさ”みたいなものも無かった。ヒーローものって登場の仕方みたいなものがあるじゃないですか?
SALU サラッとしてましたよね。
SKY-HI 粋だよね。
SALU 登場も去り際も。「泣いて」みたいな感じが無かった。
SKY-HI それデカいかもね。俺が一番グッときたのはソーかな。「来たー!」みたいな感じで……あんなヤツじゃなかったし。
——僕もソーにはグッときました。ふたりの好きなヒーローは誰ですか?
SKY-HI ブラックパンサー以外だと、今回活躍しそうだなと思ってたのはバッキー、あとロキも好き。ロキは見る作品によって全然違うから面白いですよね、でもヒーローではないか。今日はロキを意識した髪型だったんですけど……。
——ん、さっきバッキーと……。
SKY-HI フフ……でもやっぱこんなにソーを好きになるとは思ってなかった。『バトルロイヤル』を観た時に、「ソーに何が起こったのか」みたいな“まとめ”を見たんだけど、武器を失い、弟に裏切られ、大切だった髪を切られ、片目を潰し、最終的に国を失うっていう……(笑)。
——散々……。
SKY-HI そこからの今回なんで。こいつどこまで……と思ってたんだけど、異常なまでのカッコ良さだった。でも改めて好きになったキャラクターは多いかも。スパイダーマンも『~ホームカミング』で観てた時はけっこう「余計なことすんなよ!」とか思ってたけど、今回はその無鉄砲さが映画としても抜きどころになってたし、活躍ぶりも含めていい感じだった。
SALU アイアンマンとの関係性が伺い知れるシーンもあったしね。
——それぞれのヒ―ローたちの新たな一面が描かれていたし、あとバトルと人間ドラマ、どちらもヒーロー同士の新たな絡みがありましたね。
SKY-HI そうっすね、ガーディアンズとソーが最高だったかな……めっちゃ可愛くない? あとドクター・ストレンジもすげーカッコ良かったな〜。
——ドクター・ストレンジとトニー・スターク(アイアンマン)の絡みも新鮮でしたね。まあ今回の一番の衝撃は、“最凶最悪のヴィラン”と称されるサノスだと思うのですが。
SALU 僕はサノスが一番好きなキャラクターでしたね。
SKY-HI お〜。
SALU ああいうことを考えて、自分のすべてを犠牲にするのはなかなかできないですよね。あれは自分のためじゃないですから。その結論に至るまでに欠如したものはあるにしても。
SKY-HI 確かにサノスがある意味、一番“芯”がある。自分の理想論に筋が通っていたのはサノスなのかもしれない。
SALU だけど強い意志と冷酷なマインドで考えた理想の世界より、もっとふざけてても、バカでも、みんなで一丸となって愛を持って戦う人たちに、心打たれてるんですよね、僕たちは(ポテトを食べながら)。
一同 ハハハー!
SKY-HI 淡々と……まあサノスは暴力的だったし、排他的だった。勧善懲悪でも無いので複雑だよね。ただ映画的な意味で悪者にしやすいけど、サノスは映画で自分が悪者に見られることを苦々しく思ってるだろうし。「確かにお前らの作るもので私はそういう描かれ方をするだろう」って。善悪の難しさとか愛に対する考え方とかは、『ブラックパンサー』と繋がってる気がする。
SALU ね? あれよりもっと試されてるのかもしれない。
SKY-HI そういう現代のテーマ性みたいのは、あるとないとでは大違いというか。今はもうただ悪いヤツらが出てきて、暴れて、退治するだけの映画は観たくないだろうし。
——マーベル作品に登場するヴィランもどんどん在り方が変化していて、『ブラックパンサー』のキルモンガーは単純に悪と割り切れない、誰もが感情移入してしまうようなヴィランでした。
SKY-HI キルモンガーは史上最も愛された敵キャラだったんじゃないですか?
SALU まあまずイケメンですから。
SKY-HI イケメンだね。格好も今っぽいし、NBA選手っぽいんだよね。
——言葉遣いも今っぽいですしね。サノスに話を戻すと、あれだけ強大な力を持った敵が現れることで、人々は問題提起され、半ば強制的に選択を迫られました。
SKY-HI ホン……ット強いもんね。ストーリーが進むに連れてどんどん強くなるし。
——そしてただ強いだけじゃなく、知性もあり、ときたま“情”の部分も見せてくる。
SKY-HI そうなんですよね。あと観てて、『ブラック・ジャック』を思い出したんです。本間先生が死ぬ時に「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんて、おこがましいと思わんかね……」って言ったら、ブラック・ジャックが「医者はなんのためにあるんだ!」って叫ぶシーン。その直後にこの作品を観たから……。
SALU 「あんまゆっくりしてる時間は無いよ」って言われてる気がするけどね。
SKY-HI なるほどね、サノスの生き急ぎ方を見ても。
SALU そんなことしてたら、大切な人がいなくなってしまいますよって。
——ヒーロー目線で言うと、アンソニー・ルッソ監督も「ヒーローたちに代償や犠牲が伴う」と言っていて。それも猶予の無い選択を迫られると。
SALU 選択はいっぱいありましたもんね。
SKY-HI 恋人とお母さんが溺れてどっち助ける、みたいなのがいっぱいあったね。
SALU 見せられてるものが恐ろしいですよ。愛の決断。
SKY-HI あのスケールじゃないけども、近しいことは我々も日々迫られてるわけで。
SALU それが最終的に行き着くとこまでいくとああなっちゃう。それを踏まえた上で、今日何をするか。
SKY-HI 愛する人と、愛する幸せ……何がどうなったら幸せなのかっていうのも難しいところだけどね。例えば愛する人と長生きして、ずっと暮らせるのが幸せだとして、それが誰かを迫害していたとしたら……。このまま行くと我々も他の星に移住しなきゃいけなくなって、たぶん他の星を侵略するでしょ? 人口30億とかの時代にそういう映画を作ってるとギャグだったかもしれないけど。この前、ブルーハーツの歌を聴いたらあの時で40億人とかだよね?(『ハンマー』《48億の個人的な憂鬱 地球がその重みに 耐えかねてきしんでる》)。
SALU 未来世紀?
SKY-HI いやブルーハーツ。THA BLUE HERBじゃない。HIPHOP好きだな〜。
SALU 完全にBOSS THE MCだと思った。
SKY-HI 今ってもうすぐ80億ぐらいいくんじゃない?(2017年6月21日に国連が発表した「世界人口予測2017年改定版」によると、現在76億人の世界人口は、2030年までに86億人に達する見込み)40億で潰れそうだったのに。
SALU そしたら手っ取り早く「半分にしちゃおうぜ」っていうヤツが出てくるかもしれない。
SKY-HI そうだよね。独善的ではあるけど、果たして悪と言い切るのはどうなのか。
SALU その決断をする人たちと僕たちは遠く離れてるけど、今日何を決断して、何をやるのかってことは、サノスと対峙するアベンジャーズの決断と繋がってる気がします。