3月19日(土)より新宿シネマカリテにてレイトショー公開となる1981年制作の音楽ドキュメンタリー映画『ザ・デクライン』は、女性監督のペネロープ・スフィーリスが1979年〜1980年頃のアメリカ・ロサンゼルスの音楽シーン/ユースカルチャーをとらえた作品で、以後全米に爆発的に広まったアメリカのパンクロック/ハードコアムーブメントのまさにその発火点を記録した歴史的な重要作だ。そして本作と、中にフィーチャーされたバンドたちが多くの海外ミュージシャンやロックファンたちを虜にしてきたことでも有名である。

先日再結成が発表されたガンズ・アンド・ローゼズのギタリスト、スラッシュが『ザ・デクライン』は大好きな映画だったと海外のインタビューで答えている。その証拠に、ガンズ・アンド・ローゼズが93年に発表したパンクカバーアルバム『ザ・スパゲッティ・インシデント?』で、『ザ・デクライン』でも凄まじいライヴパフォーマンスが披露されているFEARの“I Don’t Care About You”をカバーしている。 また『ザ・デクライン』によってFEARの存在を知った大物コメディアン、ジョン・ベルーシが人気テレビ番組「サタ デー・ナイト・ライヴ」にFEARを出演させ、いろんなパンク/ハードコア界のゲストも入り乱れてスタジオが破壊されるというとてつもない伝説の出演となったことも記しておく必要があるだろう。

【映画 予告編】 ザ・デクライン

『ザ・デクライン』で貴重過ぎるライヴやインタビュー映像が永遠に刻まれた伝説のGERMSに関しては、元レッ ド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシャンテが9歳でその魅力にとりつかれ、10歳のときにはギターで GERMS唯一のアルバム「(GI)」の全曲完コピーを達成したという恐るべきエピソードがある。またそのレッチリの ベーシスト、フリーはペネロープ・スフィーリス監督の『ザ・デクライン』の次回作であり、同『ザ・デクライン』の劇映画版ともいえる1983年作『反逆のパンク・ロック』で役者デビュー、デクライン第三弾『ザ・デクラインIII』にも出演している。

最後にGERMSのダービー・クラッシュの伝記映画『ジャームス/狂気の秘密』(2008年作)が製作された際、ダービーが心酔していたデヴィッド・ボウイの楽曲は映画に不可欠だったが、楽曲使用料は非常に高額だった。 しかし監督とGERMSのパット・スミアはボウイに手紙を送り、作品の主旨を説明、極力安価で楽曲を使用させて もらえないか懇願した。すると、自身の楽曲の音楽出版もすべて自分でコントロールしていたボウイはなんと楽 曲使用料の1/5程度の金額で楽曲を提供してくれたというエピソードがある。

伝説!レッチリ、ガンズに絶大なる影響を与えた脅威の映画『ザ・デクライン』 film160304_dec_1

ここで紹介したエピソードは恐らくほんの一握りのもので、『ザ・デクライン』と出演したバンドたちに相当な影響を与えられたミュージシャンはとんでもない数に上るだろう。それほどまでに『ザ・デクライン』は当時、それまでに無いエネルギーを内包したムーブメントを記録した唯一無二の映画だったのだろう。そして2000年代以降、世 界的に「音楽ドキュメンタリー映画」が量産される時代となった今、製作から約35年、日本での公開が30年ぶり となってから観ても、その生々しさと充満するエネルギーは観る者を圧倒する。パンクロックに興味が無くとも、 一つの時代とムーブメントの暴発の瞬間をとらえた記録として、観なければならない作品かもしれない。

ザ・デクライン

3月19日(土)より、新宿シネマカリテにてレイトショー
3月26日(土)より、渋谷HUMAXシネマにてレイトショー!

監督:ペネロープ・スフィーリス
出演:BLACK FLAG、GERMS、FEAR、ALICE BAG BAND、CATHOLIC DISCIPLINE、CIRCLE JERKS、X
1981年アメリカ映画/1986年劇場公開作品/100分
描かれる音楽ジャンル=LAパンク、ハードコア
THE DECLINE OF WESTERN CIVILIZATION © 1981 Spheeris Films Inc. All Rights Reserved.

STORY:
アジトの教会を紹介するBLACK FLAG。「ビールくれ!」-ダービー・クラッシュ(GERMS)リー・ヴィング(FEAR)は客を殴打して「レコード会社の人間は死ね」と叫ぶ! 最後に遺された革命、LAパンク暴発の瞬間をおさめた衝撃の記録。

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