11月7日(土)から公開される話題のアニメーション映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』の主人公シャオヘイの声を演じる、花澤香菜さんにインタビューしました。
“話題の”と書いた意味は2つあって、1つはいまや大人気声優である花澤さんの劇場公開最新作ですからそれだけでもニュース。そして実はこの作品、中国の長編アニメ映画なんですが、興行収入3.2億人民元(約49億円)のバイラルヒットを記録。字幕版が昨年秋から日本でも公開され、日本のアニメ・ファンそしてアニメ業界関係者の間で大きな話題になっていた“知る人ぞ知る”注目作だったのです。
今回、この作品の素晴らしさをより多くの人に届けようと日本語吹替版が作られ、公開されることになり花澤香菜さんが参加することになった、というわけです。本作で花澤香菜さんが演じるのは黒猫の妖精、しかもネコだけではなく男の子に変化(へんげ)することも出来る妖精の子なのです。
この妖精の子シャオヘイが人間と妖精の共生をめぐる大きな物語にまきこまれていきます。テーマはとても深いのですが、ユーモラスでかわいいシーンがいっぱい。そして妖精同士のバトルはアクションの魅力たっぷり、しかもとても味わいのあるアニメーションです。見どころたっぷりなエンタテインメントですが、この楽しさはやはりシャオヘイの魅力が大きい。どのようにこの愛らしいキャラを演じたのか、お聞きしました。
INTERVIEW:花澤香菜
━━今回は妖精の子、しかも黒ネコの妖精の男の子、という人間ではないキャラですが、どのように演じようと思いましたか?
そうですね。シャオヘイは黒ネコの妖精ではあるのですが、人間の子になっている時は猫っぽさをひきずるキャラではないんです。だから“猫や猫人間をどう演じよう”と考える必要はなくて“ちょっと生意気で愛らしい男の子”をどう演じるかに集中できました。
あとなるべく原音のニュアンスに近い方がいいかなと思ったところもあって、例えば彼がワハハと大声で笑うシーンは、私の笑い方とは違うんですけど、ここは原音にあわせています。けれど話がすすむにつれてやっぱりシャオヘイに感情移入してきて、“この子が感じたものを私なりに素直に表現しよう”と考えるようになりましたね。
とにかく大事にしたかったのは、このシャオヘイというキャラのかわいさをそこねない、ということです。それとシャオヘイの心の柔軟さ。様々な経験を通して彼の価値観は大きく変わっていきます。その心情の変化を演じることも重要でした。
━━確かに彼の心のジャーニーがよく描かれている作品ですよね。ところで花澤さんは日本のアニメに沢山出演されています。しかし今回は中国のアニメ映画ですよね。日本のア二メとこれが違うなって思ったところありますか?
“中国のアニメだよ”って事前に聞かなければ、どこの国のアニメかわからないんじゃないかと思います。とにかくクオリティの高いアニメですよね。ただ出てくる景色や食べ物だったり、音楽を聴いたりすると、“あ、これは中国なんだ”と感じるところはありますけど。このアニメはカット割りとかアクション・シーンの動きとか独特のものがあるんですけど、それは中国のアニメだから、というより監督さんの個性なんだと思います。
━━そういえば花澤さんは中国でも人気があります。中国のファンの方の間では、花澤さんの吹き替えバージョンを中国語の字幕付きで観たいという声があがるのでは(笑)?
もしそうなったら嬉しいですね(笑)!
━━本作はシャオヘイの活躍が愛らしい楽しいアニメではありますが、自然との共生というテーマももりこまれていますよね。
それはすごく感じましたね。環境問題って小学校のころ習ったんですが、その時はまだ実感がなかった。でもいまは持続可能な社会がより叫ばれるようになり、エコバッグを使いましょう、とかたくさんの声が挙がっていて、環境問題がより身近なものになっています。昔は“自分たちの子どもたちのために、未来のために環境問題を考えよう”でしたが、いまはまさに“自分たちのために環境について考えよう”になってきました。そういう意味でも、この映画のテーマはタイムリーだと思います。
━━さらに“自然の遣いである妖精”と“自然を開拓する人間”という、相異なる種族が共存できるか否かというちょっとシリアスな展開にもなっていきますね。
わたし自身、どんなに違う考えを持った人同士でも話し合いで解決できる、と信じています。だからシャオヘイが様々な冒険やエピソードを経て“両者が共存できる”と信じていくのはとても共感できました。そう、シャオヘイが前半と後半で進むべき道を変えます。その心のうつりかわりこそが、この映画の魅力です。
ある瞬間(註:)を機にシャオヘイは変わり、真の主人公として覚醒します。この後から彼はとても凛々しいキャラになり、映画のテンションもあがっていきます。音響監督の岩浪さんもこのあたりのセリフまわりはかっこよくきめてくれ、とおっしゃってましたから。
註:具体的にここを書いてしまうとネタバレなので伏せますが、観ていただくと、あ!ここかと気づくハズです
━━いろいろと考えさせられる作品ですね。
そうですね。でもすごく楽しいアニメであることは間違いないです。何度も言ってしまいますが、シャオヘイがとにかくかわいい(笑)。おいしいものを食べると目が星になっちゃうとかマンガ的なベタな表現もあるし。あと全体的にスリムなキャラが多い中、ちょっとぷくっとしていて(笑)。なまいきでひねくれてて、“ちぇ”なんて舌打ちもしたり、あととにかくくいしんぼ。こういうとこがいじらしい。あとすごく素直でいい子ですから。もし続編の機会があったらわたしはまたシャオヘイを演じてみたいです。彼の成長が気になりますから(笑)。
━━僕も、花澤香奈版シャオヘイをもっと観たいです。最後に読者の方たちに、本作『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』の魅力を教えていただけますか?
この作品は本当に素晴らしい作品で多くの人に本当に観てほしい。今回は日本語版なので、シャオヘイぐらいの小さなお子さんにも楽しんでもらえると思います。わたしは子どものころ『平成狸合戦ぽんぽこ』を観て胸がキュンとなったのですが、それと同じように黒猫の妖精シャオヘイが小さな映画ファンに愛されてくれると嬉しいです。
大人の方にもぜひ観て欲しい。今年は本当にコロナウィルス感染症の影響もあって、毎日が不安で明るい未来が想像できない状態が続いています。でもこのシャオヘイのように世の中をみていくと、まだまだいろいろな選択肢があることに気づく。そこに可能性を感じて自分選んだ道を進んでいくときっとなにかいいことが待っている。そんな気持ちにさせてくれます。なんか踏み出す勇気を後押しくれるような映画。すごくいい気分転換になりますよ。
楽しいインタビューでした。一つ一つの質問に対し、思い入れたっぷりに答えてくれました。この物語はシャオヘイの視点、心の変化で、本作が持つメッセージが浮き彫りになります。
だからシャオヘイを演じた花澤さんの言葉でこの映画のことを聞くことが出来たので、改めて本作の魅力を理解することが出来ました。
個人的に、この映画、最初はかわいいキャラが出てくるファンタジーと思っていたのですが、アメコミ好きの自分としてはX-MENに通じるものがあります。本作に登場する妖精をミュータントにおきかえるとX-MEN映画です。主人公の使う能力も、“あ!X-MENっぽい”と思うシーンもありました(笑)。
ちなみに花澤さんにスーパーパワーを持つことが出来たらどんな能力が欲しいですか?と聞いたら「治癒能力ですね。手をかざしてパワーをおくって人の筋肉痛とか治して元気にあげたい(笑)」。この言葉をきいて花澤さんは人のことを考えてくれるヒーローだなと思いました(笑)。でもすでにその声で多くの人を元気にしてくれています。
花澤さんの声が愛らしい妖精にさらなるパワーを与えた、『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』をぜひ“選んで”ください!
羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)スペシャルトレーラー|LMYK「Unity」
Text by 杉山すぴ豊
Photo by 柴崎まどか
INFORMATION
羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来
11月7日(土)公開
シャオヘイ:花澤香菜/ムゲン:宮野真守/フーシー:櫻井孝宏
シューファイ:斉藤壮馬/ロジュ:松岡禎丞/テンフー:杉田智和
シュイ:豊崎愛生/ナタ:水瀬いのり/キュウ爺:チョー/館長:大塚芳忠
花の妖精:宇垣美里(特別出演)
日本語吹替版主題歌
LMYK「Unity」(EPICレコードジャパン)
原作/監督:MTJJ
プロデューサー:叢芳氷、馬文卓
副監督:顧傑 脚本:MTJJ、彭可欣、風息神涙
作画監督:馮志爽、李根、周達炜、程暁榕、鄭立剛
美術監督:潘婧 撮影監督:梁爽 3D監督:周冠旭
音響監督:皇貞季 音楽:孫玉鏡
制作会社:北京寒木春華動画技術有限公司
日本語吹替版
音響監督:岩浪美和 音響制作:グロービジョン
配給:アニプレックス、チームジョイ
(C) Beijing HMCH Anime Co.,Ltd
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