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ジャレッド・レト監督ドキュメンタリー『ARTIFACT』
2014.06.22(日)22:30
放送チャンネル:WOWOWライブ

iTunes Festival 2013サーティー・セカンズ・トゥ・マーズ
2014.06.22(日)24:30
放送チャンネル:WOWOWライブ

 ジャレッド・レトについて詳しく知る!

<第86回アカデミー賞受賞式>で「今回のセレモニーで最高」と称されたジャレッド・レトのスピーチ。記憶に残っている人も多いのでは? 40代とは思えないピュアネスを湛えた彼はエモーショナルかつ冷静に、かつてティーンエイジャーだった強い精神を持つ女性(自分の母親)を称賛。そして助演男優賞を獲得した当の作品『ダラス・バイヤーズクラブ』の主たるメッセージとも言える、今も全世界でエイズと戦う患者にエールを送り、政情が不安定なベネズエラやウクライナの市民をも励ました。その姿は演技やロジックに秀でた人のそれではなく、彼自身の心の奥底から発されたものだからこそ、ジャレッド・レトという人物をさほど知らない全世界のオーディエンスまでをも感動させたのだ。

『ダラス・バイヤーズクラブ』より

映画出演は4年ぶりとなったジャレッドだが、俳優を始める前からキャリアを積んできたのがロックバンド、サーティー・セカンズ・トゥ・マーズ。兄のシャノン・レト(Dr)とファミリー・プロジェクトとして’96年にスタートし、現在はオーディションで加入したトモ・ミリセヴィック(G)とのトリオ編成。’05年発表の『ア・ビューティフル・ライ』は全世界で200万枚を超すセールスを記録、ワールドワイドに活動する中、’07年には<サマーソニック>で来日も果たした。彼らの動向に詳しいファンなら周知の事実だが、順風満帆に思えたバンドの活動は、’08年、所属レコード会社である〈EMI〉から契約枚数未消化による3000万ドルの巨額訴訟の勃発により一転。一切の活動の自由度が奪われ、多額の負債を追うことに。しかもその間もバンドは3rdアルバムの制作を止めることはしなかった。そんな苦闘の日々をジャレッドが“バーソロミュー・ガビンズ”名義で監督したドキュメンタリー映画が、『ARTIFACT』と題された本稿の主題である。

『ダラス・バイヤーズクラブ』で各映画賞を総なめしたジャレッド・レト。彼が監督として映したものとはーー film140609_jared-leto_sub2

一向にラチの開かない〈EMI〉との交渉の日々、しかもレーベルサイドは一度もメンバーと同じテーブルに着くことはない。バンドの要望を盛り込んだ再契約を果たすか? もしくは独立か? 独立したとしても多額の負債は残される。なんともやりきれない気持ちになる中、メンバーとプロデューサー、エンジニアの最低限のスタッフの間で交わされるミュージシャンシップ、代表者であるジャレッドの音楽、芸術に対する情熱や信念はむしろ浮き彫りにされていく。

音楽業界が音楽と無関係な巨大資本に飲み込まれて腐敗する現実も具体的に示され、また同時代のミュージシャン(リンキン・パークのチェスター・ベニントンやOK GOのダミアン・クーラッシュら)、企業家双方のコメントも盛り込んでいる辺り、渦中で困惑しているジャレッド自身が冷静に音楽業界のあり方を映画に定着しているのが印象深い。それは今後も自由に表現を続けたいと切望するからこその、彼の冷静さなのだろう。制作途中でアルバム・タイトルが『ディス・イズ・ウォー』に決定していくプロセスはリアルすぎて胸に迫るものがある。

しかし、息苦しい場面ばかりではない。ジャレッドの音楽家としての豊かな才能、普段着の素顔、メンバーや音楽仲間との笑顔溢れる瞬間もヴィヴィッドに切り取られている。訴訟209日目にして遂にバンドの要望を汲んだ再契約が知らされてからのバンドがアルバム制作に追い込みをかける姿もなかなか他では見られないスリリングでレアな映像だ。

 『ARTIFACT』詳しくはこちら!

ARTIFACT – OFFICIAL TRAILER

今回、WOWOWではこの貴重なドキュメントの放送にあわせて、2013年3月に開催された<iTunes Festival>でのライブ映像もオンエア。先述のアルバム『ディス・イズ・ウォー』や、最新作『ラヴ・ラスト・フェイス・アンド・ドリームス』などから多彩な選曲で届けてくれる。中でもイマドキのロックミュージシャンには珍しいグラマラスさと、少年のようなイノセンスを兼ね備えたジャレッドのパフォーマンスは、その独自のファッションセンスも併せて目が離せない。どこか浮世離れしたそのフィロソフィとどこまでもファンにやさしい態度を見ていると、『ダラス・バイヤーズクラブ』で演じたレイヨンがいかにハマり役だったかも、なんとなく見えてくる。そしてあの真摯なスピーチの奥にあるものも……。なんとも求心力のある存在なのである、ジャレッド・レトという人は。

(text by Yuka Ishizumi)

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ジャレッド・レト監督ドキュメンタリー『ARTIFACT』
2014.06.22(日)22:30
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iTunes Festival 2013サーティー・セカンズ・トゥ・マーズ
2014.06.22(日)24:30
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