楽通ならずとも一度は耳にしたことのある伝説のギタリスト、ジミ・ヘンドリックス。無名のバックミュージシャンが如何にしてスターダムへと駆け上っていったのか。彼にとって人生最大の転機となった、イギリスでのデビューを飾った1966年から1967年を描く映画『All IS BY MY SIDE(原題)』が、国内では2015年4月、ヒューマントラストシネマ渋谷他全国公開となり、邦題が『JIMI:栄光への軌跡』に決定した。

ジミ・ヘンドリックス役を務めるのは、今年デビュー20周年を向かえ、久々に再始動した人気ヒップホップデュオ、アウトキャスト(OUTKAST)のメンバー、アンドレ3000ことアンドレ・ベンジャミンである。メガホンをとったのは『それでも夜は明ける』の脚本や『スリー・キングス』の原案を手がけたジョン・リドリー。『それでも夜は明ける』は今年のアカデミー賞で作品賞、脚色賞など3部門に輝くなど話題を呼んだ。そして本作がリドリー監督にとって長編2作目となり、脚本も手がける。

撮影現場では、アンドレがスツールに腰掛けてジミ・ヘンドリックスとしてギターを弾く姿に、その場にいた誰もが我を忘れて聞き入っていたという。誰もが目に涙を浮かべていて、まさにそれは、ジミがそこに生き返った瞬間だった。「ギターの練習はもちろん、ウェイト・トレーニング、減量、ヴォイス・トレーニングを行った。ジョン(監督)と様々なシーンについて話し合い、行きつ戻りつしながら作り上げていったんだ。」とアンドレは語る。ギターは一日8時間の練習を2ヶ月半毎日続け、アンドレは右利きであったが左手でギターを弾くことをマスターした。それだけでなく、アンドレは単なるアイコンではなく、人間としてのジミを知るため、数々のリサーチを行った。「ミュージシャンとして何年も前にヘンドリックスについて書かれた本を読んでいたから、少しは知っていた。いや、知っていると思っていたと言ったほうが正しい。知らない事の方が圧倒的に多かった。資料を読み込んで、彼が何を言って、何を思ったのか想像できるようになった。何時間ものインタビュー・テープを聞いたし、映画も見た。彼独特の身振りや手振りも見た。」と語る。

本作で焦点を当てているのは、ジミ・ヘンドリックスという天才ギタリストが如何にしてスターダムへ駆け上っていったのか。その過程でどのような人々とどのような関係があったのかも細かく描いている。ジョン・リドリーが初めて“Send My Love to Linda”を耳にした時、心を打ち抜かれ、ヘンドリックスについてもっと知りたい、そして「いったい、リンダ(キース・リチャーズの彼女、リンダ・キース)は何者だろう?」と思ったという。リドリーは、リンダのバックグラウンド、彼女がジミに与えた影響について調べた。脚本を書き始めるまで5年のリサーチを行い、リンダとの関係がこの作品のもうひとつのテーマとなっていった。

そして、リンダに配役されたのは『28週後…』、『ジェーン・エア』、『フィルス』など若くして様々なジャンルの作品に挑戦し、10月18日にて日本公開を控える『グッバイ・アンド・ハロー 父からの贈りもの』でもヒロインを演じているイモージェン・プーツ。また、ジミが1966年から2年半交際を続けたキャシー・エッチンガムを、『ある公爵婦人の生涯』、『キャプテン・アメリカ』シリーズのヘイリー・アトウェルが演じる。今まで公にならなかったジミが愛した女性との関係が描かれる。

JIMI:栄光への軌跡

2015年4月、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
脚本・監督:ジョン・リドリー
出演:アンドレ・ベンジャミン、ヘイリー・アトウェル、イモージェン・プーツ、ルース・ネッガ、アンドリュー・バックレー、オリヴァー・ベネット、トム・ダンレア
配給:東京テアトル © MMXIII AIBMS, LLC. All Rights Reserved.
原題:『All IS BY MY SIDE』/116分/イギリス映画/2013年/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル/PG-12

STORY
1966年5月、名もないバックバンドの ギタリストであるジェームズはニューヨークのナイトクラブ、チータのステージでリンダと出会う。ジェームズの才能を見出し、やがてリンダを介してジェームズは音楽プロデューサー チャス・チャンドラーと知り合うのだった。陽の目を浴びることのなかった天才ギタリストが頂点に昇りつめた伝説の2年間を描く。