4日、映画『くも漫。』がいよいよ公開となり、東京・新宿バルト9にて初日の舞台挨拶が行われ、出演の脳みそ夫さん、柳英里紗さん、沖ちづるさん、立石涼子さんと、小林稔昌監督、そして原作の中川学さんが登壇され、映画撮影のエピソードや作品に込めた思いなどを語られました。
風俗店でまさに絶頂を迎えるその瞬間、くも膜下出血という大病に襲われたことがきっかけで巻き起こる主人公・中川学さんの人生の一端を描いたこのストーリー。主人公であるとともに作者の中川さんは、とても真面目そうな雰囲気の方ですが、シーンの山場となる“絶頂を迎えるシーン”について「最高でしたね。相手も奇麗な方でしたし……。」と振り返り、いきなり会場の笑いを誘います。
もともと編集をやられていた中川さんの弟さんからのオファーにより、漫画を執筆することになった中川さん。このストーリーは風俗店でのとある出来事、というちょっと男性としてはなかなか明かしづらいエピソードですが「(話を出すということに対して)すごく恥ずかしいという気持ちもあったけど、”絶対ウケる話だ”という気持ちもありまして。両方を天秤にかけた時に、“ウケたい”という気持ちが勝ちまして……。」と執筆までの経緯を語り、会場は爆笑。しかし静かな語り口を見せながらも、何か中川さんの作品に対する情熱を感じる一場面でもありました。
今回の作品を手掛けた小林監督は、中川さんのデビュー作品「僕にはまだ友達がいない」をドラマ化したことがきっかけで中川さんとのつながりを持たれたとのこと。もともと中川さんがくも膜下出血で倒れたことがあるという過去を知っていたということでしたが「くも漫。」が出たことで初めて風俗店で倒れたという事実を知ったとのこと。その後弟さんを通じて、中川さんにアプローチすることで映画化の経緯をたどることになったといいます。
今回主演の脳みそ夫さんをキャスティングするまでには「なかなか決まらなくて……脳さんが決まったのは、クランクインの一か月前くらいでしたね」とかなり切羽詰まった状況を明かします。その時のことを「(小林さんの所属会社の)社長から天の声というか……脳さんを紹介してもらったんです。その時は”冗談だろ?”って思ったけど(笑)。”風俗で倒れた男の話”ということで”愛嬌が大事”と考えていたんですが、動画サイトで脳さんのことを観察しながらそれにぴったりだと思いましたし、名前に運命をも感じましたしね」とキャスティングを決定した経緯を明かしながら「初日くらいには、”理想の人”だと脳さんのことを思いました。後で立石さんにインタビューする機会があってお尋ねした時にも”脳さんでよかった”と言われていたのも印象的でした」と、今回のキャスティングに非常に満足している様子を見せます。
一方、突然のオファーに驚いていたという脳さんは「絶対ドッキリだと思いましたね」とオファーを受けた時にかなり驚いた様子。もともと「僕には友達がいない」で元・SAKEROCK、現・在日ファンクの浜野健太さんがキャスティングされていたという経緯から「ハマケンさんだと聞いていたんですが、スケジュールの都合が合わないということらしくて」と冗談をポツっと言って笑いを誘います。さらに事務所の社長(お笑いコンビ・爆笑問題などが在籍するタイタン。社長は、爆笑問題の太田光さんの奥さんである太田光代さん)から「映画は監督のものなんだから、自我は捨てろ、と言われまして」と指導を受け、出演を決めたのだそうです。
また、シーンの中では自身の裸が見どころと語り会場を盛り上げる脳さん。「裸のシーンが多くて。長野での撮影だったので寒くて……でも30代で裸を残したかったし。中川さんの弟さんから“裸がキレイ”と言われまして」と、どこまでが冗談かわからないアピールでさらに爆笑を誘います。また脳さんの裸のシーンに対して中川さんは、”うつぶせで手足を伸ばしたまっすぐの姿勢”というポーズは、「くも漫。」にも描かれているものですが「あの倒れ方なんですが、(俳優の)竹中直人さんがあの姿勢をよく見せることがあって、あれが好きだったので影響を受けまして……。」と自身のこだわりを語り、それを劇中で忠実に再現されていたことを非常に喜ばれていました。
さらに、悲劇の瞬間の直前に中川さんのそばにいた絶世の美女・ゆのあ嬢を演じた柳さんは「絶頂を迎えるために、頑張るゆのあの姿、ぜひ見てもらいたい」と、そのシーンをアピール。一方で脚本を読んだ際には、脳さん演じる中川さんと二人のところに、恐怖のキャラクター「くもマン」が現れるシーンがどのように表現されるのか?非常に気になっていたといい「二人のはずなのに。私としては面白かったですけど」と撮影のことを振り返っていました。
中川さんの妹役を担当した沖さんは、ミュージシャンでもあり今回は作品の主題歌も担当。脳さんと同様に映画は初出演という今回の出演に際し、「姉はいるけど、同性の姉妹ですから。兄弟ということでどうなのかなと思いましたが、脳さんが自然だったので、それに合わせようを思いました。意思疎通もしていたと思いましたし、空気感も同じものを感じました。ジメッとした感じというか…」と笑いを誘いながらも、現場の雰囲気の様子を感じさせます。
また、中川さんの母役を務めた立石さんは、そんな二人に対して「二人とも本当に自然体で。余計をしないので、私が考えたのはそれをそのまま受けて、受けた分だけそこにいる、というように思っていました」と演技で意識したことを明かしながら、本作の見せ場については「盛り上がったところもいいんですが、例えば退院するシーンとか、ああいった何気ない日常が”ああ、そうだよな、あるある”という感じが、私は好きです」と作品を振り返ります。
そして締めの言葉として小林監督は「この映画は、この世界の片隅の、もっともっと小さいところにある作品なので、みなさんの応援でもっと見てくれる人が増えるものだと思ってます。それだけの内容になっていると思いますので、ぜひ広めてください」と、熱く作品をアピールされ、大盛り上がりの内に舞台挨拶は終了しました。
くも漫。
2017年2月4日より、新宿バルト9ほかにて劇場公開!
出演:脳みそ夫、柳英里紗、沖ちづる、板橋駿谷、坂田聡、立石涼子/平田満
原作:中川学「くも漫。」(リイド社・トーチコミックス)
監督:小林稔昌
脚本:安部裕之
企画・製作:クリエイティブネクサス
配給:トリプルアップ
©クリエイティブネクサス