21世紀に入った00年代。『X-MEN』『スパイダーマン』『アイアンマン』など人気コミックが実写化されるようになり、スーパーヒーローが活躍。3Dの映像が話題を呼んだ『アバター』が大ヒットするなど、エンターテイメント色が強くなった00年代のSF映画から3本紹介。
A.I.
ここ数年、研究が加速してブームになっている人工知能(AI)。「機械は人間のような心を持つことができるのか?」という大きなテーマに、スティーヴン・スピルバーグ監督が挑んだのが本作」だ。ロボットが活躍するようになった未来の地球。一人息子のマーティンが不治の病に冒された夫婦、ヘンリーとモニカは、人間と同じように愛情を持つことができる少年型ロボット、デヴィッドと暮らすことを決意する。デヴィッドは、起動したモニカを無条件で愛するようにプログラミングされていた。ところがマーティンが奇跡的に治り、デヴィッドは森に捨てられてしまう。そこで、女性向けセックス・ロボット、ジゴロ・ジョーや、熊型ペット・ロボット、テディと知り合ったデヴィッドは彼らと旅に出る。SF作家ブライアン・オールウェイズの原作小説に、『ピノキオ』の要素も入れてスピルバーグが脚本を書き上げた本作は、愛を巡る残酷な童話のような物語だ。デヴィッドのモニカに対する気持ちが愛なのか、単なるプログラミングに過ぎないのかは観るものの解釈次第だが、様々な感じ方が生まれるのが人間という生き物の複雑さであり、そこに心の秘密がある。ロボットの存在がますます身近な存在になるなか、一度は見ておきたい作品だ。
第9地区
携帯やビデオで撮った動画を日常的に目にするようになると、そういった機材を使って撮影したドキュメンタリー・タッチの映画が生まれた。その手法をSFで成功させたのが本作だ。1982年、南アフリカ共和国のヨハネスブルク上空に突如、巨大宇宙船が飛来する。乗っていたのは、宇宙船の事故で行き場を失った大量のエイリアン難民だった。エイリアンたちは地上に移され、スラム街の近くに設けられた「第9地区」で暮らすことになる。しかし、人間はエイリアンの異様な姿を嫌い、彼らを「エビ野郎」と呼んで差別して衝突が絶えなかった。そして、宇宙船が出現してから28年後、増えすぎたエイリアンを新しい地区に移住させるプロジェクトの責任者となったヴィカスは、エイリアンとの交渉中に謎の液体を浴びたことがきっかけで、とんでもないトラブルに巻き込まれていく。南アフリカ共和国出身のニール・ブロムカンプ監督の長編デビューとなる本作は、難民問題とSFという意表を突く組み合わせでリアルなエイリアン映画を生み出した。スラム街をうろつくエイリアンや地元ギャングとエイリアンの確執など、生々しい映像をニュース番組の映像として撮影して構成する演出が、物語に臨場感を生み出している。そして、ブラックなユーモアを散りばめながら、最後に待ち受ける予想外の感動に涙。
X-MEN2
00年代以降、次々と実写化されて人気を呼んだマーベル・コミックのスーパーヒーローたち。その口火を切った人気シリーズが『X-MEN』だった。なかでも評価が高いのが『X-MEN2』だ。超能力を持って生まれた人間が「ミュータント」と呼ばれて差別される近未来。記憶を失ってさまよっていたミュータントのウルヴァリンは、人類との共存を目指すミュータント集団、プロフェッサーXが率いるXメンと知り合う。そして、彼らと共に人類に憎しみを抱くミュータント、マグニートが率いるブラザーフッドと闘うというのが1作目。2作目となる本作では、政府直轄のミュータント対策本部の責任者、ウィリアム・ストライカーがミュータント全滅を画策する。が『X-MEN』の特徴は、ヒーローが差別されるマイノリティであること。本作では共にマイノリティであるXメンとマグニートが一時休戦をして、自分達を目の敵にする差別主義者と闘う。しかし、しっかり悪巧みをしているマグニートや、ウルヴァリンとXメンのメンバー間の恋の三角関係など、キャラクターを活かした巧みなストーリー展開で観客を引き込み、アクション・シーンも増量。エンターテイメントとしてのクオリティは前作以上だ。今年6月にはシリーズ最新作『X-MEN:ダーク・フェニックス』の公開が予定されていて、見直すなら今のうち。
Text by Yasuo Murao