界中のアートや思想に決定的な影響を与えた、ジャック・ケルアックの不朽のビート文学が完全映画化となる。

ジャック・ケルアックが1957年に発表した「路上/オン・ザ・ロード」は、1950年代アメリカのビート・ジェネレーション文学の代表作であり、その後のカウンターカルチャーの時代に“ヒッピーの聖典”となった青春小説の名作である。ケルアックが全米各地とメキシコを放浪した実体験をベースに、わずか3週間で書き上げたという逸話も語り継がれるこの名作は、ボブ・ディランに「僕の人生を変えた本」と言わしめ、ジム・モリソン、ブルース・スプリングスティーン、ニール・ヤングといったミュージシャンや、デニス・ホッパー、ジム・ジャームッシュ、ジョニー・デップら映画人に多大な影響を与えた。21世紀の今も新しい世代の読者を獲得し、世界中の若者たちの心を揺さぶり続けている。

このような時代を超越した傑作小説をハリウッドが放置しておくはずもなく、過去に何度も映画化の話が持ち上がったが、ケルアック独特の即興的な文体と明確な起承転結のないストーリーなどがネックとなり、ことごとく企画は頓挫。しかし原作の映画化権を購入し、長年その実現を夢見てきた巨匠フランシス・フォード・コッポラは、この“幻の企画”を諦めていなかった。若き日のチェ・ゲバラの南米大陸縦断の旅を描いた2003年作品『モーターサイクル・ダイアリーズ』に感銘を受けたコッポラは、それを手がけたブラジル人のウォルター・サレスに監督をオファー。両者の8年にもわたる粘り強いコラボレーションが実を結び、ついに伝説的な小説の初めての映画化『オン・ザ・ロード』が完成した。

この物語の普遍性および現代性は、行き当たりばったりの旅を通して自由を追い求め、人生の真実を見出そうとする若者たちのひたむきな渇望にある。恋愛と友情、セックス、ドラッグ、ジャズに彩られた青春模様は、誰もが通過する“青年から大人へ”の道程に光をあて、生きることのはかなさや孤独をもあぶり出す。その喜びや切なさをいきいきと凝縮した本作は、アメリカ各地はもちろん、カナダ、メキシコ、アルゼンチンでも撮影を実施し、雄大な風景をみずみずしく捉えた青春ロードムービーとなった。同時にこの映画は「路上/オン・ザ・ロード」の誕生秘話でもあり、主人公サルがほとばしる情熱とともにタイプライターと向き合い、自らの人生を変えた“路上の日々”を書き記していく姿が感動を呼び起こす。
 
ケルアックの分身であるサルを演じるのは、『コントロール』のイアン・カーティス役で脚光を浴び、ニール・ジョーダン監督、シアーシャ・ローナン主演『ビザンチウム』(今秋日本公開)にも出演しているサム・ライリー。サルをさすらいの旅に誘うディーン役には、『トロン:レガシー』の主演で一躍ハリウッドの若手注目株に躍り出たギャレット・ヘドランドが抜擢された。さらに『トワイライト』シリーズでのブレイク前から出演が内定していたというクリステン・スチュワート、『ザ・マスター』でアカデミー助演女優賞候補になったエイミー・アダムス、『メランコリア』のキルスティン・ダンスト、『危険なメソッド』『偽りの人生』のヴィゴ・モーテンセンらの豪華キャストが集い、ビート世代の狂騒をスクリーンに甦らせている。

また『バベル』『ブロークバック・マウンテン』で二度のアカデミー作曲賞に輝くグスターボ・サンタオラヤが、ビート文学と密接な関係にあるジャズを導入した魅惑的な音楽を創出。撮影監督のエリック・ゴーティエ、美術のカルロス・コンティといった『モーターサイクル・ダイアリーズ』組の一流スタッフが、サレス監督を力強くサポートしている。まずはついに公開となった最新予告映像でその片鱗を堪能しよう!

映画『オン・ザ・ロード』

2013年8月TOHOシネマズ シャンテ他全国順次公開決定!

製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ『ゴッドファーザー』『地獄の黙示録』
音楽:グスターボ・サンタオラヤ『ブロークバック・マウンテン』『バベル』
2012年/フランス・ブラジル/英語/カラー/シネマスコープ/139分/字幕翻訳:松浦美奈/原題:ON THE ROAD/R-15