1996年に起きたアトランタ爆破事件で、爆弾の第一発見者であるリチャード・ジュエルが、あろうことか第一容疑者とされ、世論によって「まるで犯人扱い」されてしまってから容疑が晴れるまでの88日間の物語を描く、クリント・イーストウッド監督最新作『リチャード・ジュエル』が1月17日(金)にいよいよ公開を控えている。今回そんな本作で描かれる「メディアリンチ」について、イーストウッド監督とポール・ウォルター・ハウザーのコメントが到着した。
クリント・イーストウッドとポール・ウォルター・ハウザーがメディアリンチに警鐘
「メディアリンチ」とは、人を裁く資格を持たないメディアによる報道が、人に対する誤った情報を伝え、社会的人格を破壊してしまうことを指す。SNSが定着した現代社会では、メディアだけではなく個人の発言が瞬く間に拡散していく。
特定の個人を間違って犯人扱いしたり、事実確認すら行われていないコメントを肯定するかのようなリツイートなど、その弊害や誤認は後を絶たない。現代社会に生きる人々にとって、本人が気づかないままに事件の「加害者」にも「被害者」にもなりうるリスクは常に潜んでいる。
イーストウッド監督は、「ごくわずかな間違った情報が、ひとりの人間の人生を悪夢に変えてしまうこともありうる。そして真実が明らかになっても、誰もそれを直視したがらない。なんて恥ずかしいことだ」と警鐘を鳴らす。この指摘の通り、この映画では「誤認」が描かれる。
その第一が、「FBIが第一容疑者としてリチャードを捜査している」という報道だ。捜査中であることは事実だが、「リチャードが爆破犯だ」ということは定かではない。実際、リチャードはこの事件に関して一度も起訴されていない。複数の人物から作られたFBI捜査官トム・ショウを演じたジョン・ハムは、実社会において「あらゆる意味で、彼は世論という法廷で裁かれた」と指摘する。
たったひとつの情報が拡散し、メディアによる過熱報道で形成された世論では、リチャードのイメージは「捜査中の容疑者」から「爆弾犯」へと代わり、定着していく。「まるで犯人扱い」と言うことはたやすいが、もしそれが自分に降りかかって来たとしたら……一体その後の人生はどうなってしまうだろうか?
リチャード・ジュエルを演じたポール・ウォルター・ハウザーは、「この物語は重要だ。僕らが生きている今の社会では、すべての事実を知る前に、人々は勝手に判事になったり、陪審員になったり、処刑人になったりする。リチャードはマスコミによって裁かれ、そのために、彼がその人生で頑張ってやってきたことすべて、警察学校へ行き、野球コーチをし、思慮深い市民でいることなどが、彼にとって不利な意味で見出しに使われてしまった。今の僕たちもそんな過ちを犯しながらもちゃんと正していないという現実を突きつけられる。それは誰にでもまだ起こりうることなんだ」と、リチャードが体験した88日間は、明日は自分自身に降りかかることかも知れないという。
だからこそ映画を通して、「人々が誰かに特定のレッテルを張る前に、よく考えてその人物の人間性をきちんと認めるようになってほしい。そして、リチャードの人間性とその善行を称えられることを願っている」と、熱いコメントを寄せている。「メディアリンチ」を緻密に描いた本作を通して、普段のSNSや情報との付き合い方を考え直してみるべきかも知れない。
INFORMATION
『リチャード・ジュエル』
2020年1月17日(金)全国ロードショー
US公開:12月13日(金)
スタッフ、キャスト
監督・製作:クリント・イーストウッド
原作:マリー・ブレナー、バニティ・フェア 「American Nightmare:The Ballad of Richard Jewell」
脚本:ビリー・レイ「キャプテン・フィリップス」
製作:ティム・ムーア、ジェシカ・マイヤー、ケビン・ミッシャー、レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・デイビソン、ジョナ・ヒル
出演:サム・ロックウェル(「スリービルボード」(18))、キャシー・ベイツ(「ミザリー」(91))、
ポール・ウォルター・ハウザー(「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」(18) )、
オリビア・ワイルド(「トロン:レガシー」(10))、ジョン・ハム(ドラマ「MAD MEN マッドメン」(07‐15))
上映時間:2時間11分/レイティング:G
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