※『ROOM237』を鑑賞いただく前に
『シャイニング』をご覧いただくことをお薦めいたします。
本作の予告編を観て、2013年に1大ブームを巻き起こしたNHKの連続テレビ小説『あまちゃん』をとっさに思い出した。「分がるやつだけ分がれば良い(朝ドラなのに!)」と言い切って、繰り広げられた小ネタに様々な論争が成されたことを。何が言いたいかと言うと、愛されるドラマや映画は壮大な妄想(?)や分析が付き物であるということだ。魅力的な作品であるだけにーー『あまちゃん』はあくまで例えだが、ここで紹介するのは、人々の脳内を掻きむしり続けるホラー映画の金字塔『シャイニング』を徹底分析した『ROOM237』という映画だ。
『2001年宇宙の旅』(68)、『時計じかけのオレンジ』(71)といった幾多の名作を遺した20世紀最高の巨匠スタンリー・キューブリックによる『シャイニング』は作家のジャック・トランスとその妻ウェンディ、不思議な超能力を持つ幼い息子ダニーが、コロラド州のロッキー山脈にあるオーバールック・ホテルを訪れるところから始まる。彼らはホテルが閉鎖される冬の間、ここに管理人として滞在することになったのだ。ところが先住民の墓の上に建てられたホテルの邪悪な力に魅入られたジャックは、斧を手にしてウェンディとダニーに襲いかかるのだった・・・。
リゾートホテルを呪われた迷宮に見立てた『シャイニング』を多角的に解明する本作は、筋金入りのキューブリック研究家たちのコメンタリーとともに進行していく。ビル・ブレイクモア(ジャーナリスト)、ジェフリー・コックス(歴史学者)、ジュリ・カーンズ(作家)、ジョン・フェル・ライアン(ミュージシャン)、ジェイ・ウェイドナー(作家、映画製作者、神秘学者)。以上の識者5人が斬新かつユーモラスな極私的『シャイニング』論を披露し、映画を読み解く魅惑にどっぷりと浸らせてくれる。
ある識者は画面に何気なく映り込んだように見える“ふくらし粉の缶詰”や“スキーヤーのポスター”に注目し、アメリカ先住民やギリシャ神話にまつわるメタファーを検証する。また、映画の舞台となったオーバールック・ホテルの見取り図、ダニー少年が三輪車で走り回ったルート図を作成し、そこから判明したさまざまな矛盾や意外な観点を提示。さらに識者たちの深読みはとどまるところを知らず、実はキューブリックはこのホラー映画を利用してナチによるホロコーストの蛮行を描こうとしたのではないか、はたまたアポロ計画におけるNASAの壮大な陰謀を暴露しようとしたのではないか、という衝撃的な仮説までも飛び出す。加えて本作の終盤では、「もしも『シャイニング』の通常再生と逆再生のふたつの映像を、オーバーラップさせて鑑賞したらどうなるか?」という奇想天外な解析も行われている。
題名になった“ROOM237=237号室”とは、主人公ジャックが腐敗した老婆の幽霊と出くわす客室のことで、『シャイニング』に渦巻く魔力を象徴する部屋を示している。ちなみにスティーヴン・キングの原作では “217号室”。キューブリックはなぜ部屋番号を変更したのか?——目から鱗の“真実”からマニアも唖然の“珍説”までぎっしりと詰め込まれた本作は、あらゆる映画ファンの知的好奇心を刺激してやまない。おそるおそる、そしてワクワクと新たな発見に満ちた“237号室”の扉を開いてほしい。
特典付『ROOM237』前売鑑賞券を発売中!
前売券の劇場窓口購入特典はアーティスト、D[diː](ディー)のイラストがデザインされた特製クリアファイルに決定! このファイルに描かれているのは、『シャイニング』の恐怖の象徴とも言える“双子の姉妹”だ。前売券は上映劇場のシネクイント、新宿シネマカリテ、オンラインストアにて発売中なので、前売券とD[diː]による特製ファイルをこの機会に、ぜひゲットしよう! |
※特典の数には限りがございます。先着となりますので、予めご了承ください。
ROOM237
2014年1月25日(土)シネクイント他全国順次公開!
監督:ロドニー・アッシャー
配給:ブロードメディア・スタジオ
2012年/アメリカ/英語/103分/原題:ROOM237