先述したウォーカー・ブラザーズは当時、伝説的な人気を誇るバンド・ザ・ビートルズと人気を二分していたといわれるバンド。1965年にシングル“Pretty Girls Everywhere”でデビュー、以降数々のヒットを放った後に解散。その後スコットは67年にソロアルバム『Scott』にてソロデビューを果たし、以降1975年のウォーカー・ブラザーズ再結成などを経ながらソロ活動を続け、70年には映画『恋』にてミシェル・ルグラン作曲の主題歌を担当、1999年には映画『ポーラX』の音楽を手掛けるなど、映画音楽にも傾倒しています。今作ではその『ポーラX』以来、実に16年ぶりの作曲となりました。
劇中では、不安定な少年の心情を見る側にダイレクトに伝える部分で、スコットの音楽が大きな力を発揮しています。冒頭から流れてくる音楽は、整然としたストリングスのハーモニーとリズムのもとに成り立っているものではありますが、そこに流れる旋律はまるでフリージャズのプレーのように不協和なイメージ。しかし映像で示される少年の、世への不満の表情とともにこの音が流れると、まるでその旋律が急に意味を持つかのように、シーンの不気味さを盛り立てます。
まさしくモンスターとなる主人公・プレスコット少年の心情を見事に表現したその音楽はスコット・ウォーカーが作ったという観点でも非常に興味深い作品ではありますが、その予備知識がなくても映像と音からは十分に「モンスター」でショッキングな雰囲気を全編で感じることでしょう。意外に生々しいスプラッター映画よりも、背筋が凍るようなショッキングな雰囲気を味わえるかもしれません。是非一度ご覧になってみてはいかがでしょうか?
『シークレット・オブ・モンスター』
2016年11月25日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督:ブラディ・コーベット
脚本:ブラディ・コーベット/モナ・ファストボルド
出演:ベレニス・ベジョ『アーティスト』『ある過去の行方』、ステイシー・マーティン『ニンフォマニアック』、ロバート・パティンソン『トワイライト』シリーズ、リアム・カニンガム『ゲーム・オブ・スローンズ』、トム・スウィート
2015/イギリス、ハンガリー、フランス/英語、フランス語/116分/カラー/ヨーロピアンビスタ/ドルビーデジタル/原題:the childhood of a leader/G
提供:日活、REGENTS 配給・宣伝:REGENTS
©COAL MOVIE LIMITED 2015
1918年。ヴェルサイユ条約締結を目的にフランスに送り込まれた米政府高官。彼には、神への深い信仰心をもつ妻と、まるで少女のように美しい息子がいた。しかし、その少年は終始何かに不満を抱え、教会への投石や部屋での籠城など、その不可解な言動の数々に両親は頭を悩ます日々。その周囲の心配をよそに、彼の性格は次第に恐ろしいほど歪み始める―。そして、ようやくヴェルサイユ条約の調印を終えたある夜、ついに彼の中の怪物がうめき声を上げる―。20世紀が生んだ最悪の怪物=”独裁者”生誕の謎に迫る至高の心理ミステリー。