『ハルク』『ソー』『アイアンマン』『ドクター・ストレンジ』『スパイダーマン』『X-MEN』など、マーベル(Marvel)の主要キャラクターを次々に生み出してきたアメリカン・コミックスの原作者、スタン・リー(Stan Lee)が先日、95歳でこの世を去った。
彼が世界中のコミック、映画界に多大なる影響を与えたことは言うまでもないが、時を同じくしてヒップホップシーンへも強い影響力を持ち続けてきたことはご存知だろうか?
ここでは、様々な形でアプローチされるスタン・リー作品へのオマージュを通して、ヒップホップカルチャーに大きな影響を与え続けた、スタン・リーの偉大さを振り返る。
ラッパーたちによるスタン・リー
オマージュ特集
Ghostface Killahはあのヒーローの大ファン
Wu-Tang Clanのメンバー、Ghostface Killahの初のソロアルバム。名盤だが、アルバム名が思いっきりスタン・リー作品『アイアンマン』のサンプリングだ。
ちなみに、Ghostface Killahの別名はTony Starks(Tony Starkは『アイアンマン』の主人公)とのことで、アイアンマンの熱烈なファンぶりがうかがえる。
Ghostface Killah – Ironman – (1996) – [Full Album]
MF DOOMの名前の由来は?
独特な世界観とドープな音作りで人気を集めるMF DOOM。彼の代名詞でもありお馴染みの「謎のマスク」だが、これはコミックスの悪役「ドクター・ドゥーム」のマスクをサンプリングしたものであり、名前もそれに由来している。
アメコミ画風のジャケットなども多々あり、こちらのドゥーム博士がラップをしているアルバムは内容も最高にクラシックでたまらない。
Commonのあの名作のリリックに……
1994年発売のCommon『Resurrection』は、タイトル曲“Resurrection”や“I Used to Love H.E.R”など、名曲揃いで現在も大人気のアルバムだ。
その中に収録されている“Chapter 13 (Rich Man vs. Poor Man)”では、こんなリリックが。
A Manwich has mills like Stephanie Mills, dills like pickles
I’m fancy, man, I tickles like the French
Not Johnny but like Bench, I press on like Lee
I stan’ like Lee, while you stagger like Lee
引用元:Genius Lyrics
言葉遊びの一環としてスタン・リーの名前を出しているだけのようにも思えるが、I stand like Lee(リーのように立つ)と、彼の名前をかけているところにもリスペクトを感じなくもない。彼の名前はCommonだけでなく、多くのラッパーに引用されているので、ふいに見つけることが出来るかもしれない。
Common – Chapter 13 Rich Man Vs Poor Man
先日のスタン・リーの死を受けて、多くのヒップホップアーティストが悲しみの声をSNSに投稿している。
Thank u Stan Lee for everything.
— TRAVIS SCOTT (@trvisXX) 2018年11月12日
2010年、スタン・リーは、インタビューでこんなことを話している。
「私はかつて、ビルの建設者や医療従事者がいる一方で『ただの漫画家である』ということが恥ずかしかったが、エンターテイメントが、人々の生活の中で最も重要なことの1つだと認識し始めたんだ。」
ラップは時に芸術として、時に社会的な問題提起をするエンターテイメントとして生み出されてきたが、スタン・リーによって創造された作品たちもまた、そういったエンターテイメント性を持っているようにも感じられる。この類似性が多くの共感を呼び、ラッパーたちを惹きつけてきた所以なのかもしれない。
世界中のコミック界、映画界、そしてヒップホップをはじめとする音楽界にまで大きな影響を与えたレジェンド、スタン・リー。彼の輝かしい作品たち、そして精神は、いつまでも愛され、語り続けられるだろう。
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