韓国を拠点に活動するプロデューサー、250イオゴン)。2010年代後半にNCT 127ITZYBoAといったK-POPの最前線で活躍するアーティストへ楽曲を提供し、彼はその非凡なポップセンスを大衆に提示してみせた。そして2022年、HYBE傘下の新レーベル〈ADOR〉から電撃的なデビューを果たしたガールズグループ・NewJeansに楽曲プロデュースで参加。“Attention”や“Hype Boy”、“Ditto”といった名曲は世界的なヒットを記録、彼のトラックはグローバルなシーンを席巻した。国境を問わず、今最も注目されているプロデューサーの1人と言っても過言ではない。

世界規模でのヒットを経験した250。その非凡なセンスには、ローカルな文化が原体験として刻まれている。NewJeansがデビューする約5ヶ月前、2022年3月に〈BANA〉からリリースしたデビュー・アルバム『PPONG』では、韓国の大衆歌謡として親しまれてきた「ポンチャック」を換骨奪胎したサウンドを展開。韓国大衆音楽史の底流に脈々と息づいてきた「ポン」なるものを探究しながら、4年の歳月を費やして完成させた、どこかレトロで親しみのある作品だ。

今回は来日公演を目前に控えた250にメールインタビューを実施。『PPONG』を制作するまでのストーリーや、自身が手がけた楽曲の世界的なヒットに関する話題など、昨年のトピックを中心とした9つの質問に答えてもらった。グローバルとローカルの二項を鮮やかに移動する、その独特な音楽観に迫る。

INTERVIEW:250

馴染み深いけれど特別な音楽──250(イオゴン)インタビュー|『PPONG』からNewJeansまで、最注目の韓国人プロデューサーが語る“ポップ・ミュージックの美点” interview230607_250-05

──今回はインタビューに答えていただき、誠にありがとうございます。非常に光栄です! 今はどのような状況でこのインタビューに答えていますか? また、制作はどのような時に進めますか?

曲作りは特別なスケジュールがなければ1日中やっています。今は日本ツアーの準備中なのですが、しばし頭を冷やす意味合いも兼ねて、気分転換しながら作業しています。

──昨年はソロデビュー作『PPONG』や、プロデュース作であるNewJeans“Attention”や“Ditto”のリリースなどがありました。その中でも、まずは『PPONG』についてお聞きしたいです。本作はどのような背景で制作されたのでしょうか? ポンチャックとの出会いから本作の制作に至るまでの、ポンチャックとのストーリーについて教えてください。

古い建物やご年配の方々が多く住んでいる地域でなくとも、ポンチャックは高速道路の休憩所に行けば鳴っています。近所の川辺を散歩していても、一度ならず聞こえてくる音楽なんです。韓国においてポンチャックは、聴こうとして聴く音楽というより、BGMに近いものだと思っています。そこで、私は音楽的な意味での「ポンチャック」だけでなく、「ポン」という1文字から感じられる様々なイメージを盛り込むための作業から始めました。

──ポンチャック、そしてトロットといった韓国の歌謡曲を下地にしたサウンドを現代のテクノロジーを通して演奏するということは、どのようなアイデアから生まれたのですか? また、ポンチャックのサウンドを現代的に落とし込む上で意識していることはありますか?

既存のポンチャックやトロット音楽のサウンドをそのまま具現化するのだとしたら、250のアルバムである理由がなかったし、私が本来好きなサウンドにだけ踏み込むのだとしたら、『PPONG』というタイトルである必要もないのです。タイトルを決めるところから始まったアルバムなので、そのような方式のブランディングが自然と出来上がったのだと、今は思います。

──『PPONG』のサウンドやあなたのインスタグラムの投稿などからは、レトロな魅力を感じます。音楽に限らず、そういった過去のカルチャーは、自身の創作にどのような影響をもたらしていますか?

私にとってその時代は、目に見えて手に取れるものがより大切な意味を持っていた時だったように思えます。速度と効率を追求する前の、粋とロマンをより重要視していた時世とでも言いましょうか。その時代への憧憬とノスタルジーは、『PPONG』において最も重要な情緒でもありました。

──同時に、『PPONG』には現行のダンスミュージックからの要素もあるように感じました。影響を受けた、もしくは注目しているDJ/プロデューサーなどはいますか?

ディプロ(Diplo)とスクリレックス(Skrillex)が好きでした。2010年代初めの〈Mad Decent〉のサウンドはかなりマニアックに好んで聴いていました。実は、アルバムの制作期間中にはできるだけポンチャック以外の音楽を聴かずに過ごしていて、その間に出てきた音楽についてはそれほどよく知らないんです。最近はスクリレックスのアルバムを、本当に楽しく聴きました。

──NewJeans“Ditto”は昨年のヒットチャートを賑わした曲でもありながら、世界中のクラブで愛されたナンバーでもあります。曲作りの際、クラブやライブハウスのフロアをどう意識していますか? また、どのような心境でこの曲の広がる様子を捉えていましたか?

私が聴いて、それが良いと思えれば、他の人たちも気に入ってくれるんだなという気がします。

NewJeans(뉴진스) ‘Ditto’ Official MV(side A)

──昨年のNewJeans“Ditto”や2018年のNCT127“Chain”などには、トレンドとの接近を感じます。レトロなプロダクトへの愛敬を持ちながらもそのようなシーンと接近するあなたにとって、作品をプロデュースする際に重要視していることはありますか?

トレンドはいつだって存在するし、いつだって消滅します。だから、もし時宜にかなうことに重点を置いてしまうと、失うものの方が多いような気がするのです。移り変わるトレンドの中で、私が純粋に面白いと思える要素を見つけて楽しみながら作業するのがいいような気がします。

NCT 127 ‘Chain’ MV

──ローカルな要素とグローバルな要素が一つのトラックの中で共存することは、ポップミュージックにおいてどのような意味を持つと考えていますか?

ローカルとグローバルという言葉は、私にとって新鮮さと馴染み深さだと思えます。音楽のあらゆる要素が馴染みのないものだったら近づき難いものになってしまうでしょうが、新鮮な要素がなければ特別に感じられることもないでしょう。「馴染み深いけれど特別な音楽」が良い音楽だと言ってもいいように思われますし、それが良いポップ・ミュージックの美点なのかもしれません。

──ありがとうございます! 最後に、今回の来日公演で披露するライブセットの特徴や、生の現場でパフォーマンスする時のこだわり、意識していることについて教えてください。

何か辻褄が合っているようで合っていないような、整理されているようでメチャクチャなような、そんなパーティーを作りたいです。インタビューをしてくださって心から感謝していますし、ライブ会場にいらっしゃるお客さんが心から特別だと感じられるような瞬間を作るために努力をしている最中です。多くの方がいらっしゃって、一緒に楽しんでくだされば幸いです。

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文/風間一慶

INFORMATION

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250 JAPAN TOUR 2023
“イオゴン – ポン” 日本巡回公演

2023.06.07(水)@CIRCUS OSAKA
OPEN/START 19:00
ADV ¥3,800/DOOR ¥4,300
LINE UP:250(LIVEset), ALTZ, MONGOOSE, SSSSSHIN
https://circus-osaka.com/
Ticket:e-plus 受付開始日:2023.05.11(木)
https://eplus.jp/sf/detail/3874060001-P0030001

2023.06.08(木)@NAGOYA – CLUB GOODWEATHER
OPEN/START 19:00
ADV ¥3,800/DOOR ¥4,300
LINE UP:250(LIVEset), OBRIGARRD, deadram, AKI, MOOLA
FOOD:YANGGAO
https://www.goodweather.org/
Ticket:CLUB GOODWEATHER web

2023.06.09(金)@CIRCUS TOKYO
OPEN/START 19:00
ADV ¥3,800/DOOR ¥4,300
LINE UP:250(LIVEset), VIDEOTAPEMUSIC(LiveSet), Shhhhh, Soi48
https://circus-tokyo.jp/
Ticket:e-plus 受付開始日:2023.05.11(木)
https://eplus.jp/sf/detail/3874070001-P0030001

2023.06.10(土)@NAGANO – THE CAMP BOOK 2023 – “TCB DISCO”
LINE UP:250(DJset), 石野卓球, OMK(YOUNG-G,MMM,Soi48), VIDEOTAPEMUSIC(DJset)& many more
https://the-camp-book.com/
Ticket:THE CAMP BOOK official

2023.06.11(日)@MATSUMOTO – GIVE ME LITTLE MORE
OPEN/START 18:30
ADV ¥3,800/DOOR ¥4,300
LINE UP:250(LIVEset), VIDEOTAPEMUSIC(LIVEset), The Instant Obon(キセル・辻村豪文), DJ 四畳半
http://givemelittlemore.blogspot.com/
Ticket:GIVE ME LITTLE MORE web

★250(LIVEset)mixing:内田直之

主催・企画・制作:BANA & microAction
招聘:株式会社サーカス
Total information:microAction

microAction