INTERVIEW

あっこゴリラ

Photo by Naoto Kudo

     

ウィットに富んだリリックとリズミカルなフロウ、さまざまな音楽ジャンルを独創的に折衷した攻撃的なトラックが相俟って、人それぞれが持つ個性を肯定する。

注目の新時代ラッパー、あっこゴリラが初のアルバムをリリースした。そのタイトルは自ら生み出した造語『GRRRLISM』。固定概念や同調圧力に対し、女性の目線ならではの熱きメッセージが溢れてくるような、明確なテーマ性を持った強い言葉だと感じた。HAPPY BIRTHDAYというバンドのドラマーとして一度メジャー・デビューするも解散。一人になってから、何が原動力となりラップという表現手段を選んだのか。今回なぜそのようなタイトルを付けたのか。どんなアルバムにしたかったのか。

彼女の過去から現在に至るまでを掘り下げ、『GRRRLISM』にある真意と作品の魅力に迫る。

Interview:あっこゴリラ

あっこゴリラ インタビュー|『GRRRLISM』で描いた抑圧からの解放とは? akkogorilla-1

――以前に本誌の記事で、インタビュアーは私ではなかったのですが、一度HAPPY BIRTHDAYというバンドのドラマーとして、ソニー・ミュージックからメジャー・デビューし、解散したのちにあっこゴリラとしての活動を始め、また再び古巣ソニー・ミュージックからレコードを出すに至った経緯について話をお伺いしました。そこには掲載されていなかったことで聞きたいことがあるんです。なぜバンドのドラマーがラップという表現を選んだのでしょうか?

そこは衝動ですね。言葉で説明できるようなきっかっけや経緯があるわけではなく、ノリで体が先に動いちゃった感じです。

――では、当時またバンドをやるとかバンドに入るという選択肢もあったのでしょうか。

いえ、まったくなかったです。HAPPY BIRTHDAYは、ギター・ボーカルのきさが曲も歌詞も全部作っていて、私はドラムを叩くだけの二人組だったから、私が勝手に居場所がない、才能がないって思い込んでた部分があったんです。

――だから、自分がイニシアチブを持って音楽をするときに、バンドではなかったと。

そんなの絶対に無理だと思ってました。自分のことすら認められてないのに、メンバーを集めて引っ張ていくなんて、とんでもない。歌をうたうってこともそうですね。

――でもラップならできる、ということですか?

なぜでしょうね。自信ないのに、衝動は抑えられない、という相反するエネルギーをもっているので、苦労しました(笑)。ヒップホップ・カルチャーのことも当時はあまり知らなかったし「やべえ、やっちゃった……」ってあとで気が付いたくらい。でも4年間本気でラップをしてきたら、自分のことも、音楽との向き合い方も、人との向き合い方も、大きく変わりました。結果ヒップホップに救われた人生です。そんな自分の音楽が、今いろんな人たちに聴いてもらえてるのが嬉しいし、まさかここにきてライブでバンドまで率いるようになるなんて。

――でも、今は勢いのままその延長線上ではないですよね?トラックやフロウからは、ヒップホップ・カルチャーのことやオルタナティブという概念、パンクなどの文脈を踏まえていないとできないであろう要素も多く含まれているように思いますが、そこはいかがでしょう?ヒップホップについては、前のインタビューで、ソロとして動き出したあとに、オールドスクールから学んだとおっしゃっていましたが。

ヒップホップに関しては、オールドスクールから勉強もしたけど、結果出会った人や人生からヒップホップを学び、知っていったかんじです。オルタナっぽい空気に関しては、HAPPY BIRTHDAYはすごくポップなバンドだったし、その時代だけを切り取るとイメージできないかもしれないんですけど、その前は nisennenmondaiやBOREDOMSが好きで、ライブにも行きまくってたんです。

あっこゴリラ インタビュー|『GRRRLISM』で描いた抑圧からの解放とは? akkogorilla-2

――そこからなぜHAPPY BIRTHDAYを結成したのですか?

きさとはライブハウスで出会って、音楽的にどうこうというよりは、バイブスが合うからやろうぜって。でも、私はの趣味はそんな感じだったから、歌を殺すドラムしか叩けなかった。「8ビートとかつまんねえ」って舐めてましたし。いかに手数を増やすか、みたいな。

――nisennenmondaiやBOREDOMSからの影響を、そのままポップな歌が前にある曲に持ってきたらそうなりますよね。

「これじゃあバンド崩壊するわ」って思ったから、8ビートからちゃんと勉強したんです。“タカトン”なのか“タカトコ”なのか、それだけに命をかけて丁寧に。でも正直そこでストレスが溜まって爆発したのかもしれない。それは今やってる音楽のリズムにも表れてるように思いますし、おっしゃったようなオルタナっぽさに繋がっているのかなと。

――全体的にリズムやサウンド、メロディにも、エキゾッチックなムードが漂ってるじゃないですか。それはどこからきてるんですか?

そこはM.I.Aの影響ですね。あの土着的な感じや、圧倒的にオリジナルなんだけどポップな曲の数々にはやられましたね。衝撃的でした。

――言葉についてはどうですか? 大雑把な言い方にはなりますが、多くの曲が固定概念や同調圧力みたいなものに対して、自分の足で歩くことの大切さを、言葉や音にして表現されている。

その通りだと思います。昔は、周りと違うことがダメだと言われると、私はそういうダメな人間なんだって思ってたんです。ずっと視野が狭かった。でも、そういうマインドだと曲なんて作れない。ただ、何かを表現したいっていう想いはどこかにずっとあったから、これまたそこで溜まりに溜まったストレスが爆発して、パンクになっているように思います。

――今回リリースされる初のアルバム『GRRRLISM』も、タイトルからしてパンクです。

そうですね。見たまま<Riot Grrr>へのオマージュと、普通に「GIRL」と「ISM」を合わせただけの言葉から連想される、”女の子代表”というイメージを超えていきたくて、スペルを変えました。あとは、動物が吠えているようにも見えるし、いい感じだなって。

――「“女の子代表”というイメージを超えていきたい」とおっしゃったことついて。タイトルの元ネタにもなった<Riot Grrrl>という女性パンク・バンドたちが起こしたムーヴメントは、抑圧された女性の目線からの強い主張であって、女性以外に排他的なものではないですし、人間レベルで差別はいけないという、普通のことを言ってるだけでもある。しかし、悲しい話ですが当時も今もそこが伝わりきらず、という現実があります。

私の言いたいことは、まさにすべてのジェンダー、年齢、国籍、あらゆる物事に繋がってるんです。伝えたいのはそこだから、ほんとうは限定的に女の子を指してると思われないような、もっと適切な言葉があるんじゃないかって、すごく考えたんですけどね。でも、女の子はこうあるべきと縛るものがある以上、まずは、そこを超えたところで話がしたい。だから「GIRL」を「GRRRL」にしたんです。

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あっこゴリラ インタビュー|『GRRRLISM』で描いた抑圧からの解放とは? akkogorilla-4

――一言でいうのもなんですけど、女はしおらしく。おかしな話です。

だから、いきなりぶっ飛んだこと言って伝わらないのも嫌ですし、言いたいこともやりたいことも、すでに3枚分くらいあるから、まず「GRRRL」からスタートすることにしました。

――曲の流れがいいですね。既発曲も入れ込みながら、アルバムとしての完成度が高い。

すでにリリースしていた曲のなかで、ここまでで話したようなテーマにハマる“ゲリラ”と“ウルトラジェンダー”は入れたかったんです。で、そこからほかにどういう曲を入れていくか、最初の段階で骨組みを作って、アルバとしていいものにしようとしました。

――6曲目に入っている“開戦前夜”がひとつの大きなポイントになっているんじゃないかと。レイドバックした曲調で、その前後に二つのドラマがある。前後半、言ってることに統一感はありながら、聴こえ方や見える景色が違うんで、飽きずにじっくり向き合えるんですよね。

“開戦前夜”は完全に自己否定マックスの自分に向かって言ってる曲で、0から踏み出して1になるようなイメージなんです。9月にシングルで出して、このアルバムにも入ってる“エビバディBO”みたいに、〈脇毛生やしたいなら生やそうぜ自由だぜ〉ってメッセージもいいんですけど、それって自己否定マックスの自分にはまだハードルが高いというか。だから今回は、当時の自分に響く言葉と音を探すことに比重を置いた部分もあって、その象徴と言える曲ですね。

――前半はまさにパンクでオルタナなあっこゴリラが炸裂します。

前半の5曲は、音楽的に私にとってのコアな部分というか。例えば、1曲目の“100%AKKOGORILLA”だと、トラックメイカーの食品まつりさんとは相性ばっちりで、私が根っこに持ってる攻撃的な部分と密接な感覚を持っているから、バイレ・ファンキまではいってないけど攻めてる、そんな絶妙なところを突いていてくれてる。3曲目の“エビバディBO”や4曲目の“グランマ”を一緒に作ってくれたgrooveman Spotさんもそうで、私のことをほんとうによく分かってくれてます。

――そういった前半のスリリングな刺激から、6曲目の“開戦前夜”があって、後半はフィーチャリング・ゲストを迎えた曲を中心に自由で開放的な空気になる。捉え方によっては後半の方がポップですよね。

確かにそうかも。前半は「これがあっこゴリラです」っていう私の得意な球を真っすぐ投げた。でも、ポップな後半のほうが裸になっているような気もします。

――前半の曲は、まさに服をビリビリ破いて脱いだその瞬間。後半はすでに裸のあっこゴリラさんが自由に楽しんでる感じ、しません? すごく自由度が高い。

ああ。なるほど!

――コラボ曲だと、今回のアルバムで解禁になった曲が2曲。まずはTempalayを迎えた“THIS IS ME”から話を聞かせてもらえますか? Tempalayらしいサイケデリックなサウンドと、あっこゴリラさんらしさの混ざり具合がもう自由すぎて、実に面白い。

カオスですよね。お互い譲らない感じが良かったなと。

――間奏とか。

いきなり違う曲が始まる、みたいな。この曲、実はすごく大変でした。いつもはテーマとか曲調とか、イメージがあってトラックメイカーの人たちに、「だからあなたの力が欲しい」って依頼して、阿吽の呼吸で作っていくんですけど、Tempalayはバンドだからそうやって外部の人と曲を作ることもあまりないだろうし、私もバンドと1曲を作ることってないから、そこのコミュニケーションが難しかったんです。

――セッションしながら作ったんですか?

いえ。綾斗くん(小原 綾斗)に、「(曲のイメージが)見えたほうがいい」言われて、「THIS IS ME」というタイトルやリリックの内容、「色はレインボーで」とか、とにかく自分なりにいっぱい説明しました。で、デモが返ってきて、メロディーは私が作ったものに置き換えて、綾斗くんのデモの段階ではサビだった部分が間奏になって。

――それでおっしゃったようなカオスに。

私も感覚的だけど綾斗くんはもっと感覚的な人で、お互いばらばらで通じないところが入り混じったり、かたやThe White Stripesとかゆらゆら帝国とか、ルーツが近い部分もあるから、そこで重なったり。で、夏樹くん(藤本夏樹)とAAAMYYYちゃんは、個性を発揮しながらうまくバランサーにもなってくれた。そんな感じで、お互いが置きにいかなかったのが良かったなって、思います。

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――もう1曲は04 limited sazabys・GENさんとの“GOOD VIBRATIONS”。バンドマンとして、メロディック・パンクをやってるGENさんのイメージしかない人は、こういうゆったりとした打ち込みのポップソングに、意外性を感じるかもしれませんね。

私はGENがいろんな音楽を聴くのを知ってるし、むしろフォーリミのGENのほうが後追いで、感覚としてはフォーリミの人ではなくて、めちゃくちゃいい友達なんです。そこで、この曲を誰か一緒にやりたいなって思った瞬間「これはGENじゃね?」って思いました。だから、バンドとはまた違うんだけど、これはこれで彼の素が出てるんじゃないかと、思います。

――既発曲をアルバム用にリミックスした向井太一さんとの“ゲリラ”、永原真夏さんとの“ウルトラジェンダー”と、迎えるメンバーの出自の幅も、あっこゴリラさんならではで魅力的です。

GENみたいに、曲がほぼ完成している状態でお願いするパターンもあるし、「ふだんやってることとはぜんぜん違うだろうけど、一緒に作ってみない?」って声をかけることもあるんですけど、ようるすに「せっかく同じ時代に生きてるんだからやってみうようぜ、楽しいじゃん」ってことで、思い浮かんだ人はけっこう躊躇なくサラッと誘っちゃうんです。向井太一とかはまさにそんな感じで。

――“ゲリラ”はあっこゴリラさんにとって、大きな曲だと思うんですけど、いかがですか?

そうですね。いちばん多くの人に知ってもらってる曲ですし、私の思う『GRRRLISM』にも合ってたんで、入れたいなって。今回、音楽という角度からのリリックで、作品のテーマにせまっているのはこの曲だけなんですよね。「文脈も最高なんだけど、子供の頃に換気扇から聴こえた音とか最高じゃね」って。ヤバいものはヤバい!

――「ゲリラ」という言葉の使い方の妙があって、メロディーがキャッチーでダイレクトに入ってくるポップな魅力もありつつ、いろんな要素の組み合わせが個性的。すごいタイミングで「向井太一、歌うま!」、みたいな。

わかる! 私が入るとオルタナ色強くなっちゃうし、向井太一とやるなら、もうちょっとストレートに彼の歌を活かすようなメロディーとか展開になりそうなものを、ある意味いびつですよね。

――そういう独自の折衷感覚が癖になるんですよね。あっこゴリラさんとトラックメイカーの方々、そしてゲストのみなさん、このチームだからこそ成せる業。これって、Tempalayとの作曲とレコーディングについては話していただきましたけど、基本的にどこまで狙ってるんですか?

ほぼ完全に感覚ですね。だから綿密にやれちゃう人がすごいなって、思います。地味に嫌いなコード進行とかはありますけど。

――なるほど。まだまだこれからどんな曲が飛び出してくるのか、楽しみです。

さっき「やりたいことは3枚分くらいある」って言いましたけど、ほんとに山ほどあるんで、それを同じ時代を生きている人たちと、ラフに組んでどんどん作っていきたいですね。

あっこゴリラ インタビュー|『GRRRLISM』で描いた抑圧からの解放とは? akkogorilla-7

Text by TAISHI IWAMI
Photo by Naoto Kudo

RELEASE INFORMATION

『GRRRLISM』

2018.12.5発売
初回生産限定盤(CD+DVD) AICL-3607~8 \4,000
通常盤(CD) AICL-3609 \2,800

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EVENT INFORMATION

あっこゴリラ GRRRLISM ONE MAN TOUR

2019年2月8日(金) at 名古屋アポロベイス
OPEN 19:00 / START 20:00
チケット:オールスタンディング 前売2,800円(税込み/ドリンク代別)
お問い合わせ: アポロベイス052-261-5308
一般発売日:10月20日(土)

2019年2月9日(土) at 梅田Shangri-La
OPEN 18:00 / START 19:00
チケット:オールスタンディング 前売2,800円(税込み/ドリンク代別)
お問い合わせ: 清水音泉06-6357-3666
一般発売日:10月20日(土)

2019年3月26日(火) at 渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 18:30 / START 19:30
チケット:オールスタンディング 3,500円(税込み/ドリンク代別)
お問い合わせ: クリエイティブマン03-3499-6669
一般発売日:2019年1月26日(土)10:00~

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あっこゴリラ

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