——おもしろいですね。そういった意味でも今で言うとアウトローの方になっていくのかもしれないですね(笑)

新しい価値観なんすよねとにかく。で、誰よりもそういった事を今作に収録の“Your Party feat. JAYʼED”という曲で早く提示したかったんです。俺がこの曲を重要に思っている理由は、俺とかは高校生のときにインターネットと出会ったけど、今の若い子は生まれたときからインターネットがあったと思うんです。彼らにとってインターネットってフレッシュ、というものではなくて当たり前のものになってくると、「インターネット離れ」っていう時期が成長する過程で必要になると思うんですよ、また戻るだろうけど。そのフィーリングをいち早く曲にしたかった。インターネット依存している事に対する文句っていうことではなくて、新しいフィーリング、考えを曲として落とし込めたので、是非色々考えながら、この曲は聴いてほしいです。

——興味深いですね。“サーフィン feat. JAYʼED”という曲が今作にはありますが、過去には“サッカー (feat. JAY’ED)”という、自身のこれまでのライフスタイルを書いた曲がありますよね。

サッカーもサーフィンもカタカナで、どちらも「feat. JAYʼED」で、もうシリーズもんだろっていう(笑)。“サッカー (feat. JAY’ED)”は確かに俺のラップ人生を例えていて、本当はラップスターになりたかったのが、それがなれなくて、ミックステープっていうちょっと違うゲームで勝ち上がっていく事を、サッカー選手を挫折して、フットサルで勝ち上がって、またサッカーに引き抜かれるというように例えたんだけど。“サーフィン feat. JAYʼED”は自分のラップ人生というよりかは、新しく来るであろう大きな波を感じていて、その波にのるために俺は最新フローを磨いて、どんな波が来ても俺が一番に乗ってやる、っていうような未来への期待をサーフィンに例えた曲ですね。おそらく、今の自分のヒップホップシーンでのポジションってのが結構孤独なんですよ。だから“サッカー (feat. JAY’ED)”の頃考えていた「シーンに入りたい!」みたいな気持ちではなくなったのかもしれないですね。

——続いて、今作の中で最もヒップホップ度数の高い“McLaren”についてお伺いしてもいいでしょうか?

この曲は良いPVができたんですよ。制作段階では、俺の第一希望は「F1レース」だったんですが、結局できなくて(笑)。それでゲームを作ろう、と。日本のプロゲームチームDetonatioNにも参加してもらって、e-sportsをテーマにしました。

AKLO / McLaren

結果的にすごくフレッシュになって。F1のレース上でやっていたら、俺がやりたかっただけみたいな感じで終わりそうだから良かった(笑)。しかもアルバムの中でもワンループのハードな曲で。それをピックして映像はメジャー感ある感じでできたのは良かったですね。

——車の「McLaren」と「捲られない」、とダブルミーミング的に使って曲のタイトルとしているのが、ヒップホップ的でスゴくいいなと思いました。 “McLaren”や“サーフィン feat. JAYʼED”、前作MVでも自転車が出ていたり、AKLOさんの音楽を聴いているとスポーツと親和性が高いな、と思いました。それはラップの技術をひたすら磨いていく姿勢がアスリートっぽいなという印象もあるんですけど。

確かに。例えば“サーフィン feat. JAYʼED”を作ったときもリンクしたんですよ。自分のラップするスタンスが。今ヒップホップのブームみたいなものが来ている中で、まだこんもんじゃないっしょと。それが、大きな波が来たときの為にスキルアップしていかないといけないサーファーの気持ちとリンクしたんですね。そうやって自分の気持ちがスポーツにリンクしますね。だから “サッカー”を聴いていて、「いつもカラオケで歌っています!」って言ってくれる人が実はJリーグの選手でいらっしゃるんですが、そういうのはすごく嬉しいですし、俺が例えた話だけど、本当にやっている人がフィールしてくれるんだっていうのは嬉しいですね。

——歌っていうのはどうしてもご自身のフィジカル部分に依るっていうのもありますよね。趣味でスポーツって何かやっていたりしますか?

普段は自転車が趣味で。ピストバイクなんですけどこの間も皆とグループライドして。走り方が普通の自転車と違って、上半身が鍛えられて、面白いです。

——AKLOさんって今までオーソドックスな「セルフボースティング」っていうラップスタイルをやってこられて、やっぱり今作でもスタイルは健在で。切り口やトピックを色々工夫して新しい聴かせ方をしてくれるんだなと思いました。やはりスタイルに関してはこれからも変わらずですか?

“McLaren”書くときに、1回の集中だけで書けたんですね。気分的に沈んでいたのも通り越してテンションめっちゃ高くなって、ゾーンに入った事によって書けた曲なんですけど。ここにたどり着いたときの快感って半端じゃなくて。この曲って俺にとっては出す前に成功しているんですよ、よっしゃー! って。だから俺ってその為にラップやっているって思ったんですよね。

——自身で楽しみながらゲームをクリアしていくみたいな快感に近いんでしょうか。

そうですね。やっとだ! やっと本当に書けたなと。今までちょっとでも気が沈んでいると、「俺こそが王冠ジャストにフィット」なんてラインは心情的に出てこないし、嘘だなって思っちゃうんですけど、それを出せるぐらい、最後まで押し上げられるモードに入れる。それが重要なんですよね。

——先ほどの、スポーツ選手が試合前に聴くって言うのはスゴいわかります。モチベーションを上げていくというか。

そうですね。自分を持ち上げる。登場人物がほとんどいなくて。沈んだ状態から上がる状態まで、自分で持ち上げていく内容なので。誰かに頼って誰かに相談してとかではなくて。自分の頭の中で色んな事を紐解いていって出口を探していく。そういう強さが本当の強さだと俺は思っていて。それが自分の生活の中で実際に起きていたから、孤独なんだけどその中から自分でブチアゲていくみたいな。それが生きていくスキルみたいな。

——おお~とてもいい話が聞けました! この勢いでリリース後にはツアーもありますよね。

東京は赤坂ブリッツなんでね。前にJAYʼEDくんのワンマンで参加した事があって、滅茶苦茶気に入ったんですよ、スゴイ見やすくて音もよくて。前作の時点から是非やりたいなっていうのがあったんですけど、今回は遂に赤坂ブリッツで出来てすごい楽しみです。バンドでやろうと思っています。

——それは楽しみですね。では最後に読者にメッセージをお願いします。

日々やっている事が、後で離れてみると幸せだったなって思うかもしれないけど、今やっている事からはみ出したいっていうのがあって。それが本当に幸せだったかというのは、はみ出てみないとわからない。何かはみだしたい人がはみだしていく際に、どうしてもスゴイ精神的な強さが必要となされていくと思う。そういう人のBGMになってくれたら幸いかなと思います。

【インタビュー】孤高の天才ラッパーAKLO。最新作で“枠からはみだした”彼の進化に迫る music160525_aklo_1

EVENT INFORMATION

AKLO Outside the Frame Tour

2016.08.03(水)
OPEN 18:00/START 19:00
東京・赤坂 BLITZ

2016.08.06(土)
OPEN 18:30/START 19:00
大阪・Shangri-La

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RELEASE INFORMATION

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text by Yu Nakazato