2015年にリリースした“Faded”が全英週間シングル・チャートや全米ホット・ダンス/エレクトロニック・チャートでトップ10入りを果たすと、以降も北欧のプロデューサーらしい美しいメロディや壮大なサウンドスケープを持った楽曲を多数リリース。3大EDMフェスでのパフォーマンスなども経験しながら、彼が「Walkers」と呼ぶ黒いマスクとフードを身につけたファンを各地に増殖させていくという、ユニークな活動を続けてきたイギリス生まれ、ノルウェー育ちの21歳のEDMプロデューサー、アラン・ウォーカー。彼が3年越しのデビュー・アルバム『Different World』を完成させた。

この作品は8曲目の“Interlude”を境に全編が大きく2つのセクションに分かれており、前半に最新曲を、後半にこれまでの人気曲を収録することで彼の3年間が表現されている。新木場スタジオコーストとZeppなんば大阪での公演が即日ソールドアウトとなり、急遽東京での深夜公演も追加されて盛況となった12月末の来日時に、デビュー・アルバムの制作風景を聞いた。

Interview:アラン・ウォーカー

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――“Faded”が話題になった2015年からデビュー・アルバム『Different World』の完成までに3年間かかりましたね。その中でどんな変化を感じていますか?

この3年間は自分にとってのすべてと言えるもので、アーティストとしても人としても、自分を発展させることができた期間だったと思う。3年間の間にアーティストとしての自分を確立していくことができたし、3年かかったからこそ、今回のアルバム『Different World』は過去の自分と、今の自分との両方が反映された作品になったんじゃないかな。

――あなたの場合、同じように黒いマスクやフードをつけてくれるファン=「Walkers」がアノニマス的に増殖していくのを経験した3年間だったとも言えそうです。

うん、このアイディアはもともと、「誰でもウォーカー・ファミリーになれるよ」という意味ではじめたものだったんだ。僕の音楽を聴いてくれる人たちも一緒になって、アラン・ウォーカーの軌跡を辿ってもらいたいと思った。最初は誰にも知られていなかったし、誰も参加していない状況だったものが、インターネットを通じてアノニマス的にどんどん広がっていく様子を体験できたのはとても嬉しいことだったよ。

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――おそらく、EDMシーンに多い「スーパースターDJ」的なものとは異なる発想ですよね。

スペイン語の言い回しで「Mi casa es su casa(=僕の家は君の家)」という言葉があるんだけど、それと同じで、僕の場合は「一緒に活動を広げていく」「色んな人を迎え入れたい」という気持ちが強いんだ。

――つまり、誰でも“アラン・ウォーカー”に参加できる、と。

そう。今の時代、僕は「自分が排除されている」と感じている人がすごく多いと思っていて。だから、「一緒に/共に」活動することって、僕にはすごく重要なことなんだ。色んな人がウォーカー・コミュニティの一員として、僕の音楽を共に楽しんでくれて、コミュニケーションを取れるような関係性でいたい。「Walkers」のコミュニティが広がっていくことには自分と同じ格好をしたミニオンがどんどん増えていくような感覚も少しあるけど、何よりも、僕の音楽に共感してくれるファミリーがどんどん増えていくような気持ちなんだ。

――すごくインターネット/クラウド的な感覚ですよね。あなたのキャリア自体も、最初はネット上でアノニマス的に複数人が楽曲にかかわる作業をもとにはじまったものでした。

やっぱり、それが僕のルーツだから、ウォーカー・コミュニティにも似たようなストーリーが生まれたんだと思う。音楽をはじめたとき、インターネット上で色々な人たちが僕を迎え入れてくれた。だからこそ、僕も音楽を通して色々な人を迎え入れたいと思っているんだ。

――今回のアルバム『Different World』では、前半に新曲が、後半にこれまでの代表曲がまとめられています。この全体の構成は、どんな風に考えていったんですか?

それは単純な話で、新しくできた新曲を一番に聴いてもらいたかったんだよ。古い曲をいくつも聴いてようやく新曲に辿り着くのではなくて、僕の今の興味が反映された新しい曲を早く聴いてほしかった。アルバムの全体の方向性については、作りはじめた時点ではまったくノー・アイディアだったよ(笑)。僕はアルバム制作と並行して3~6か月おきに新曲を作り続けていたんだけど、発表したもの以外にも、いい曲になる可能性を秘めているけれども「まだ出来ていないな」と感じる曲の断片がたくさんあった。その中で「これは世に出してもいい」と感じられる曲のストックが徐々にたまっていって、アルバムとしてまとめられるぐらいの曲数が揃ったのが、ようやく今だった、ということなんだと思う。とはいえ、今の時代、音楽はストリーミングベースに変わっているわけだし、アルバムを作っても聴いてもらえるかどうか正直不安だった。でも、実際にリリースしてみたら、多くのウォーカー・ファミリーが作品を手にしてくれたから、出してすごくよかったと思っているところなんだ。

――制作中、特に印象的だった楽曲を挙げるなら?

スティーヴ・アオキと一緒に作った“Lonely(feat. Isák & Omar Noir)”かな。この曲はツアーで上海から北京に向かう4~5時間の電車の旅の間に最初のデモができた曲だった。その頃からユニークでクールな雰囲気の曲だったけど、2年後にようやく完成して今回日の目を見ることになった。

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――どんなイメージから曲が生まれていったのか詳しく教えてもらえますか?

この曲を作ったときは……うーん、正直自分ではよく分かっていないんだけど(笑)。新しいウォーカー・ミュージックを作って、自分の音楽を次のレベルに持っていきたい、という気持ちだったと思う。これまでの曲と似たようなメロディや曲調、スタイルを繰り返すのではなくて、まだ試したことのない雰囲気のものにしたかった。それでゲーム音楽っぽい要素を加えていったんだ。スティーブには、プロダクションの面で色んなアイディアを加えてもらった。彼は才能溢れるクリエイター/プロデューサーで、EDMシーンでは伝説級の人でもある。彼と一緒に作業する中で、この曲が何度も話題に持ち上がってきたんだ。特に彼はこの曲のメロディを気に入ってくれていて、曲の構成について手助けをしてくれたよ。

――タイトル曲の“Different World(feat. K-391, Sofia Carson & CORSAK)”はどうでしょう?

この曲は僕とK-391(アラン・ウォーカーが影響を受け、過去曲でも共作しているノルウェー拠点のアーティスト)と一緒に作った曲だけど、もともとは彼がYouTubeで曲を作っていく過程を映した動画があって、それがいいなと思っていたんだ。とても楽しそうに、制作過程自体を楽しむような雰囲気だった。そこから、彼と共作するようになって……。今回は、彼と作業しているところに中国からCORSAKも参加してくれて、彼とも一緒に曲を作って、歌詞を書いて、さらにソフィア・カーソンが加わってくれた。この曲は、地球の環境問題、汚染問題についての曲。今人々は、地球が耐えられる以上の資源を日々消費してしまっているし、地球を治す活動もある一方で、それよりも多くの場面で、この星を壊してしまっている。そういう人々の意識をもっと高めたいと思ったんだ。人として重要なことだから、声を大にして、小さなものから大きなところへと広げていければいいなと思った。コミュニティの力を使って「違う世界(=Different World)」を作っていきたい、と思ったんだ。

――それがアルバム・タイトルにもなっているんですね。自分自身が3年間の間に、小さなものが大きなものへと変わっていく経験をしたからこそかもしれません。

そうだね。この3年間は、世界中の色々な場所に行くことができて、コーチェラのような大型フェスにも出ることができて、日本にも来ることができた。日本は美しい国だよね。今回の来日では初めて大阪にも行ったよ。夜のネオン街もすごく好きだ。日本の「Walkers」にも会えたし、スーパーハッピーだよ。そもそも、僕は活動をはじめた当初は、自分が世界中を回って音楽を届けられる日が来るとは思ってもいなかった。でも、この3年間で音楽はユニバーサルな言語だということ、言語の壁を越えて理解できるものだということを感じた。「音楽を通して世界をひとつにできるんじゃないか?」って。実際、大勢の人がひとつになる姿は素晴らしいものだと思うんだ。インターネットがあれば、何だって可能なんだよ。

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RELEASE INFORMATION
ALAN WALKER | アラン・ウォーカー

『Different World | ディファレント・ワールド』

●配信
発売中(2018年12月14日)
全15曲
https://SonyMusicJapan.lnk.to/AW_DWi 

●国内盤CD
発売中(2018年12月26日)
全18曲(ボーナス・トラック3曲)
初回生産分のみロゴ・ステッカー封入
解説・歌詞対訳付
SICP-5937 / 2,200+税

●輸入盤CD
発売中(2018年12月21日)
全15曲

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