初のライブDVD『0.7』のレコ発公演となった二度目の渋谷公会堂ライブも完売御礼。次作(具体的には音源)はいつのリリースになるのかと期待が高まる中、春の訪れとともに、amazarashiから新作の便りが届いた。
『ねえママ あなたの言う通り』は7曲入りのミニアルバム。今作を聴いていると、切迫した緊張感はあるものの、どこかポジティブな印象を受けるのだ。もしも、以前の秋田が絶望的な状況から信じようとする“未来への期待”を歌っていたとするならば、いま彼が歌っているのは、“そのままでいいんだよ”と不特定多数の「君」の背中を押そうとする応援歌。その一方では、《他人ではなく 面目じゃなく 自分の為に今は歌いたい》と宣言する” 風に流離い”の一節のように、自分を肯定したいという秋田の原動力は根底にある。つまり、何らかの影響を受けて、彼の視点が変化しているように感じるのだ。たぶんそれは、amazarashiを支持するリスナーたちがもたらしたものだろう。音源やライブを通じて、秋田が不特定多数の「君」の存在に気付かなければ、『ねえママ あなたの言う通り』は生まれなかったのではないだろうか。
今回も前回に続き、秋田がメールインタビューに答えてくれた。ライブDVD『0.7』リリース以降の出来事を振り返り、amazarashiのこれからについて語ってくれた。
Interview:amazarashi
amazarashi – “ジュブナイル”
――前回のインタビューから続く質問ですが、『ねえママ あなたの言う通り』のリリースに至るまでには、初の映像作品『0.7』のリリース、『0.7』のシネマライブ、二度目の渋谷公会堂のライブ、3つのトピックがありました。それぞれを振り返ってみて、何を思いますか?
『0.7』はライブDVDだったんですけど、その他に地元や東京での映像を撮り下ろしたんですが、撮影自体が新鮮だったので楽しかったです。自分の中でamazarashiを振り返る作業だった気がします。僕の現在位置を再確認したというか、色んな過去を背負って今amazarashiをやっているんだ、というのを再確認できました。シネマライブは中々ライブに行けない場所の方にもamazarashiを見て欲しくてやったんですが、僕自身は現場にいなかったのでどうだったんでしょう。楽しんでもらえたら嬉しいんですが。渋公はやっぱり大変でしたが、技術的なものも含め、課題が沢山見つかったのでよかったと思います。楽しかったです。
――ここからは新譜について聴かせてください。amazarashiはこれまで、必ず収録曲のタイトルをアルバムタイトルに命名してきました。今作では、はじめて収録曲(“性善説”)の歌詞の一節をアルバムタイトルに使っていますが、なぜ今までと異なるアプローチを選んだのでしょうか? また「ねえママ あなたの言う通り」と、単語ではなく文節とした理由も教えてもらえますか?
タイトルはいつも簡単に決めちゃうんですが、今回もそうでした。始めは『性善説』にしようと思ってたんですが、それだと仰々しいし全体のカラーが堅くなる気がして、別なものを考えていて「ねえママ あなたの言うとおり」という言葉を見つけました。とても曖昧だけど色んな意味にとらえられるし、収録曲全てに当てはまる良いタイトルだと思います。
――ミニアルバムには制作者の表現したい世界観がフルアルバムよりも凝縮されると思いますが、その意味で『ねえママ あなたの言う通り』は、amazarashiの作品の中でもかなり刺のある印象の作品です。ただ、刺と言ってもリスナーを突き放すものではなく、秋田さんの歌詞の語調にこれまで以上の力強さを感じるものなのですが、ご自身にとっては、どんな作品になりましたか?
僕も刺のある作品にしようと思って作って、実際そうなったと思うんですが、出来上がってみて以前までの刺々しさとは違うなと思います。昔の曲は「未来はきっと良くなる」という希望だったんですが、今回のは今現在から過去を振り返って「どんなに酷くても何とかなる」みたいな希望に変わったんだと思います。僕自身の視点の変化に気付きました。
――“風に流離い”の中に《他人ではなく 面目じゃなく 自分の為に今は歌いたい》という一節がありますが、決意表明の意味合いを持つ曲のように感じました。1曲目に置いた理由と「流離い(さすらい)」という表記を選んだ理由を教えてください。
この曲が出来た時に、次のアルバムに絶対入れようと思っていて、そこから今回のアルバムについて考えはじめました。この曲をリリースしたいが為のアルバムでもあるので一曲目にしました。現時点での僕の人生の歌です。「風に流離い」というフレーズは母音が“ai”で韻を踏む言葉を考えててふと出てきただけなんですが、どこに辿り着くか分からないままフラフラ歩いている感じが、今の僕にピッタリきたんだと思います。
――“ジュブナイル”は不特定多数の「君」の背中を押す応援歌のような響きがあります。ファンやリスナーとの接点がなければ作れなかった曲のように思えるのですが、何がきっかけで生まれたのでしょうか?
ファンレターをもらうようになって、漠然としていたリスナー像がはっきりしたからだと思います。色んな夢を持っていて、それに悩んだりして、そういう人達が思ったより沢山いて、僕自身の昔の姿と重なる部分もあって、というのが初めのきっかけでした。ほとんど自分の体験を歌っているんですが、この曲で重要なのは「君ら」という視点だと思います。
――今作には“春待ち”と“僕は盗む”と、ポエトリーリーディングの曲が2つ収録されています。例えば“僕は盗む”と“パーフェクトライフ”の《完璧な人になりたくて なりそこねたよ なれないけれど》から歌詞の関連性を感じるように、ポエトリーリーディングの曲には、前後を繋ぐ役割があるのではないでしょうか?
ポエトリーリーディングの二曲は最後に作りました。曲間を繋ぐインタールードの役割です。曲の余韻とか期待感を煽るような意味でもあるんですが、歌詞自体も緩やかに繋がるように意識して作りました。
――今回も東名阪を中心にレコ発ライブを予定していますが、ツアーに向けた意気込みを聞かせてください。また今後の活動に関連しますが、ご自身の暮らす青森県を含めて、全国のライブハウスやホールにライブ活動を拡大してみたいという欲求はありますか?
とても気合いが入ってます。楽しんでもらえるものにしたいです。全国でライブはやりたいです。青森でのライブももちろん。
――amazarashiのファンにとって、秋田さんの表現が心の拠り所になっていると感じています。彼らの声は楽曲制作に影響しますか? またファンやリスナーとの繋がりが見えてきた今、表現者としてどうありたいと考えているのかを教えてください。
楽曲制作に影響はあると思うんですが、それを特別意識するのもなんか不自然な感じがするので、今まで通りドライな感じでやれたらなと思います。リスナーは好きなら買う、良かったらライブに行く、くらいの気持ちでいいと思います。僕も周りに流されずやっていきたいと思ってるので。
text&interview by Shota Kato[CONTRAST]
Event Information
amazarashi LIVE TOUR2013
ねえママ あなたの言う通り
2013.05.31(金)@渋谷公会堂
OPEN 18:00/START 19:00
SOLD OUT!
2013.06.08(土)@大阪なんばhatch
OPEN 18:00/START 19:00
ADV ¥4,500/DOOR ¥5,500(1ドリンク別)
2013.06.09(日)@愛知ダイアモンドホール
OPEN 18:00/START 19:00
ADV ¥4,500/DOOR ¥5,500(1ドリンク別)
Ticket Information
大阪:ぴあ(Pコード:189-240)、ローソン(Lコード:57963)、イープラス
名古屋:ぴあ(Pコード:187-521)、ローソン(Lコード:46043)、イープラス、TANK
Release Information
2013.04.10 on sale! Artist:amazarashi Title:ねえママ あなたの言う通り Sony Music Associated Records 初回限定生産盤:AICL 2527~2528/¥2,100(tax incl.) 通常盤:AICL 2529/¥1,800(tax incl.) ★初回限定生産盤にはクリアスリーブ+12面折りジャケット+リリックステッカー+DVD(2012/01/28@渋谷公会堂 LIVE映像 3曲)付き! Track List:CD Track List:DVD初回限定盤 |