――“Wide Eyed”はジョシュ(・ディーケン)が作曲、ボーカルを担当しましたね。ボーカルの振り分けに関してはどういった風に決められるのですか??
エイヴィー:基本的には曲を書いた人だね。でも『サング・トンズグ(04)』の時のようにノア(パンダ・ベア)と僕の声色の特性を考えて振り分けるような事もしたけど、本作に関してはもっとライブを意識して、ハーモニーを最小限に抑えてリード・ボーカルが際立つようにしたかったんだ。それでライブ感をもっと出したかったから特に振り分けたりはしなかったよ。ジョシュ(ディーケン)が“Wide Eyed”を書いたから、彼が歌ったっていうだけなんだ。あと、僕らの場合は、例えば僕がひとつのメロディを作ったとして、あとは各人がどういう風にそれを聴こえるか、インプットするかっていう部分にそれぞれ自分なりに突き詰めていく作業なんだ。ノアはノアのメロディとかリズム・パターンを書いていくし、ブライアン(ジオロジスト)は自分のだけのメロディを書いて行くんだ。誰か一人が物凄く明確に強いイメージを持っているなら別だけど、基本的にはそれぞれがそのメロディに対して独自のアプローチで曲を形作っていくんだよ。
ジオロジスト:でも時々難しいのは“Wide Eyed” で言うと、音楽的にはハマっているメロディとかキーがあっても、作曲したジョシュ(ディーケン)の頭の中にある世界観では、それがハマっていない場合もあったりするんだ。だから基本的には曲を変に作り込み過ぎず、出てきたアウトプットには素直に行くようにするんだ。
――10曲目“Pulleys”や11曲目“Amanita” は特に民族音楽を彷彿させていましたが、皆の中でオリエンタル的志向になるキッカケは何かあったのでしょうか??
エイヴィー:“New Town Burnout”もそうだけど、多分僕らがいつも聴いてきた音楽からの影響なんじゃないかな。
ジオロジスト:あと日本に良く来ているからじゃないかな(笑)。そもそも日本の昔のサイケデリックなバンドにたくさん影響受けてるからね。メロディのチョイスっという点ではよりかは、フラワー・トラベリン・バンドとか裸のラリーズとか、ボアダムスズとか、昔の日本のレコードはすごい聴いてきたからね。あとはピープルっていうオリエンタルで伝統的な音楽を演奏する日本のバンドも大好きだったね。
エイヴィー:僕にとっては2つ重要なレコード・レーベルがあって、<Ocora>と<Lyrichord>っていうのがあって。どっちもエスニックのシリーズとかあったり、中古の品揃えが最高なんだ。普段からCDやヴァイナルを買う時は、良くワールドコーナーへ行くんだけど、そこでこの2つのレコード・レーベルはチェックするし、近年は特にベトナムの民族音楽だったり、日本のも良く聴いたね。他にも<Sublime Frequencies>とかもチェックするね。メロディっていう点でもそうだし、構成っていう点でも刺激を受けたけど、共通して言えるのは理解出来ないっていうところだと思うんだ。あまりに異国すぎて理解できなかったり、何故このメロディをチョイスしたのかっていう時に、その背景に伝統的な歴史とか文化、ルーツがあるっていうのを感じた時とか本当にインスパイアされるね。逆に僕らアメリカ人の場合はそういった伝統的な歴史や文化、ルーツっていうのは希薄な部分もあったりするから凄い刺激を受けるんだ。
――また、今作ではパンダ・ベアが久しぶりにドラム・キットに戻ったり、ジオロジストがサンプラー以外にもキーボードを弾くようになったりと、『センティピード・ヘルツ』はアニマル・コレクティヴにとっての「原点回帰」と新たな「チャレンジ」なんだと感じました。制作にあたってインスパイアされたアーティストや作品、出来事などを具体的に教えてください!
エイヴィー:僕はいつも色んな事にインスパイアされているよ。音で言えばノア(パンダ・ベア)のドラムはクンビア(南米コロンビアのラテン音楽)とかラテンのパーカッションからインスパイアされたし、60年代後半のサイケデリックなロック音楽からもインスパイアされたね。特にエレクトロニックスを多用した音楽だね。初期のピンク・フロイド、フィフティー・フット・ホースやホワイト・ノイズとか。
ジオロジスト:僕はシルバー・アップルズだね。高校生の時に本当に良く聴いたね。シルバー・アップルズには凄い影響受けた。
エイヴィー:後、本作に関してはラジオ周波数とエレクトロニックスを混合したような音楽だったり、フィールドレコーディングの音楽とかにインスパイアされたかな。いつもそういったものには影響は受けるんだけど、今までなかったような方法で自分達にとっても新鮮に聴こえるようなものを作ろうと思って制作したかな。
――アニマル・コレクティヴはライブで真っ先に未発表の新曲を披露し、それらをブラッシュ・アップしていきながらアルバムとして完成させる…という手法を取ってきているかと思います。レコーディングすることでそれらの楽曲は一つの「終わり」を迎えるわけですが、その決定はどんなタイミングで下されるのでしょうか?
ジオロジスト:今はもっとオープンに考えているかな。ひとつのバージョンで終わりを迎えるというよりかは、もっと変容していく様に色んなバージョンがあっても良いと思うようになったよ。この前の<TAICO CLUB’12>でも“We Tigers”を演奏したけど、この7年で色んなバージョンが生まれたしね。確かに前は昔の曲は二度とやらないって決めていたけど、昔の曲をもう一度探求して新たな発見をしていくのも面白い事に気付いたんだよ。僕らにとってもファンにとってもそれで楽しめるなら最高なんだろうし。だから今はピリオドを打つっていうよりか、今現在の感情とリンクするかしないか、っていうだけなんだろうね。例えば『メリウェザー・ポスト・パヴィビリオン(09)』の“Brother Sport”とか“Summertime Clothes”とか今演奏出来るのは『センティピード・ヘルツ』との世界観にフィットするから<TAICO CLUB’12>演奏した時みたいに、セットリストに組み込むのは違和感はないんだ。でも“My Girls”は単純に今の世界観にフィットしなくて、あのメロディをやってしまうとムードを壊してしまうように感じたんだ。だから“My Girls”は終わりを迎えた訳ではなくて、今はただ単にフィットしないから演奏しないだけなんだ。でもいつかフィットする方法を見つけたとしたら、演奏するかもしれないね。
エイヴィー:あとよく皆で言っているのは、ライブで何度も演奏していくうちに、この曲が次の次元に到達したかどうか? っていう事なんだ。何回も演奏していくうちにその曲の次の次元が見えてくるっていうか聴こえてくるようになるんだけど、そこまで楽曲が達した時にレコーディングをするんだよ。
――グッゲンハイム美術館のイベントや『ODDSAC』など映像作品とのコラボレーションを行ってきましたが、今後一緒にコラボレーションをしたい作家などはいますか??
エイヴィー:あの経験は本当に素晴しかったよ。グッゲンハイムでのイベントにしろ、どうしてもああいった作品を制作する場合、僕らは完璧主義なところもあるから、音楽意外の部分でも凄い心血を注いだし、大変だったけど凄い実りがあったね。また絶対にやりたいね。
ジオロジスト:エイヴィーの妹アビー(ポートナー)も最高だったね。昨年夏から良く一緒にコンサートのフッテージとかステージのインスタレーションとかアートワークとかも手掛けてくれているんだけど、他にもブラック・ダイスがやってくれたVJとか映像でのコラボとかも最高だよ。だから他のアーティストとのそういう作業は大好きだし、やり続けていきたいね。
――昨年5月には<All Tomorrow’s Parties>のキュレーターに抜擢されていましたね。ヒップホップからミニマル、ダブ、ノイズなどのアーティストはもちろん、ブックやシネマのチョイスなど、あなた達の音楽的ルーツとバック・グラウンドが垣間見えるラインナップだったのではないかと思っているのですが、あの経験は直接的にせよ間接的にせよ、『センティピード・ヘルツ』のコンセプトに何か影響をおよぼしましたか?
ジオロジスト:あの時にはもうほとんどの曲を書き終えていたから特にはなかったけど。
エイヴィー:今まで影響を受けてきたもの、思い入れのあるもの、自分達にとって刺激になるものを紹介したから、それを改めて再確認したっていう点では影響はあったかもね。
ジオロジスト:特にテーマを相談した訳ではないけど、僕らがお互いに出会った頃から今までに育ってきた時に影響を受けたものを発表したから、アニマル・コレクティヴというものが何かをガイドする機会になったと思うよ。
――それでは最新作リリース後の今後の予定を教えて下さい!
エイヴィー:ツアーもたくさんしていきたいし、日本に早く戻って来れるようにしたいね! あと映像とのコラボに関してはもっと積極的に出来るようになれたらいいね。
ジオロジスト:今はまだそんなに決めてなくてアメリカと欧州のツアーは決まっているけど、これからもっと決まって来るだろうから、色々楽しみだね。
――最後にあなたの夢をお聞かせ下さい!
エイヴィー:個人的にはメンバー皆もそうだけど、やりたいと思った事をやり続けていけたら最高だね。あとはアニマル・コレクティヴに関してはアイデアが尽き果てたと感じるまで、どんどん続けていきたいね。
ジオロジスト:素直に今は、もう夢を生きているような気持ちだから、夢はこれをこのまま続けていく事だろうね。
――ありがとうございました!
Release Information
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