――中尾さんと藤田さんとの演奏が楽しいという話がありましたけど、いまART-SCHOOLのメンバーは理樹さんと戸高さんの2人になって、作品のリリースとライブを経てきた中で、以前と今のバンドの違いをどう捉えていますか?

一音一音の説得力ですかね。それは明らかに前とは違うし、中尾さんはプロデューサー気質があったり、勇さんはアーティスト気質があったり、トディもプロデュースをやっているから、4人とも俯瞰的な視点で物事を見ることが出来るんですよ。アレンジとかがしやすい。その上で僕はプレイヤーとして尊敬しているけど、それは上手く弾けるということではなくて、一つひとつのプレイに何かあるんですよね。同じフレーズを弾いていても、明らかに違うというか。僕はモーサム(MOSOME TONEBENDER)もCrypt Cityも大好きだし、今のART-SCHOOLに無くてはならない二人ですね。

――バンドのオフィシャルメンバーが4人から2人になったことで、背負ってきたバンドの重みも変わりましたか。

それはむしろ自由になったというか。前のメンバーとレコーディングしていても、仲が良い悪いではなくて、音楽的にそうじゃないよねという部分で疲れてしまっていたというか。前のメンバーと『BABY ACID BABY』の曲を激しくやろうとしたんですけど、全く仕上がらなかったですよね。個人的にもいわゆるエレクトロビートを取り入れたいとか、打ち込みを多用するとか、そういうアプローチをせざるを得なかった。逆に今は、この良い状態をどこまでキープできて、広げていけるのかなという楽しみ方になりましたね。

ART-SCHOOL- “Helpless”

――『The Alchemist』を聴いて思ったのは、重厚感があるサウンドなのに、クリアでマイルドなニュアンスも含んでいて、聴いていても不思議と耳が疲れないというか。ノイジーだけど、ノスタルジックやメランコリックな響きもあって、絶妙なバランスで成り立っているロックだなと感じていて。

仰ったとおり、そういう部分を狙いとしていて、バンドとしても今はすごくいいと思うので、ぜひ聴いてほしいですね。僕は普段、ラジオもテレビも全然触れないし、雑誌もほとんど読まないから、誰が流行っているとか分からないんだけど、『MUSICA』でライターとして書かせてもらっている中で、日本人の若いバンドを聴く機会が多くなったんですね。でも、大前提として良いバンドはたくさんいるんですけど、だんだん腹が立ってきたというか(笑)。

――どんな部分にフラストレーションを感じるんですか?

音が全部同じに聴こえちゃうんですよね。CD-Rで焼いても良い音は分かるじゃないですか。でも「なんでこんなに歌がデカいの?」とか「なんでこんなに音がドンシャリ気味なの?」とか、どう考えても編集されていて。僕が聴きたいのは人間の音であって、そういう編集されたもの、あるいはコンプレッサーで抑揚感が無くなったものではないから。コンプレッサーは意図して掛けてあればいいんですけど、全曲それだと意図というよりは知識じゃないのかなとも思ってしまって。無理矢理ドーピングしてムキムキになった音を聴いているような感覚に晒されていて、自分が録音するのであれば、そういうものは絶対に避けたいというか、絶対に顔が見えるものでありたい。じゃないと、表現というものに対する意味が見出せなくなっちゃう。だから、音のこだわりというよりも、人が透けて見えるかどうかということへのこだわりかもしれない。

――お話をしていて、ART-SCHOOLがバンドとして、理樹さんがアーティストとして、一回りしたんだなという感じがするんですね。それもただ経験値を積み重ねただけではなくて、バンドを始めた頃のわくわく感を取り戻したんじゃないかと思っていて。

バンドを始めた頃ってわくわくしてたかな…(笑)。全然売れませんでしたからね。

――じゃあ、その前はどうですか?最初に楽器を持った時に近いんじゃないかと。

いや、わくわく感ではないですね。モテればいいなとは思っていましたけど(笑)。僕自身はギターを弾いていても、それが恥ずかしくて皆に隠してましたからね。楽しいというよりかは、ギターをやらないと自分が駄目になりそうだったというか。ギリギリの選択だったと思うんです。高揚感という意味では、今はバンドを組んだ当初よりもありますね。

――若いバンドという言葉が出てきたのも印象的でしたし、理樹さんはもう35歳になるんですよね。

そうですね(笑)。例えば、僕はきのこ帝国の大ファンで、OGRE YOU ASSHOLEもすごく前から好きだし、andymoriもPeople In The BoxもTHE NOVEMBERSも好きだし、好きなバンドが結構いるんですよね。あまり考えたことはないですけど、常に自分はリスナーの視点でいたいなというか。単純に音楽のファンだから、きのこ帝国の新作を聴いて、やっぱりすごくいいなと思ったし、そこに先輩後輩の関係はなく、ただ音楽として素晴らしいなということですよね。

Interview&text by Shota Kato[CONTRAST]

Event Information

ART-SCHOOL presents 「KINOSHITA NIGHT 2013」
2013.03.23(土)@SHIBUYA-AX
OPEN 17:15/START 18:00
ADV ¥4,500(ドリンク代別)
LINE UP:ART-SCHOOL/THE BACK HORN/tricot/DJ:細美武士(the HIATUS)

2013.03.24(日)@SHIBUYA-AX
OPEN 17:15/START 18:00
ADV ¥4,500(ドリンク代別)
LINE UP:ART-SCHOOL/BIGMAMA/0.8秒と衝撃。/DJ:細美武士(the HIATUS)

Ticket Information
チケットぴあ(Pコード:189-757)、ローソン(Lコード:74646)、イープラス
問い合わせ先:DISK GARAGE(050-5533-0888)

NO NUKES2013
2013.03.09(土)@Zepp DiverCity
OPEN 12:00/START 13:00/CLOSE 21:30
ADV 1階立見1日券 ¥5,000、1階立見2日通し券 ¥9,000、2階指定1日券 ¥6,000
問い合わせ先:DISK GARAGE(050-5533-0888)

ART-SCHOOL SHORT CIRCUIT TOUR 『The Alchemist』
2013.05.09(木)@大阪 梅田シャングリラ
LIVE:ART-SCHOOLワンマン
※サポートメンバー:ベース中尾憲太郎・ドラム藤田勇(MO’SOME TONEBENDER)
OPEN 18:30/START 19:00
ADV ¥3,800円(ドリンク代別)チケット発売:04.06(土)から
問い合わせ先:夢番地(06-6341-3525)

2013.05.10(金)@名古屋 ell.FITS ALL
LIVE:ART-SCHOOLワンマン
※サポートメンバー:ベース中尾憲太郎・ドラム藤田勇(MO’SOME TONEBENDER)
OPEN 17:30/START 18:30
ADV ¥3,800円(ドリンク代別)チケット発売:04.06(土)から
問い合わせ先:サンデーフォークプロモーション(052-320-9100)

2013.05.17(金)@東京 LIQUIDROOM
LIVE:ART-SCHOOLワンマン
※サポートメンバー:ベース中尾憲太郎・ドラム藤田勇(MO’SOME TONEBENDER)
OPEN 18:00/START 19:00
ADV ¥3,800(ドリンク代別)チケット発売:04.06(土)から
※年齢制限:3歳以上チケット必要
問い合わせ先:ディスクガレージ(050-5533-0888)

Release Information

2013.03.13 on sale!
Artist:ART-SCHOOL
Title:The Alchemist [Limited Edition]
キューンミュージック
KSCL-2199
¥1,800(tax incl.)

Track List
1. Helpless
2. フローズン ガール
3. The Night is Young
4. Dead 1970
5. 光の無い部屋
6. Heart Beat