ASIAN KUNG-FU GENERATIONが、29枚目のシングル作品となる『出町柳パラレルユニバース』をリリースする。表題曲“出町柳パラレルユニバース”は、9月30日から3週間限定全国ロードショー/ディズニープラスで独占配信されるアニメ『四畳半タイムマシンブルース』の主題歌として書き上げられた楽曲だ。

今作には、ボーカル/シンセサイザーにTempalayのAAAMYYYを迎えたWEEZERのカバーソング“I Just Threw Out The Love Of My Dreams”、後藤と喜多がタッグを組んで作曲した“追浜フィーリンダウン”。更に、2008年にリリースされた『サーフ ブンガク カマクラ』の続編楽曲となる“柳小路パラレルユニバース”も収録されており、ボリューム満点の作品となっている。

森見登美彦上田誠中村佑介がタッグを組んだアニメ作品『四畳半神話体系』では“迷子犬と雨のビート”を、『夜は短し歩けよ乙女』では“荒野を歩け”を書き下ろしたASIAN KUNG-FU GENERATION。今作は「過去と現在と未来」が絡み合いながら展開していく物語の主題歌を軸にしたシングル作品ということだが、インタビューを進めていくと、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのバンド史とも繋がる部分が見えてきた。

INTERVIEW:
ASIAN KUNG-FU GENERATION

コラボ三部作に通ずる“生きている喜び──“ASIAN KUNG-FU GENERATIONインタビュー|『四畳半タイムマシンブルース』主題歌 interview220913-asiankung-fu-03
後藤正文(Vo & G)

同時進行する京都の青春、鎌倉の青春、そして横浜の青春

──このインタビューをしている時期が、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの皆さんが夏フェス出演を終えて間もないタイミングということもあり、是非感想をお聞かせください。<SUMMER SONIC(以下、サマソニ)>については、17年振りの出演とのことで、かなり久々でしたね。

喜多 そうですね。<サマソニ>は個人的に遊びに行っていたので、長い間出演していなかったことにびっくりしました。<RISING SUN ROCK FESTIVAL>でのライブも、<サマソニ>でのライブも、現在行っているツアー(※ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022<プラネットフォークス>)で培ってきた今のバンドの良いところが出せたという手応えがあります。セットリストに関しても、いつものフェス向きのセトリではなく、ツアー寄りの選曲をできましたしね。<サマソニ>では、UKバンドに挟まれたタイムテーブルということもあったので、そういう意味でもかなり楽しんで演奏できました。

山田 セトリは大きいステージに映える選曲だったし、<サマソニ>東京編は特に、会場の空気感とフィットした感覚がありましたね。結構コアなセトリだったので、昔の楽曲を聴きたいというお客さん側の想いもあったと思うのですが、自分たちの新しい曲を聴いてほしかったからね。そういう意味では、ライブの良さと併せて届けられたと思っています。

伊地知 ツアーでサポートしてくれている二人(※Achico(Ropes)、George(Mop of Head))と一緒にできたというのも良かったよね。すごく心強かったです。フェスってリハーサルができないんですけど、ツアー前半を終えてステージングも固まってきた状態だったので、ストレスを全く感じることなく本番を迎えられました。

後藤 自分たちがフェスに出られる喜びというのも勿論あったんですけど、主催側のスタッフの皆さんの笑顔を見ていると、こういうフェスにも当然存在する意味があって、誰かの切実な生活であり、仕事であるんだなと再確認できましたね。「仕事だから」と全てが守られなければいけないとは思わないけど、何年か我慢した先に、このタイミングでこうして形になって良かったなと思いました。観客の方たちにとっても「ルールを守りながら、皆で新しいフェスの在り方に向けて、音楽ファン同士考えていこう」という空気を共有しつつ、それを確認する場所になっていると思いますし。なので率直に、こういう場があるということがありがたいなと思います。

──今年のフェスは、再確認の場である一方、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの皆さんにとっては「現在のバンド」を示す場としても大きな意味を持っていたということですね。その上で、最新作『出町柳パラレルユニバース』についてじっくりとお聞きしたいと思います。“出町柳パラレルユニバース”と“柳小路パラレルユニバース”は、メロディは共通ししつつも歌詞が異なる楽曲ということで、これは斬新なアイデアですね。

後藤 江ノ島電鉄の各駅をモチーフとした『サーフ ブンガク カマクラ』というアルバムを2008年に出した際に、全15駅中の10駅分しかリリースできなかったんですよ。そこで、残り5駅分の楽曲を作っていく過程で、今回の『四畳半タイムマシンブルース』というアニメ作品にすごく合うようなアイデアが生まれたんです。この『四畳半タイムマシンブルース』という物語は、京都という街を舞台に、タイムマシンを使いながら色々な青春が同時進行されつつ、実はそれらが繋がっている──という不思議な世界を描いているんですよね。そういう部分でも、京都の青春と、鎌倉の青春と、さらには僕たち自身が経験した横浜の青春が同時進行するというパラレルワールド感を、“出町柳パラレルユニバース”と“柳小路パラレルユニバース”の構成や歌詞の違いで表現できたら面白いんじゃないか? というふうに考えて、制作しました。

山田 僕は、作品の京都感と鎌倉のイメージは共存できるのか? と疑問を抱いた派だったんです。曲としてはめちゃめちゃ良かったので、なんとか合致させられたら美しいなとは思っていたんですけど、これまで『四畳半神話体系』や『夜は短し歩けよ乙女』にも関わらせて頂いていたので、作品が持つイメージも分かっていましたしね。なので、最終的に見事なまでに融合できたので、これは素晴らしいことだなと。

後藤 今回の話を進めていく上での一番の障壁は、山ちゃんでした。

全員 (笑)

伊地知 僕はアリ派でしたね。以前『四畳半神話大系』の主題歌をやったこともあって、今回のストーリーがそこと繋がっている作品じゃないですか? 曲調も近いし、これは合うんじゃないかと思いました。実は“荒野を歩け”も、『サーフ ブンガク カマクラ』の続編として採用予定の楽曲だったんですよ。

──え、そうなんですか?

後藤 そうそう。その為にストックしていた楽曲だったんですけど、『夜は短し歩けよ乙女』の話がきたので、手持ちの曲で一番良い曲だったその曲を渡したんです。今回もコンセプト的には、僕の趣味であるパワーポップを全開にすればハマるんじゃないか? と思っていた節はありますね。

──驚きました。“荒野を歩け”然り、今回の“出町柳パラレルユニバース”と“柳小路パラレルユニバース”然り、不思議な繋がりがあるんですね。

後藤 そうなんですよ。何故か分からないけど、どんどん京都に吸い寄せられていっちゃう。何か魔力のようなものがあるんでしょうね、不思議ですけど。

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伊地知潔(Drums)

90年代的な引用アプローチが垣間見える歌詞

──コメントでは“迷子犬と雨のビート”と“荒野を歩け”との繋がりも考えたとありましたが、ここの部分はどのように意識されていたんでしょうか?

後藤 僕はこの3曲を「ラルラルラ三部作」と呼んでいるんですが、「ラルラルラ」という歌唱部分は共通項になっていますね。ああいうポジティブなメロディを歌うというのは、生きていることを謳歌していることにも繋がると思うので、そういった“喜び”というフィーリングは共通させるように意識しました。

──“迷子犬と雨のビート”の《風のない午後を恨むような》というフレーズから、《午後からは街の風になって》という歌詞へ繋がったり、“荒野を歩け”の《「君らしくあれ」とか/千切ってどこか放す》から《君らしく踊ればいいじゃない》に繋がったりしているのでは?と考察していましたが……。

後藤 なるほど。そこまでは狙っていなかったです。でも、フィーリングとしては同じところから持ってきているので、使う言葉が似通うことはあると思います。

──なるほど。あとは「柳」「狸」「出町」「小路」「小町」といった言葉で、“出町柳パラレルユニバース”と“柳小路パラレルユニバース”との繋がりを表現されていますが、これも京都と鎌倉の美しき縁だなと思いました。

後藤 でもここで「狸」を出していることによって、最終的には“狸小路パラレルユニバース”も作らなきゃいけないんですよね。

伊地知 あはは。札幌のね。

後藤 そうそう。まぁ「狸」っていうのはふざけて入れたんですけどね。

──でも“追浜フィーリンダウン”の「追浜」は京浜急行本線の駅名ですし、スケールは着実に広がっている感はありますね。

後藤 喜多くんが作った楽曲に“八景”があるので、そことも上手く繋がっていますよね。あの辺りの駅って、駅メロがミュージシャンの楽曲になっているじゃないですか? どこかの駅でアジカンの楽曲を使ってほしいという気持ちがないといえば嘘になるかな。

喜多 この記事が駅関係の方の目に留まればいいね。

──張り切って周知します(笑)。この楽曲は、後藤さんと喜多さんが作曲を手掛けたということですが、歌唱パートの入れ替わりや、喜多さんパート・後藤さんパートにおける歌詞のニュアンスの違いも面白いなと感じました。

喜多 これは元々、ゴッチ(後藤)から、僕が歌うカップリングを久々に入れたいんだよね、というリクエストがあって書き始めたんです。それを皆で合わせていた時に、「ここはこうした方がいいんじゃない?」という感じでゴッチが仮歌を入れていたんですけど、それを聴いた時に、そこはそのままゴッチに歌ってもらった方がいいなと思って。そこから初のツインボーカル曲として仕上げていきました。

後藤 僕は建ちゃん(喜多)の歌を“ドブ声ファルセット”って呼んでいるんですけど(笑)、僕が歌っているパートは、文字数も多いし、雰囲気的にもそこは建ちゃんじゃないな、と思ったんですよ。あと、歌詞に関しては、一日で書きました。

喜多 オケの翌日には歌録りでしたからね。

後藤 僕、歌詞を書くのがめちゃくちゃ早いんですよ。なぜならば、歌っちゃえば必然的にその歌になると思っているからなんですけど。一言一句完璧な歌詞なんて存在しないと思っていますし、こだわりがない訳ではないんだけど、歌詞に関して“間違ってはいけない”という考えはないんです。自分が書いた歌詞なんだから、録り終えた後でも変えちゃえばいいと思ってますし、歌っていて気持ち良い方を優先するというか。

──なるほど。でも確かに、歌詞の内容的にも、ナイーブになっている部分と《海へ行こう》と開き直る部分とのコントラストを鑑みると、ツインボーカルがぴったりハマっているなと思いました。

後藤 僕らが大学生の頃に初めてライブで演奏した曲がThe Beatlesの“Help!”なんですけど、《ヘルプ!》以降の歌詞は、そこから引用しているんです。なので、分かる人は笑ってくださいという気持ちもあります。

──おぉ。ここでも鎌倉=海とのシンクロのみならず、バンドとしての過去と現在がシンクロしているんですね。引用で言えば、“柳小路パラレルユニバース”には、WEEZERの “Buddy Holly”のフレーズも出てきますし、色々と散りばめられていますね。

後藤 その《BGMはバディ・ホリー/メアリー・タイラー・ムーアはいないけど》のところは僕も気に入っているんです。リフにもWEEZERの“Surf Wax America”の引用も入っていたりして、『柳小路パラレルユニバース』は、そういった90年代っぽい色んな面白引用が随所にあるので、より楽しめると思います。

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喜多建介(G& Vo)

サウンド面に現れるパラレルユニバース

──今後の楽曲に対しても期待が高まります。ここで“出町柳パラレルユニバース”と“柳小路パラレルユニバース”の話に戻りますが、この2曲は、サウンド的にはどのようにして違いを出していったんですか? 分かりやすいところでいえは、アウトロの違いがありますが。

後藤 “出町柳パラレルユニバース”のアウトロは、タイムマシン=時空が歪んでいるという雰囲気を出すために、セブンスコードを入れつつ、サイケデリックさとシュールさを共存させていきました。そこを含めて“出町柳パラレルユニバース”では、途中のエフェクトに関してもサイケデリック感を前面に出しています。他にも、演奏マナーが違いますね。“出町柳パラレルユニバース”は、エフェクトのかけ方やミキシングなどのポストプロダクションを『プラネットフォークス』=現代風の延長線上で行っていったんです。一方“柳小路パラレルユニバース”に関しては、我々が過ごした90年代のオルタナティブ/パワーポップの音楽的手法を踏襲して行いました。なので、実は音楽的な音の処理の仕方が違うんですよ。聴いても分からないところも多いんですけど、作っている側としては、そこの部分はかなり作為的にやりました。

喜多 レコーディングをした時期とスタジオも違うんですよ。“柳小路パラレルユニバース”の方は藤沢の方のスタジオで録って、“出町柳パラレルユニバース”は都内のスタジオで録ったので、音の鳴りも異なりますね。

伊地知 場所と時期の違いにおけるドラムへの影響は結構あったと思います。“柳小路パラレルユニバース”の方はかなり大きな空間で、“出町柳パラレルユニバース”の方は、天井もそんなに高くない場所だったので、音の反響の違いは大きくありました。なので、聴き比べてもらうと面白いかもしれませんね。あと、“柳小路パラレルユニバース”は、『サーフ ブンガク カマクラ』をレコーディングした場所と同じところで録ったんですよ。

──そうなんですか! 時を超えて、同じ場所で続きが作られたというのは、『サーフ ブンガク カマクラ』好きとしてはかなりグっときます。『サーフ ブンガク カマクラ』は全曲一発撮りの作品だったと思うのですが、“柳小路パラレルユニバース”も同様ですか?

伊地知 完全に一発録りではないんですけど、ほぼ同じですね。ドラムとベースは一緒に録って、全体的にもテイクを重ねる回数は少ないです。

山田 ベースは逆に、2曲の中で同じ部分を探っていくというか、共通する要素をあえて残すように意識していました。違う部分と同じ部分が2曲間に散りばめることでパラレル感を演出していく、というところが面白かったですね。

後藤 この曲は、潔にブチ切れながら録ってましたね。なんで邪魔すんだよ! って。まあ、それは俺の勘違いだったんですけど(笑)。

伊地知 そうそう。ブリッジの前の裏返るところね。

後藤 40歳過ぎてもそういう喧嘩はなくならないですね。だれも邪魔しようとなんていないのに、気に食わない演奏をした人の事を「邪魔してる」って言っちゃう(笑)。

──ははは! そういう尖った部分もまた、作品の青春感に繋がるのかもしれませんね。今作にはWEEZERの“I Just Threw Out The Love Of My Dreams”のカバー楽曲が収録されていますが、なぜこのタイミングで、この楽曲を入れようと思ったんですか?

後藤 この曲は、WEEZERのシングル作品『The Good Life』のB面に入っていた楽曲なんです。僕は『サーフ ブンガク カマクラ』に入れられなかった5曲のことを、WEEZERの2ndアルバム『Pinkerton』と掛けて「サーフ ブンガク カマクラ 半カートン」と呼んでいるんです。WEEZERが『Pinkerton』に向かってリリースしていた“El Scorcho”や“The Good Life”などのシングルがめちゃくちゃ良かったということもあって、彼らのそうしたシングルワークを彷彿とさせる方法で。自分たちも『サーフ ブンガク カマクラ』の完成に向かっていこうという意図で、今回カバーしました。AAAMYYYについては、Tempalayで一度アジカンのツアーに参加してもらったこともあって、彼女のソロも大好きだし、以前からいつか一緒にやってみたいなと思っていたので、声をかけさせてもらいました。

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山田貴洋(B & Vo)

“アジカン”25年目の変化

──なるほど。でも、これまでお訊きしたお話を振り返ってみても、今作は『四畳半タイムマシンブルース』の物語同様、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの現在・過去・未来を行き来する作品になっているように思います。

後藤 そうですね。まあでも、綿密な設計をした上で始めた訳ではなく、面白いことがあればそれにどんどん乗っかっていくという行き当たりばったり的な進み方があったからこそだと思いますよ。「よく練られてますね」と言われればポカンとしちゃうし、とはいえ「何も考えていないのによく出来ましたね」と言われればムっとしちゃうので、微妙なところではあると思いますけど。

──結成25周年ということもあるので、バンドとしての総括的な意味合いもあるのかな?と勘ぐってもいましたが、そういう訳ではないと。

後藤 総括感はないですね。というよりむしろ逆で、何をやってもいいよね、という空気感になっているように思います。意味を持たせるとか、何かをしなければいけないとか、そういった概念からは解き放たれているというか。さらに言うとそこに付随して、バンドに対する考え方も変わってきている感覚はあります。大学時代からの友達とやっていることなので、めちゃくちゃレアな関係だと思うんですよ。仕事とも言い切れないところもあるし、<サマソニ>で演奏している時も「これを仕事と呼ぶのは違うかもな、だって仕事がこんなに楽しい訳ねぇもん」と思ったんですよね。音楽っていうのは不思議なものだなと思うし、こういう出会いって人生の中で何回も起きないはずだから、もう楽しんでやることが一番いいなとは思います。なので、作曲に関しては、特に25周年という節目を意識せず、朗らかに、リラックスしながら楽しんでやれています。

山田 もちろん仕事っぽく感じることはありますけど、最近は特に、ステージに立っていて楽しいと思える瞬間が増えてきている実感がありますね。コロナ禍を経ているということもあるんでしょうけど、「仕事」という言葉の枠を超える幸せを感じますね。

喜多 うんうん。ツアーにしてもフェスにしても、大勢の人の前で演奏ができるということに対する喜びは、特に大きく感じるね。

伊地知 バンドの雰囲気はめちゃくちゃ良いよね。でも、フェスに呼ばれるバンドでいなければいけないという使命感は衰えていないですし、まだまだ若い奴らには負けてらんねぇぞ! という気持ちは強くあります。

──そういった良い雰囲気が構築されたと実感したのは、ここ最近ですか?

後藤 ここ数年ですね。コロナ禍もあったからかな? 純粋に、バンドが続けていられてるってすげぇなと思っちゃって。でも、洗練された音楽をやる若いバンドが増えてきたこともきっかけのひとつかもしれないな。それこそ25年くらい前のロックバンドって、限られた情報の中で正解を想像しながら、デタラメのまま世に出ていったと思うんですよ。往々にして間違えているというか。その点、今のバンドってめちゃくちゃ上手い。環境が違っているだけかもしれないですけど、そんな育ち方をした僕たちがここまで続けてこれたというのは、ただただありがたいことだし、当たり前だと思っちゃいけないなと思いますね。

──なるほど。

後藤 『Wonder Future』(※2015年リリース)ぐらいまでは、新しいことをやってくれよ! ってメンバー同士でピリピリしていましたけどね。そういう気持ちが完全になくなった訳ではないですけど、興味の向きが変わったのかもしれないです。その頃は、例えば山ちゃんが、ある日突然びっくりするような必殺技を持ってくることを期待していたんですけど、今は「何が得意なんだろう?」というベクトルで考えられるようになったというか。俺らも40歳を超えましたし、フィジカル強化で勝負するのではなく、アイデアやフィーリング勝負でいこうという考え方になりました。そうなると、バンド内の風通しが良くないとやっていけないとは思うので、今の状態はかなり良いですね。まあそれも、ターニングポイントがあったこその変化ではなく、徐々に変化していったものです。

──その柔軟な考え方に行き着くまでには、25年という年月は短すぎず長すぎず、といった感じだったんでしょうか?

後藤 バンドによるとは思いますけど、それくらいかかるんじゃないんですかね? やっぱり、続けてみないと分からないことってあると思うのでね。

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Text:峯岸利恵
Photo:YUKI KAWASHIMA

衣装協力:
STOF(03-6809-0464)
Lui’s/EX/store TOKYO(03-6452-5544)
CIAOPANIC-TYPY吉祥寺店(0422-27-5865)

PROFILE

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ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアン・カンフー・ジェネレーション)

1996年結成。
後藤正文(vo.g)、喜多建介(g.vo)、山田貴洋(b.vo)、伊地知 潔(dr)による4人組ロックバンド。03年メジャーデビュー。同年より新宿LOFTにてNANO-MUGEN FES.を立ち上げ、2004年からは海外アーティストも加わり会場も日本武道館、横浜アリーナと規模を拡大。
2016年にはバンド結成20周年イヤーを迎え、自信最大のヒット作「ソルファ」の再レコーディング盤をリリースするなど話題を集めた。
2021年には『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』の主題歌、挿入歌を手掛ける。
同年、バンド結成25周年を迎え、今年3月に10枚目となるオリジナルアルバム「プラネットフォークス」をリリース。 5月から全国ツアーを開催しており、9月末からツアー後半がスタートとなる。
後藤が描くリアルな焦燥感、絶望さえ推進力に昇華する圧倒的なエモーション、勢いだけにとどまらない「日本語で鳴らすロック」でシーンを牽引し続け世代を超えた絶大な支持を得ている。結成25周年を迎えてもなお精力的な活動を続けている。

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INFORMATION

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出町柳パラレルユニバース

2022年9月28日(水)
ASIAN KUNG-FU GENERATION
初回生産限定盤[CD+Blu-ray]KSCL-3382~3383 ¥2,420
通常盤[CD]KSCL-3384¥1,650

■収録曲
01.出町柳パラレルユニバース※アニメ『四畳半タイムマシンブルース』主題歌
02.I Just Threw Out The Love Of MyDreams
03.追浜フィーリンダウン
04.柳小路パラレルユニバース

■初回生産限定盤特典Blu-ray内容
ASIAN KUNG-FU GENERATION25th Anniversary Tour 2021 <Quarter-Century> at Zepp Tokyo 2021.11.22

01.十二進法の夕景
02.新世紀のラブソング
03.荒野を歩け
04.スタンダード
05.迷子犬と雨のビート
06.今を生きて
07.エンパシー

【購入特典】
・楽天ブックス:オリジナルアクリルキーホルダー
・Amazon.co.jp:メガジャケ(CDジャケットの24cm×24㎝サイズ)
・「出町柳パラレルユニバース」応援店特典:オリジナルステッカーシート(B5サイズ)

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