早稲田大学のサークルで出会い、卒業後に再び集まって結成された6人組バンド、asobi。2019年の結成から約5年、3人のMC、ギター、ベース、トラックメーカー/DJという若干変則的な編成で多彩なジャンルに跨るポップなサウンドを響かせ、着実にリスナーを拡大してきた彼らが、ついに1stアルバム『JUNCTION』をリリース。WEB CMに起用された“Hurts So Good”をはじめとした既リリース曲とサウンド面での挑戦も光る新曲を混ぜ合わせた多様な構成で、なおかつ全体を貫くストーリーのある、asobiの5年間を詰め込んだ集大成的な作品となっている。

バンド初となるワンマンツアー<asobi 1st album JUNCTION release tour>を控えたタイミングでIsami Shoji(Vo./MC)、荒幡勇樹(Vo./MC)、後藤スパイシー(Vo./MC)、コマツ(Gr.)、三枝(Ba.)、Lainey(トラックメイカー/DJ)の6名全員に集まってもらい、asobiのこれまで、そしてこれからについて話を訊いた。

おそらく、この記事が公開されるのはasobiがツアーの大阪公演を終え、東京公演に備えている頃だろう。ぜひワンマンツアー東京編に足を運んでみてはいかがだろうか。

INTERVIEW
asobi

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──1stアルバム『JUNCTION』のリリースを2日後に控えたタイミングでの取材になりました。現在の心境はいかがですか?

Lainey:やっぱり1stアルバムってことはasobiが結成してから5年間の集大成でもあるので、個人的にはすごく特別な想いがあります。5年やってここまでできたという一つのターニングポイントだし、すごく大事な機会だなと。具体的には、去年の年明けに今発表されているワンマンのハコを抑えて。そこに向けて逆算的にアルバムをこの時期に出したいということで、ここ1年は集中してアルバム、そしてワンマンに向けて動いてきました。それくらい長期的にアルバムやライブを見越して活動するのは初めての経験でしたね。

──締め切りを決めつつ、長い時間集中して制作したんですね。

Isami Shoji:新たにアルバムに入れる曲を最初に録ったのがいつだったか僕は忘れてしまったくらい前で、こんなに時間が掛かるんだなアルバムって、という感じです。

Lainey:ずっと頭の片隅にはあったことをやっと形にできた感覚です。

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三枝(Ba.) / Lainey(トラックメイカー/DJ)

──asobiは大学のサークルのメンバーで結成されていますよね。結成当時と比べてメンバー間の関係性に変化などはありますか?

荒幡勇樹:友達のノリのようなものはずっと根底にあって、そんなに変わっていないと思います。自分とShojiが一番年下なんですけど、他の年上のメンバーに敬語を使わなくなったりはありますけど(笑)。いっしょにものを作っていくプロセスの中で友達としてだけだと見えてこない良い面や悪い面、長所も短所も見えて。音楽性も含めてパーソナリティが全然違う6人だったりもするので、それぞれに対するコミュニケーションの取り方がより深くわかってきたりという変化はあるかもしれない。

Isami Shoji:基本は仲良いからね。毎回ライブ終わりはみんなで飲みに行って楽しくやってますし。

荒幡勇樹:なんなら音楽の話とか全然しない。プライベート寄りの話をすることの方が多いんじゃないかな。

──より親密になっているんですね。バンド名にもなっているように“遊び”の意識がこのバンドにはあると思います。結成当初と比べてリスナー数の増加という面でも環境は大きく変化しているように感じますが、何か意識的な面でも変化はありますか?

Isami Shoji:初期は下ネタの曲とか作っていたんですけど、それはやりにくくなりました(笑)。いや、それがやりたいってわけじゃないんですけどね(笑)。

Lainey:それはそうだね(笑)。僕が個人的にトラックメイカーとして最近意識しているのはジャンルをちゃんと勉強することです。asobiっていうバンドがどうやら聴かれているぞっていうときに僕ら誰もジャンルのことや近いとされるアーティストについて知らなくて。でも僕らの曲が入っているプレイリストや、最近キテるアーティストなどを聴いている中で、ジャンルがどうやって形作られているのか、勉強しようと思うようになり。それをかなり意識的にやったのが個人的には今回のアルバムかなって。この曲はこういうクラブミュージックのジャンルから流用してきているんですよってちゃんと言語化できる。そして実際にDJの仲間内で「今回はリキッドファンクやってたね」と声を掛けてもらったりもするようになって。きっとそれはasobiを始めてリスナーも含めていろんな繋がりができていないとわからなかったことです。最初はノリと勢いでやっていた部分も大きかったので。

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荒幡勇樹(Vo./MC) / Isami Shoji(Vo./MC)

──そもそもボーカル/MCが3人いて、ギター、ベース、トラックメーカー/DJという編成は珍しいですが、その点は結成から5年間で意識することはありましたか?

Isami Shoji:Laineyさんが「トラックを作ったからみんな上に乗っけてみてくれ」ってことで最初に集まったから。そのときすでにドラムがトラックに入っていたし、ドラマーがいないのが当たり前だったというか。

Lainey:最初はフリースタイルラップバトル的なイメージだったんです。もともとサークルの仲間なんですけど、サークルの合宿とかで誰もフリースタイルラップなんてできないけど、そういう遊びをやっていたなと思って。ビートを作ってみたから、それをバックに遊んでみようよ、スタジオで、っていうところから始まってたまたま今の形態に落ち着いたんです。

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──特に楽器隊の三枝さんとコマツさんは人が叩いていないビートへのアプローチという点で苦労することはありませんでしたか?

三枝:最初はやっぱりサウンド全体がのっぺりしてしまう難しさはあったんですけど、まずLaineyさんのビートがグルーヴィーというか、細かいリズムがたくさん入るようになったことでやりやすくなっていきましたね。あと3人それぞれのボーカルの特性がより鮮明に見えてきて、それに合わせた弾き方やフレーズを考えるようになったので、昔よりもドラムのいないバンドとしてのノリは良くなってきていると思います。

コマツ:ギター的にはどうしても音域的にトラックと被ってしまう部分があって。特に低い音の弦を使うと他の音とぶつかってしまうところもあり、フレーズ作りは難しいのかもしれません。ただ、その隙間を見つけながら曲に合わせてフレーズを構築していくことは個人的には楽しくて、ずっとその感覚は変わっていないですね。逆にグルーヴの根幹が人の叩くドラムじゃないので、何でもできちゃうところもあって。エフェクターをいろいろ使ってみたり、ギターをトラックの一部として捉えたり、あえて肉体的な弾き方を試してみたり、そういうトライアンドエラーができるのはこの編成ならではの部分もあるのかなと思います。難しいけど、そこが楽しいんです。

Lainey:打ち込みの音と楽器の音を混ぜる方法は近年だと多くのアーティストがトライしていることだと思うんですが、この編成はトレンドというか、「今ガラージがアツいよね」「ジャージークラブがキテるよね」という話になったとき、やってみようと思えばパッとすぐに出力できることも良さだと思うんです。だからこそ至るところからリファレンスを持ってこられる。

メンバー6人それぞれが起点になっていると感じる曲

──自由度の高さが良い方向に働いているんですね。ここからはせっかく今回6人全員に集まっていただいているので、アルバムの収録曲も含め、それぞれにとって起点になっていると感じる曲を教えてほしいです。

Isami Shoji:起点になっているかわからないけど、“All In My Head”が好きです。僕の中ですごく上手くできた、メロディーや構成が自分の中で綺麗にハマった気がしていて。あんな感じの曲をもう一度作りたいなと思う曲ですね。

Lainey:asobiは僕かShojiのどちらかがデモを持ってきて、Shojiが持ってきたときはそれを僕の方でトラックアレンジすることが多いんですけど、“All In My Head”はShojiが持ってきたデモの段階では今までにないくらい作り込まれていたんです。だからShojiの中で細部までイメージがはっきりしていたのかなって。

Isami Shoji:作り込むのに自分はすごく時間が掛かっちゃうんだけど、そこまでやってみるとそのあとの道筋がすごくはっきり見えている気がして、すごく作りやすかった。Laineyさんもそこに上手くハメてくれて、相乗効果で良いトラックになったなと。テーマのようなフレーズを繰り返したりするのはずっとやりたかったし、小ネタも散りばめられていて、すごく好きな曲です。

asobi – All In My Head [Official Music Video]

──後藤さんはいかがですか?

後藤スパイシー:バンドとしては“Empty Room for Two”と“Hurts So Good”が軸にあるなと思っていて。ちょっとチルなサウンド感というか。僕はアルバムを作る中でシンプルってワードをしきりに言っていたんです。できるだけシンプルにやろうっていう気持ちが僕の中にあって、そういうものがリスナーに受け入れられてきた感覚があるんですよね。“GREAT JOURNEY”は僕がイニシアチブを取ってやったんですけど、そういうシンプルさを出した曲になっているかなって。さっきのShojiが言った“All In My Head”のような入り組んだ曲も別軸であって、いろんな曲が書ける、選択肢があるのもasobiの強みだと思うので『JUNCTION』っていうアルバム自体に、僕らが持っている彩り、選択肢を全部含めて、そこでバランスがとれた、全部集大成的なものになったと思います。

Lainey:“GREAT JOURNEY”は日本のチルなポップス、コロナ禍あたりで流行っていたあれを全面に打ち出してみたりもした曲ですね。

asobi – Empty Room for Two [Official Video]

asobi – Hurts So Good [Official Music Video]

──後藤さんの場合、ソロでやっている音楽とasobiの音楽の棲み分けは5年の間に変わってきましたか?

後藤スパイシー:そうですね、僕はasobiのようなオシャレなポップスを聴いてこなかったんですけど、asobiの曲を作るに当たって聴くようになって、すごく面白いなって思ってます。

──ちなみにオシャレなポップスというと具体的にはどういった?

後藤スパイシー:星野源やTENDREですかね。asobiの作り方としては、例えば初期の下ネタの曲だったりとか東京の文化を面白く言う曲があって、その頃は自分の持っているものを出そうと思っていたんですけど、今は聴いたものを全部出していこうというか、asobiをやっている中で知った曲を出していこうという感じになって、最近はすごく楽しくなっていますね。音楽の幅がめっちゃ広がったと思います。

Lainey:すごく大きかったのが、アルバムで“GREAT JOURNEY”という後藤がメインの曲、“Dim Lightという荒幡がメインの曲を作れたことですね。そうなったときに後藤は後藤でディレクションするとなると今までになかった後藤なりの言葉でいろんな人に働きかけてこういう曲を作りたいと、すごく意思が見えたし、荒幡も荒幡でこういう曲にしたいという想いがしっかりあって、彼はDTMもできるから自分でトラックに手を加えたりもしていて。それぞれのアプローチがあって、結果的に曲としてまとまったことは、バンドとして大きかったですね。いつものShojiと自分がイニシアチブを取るやり方とは違った感覚で曲が出来上がっていく感覚が新鮮だったし嬉しかったです。

後藤スパイシー めちゃくちゃ意思あった!(笑)。コマツにも水面下で個人的に連絡したりして。

Isami Shoji:スパイシーの「イシ」は意思ってことね。

一同:……。

Isami Shoji:ちょっとカットでお願いします。

一同:(笑)

コマツ:“GREAT JOURNEY”のギターはサビ前までいっしょに作ったんだよね。

三枝:そうなんだ!

──“Dim Light”は荒幡さんが率先して制作されたんですね。

荒幡勇樹:自分がメインで作ったんですけど、asobiの曲の中でも歌詞はめっちゃ暗いっていう(笑)。今もTシャツ着ているんですけど、自分はXGがめっちゃ好きで、LaineyさんがXGの“LEFT LIGHT”をリファレンスとしてトラックを作ってきてくれて、すごくラップしやすいビートで作ってくれていたので、そこから自分がメインでやりたいなと思って作ったんです。たぶん自分が作ってきたラップの中では一番中身としても身が詰まった感じですし、フロウもこれまでで一番カッコいいと思っているので、注目して聴いてもらえたら嬉しいですね。

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荒幡勇樹(Vo./MC)

XG – LEFT RIGHT (Official Music Video)

──XGのTシャツ、気になっていましたが純粋にファンなんですね。荒幡さんにとって起点になっている曲は他にありますか?

荒幡勇樹:バンドのポイントになっている曲は“Hearts Collide”だと思っていて。基本は16小節でラップを作るんですけど、この曲は24小節で。増やして作らせてもらっているんです。歌とラップの中間のようなことをやりつつ、早口でラップしていたり、コーラスを重ねていたり、自分のラッパー、あるいはシンガーとしての色がうまいことまとまっているというか、いろんなバリュエーションで24小節埋められたなと。あと、聴いてくれた人に「車のCMっぽい映像が目に浮かんできます」と言ってもらえることが多くて。情景が浮かびやすい曲だったのかなって。それが提示できたことは自信にもなりましたね。

asobi – Hearts Collide [Official Music Video]

──ボーカル/MCがいると、やっぱりライバル意識というか、やってやるぞという気持ちはお互いにあるんですか?

Isami Shoji:めっちゃある……。

Lainey:Shojiはよく言ってるよね(笑)。

Isami Shoji:絶対負けたくない。負けたくないけど、いつも他の2人がすごいの作ってくるからドキドキしていて。一応今はメインボーカル的な立ち位置だけど、いつこのポジションが取られるかビクビクしてます(笑)。

荒幡勇樹:あまり比較したりはしないですね。自分は特にラップがメインだし、基本Shojiがメロディーを作って良い感じでサビを作ってくれるんで、安定して「良いじゃん」と思える曲にしてくれるから、その上で自分は好き勝手やらせてもらっています。

後藤スパイシー:荒幡はラップ、ときには歌もできる。だからみんな歌えてみんな強いというか、みんなイケてるから自由でいいなと思っていて。個人的には2つ目のサビを作ろうという意識はありますね。しかも自分は日本語で歌っているので浸透しやすいパートだから、できるだけキャッチーに。

──基本的に日本語を使う後藤さんと荒幡さんはメッセージの部分を担っている意識もあるということですか?

後藤スパイシー:そうですね、最初にShojiが歌詞のテーマを決めるような曲が多いので、そのテーマに沿って日本語で書くということを僕はやっているんですが……荒幡さんは全く違ったものを持ってくる(笑)。

Isami Shoji:俺と後藤は結構テーマを揃えるんですけど、荒幡はそのとき言いたい意見を乗せるんで。リアルなラッパーとして。

Lainey:そこはめちゃくちゃラッパーだよね。

──荒幡さんのラップは社会に対しての視点を含んだリリックも多いですよね。

荒幡勇樹:自分のラップって外の世界に対しての現状について思っていることか、自分の内面のモヤモヤした部分についてかのどちらかがほとんどなんですけど、そのときどきで一番強く思っていることが脂が乗っかって言葉が降りてくるんですよね。今後はプロとしてテーマに沿ったものもしっかりやらなきゃなと思いつつ、今思っていることしか書けないなっていう。

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後藤スパイシー(Vo./MC)

──少し脱線してしまいましたが話を戻して、コマツさんの起点になった曲を教えていただけますか?

コマツ:個人的には“What If”です。僕はみんなのバックグラウンドが違うことが非常に大きなasobiの強みだと思っていて。ベン図でいうと6つの別の円が部分的に重なり合っているのがasobiというイメージで。みんなバラバラだけど、聴き心地の良い音楽が好きという認識や、イケてるものにしたいというのは潜在的な意識が共通していると思うんです。だから自然とまとまっている。その中で“What If”は個人的にasobiの中ではディストーション・ギターを全面に押し出している曲なんです。Shojiが持ってきた弾き語りの録音がベースなんですけど、それの時点ではすごい爽やかで、Laineyがそこにとても疾走感があるリズムを持ってきて、それを聴いた瞬間に一発で歪みで音の壁を作りたい!と思って。今までasobiで歪みをやったことがなかったんですけどね。レコーディングでは初めてアンプを複数使って並べて、マイクの位置を変えたりとトライしました。

それに加えて荒幡くんも普段ラップが多いですけど、かなり歌重視で、ボーカルのパートでもみんな違うアプローチをやっていて。ギターもそれに影響されて付点8分のエフェクティブなフレーズも交えたり。それぞれがルーツや創意工夫を持ち寄りつつも、他の曲と比べても異質な曲なので、こういう武器もあるんだぞと思えた。“Empty Room for Two”や“Hurts So Good”などのアイコニックな曲とは別の文脈で達成感がありましたね。

asobi – What If [Official Lyric Video]

──歪んだギターはコマツさんのルーツにあるものなんですね。

コマツ:僕は普段デスメタルやデスコアをよく聴くんです。自分はもともとベースをやっていて、ジャンルも楽器も違うところからasobi活動が始まったので、逆に僕としては自分に無いものにいろいろ挑戦できる場で、あらゆる挑戦が楽しかった。でもその中でルーツに近しいアプローチができて個人的にはそれも嬉しかったんです。

──三枝さんが起点に感じている曲はありますか?

三枝:僕は“Echoes”という曲です。もともとasobiにはこうしたゆっくりな曲がなくて、で、作ろうとなったのが始まりで。たぶん原型は2、3年前くらいからあったよね?

Isami Shoji:そうだね。いろんなことを試していたときに、一回めちゃくちゃゆっくりな曲をやってみようという感じで俺が出したんだよね。

三枝:で、一回そのままにしていたんだけど、もう一回Laineyさんがアップデートしてくれて。asobiの場合はボーカルが全部乗ってからベースを入れる形なんですけど、“Echoes”はボーカル全員ゆったりとしたフレーズを入れていて、特に荒幡のパートがすごいかっこいい後ろノリで。そこがめっちゃインスピレーションになったフレーズを入れているんです。荒幡はフィッシュマンズが昔から好きなんですけど、それこそフィッシュマンズっぽさも入れたいなとか、個人的には荒幡を意識しながら作っています。

荒幡勇樹:意識してたんだ(笑)。

三枝:コマツは今シンガポールに駐在しているのであんまりコミュニケーションが取れなかったんですけど、その辺のイメージがギターソロのところでもうまく出るように話し合ったりしていて、そこがうまくハマった感覚があって、良い曲だなって。

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──そういった形で別のメンバーから影響を受けることはよくあるんですか?

荒幡勇樹:それこそ“Daisy”のShojiのサビに「oh I」っていうフレーズがあって、それをラップで一部取り入れたりしたことはありますね。

Isami Shoji:あれ良いよね。ああいうことそのあとあんまりなくない? もっとやってよ(笑)

Lainey:身内サンプリングね(笑)。

Isami Shoji:今思うと良いよね。

コマツ:ベースの話をすると“FUYAJO”は三枝くんがバキバキにスラップでカマしているのがめちゃくちゃカッコよくてテンションが上がりました(笑)。

Isami Shoji:感想になってる(笑)。スラップは三枝が自発的に入れたんだっけ?

三枝:そう、まず俺はスラップの曲のコピーとかもやったことないし、スラップできないんだけど、こうやったらスラップかなっていうのを練習してきてレコーディングしたんだよね。

Isami Shoji:珍しい。それこそ“Hearts Collide”は「絶対スラップだから入れろ」って言って、1音ずつ録って貼り付けたもんね。でもこの曲は三枝が自分でやってきて、めちゃくちゃハマってた。

Lainey:“FUYAJO”は構成がすごくカオスで。

Isami Shoji:それが大変だったね。

Lainey:もともとデモが今の最終版に近い構成だったんです、後藤が最初にサビに行って、Shojiもサビを歌って、Shojiのサビも2段階ある感じで、爆盛りのステーキの上にステーキ、その上にトンカツ!くらいの感覚だったんですけど、僕はちょっとポップスの枠を逸脱している気がして、後藤のサビはラスサビ前に持ってきて、いつものようにShojiのサビが定期的にあるような感じに直したんです。でも荒幡は元の構成が良かったと、意見が割れたんです。

Isami Shoji:俺と荒幡 vs Laineyさんだったよね。

Lainey:俺はもっといつも通りの形にしたかった。でも最終的にデモのカオスな方を選んで、結果的にアルバムの中の1曲として聴いて、これでいいなって思いましたね。

Isami Shoji:アルバムの1曲だからあれくらい振り切れたというのもあるよね。

Lainey:開き直ってやったらめっちゃ楽しい!

コマツ:カオスだけどみんなのメロがキャッチーだから、アルバムのリード曲候補になったりしてたよね。

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Isami Shoji(Vo./MC)

──そんな紆余曲折があったんですね。Laineyさんにとっての起点になった曲はどれになりますか?

Lainey:少しズレてしまうかもしれないけど、起点になり得るなと思っているのが“Dolphin Dance”です。さっき話した3人のボーカルのライバル関係やトライしてきたアレンジが、一番まとまってパッケージできていて、asobiらしさも少し残しつつ、今までにやっていないドラムンベースの中でもかなり速い部類に挑戦しているんです。だいたいドラムンベースってBPMが175くらいだと思うんですけど、185あるんで、やたら速いという新しさもあって、しかもasobiって6人いるぞ、ボーカルが3人いるぞっていうのが色濃く出せたんじゃないかなって。これまではボーカルがそれぞれ16小節のブロックがある形が多かったんですが、この曲では細かく8小節ずつで切り替わる箇所があるんです。荒幡がすごくテクニカルかつときどきメロディーとしても良いラップをして、後藤が高音ですごく印象に残る日本語をメロで持ってきて、Shojiがしっかりキャッチーなサビのメロ、ラスサビ前のフレーズで締めていて。それが今の自分たちにできるマックスのクオリティで出せたかなって。“Empty Room for Two”や“Hurts So Good”は僕らのシグネチャーの部分だと思うんですけど、この曲は新しいシグネチャーになり得る手応えがありました。

asobi – Dolphin Dance [Official Music Video]

──『JUNCTION』にはこれまでのasobiとこれからのasobiが詰まっているということですね。他にも『JUNCTION』には“INTRO”、“OUTRO”があり、すごくアルバムらしい作品とも言えます。そもそもアルバムというフォーマットに対してどのように考えていますか?

荒幡勇樹:アルバムというものの捉え方が昔と今でだいぶ違っていると思うんです。昔はもっとアルバムってもっとコレクション的な、iPodの画面にアートワークが並んでいてるイメージというか、誰の何枚目のアルバムの何曲目とか曲の住所が明確にあった感覚で。今はもっと雑多で、プレイリストで知らない曲と出会って、いきなり知らんやつと波長があってすごく仲良くなるみたいな聴き方になっているかなって。自分は、すごく気に入ったものはレコードを買うんです。よりそのアルバム1枚の聴き方としてのハードルの低さはストリーミングでありつつ、それを持つ価値のような意味合いは昔より大きくなっている気がしていますね。何が言いたいかわかんなくなっちゃいましたけど、Laineyさんが“INTRO”と“OUTRO”を作ったのは我々が学生時代に聴いてきたアルバムの聴き方がどこか根底にあると思うんです。

Lainey:僕はm-floが大好きなんですけど、『EXPO EXPO』の、イントロがあってギュワワワワーンとシームレスに“prism”に繋がっていく感じが好きで、攻殻機動隊のサントラのセリフがいろんなところに定位を変えて流れてバーっと流れて、最後ギュッとなって一人一言あって始まるような感じとか。こういうのがあったら自分が嬉しいなっていうイントロを勝手に作っちゃって。じゃあ繋げて“Dolphin Dance”で加速していく感じでっていうそこはもうエゴでしたね。

でも僕は個人的にアルバムを通しで聴かないんです。正直昔もしてなかった。ただ僕の中でバンドを始めてみて大きかったのが、ライブによく来てくれるお客さんって本当にいるんだと実感したことで。僕らはみんなライブハウスに通わない人たちだから、好きなアーティストがいてもときどきライブに行けたらいいなくらいなので。本当にずっとこのバンドが好きで毎回ライブに来てくれるファンの方の存在って僕らからしたらすごくありがたいけど驚きでした。

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Lainey(トラックメイカー/DJ)

Isami Shoji:毎回同じ曲聴いて「大丈夫かな?」ってね。こんなに来てくれるけど俺ら同じ曲しかやってないけど本当にいいの?って思うよね。

Lainey:そうそう、僕もそこまで熱量を注げるアーティストっていなかったから、そういう人たちに向けてアルバムを作るとなったときどうしたらいいんだろうって考えて。正直“INTRO”と“OUTRO”なんて聴かなくていいと思ってくれていいんですけど、俺らのことをすごく好きでいてくれて、ライブにお金を払って来てくれるようなお客さんはきっと通して聴いてくれるだろうなって思ったんですよね。だから“INTRO”と“OUTRO”をつけてパッケージすることはそういうファンの方に対して何か1mmでもお返しができたらという思いが大きいんです。

──ではライブはasobiにとってどういった位置付けでしょうか?

Isami Shoji:ライブは飲み会ってずっと言ってたけど、言って良いのかな?(笑)

Lainey:でも結果そうだよね。

Isami Shoji:自分たちが一番楽しむことによってお客さんも楽しんで欲しいんです。asobiの音楽は「お酒に合う」と言われることも多いので、俺らもそれといっしょになって楽しくお酒を飲みながら音楽ができたらいいな。

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「ずっと応援してくれている人たちが
良かったなと思ってもらえるように」

──初のワンマンツアーはいかがですか?気合い入ってますか?

Isami Shoji:それはもちろん、デッカい飲み会ですよ(笑)。

Lainey:めっちゃいいな、それ。

Isami Shoji:でも本当に今までこんなに一つのライブに対してこんなに時間を掛けて考えたことないから怖いといえば怖くて。今日もインフルエンザとかになったらヤバくない?と思い始めて。こんだけ準備して俺が出れなくて、中止とか怖すぎるから。

後藤スパイシー:大丈夫、そのときは俺やるから(笑)。

荒幡勇樹:後藤は英語の発音良いもんな(笑)。

Isami Shoji:こうやってポジション取られるんです(笑)。

Lainey:個人的にはさっきのアルバムの話といっしょで、ずっと追いかけてくれている人や深くハマってくれている人に対して何ができるかというのは考えていたので、ずっと応援してくれている人たちが追いかけていて良かったなと思ってもらえるように。2023年がasobiとしてあまり動けなかった年で、それがすごくストレスというか、本当はもっとやりたいと思っていたので、待ってくれていた人に、一回ワンマンも延期になっている中で「ワンマンやってください、絶対行きますから」と言ってくれた人に対して一番やれたらいいなって思ってます。

──このインタビューはおそらく東京公演を控えたタイミングで公開されるかと思います。もし楽しみにしていて欲しい演出などあったら最後に教えてください。

Isami Shoji:BONNIE PINKやらないの?

後藤スパイシー:え?

Isami Shoji:BONNIE PINKのカバーの動画を後藤さんが出していて、それが意外とウケているんで、俺はワンマンでそれをやって欲しくて。普段じゃ絶対やらないし、俺らを見てくれている人たちなら面白がってくれるはずだから。チューブトップでね。

A Perfect Sky – covered by 後藤スパイシー / track by Lainey

後藤スパイシー:大丈夫かな?

荒幡勇樹:やらざるを得なくなったね。

後藤スパイシー:やらざるを得ない(笑)。

Isami Shoji:練習しとこうね(笑)。

Interview&Text:高久大輝
Photo:山村優人

INFORMATION

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JUNCTION

2025.1.15
asobi
 
Track List
1. INTRO
2. Dolphin Dance
3. All In My Head
4. FUYAJO
5. Glitter
6. Dim Light
7. Time To Feel
8. What If
9. Echoes
10. GREAT JOURNEY
11. Hurts So Good

TOUR INFORMATION

asobi 1st album JUNCTION release tour

2025.1.18(土)大阪・CONPASS*公演終了
2025.2.1(土)東京・渋谷WWW
OPEN 17:00/START 18:00
TICKET:イープラス

チケットはこちらasobiasobi Xasobi Instagramasobi YouTube