現代日本のシーンを代表するラヴァーズロックシンガー・asuka andoが、今年4月に約6年ぶりとなるニューアルバム『DOUBLE HAPPINESS』をリリースした。バリエーション豊かなリディムに色香漂う歌詞を乗せた楽曲群は、コアなレゲエファンはもちろん、ラヴァーズロックに馴染みの薄いリスナーにも幅広く支持され、ロングヒットを記録している。今回は近年の活動からアルバムの制作秘話、さらには、一人の女性アーティストとして眺める現在のシーン状況やこれまでの歩みに至るまで、じっくりと話を訊いた。
INTERVIEW:
asuka ando
レゲエと深く絡み合うアジアン・トロピカル
──以前からasukaさんのSNSをフォローさせてもらっていますが、常に全国をライブで飛び回っていますよね。
asuka ando(以下、a): や〜、もうホントに。コロナ禍で少しお休みの期間はあったものの、普段は月の半分くらいは旅に出ています。両親からは「鉄砲玉」と言われていました(笑)。もともと旅行が大好きで、プライベートでもよく行くんです。きっちり予定を立てて事務的にモノを進めていくのがあまり得意ではないので、完全フリースタイル。
──2ndアルバムにあたる前作『あまいひとくち』が2018年のリリースだったことからすると、『DOUBLE HAPPINESS』はだいぶ久々の作品になりますね。今話した通りライブはもちろん、シングルも出したりと常に活動されている印象だったので、「もうそんなに経ったのか」と意外な感じもして。
a:実は音源自体、2年くらい前にもうほとんど出来上がっていたのですが、一曲だけMIXがどうしてもしっくりこなくて、それをプロデューサーの松本“ARI”龍一くんにどう伝えたものか考えていたところ、こんなに時間が経っちゃいました(苦笑)。自分的にも何がしっくりこないのかをずっと悩んでいて、それを言語化して伝えるにはどうすればいいかな、と考えているうちにどんどん煮詰まってしまって……。
──それでも松本さんにプロデュースをお願いするのはなぜですか?
a:そうですね、いつも結果的には見事に希望を叶えてくれるので(笑)。だいぶ長いつきあいになってきた、というもあるかな。私の生み出すものに対して信頼してくれている、というのが一番な気がします。
──今回のアルバムでの収録曲で個人的にとても印象的だったのが、シングルでもリリースされていた“好吃”に象徴されるアジア的なモチーフです。
a:10代の頃はなんだかんだ西洋文化への憧れがとても強かったのですが、大人になっていくにつれて徐々に変わってきました。決定的だったのが、数年前に行った台湾旅行。私の親友が台湾に引っ越して以来、何度も足を運んでいるのですが、もう何を食べてもハオチーハオチーでしょ! それ以来どっぷりハマってしまって。この曲も台北から台中へ向かう車内で書きました。台湾で出会う方々もみんなフレンドリーで尊敬できる人たちばかりです。
──レゲエ〜ロックステディのサウンドにこういうモチーフの歌詞が乗るっていうのが新鮮に感じたんですが、他方ですごく自然な感じもして。レゲエ文化の元をたどると、中国系のプロデューサーや音楽ビジネスマンも沢山いたわけだし、そう考えると、余計に含蓄のある曲ですよね。
a:そうですね! キングストンには昔からチャイナタウンがあるし、レーベル〈Aquarius〉のハーマン・チン・ロイのように、シーンの中で重要な役割を果たした中国系の人も沢山いらっしゃるし。あと、全然話飛んじゃいますけど、やっぱり世代的に『らんま 1/2』の可愛くてポップなチャイナ感が大好きでした。あれが自分のセンスの根底にある気がします。
──たしかに、僕らの世代はああいうアニメを通して「アジアン・トロピカル」な感覚を刷り込まれていたところもあるかもしれません。
a:そうですよね。
──先ほど話されていた「観光的」な目線や、「トロピカルな眼差し」という点でいうと、その先駆者として細野晴臣さんという大きな存在がいるわけですが、やっぱり細野さんの音楽もお好きですか?
a:もちろん大好きです。実は私、一時期細野さんとメールをやりとりしていたことがあって。以前、代官山のカフェでお見かけして、ドキドキしながら声を掛けたんです。「音楽をやっているものでして……」とお話したら、お名刺をいただいてしまって。曲のデータをお送りしたら、「ローラ・ニーロみたいな声だね」って言ってくださったんです。そう、嬉しいやら恐れ多いやら。素敵な思い出です。
──アジアつながりでいうと、他にも“Wait Till Dawn”と“わたしが眠っているあいだに”では、タイのレゲエ・ミュージシャンであるGa-piさんが実際に参加して、共同プロデュースを担当していますね。
a:はい。彼が2018年に<朝霧JAM>で来日したとき、目黒のバーで対バンしたことがあって。その時私はARIくんと一緒にライブしていたのですが、終わった後にARIくんがGa-piさんと意気投合して「タイでレコーディングしてみたいな」という話になって。数カ月後には本当に現地に行ってレコーディングしてきたのがその2曲です。Ga-piさんがお住まいのエリアは海辺の街で、そこに自宅兼スタジオのJahdub Stidoがあります。録音はリラックスしすぎちゃうほどの極上体験でした。
──そういう環境で制作するとやっぱりサウンドも違ってきますか?
a:はい。気持ち的な面もそうですが、実際の出音も違うと思います。タイの電圧も関係しているかもしれません。Ga-piさんはヴィンテージの機材など素晴らしいものをスタジオにたくさん揃えていらっしゃって。彼の周りにはミュージシャンを志す若者たちがいつもいて、「この機材はこういう風に使うんだよ」とみんなにレクチャーしていたり。“Wait Till Dawn“に参加してもらったArtchawinさんやNatさんはじめ、素晴らしいミュージシャンも沢山いらっしゃる。レゲエという音楽全般が日本よりもずっと広く聴かれている気がします。「せっかくいい音楽なんだから、ジャンルなんか関係なくみんなで聴こうよ」という良い雰囲気。
日本の場合、レゲエミュージックとなると聴く人が固定されているイメージがありますが、タイにはそういうのが無い感じがします。先日もタイのフェスに遊びに行ったのですが、もともとGa-piさん門下生の人気レゲエバンド「SRIRAJAH ROCKERS」がトリをつとめていたのも印象的でした。
asuka ando – Wait Till Dawn (music video)
──デジタル配信版のアルバムには“好吃音頭(DUB)”も収録されていますね。なぜ音頭のリズムを試してみようと思ったんでしょうか?
a:やっぱり、“アラレちゃん音頭”や“クックロビン音頭”、“電線音頭”も通ってきた世代なので(笑)。あと、大阪の八尾まで河内家菊水丸師匠を見に行ったり、「すみだ錦糸町河内音頭大盆踊り」に好きが高じて提灯を出してみたり、盆踊り文化が大好きなこともあっていつかやってみたいと思っていました。それと、いつもライブで踊ってもらっているダンサーのAYU氏が「“好吃”って、音頭が合うんじゃない?」と提案してくれたのが大きかったです。
──ある時期からレゲエ周辺やストリート系のシーンと盆踊りカルチャーが重なり合っていく流れもありましたもんね。
a:はい。盆踊りって、レゲエのサウンドシステム文化とも重なるところもあるし、いつか櫓の上で歌ってみたいので、こういう曲を出しておいたらふとした機会にお声がかかるんじゃないかと思っていて(笑)。
シャーデーの「あまさ」、そして出会いの記憶
──ラヴァーズロックと他ジャンルの融合ということでいうと、今井美樹さんのカヴァー“雨にキッスの花束を”も印象的でした。以前にも大貫妙子さんの“くすりをたくさん”をカヴァーされていましたけど、いわゆるシティポップ的なものは昔からお好きなんですか?
a:そうですね。当時は「シティポップ」として認識して聴いていたわけではないけれど「火曜サスペンス劇場」など当時のドラマで使われていたような洗練された歌謡曲やニューミュージック全般を好んで聴いていましたね。子供が見ちゃいけない大人のセクシーな部分が反映された曲、のような。今井美樹さんの曲に関しては少し文脈が違って、曲はアニメの『YAWARA!』のOPテーマなのですが、プロデューサーHatayoung氏と「アニメソングをカバー」するのを恒例化していて。今回は自身の婚期とも重なり、選びました。今井美樹さんの曲って、プライベートの恋心を反映していると思われるちょっと危うい歌詞も結構あって、そちらの世界観もすごく好きでした。
──バブル期ならではのOL文化を映し出しているようなところもあったり。
a:はい。あの頃のOLさんの人生を謳歌している感じは当時は子供だったらからよく分かっていなかったけど、それまでの時代の常識からすると確実に新しい女性像の一つだったんでしょうね。
──そのカバーの仕上がりを含め、アルバム全体でこれまで以上に甘く熟した味わいを感じました。以前からasukaさんの作る音楽は「あまさ」が大きなテーマの一つにあると思うんですが、改めてそれはなぜなんでしょうか?
a:最初は特に意識してませんでしたが、「アスキーのサウンドや歌詞はとっても甘いよね」と言われることが多くて。たしかに甘いもの好きかも!と改めて意識し始めたのがきっかけかな。あと、ある時コロンビアのヒップホップのアーティストとお話する機会があって、「君の名前、スペイン語だと『砂糖』(アスカール)だね」と言われて、「ああ!私自身も甘かったのね!」と(笑)。「甘いかどうか試してみる?」くらい返せたらカッコよかったな、とあとから思ったり(笑)。
──甘味にも色々ありますけど、ご自身ではどういう甘さだと思っていますか? やっぱり砂糖系?
a:うーん。どちらかというと、R&Bディーヴァ的な重ためな甘さというよりも、サラッとした耳触りの方が好み。10代の頃、シャーデーの歌声を聴いた時の感動がそのまま自分の基本的な音楽観につながっていると思います。サラッとしながら、クールで甘い感じ……。私、学生の頃はミュージカル部で「声は張ってなんぼ」の世界だったのですが、歌っている方は気持ち良くても、聞いている方が気持ち良くなければ全然意味がないな、と気づくタイミングがあって。何気なく歌っているようでいてすごく深い彼女のスモーキーな「あまさ」に惹かれたんだと思います。声も重要ですよね。
──蜂蜜のようにトロトロの、いわゆる「甘茶系」のイメージとも違う、クールな「あまさ」……。
a:そう。チョコレートを割ったら出てくる甘ったるいプラリネみたいな……ってどっちもトロトロですが(笑)。一口サイズのコンパクトな「あまさ」を、ブリーズを感じながら味わう……みたいなのが好きなんだと思います。もちろん、自分で90年代R&Bのミックスを作っているくらいなので、メアリー・J・ブライジやアン・ヴォーグ、シャンテ・ムーアなど、ゴスペルが根底に感じられるアーティストの歌声も大好き。それでも、シャーデーを初めて聴いた時は本当に衝撃的でした。と同時に、ジャネット・ジャクソンのウィスパー唱法も唯一無二で大好きです。
Sade – Smooth Operator – Official – 1984
──改めてお訊きすると、ラヴァーズロックとの出会いはどんな感じだったんですか?
a:意識し出したのは、Courtney Pine feat. Carroll Thompsonの“I’m Still Waiting”。ですが、最初はオケのデジタル感や、ツヤツヤした雰囲気があまり好きになれなくて。今は良さがわかるようになって本当によかった(笑)。当時はもっと人肌感がある甘いものはないかなと思い、ラヴァーズロックをかけているパーティーに通うようになるんです。そこでFill Calender & Jah Stitch“Baby My Love”やラヴァーズ・ロックコンピレーションシリーズ『RELAXIN’ WITH LOVERS』などで聴くことができる70年代後半のUKラヴァーズロックに出会うことに。歌手としても、ラヴァーズロックのサウンドはR&B的な発声を好まない自分の歌い方にすごくしっくりきたんです。
Courtney Pine feat. Carroll Thompson – I’m Still Waiting
── 一方で今作には“あまいけむり”のようにProfessor. Chinnenさんをフィーチャーしたラガマフィンチューンが収録されていたり、配信版にはそのジャングルミックスである“JUNGLE SPLIFF”が入っていたり、ダンスホールレゲエ以降の要素を取り入れた曲も入ってますね。このあたりのサウンドも当時からお好きだったんですか?
a:はい。もともとダンスホールレゲエとヒップホップを一緒くたに聴いていたので。当時のブジュ・バントンには会いたかったですね(笑)。ジャングルはもちろん大好き。テンポが倍になって戻って来るあの構成がたまらなく好き。
ジャングルやドラムンベースって今またキているので、新旧の曲がフロアでかかるのも嬉しいです。個人的には、RUDEでBADなごりごりのラガジャングルが好き。しかも、Shazamしても出てこないような、謎のプロデューサーものならなお良い(笑)。
──“DUBUKU”や“Cool Smoke”等のダブミックスも最高に気持ちいいですね。
ありがとうございます。JagabeさんにスーパークールなMIXを施していただきました。どのエンジニアの方にもダブバージョンをお願いするときは「なるべくボーカルを残さないでください」とリクエストしています。
──そういえば、asukaさんもお知り合いの河村祐介さんが監修した『DUB入門──ルーツからニューウェイヴ、テクノ、ベース・ミュージックへ』(ele-king books)っていう本がかなり好評らしくて。ダブ、今ちょっとキテる感じがしますよね。
a:ね、そうみたいですよね。嬉しい。
──ダブとはどうやって出会ったんですか?
a:最初はとりあえず名盤とされているものを聴いてみようと思い、ジョー・ギブスが手掛けたアルバム『African Dub All-Mighty Chapter 3』(1977年)を買ってみたんです。でもその頃はダンスホールをバリバリ聞いていた時期だったので、全然良さがわからなくて(笑)。リー・ペリーの『Super Ape』(1976年)も聴いてみたものの、「そもそも、エイプって何、誰?」みたいな感じで(笑)。そこで一旦離れちゃったのですが、後にドライ&ヘビーと出会ってから完全にダブのよさを知ってしまって。今まで漠然と、音の奥行きや配置に興味があったのですが、それが「MIX次第」と、その時ようやく理解できたんです。リトルテンポの存在も大きかった。そう考えると、(エンジニアの)内田直之さんに耳を鍛えていただいた形になります。
──思うに、近頃のDTMだってそうだし、録音と編集を前提にした現代のあらゆる音楽がダブの末裔といえるわけですもんね。恐らく僕らは今、「ダブのパラダイム」にいるっていう。
a:そうですね。音を素材として捉えて、その響きと抜き差し・加工を楽しむ音楽がダブだと思うので、今になって注目度が上がってきているのも自然な流れのような気がしますね。
「あなたという存在は生まれたときからセクシーなのよ」
──ダブの話は、それこそ『DOUBLE HAPPINESS』というアルバムタイトルにもつながってきますよね。このタイトルにはどんな由来があるんでしょうか?
a:これも先ほど話した台湾旅行と関係していて、結婚や春節などのおめでたい時のシンボルとして中華圏で使われる「喜」の文字が二つ連なっている「双喜紋」が台湾の町を歩いているとよく目につきます。たまに「喜」の下の「口」の部分がハート型になっていたり、いろんなバリエーションがあってすごく可愛いんです。その英訳が『DOUBLE HAPPINESS』で。
それと、ライブで度々同じ場所を訪れたり、色々な方々とコミュニケーションを「重ねて」お互いを知っていくプロセスこそが素敵。友達同士でも、たまに会う仲でも、お互いが積み重ねてきた時間の中で生まれる「共通言語」や笑いのポイントって本当に大切で、愛おしい。そういった気持ちも込めてこのタイトルにしました。
──ピンク色のハートが一つの矢で串刺しになっているっていうジャケットのイラストも素敵ですね。さっきの「あまさ」の話にも通じる艶っぽさがあって。
a:今回はジャケット制作を画家である夫:KANAT氏にお願いしていて。それもなかなかモチーフが決まらず模索しまくっていたところ、たまたま夫と二人で台北のちょっといかがわしい場所を歩いている時に目についたものがドンピシャで。それを元に描いてもらいました。幼少の頃からテレビ番組の『独占! 女の60分』のタイトルロゴ含め、ちょっと「ウッフン」要素が入ったオトナっぽい番組に興味があったので、ピンクやパープルもそういうところからインスパイアされています。
──あ〜、なるほど。じゃ、ロマンポルノとかもお好きですか?
a:もちろん大好き!ラヴァーズロックやレゲエで性愛は重要なテーマですし、それを日本の「ウッフン」なカルチャーと重ね合わせて表現したくて。すべての人に、「あなたという存在は生まれたときからセクシーなのよ」と気付いて欲しくて歌っているところもあるかも(笑)。
──歌詞にもエロチックなモチーフが随所に出てきますよね。
a:はい。女性が主体的に発信できるセクシーな言葉選びを心がけています。私自身が経験を重ねてきたからこそ、こういう歌詞も歌えるようになってきたな、という自覚もありますね。
── レゲエ文化と性の話をするのなら、次のことにも触れないわけにはいかないと思うんです。例えばジャマイカのダンスホールレゲエの文化を振り返ってみると、昔から何かといえば女性は差別的な眼差しを向けられて、実際にひどい扱いを受けてきた歴史もあるわけですよね。
今現在、asukaさんがレゲエ〜ラヴァーズロックシンガーとして日本を拠点に活動している中では、そのあたりのことはどう感じていますか?
a:私がいわゆる「日本のレゲエシーン」のど真ん中で活動しているわけではないというのも大きいとは思うんですが、10年前までに比べると今はかなりやりやすくなった気がします。面白いことに、周りの人からも信頼が厚く、イケててカッコいいラガマフィンはハラスメント的なことは当然言いません。むしろ紳士。なので、やっぱりそれは個々人の心の持ち方やスキルにも関係している気がします。
当時ダンスホールの現場で、サウンドのMCが「今夜はカワイイおネエちゃんを連れて帰っちゃうぞ!」みたいなことを言ってて、字面だけだと「ん?」となる場合もあるとは思うのですが、暗黙に共有された空気として、なおかつステージという場でパフォーマンスとして発しているということで、それこそ「ウッフン」カルチャーや、「ビートたけし的なもの」へのオマージュとして色艶のあるコミュニケーションになっている場合も往々としてあるなと。そういうのはどうしても嫌いになれないというか、むしろ積極的に好き。
──繊細な文脈コントロールとそれへの共通理解によって成り立っている一種のパフォーマンスとしてエッチなことを言うのはあり得る、っていうことですかね。
a:そう。逆に、それを無視してデリカシーなくそういったコミュニケーションを取ろうとするから上手くいかなくて、ハラスメント!と訴えられちゃったりするんじゃないかな。そこと「色艶」の違いっていうのはなかなか難しいところだけど……時と場合に応じて確実にあると思います。そう考えると、高度なユーモアや人間的な情緒、粋とは……な話にもつながっていると思います。やっぱり、その人自身にふさわしいスマートな遊び方っていうのがあると思うんですよねえ。
──そういう「スマートな遊び方」ということから連想することでもあるんですが、昔から、特に30代になるとライフステージの変化もあって、現場で遊ばなくなってしまったりとか、極端な場合音楽を日常的に聴くのをやめちゃうみたいなパターンもあるじゃないですか。しかもそれはクリエイターであるか受容側であるかを問わない現象でもあると思っていて。
a:よくわかります、はい。
──その点、asukaさんははじめにおっしゃっていたように常にライブで全国を飛び回っているし、自己表現というか、もっといえばカルチャーと共に人生をすごく生き生きと楽しみ続けているような気がして。どうすればそういう生活を続けることができるんでしょうか?
a:人に偉そうに言える立場じゃないし、ありがちな言い方になってしまうけど、「本当に好きなこと以外は無理してやらなくていいのよ」と、自分にOKを出してあげることかな。私も30代の頃は勤め人をしていたので当然やりたくないことも色々やりましたが、その経験があったからなのか、今になってすごく楽。若い頃より今の方がのびのびやれている気がします。なんというか、いつの間にか日常生活と創作活動が一緒に混じりあってしまったような感覚ですね。あとは、エゴかもしれないけれど、プライベートもアーティスト活動も、周りにいる人達の状況や意見を尊重したいなとふんわり考えていたら、不思議と自分自身のこともうまく回りはじめて夢が叶ってきている、という感覚もあって。
──なるほどなあ。
a:まあ、なんだかんだ言って私はいいタイミングでいい人たちと出会ってきたんだろうなと思いますね。
── 一口に「ライフステージ」っていうけど、当然各々によって違うわけですしね。
a:はい。それと、私はもともと子供を持とうという気持ちがあまりなくて、わりと早い段階で「今回の人生は私自身のために楽しませてもらお!」と思えていたのが結果的には大きかったのかもしれないですね。人生を幾通りか選べたら最高ですが。でもまあ、どちらを選択するにせよ、自分で「こう」と決めて続けていたら、都度色々なことに刺激を受けて充実した人生を送れるのではないでしょうか。
──最後に、これから「やりたいこと」を見つけようとしている若い方、そして「やりたいこと」に邁進している最中の若い方に対してメッセージをお願いします。
a:そうですね……「直感」を信じてください! これに尽きる。自分のことは結局自分が一番わかってるはず。レコ発にも最近のライブにも素敵な若者たちが思いの外たくさん来てくれて嬉しい限りなのですが、私の音楽のどこに魅力を感じてくれているんだろうと気になるし、純粋に今の子たちがどんなことを考えて悩んでいるのかを知りたいので、よかったら連絡ください(笑)。あとは……できるだけいろんな人と付き合って、遊んでみた方がいいと思います。もっとはっきりいえば、美味しいものを食べたり映画を観たり「好みを共有する」感覚でいろんな人と恋をして「深いカンケイ」になってみる。どんなことも、始めてみないとわからないことってたくさんあるんですよね♡
INFORMATION
DOUBLE HAPPINESS
2024.04.20
asuka ando
TRACKLIST:
1. Intro
2. あぶく
3. Wait Till Dawn
4. 好吃 (多重香料版)
5. ゆれるわ
6. 雨にキッスの花束を
7. あまいけむり feat. Professor Chinnen 8. BRBR
9. それなのに
10. わたしが眠っているあいだに
11. DUBUKU
12. Cool Smoke Version
13. JUNGLE SPLIFF
14. 好吃音頭 ((DUB))
15. Romantic Rhodes Dream