一昨年の<グラミー賞>にノミネートされ、飛ぶ鳥を落とす勢いのバンド・オブ・ホーセズが、先日行われた<Hostess Club Weekender(以下:HCW)>で3度目の来日を果たした。日本のステージに立つのは<SUMMER SONIC 2010>以来であったため、3年ぶりと期待を持って会場に行ったファンも多いのではないだろうか。
当日は、フィドラー、アンノウン・モータル・オーケストラ、パーマ・ヴァイオレッツに続き演奏し、ヴァンパイア・ウィークエンドへバトンを渡した彼ら。Qeticでは、その様子を含めた<Hostess Club Weekender>のライブレポートを掲載しており、他のバンドを含めた当日の臨場感を感じ取れるレポートなのでそちらも是非ご一読あれ。
さて、そんな「今」観たいバンドが勢ぞろいした<HCW>だが、バンド・オブ・ホーセズは今回の来日直前に最新作『ミラージュ・ロック』をリリース。本作はザ・ローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリン、ザ・クラッシュなど錚々たるミュージシャンの作品を手掛けてきたイギリスの伝説的エンジニア/プロデューサー、グリン・ジョンズがプロデュースを担当し、ライブバンドとしての魅力を一気に押し上げるものとなっていた。様々なジャンルを消化し、時にエモーショナルに、時に軽快に聴かせてくれる楽曲の数々は、バンド・オブ・ホーセズというジャンルを作り上げたといっても過言ではない。
Qeticでは、そんな最新作『ミラージュ・ロック』をひっさげ<HCW>で来日した彼らにインタビューを敢行! 今回インタビューに答えてくれたのは、ライアン(Key)、タイラー(Gt)、クレイトン(Dr)の3人。今年はアメリカを代表する最大級フェス<コーチェラ>への出演が決まったばかりの彼らに最新作から彼らが追い求める新鮮なサウンドまで色々と聞いてみた。
Interview:Band of Horses(ライアン:Key/タイラー:Gt/クレイトン:Dr)
――<SUMMER SONIC 2010>以来の来日ですが、日本に来てみて何か変化はありましたでしょうか。
R:昨晩の0時近くにホテルに着いたからあまり外に出れてないんだ。だから外は見られてないけれど、確実に前回よりは寒くなっているよ(笑)。オーストラリアから来たばかりだからね。向こうはまだ夏なんだよ。
――寒いですよね~(笑)。昨年は<グラミー賞>にノミネートされた訳ですが、ノミネート前後では、心境の変化や周囲の変化は感じましたか。
C:かっこよくなったよ(笑)。まあそれは冗談として、嬉しかったけれど、トロフィーをもらうというものなので心境の変化とかはなかったね。<グラミー賞>が行われたときにドイツでツアー中だったのだけど、そんな受賞するチャンスがあると思ってなかったので通常通り過ごしていたよ。もし、勝てると思ってたらもっと勝気になってたかもしれないけどね。まあ、僕たちはバンドをやることが好きなので、そのままいつも通りさ。変わっていないよ!
――さて、先日リリースされた最新作について、まずタイトル『Mirage Rock』(Mirage=はかない)とは意味深ですが、どのような思いを込めてこのようなタイトルにしたのでしょうか。
C:アルバムのタイトルを決めたときに、後になってそれが曲とリンクする場合が多いんだ。今回最初に『ミラージュ・ロック』と付けたのはジョークで、ガレージ(ガラージ)で曲作りをしていて、それを「ガラージ・ロック」。そこから「ミラージュ・ロック」ってなって…まあ、ジョークだったんだよ。でも、今になってやっと収録曲と名前がリンクしているっていうのを感じるようになったよ。まあ僕はただのドラマーだからタイトルや歌詞の詳しいことについて、あまりよくはわかんないんだけどね(笑)。
――今作を収録するときにテープレコーディングで臨んだそうですが、これには何か意図はあったのでしょうか。
T:グリン・ジョンズを選んだ時点でそういうアナログな方法を選んだということなんだ。彼自身が、175年間そういう方法を取り続けているからね。まあそれは冗談だけど(笑)。コンピュータも使わないし、それは彼の過去のプロデュースした作品からも分かるよね。そういった意味で今回テープという手段をとったよ。
――それに関連してですが、最近は電子音や電子機器を使用して楽曲を作るバンドも多くなっていると感じますが、バンド・オブ・ホーセズのサウンドはぶれず、新作は特に、生音を重視したロックンロールな楽曲が多いと思います。それについて、御自身ではどう思われますか?
T:まあレーベルから電子音を入れて欲しいっていうような意向とかも特になかったし、グリン・ジョンズのやり方は、ライブの感覚をそのままアルバムに収めるっていうものだったんだよね。そういう余分な機材は全く使わせてもらえなかったんだよ。ペダルすら使わせてもらえなかったぐらい! でも、プロツールスとかを使った音楽が多い世の中でそうやって、生のサウンドを作り出すっていうのはある意味新鮮じゃないかって僕たちも思っていたんだ。コンピュータで何でも直せる時代にそうやって本当の音だけでアルバムを作るっていうのは、目指したかったところでもあるね。
――まさに7曲目に“Electric Music”という楽曲があるのですが、まさか本当に「Electric Music」を作ったのかなと一瞬驚いてしまいました(笑)。歌詞も“Electric Music”というタイトルからは想像できないようなものですが、どのようなコンセプトで作られたんでしょうか。
R:エレクトリック・ギター自体は使っているけど、エレクトロニックな音楽という意味ではないよ(笑)。
C:これはグリン・ジョンズに捧げるというか、喜んでもらうために作った曲だよ。アップビートな曲を彼は嫌がっていたから、今まで選曲する時になかなか折り合わなかった部分があってね。でも、ここまで生なロックならアップビートであっても彼はOKしてくれるだろうっていうことで作ったんだ。彼自身ここまでロックンロールな音は、今までのバンド人生でやったことがないと言っていたよ。まあ、タイトルに関してはそんな深くは考えていなかったね。
――本作は1曲目の“knock knock”がかなりアップテンポな曲調で、今までの作品とは異なる出だしだと感じたのですが、この曲を1曲目にした事に理由はありますか?
C:この新しいアルバムが出たっていうことを盛り上げるためにも、この曲を一曲目にしたね。アメリカでは野球の試合前、選手が登場するときにそれぞれ曲が流れるんだ。会場内にテーマ曲がバーンとね。それと似たような感じで、最初にこの曲をガツンと流して、自分達のアルバムをアピールしたかったんだ。だから何の迷いもなく“knock knock”は1曲目に持ってこようと思っていたんだよ。
――その“knock knock”のミュージック・ビデオは、メインとは別で少し古めかしい番組のようなビデオもありますが、あの映像はなぜ作られたのですか?
T:あれはユタ州出身の友達のジャレットが持ちかけた案なんだ。僕らが動物を狩りに出るっていう設定で、それが一番よかったから選んだんだ。
――すごく面白いミュージック・ビデオで気になっていました(笑)。ところで、バンド・オブ・ホーセズの一部を構成しているカントリー・ロックというのは、アメリカではポピュラーでも日本ではそこまでメジャーではないと感じます。そこで気になったのですが、バンド・オブ・ホーセズの演奏でカントリー・ロックを聴いたとき日本のオーディエンスはアメリカのファンと異なる反応をみせるのでしょうか?
R:あはは、そうだね。毎回アメリカのオーディエンスとのギャップを感じるよ(笑)。
T:まあ、日本には数回しか来ていないので、フェスティバルで演奏しても観客の反応がよくわからない部分があるからなんとも言えないな~。でも、日本ではまだ人気がで出したばかりだし、僕らは自分達のことをカントリー・ロックだという風には認識していないよ。
C:そう、あとで「この曲カントリーっぽいな」って言われると、「ああそうだったんだ」って気付くくらいで、曲を書いてるときやレコーディング中にはカントリーというのは意識していないんだ。結果的にそうなっているんだけれどね。まあ、カントリーというか、僕達に対する日本の観客の反応についてはまだあまりよく分かってないなあ。
――なるほど(笑)。でも、結果的にカントリーっぽくなるっていうのは、幼い頃からカントリー・ミュージックに触れていたからそれが自然に影響しているのかなと思うのですが、アメリカの若者にとってカントリー・ミュージックは身近なものなんでしょうか?
T:まず、カントリーでもグループによって好きなジャンルが変わってくるよ。真のカントリーが好きな人と、カントリーのトップ40にランクインするようなポピュラーなカントリーが好きな人は全く別もので、それでグループが分かれる。それに、住んでいる場所によっても好きな音楽も変わってくるよね。僕らは正にカントリーがメジャーな場所出身だから、影響を受けてはいるかもね。だから、アメリカの若者がカントリーが好きかって聞かれたら、地域によるし、彼らはカントリーというより、純粋にロックが好きなんじゃないかな。そのロックの中の一部がカントリー・ロックで、そのロックっていうのはアメリカンな音楽なんだよ。
この前、友達のアゲインスト・ミーっていうバンドに「君たちは北米音楽だ。」って言われてさ。ブルース・スプリングスティーンやインディーズの音楽が混ざっていたり、全てが混ざっている「北米音楽」を今回のアルバムでも目指していたから、それは言われて嬉しかったね! ロックであったり、カントリーであったり、カントリー・ロックであったり、色々な要素が混ざっていても自分達のスタイルを保っていくっていうのが僕らの目的だからさ。
――最後に、<コーチェラ>ご出演おめでとうございます! 日本でも<コーチェラ>に一度は行きたいと言う人は多いのですが、共演が楽しみなアーティストはいますか??
R:ありがとう!! ブラーとグラインダーマンが楽しみだね!! 彼らと同じ日の出演なんだ。出演者のラインナップが充実しているから何度リストを見ても飽きないし、砂漠の中にフェスしかないのにあれだけ人が集まるなんて不思議だね!! 前回出たのは3年前だけど、楽しみにしているよ!!
Interview&text by Naomi Ise
Release Information
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