今年7月に待望の2ndアルバム『Beatpia』をリリースし、現在はそのリリースに伴うワールドツアーを開催中のビーバドゥービー(beabadoobee)が、<SUMMER SONIC 2022>(以下サマーソニック)出演のために初来日を果たした。

ビーバドゥービーは、今年のサマーソニックでもヘッドライナーを務めた人気ロックバンド、The 1975を擁する音楽レーベル<Dirty Hit>に所属するSSW。またレーベルメイトのリナ・サワヤマ(Rina Sawayama)やノー・ローム(No Rome)らとともにグローバルの音楽シーンの最前線でも躍進しているイギリスを拠点に活動する気鋭のアジア系アーティストの1人でもある。

そんな彼女に最新アルバムの反響を始め、コロナ禍を経て行われているワールドツアーで感じたライブの手応えやライブを通じて実感した自身の成長について、インタビュー。また初来日の印象や今後のアジア系アーティストのグローバルでの活躍の可能性などについても話を聞いた。

INTERVIEW:beabadoobee

beabadoobeeインタビュー|ライブは私をベストな状態にしてくれるもの interview220902_beabadoobee_1

2ndアルバム『Beatpia』リリースから初来日まで

──2ndアルバム『Beatpia』をリリースして、どのような手応えを感じていますか?

beabadoobee 多くのファンが新しい曲を聴くことにすごく興奮してくれていますし、アルバムの評判自体も良くて嬉しく思っています。

──1stアルバム以降は今回の『Beatpia』をリリースするまでにEPやシングルもいくつかリリースされています。それまでの作品と『Beatpia』に対するファンの反応はどのような違いがありましたか?

beabadoobee ファンのリアクションは毎回リリースするたびに違うのですが、今作はこれまで以上に私の音楽をもっと好きになってくれる人が増えた印象がありますね。特に今作はすごくいろいろな曲が入っているので、その分、いろいろな人に楽しんでもらえていると感じています。

──曲を作る時はいつもどんなプロセスで作られているのでしょうか?

beabadoobee ほとんどの場合、まずギターでコード進行を考えてからメロディーを作り、その後に歌詞を考えるというプロセスで作っています。でも、『Beatpia』に関しては、全部がそうだったわけじゃないんです。例えば、サポートギタリストのJacobが持ってきてくれたコード進行のアイデアにあわせて、私がメロディーと歌詞をつけることもあったし、その逆で私が考えたメロディーにあわせて、彼がコード進行を考えるというパターンもあったり。あとは2人で考えることで曲のアイデアが広がっていくということもあったりと、さまざまな曲作りのプロセスを試しました。

──なるほど。今回は自分1人で作曲するのではなく、コライトも試みたということですね?

Beabadoobee そうですね。コライトすることで自分の持っていない歌詞やトラックのアイデアをコラボレーターからもらえることは私にとってもすごく新鮮な経験だったので、リラックスして、自然な感じで曲作りを進めていくことができました。

──そんな『Beatpia』をリリースして、ツアーも始動しています。今回はサマーソニックのために来日されましたが、日本のオーディエンスに対してはどのような印象を持っていますか?

Beabadoobee 日本のオーディエンスは音楽にすごく耳を傾けてくれると聞いているので、きっとサマーソニックの私のライブでも拍手して盛り上がってくれたり、楽しんでいる姿を見せてくれると思っています。そのような光景を見られることが今から楽しみです。(※取材時は開催前)

──ちょうど先日、街を歩いていたらあなたのロゴ入りTシャツを着ている若者を見かけたくらいなので、日本にもあなたのファンは沢山いますよ。

Beabadoobee 本当ですか? それはびっくりです! 例えば、ロンドンの街を歩いているとたまに街中にいる私を見つけてくれたり、私のグッズを身につけているファンを見かけることがありますが、日本でもそういうことがありました。私も持っていないオフィシャルのビーニーをかぶっている男の人が歩いてて、思わず「なんで持ってるの!?」って話しかけちゃいました(笑)。それに手作りのプレゼントをくれた女の子もいて。こうして日本でも私のことを知ってくれている人がいることを実感できて、嬉しいです。

──「日本を訪れるのは全人類の夢」とも語っていました。今回は早速渋谷や新宿を訪れていましたが、実際来日してみてどのようなことを感じましたか?

beabadoobee 日本では街行く人を見ていてもみんなすごくお洒落だし、まるでファッションショーみたいで、ちょっと現実だとは思えないくらいクールな場所だという印象がありますね。周りを見渡して、自分の格好を見返すとホテルに帰って着替えたくなっちゃうほど(笑)。それと実は昨日、飲みに行って少し酔っ払ってしまったんですけど、とても治安が良くて安全だと感じました。今回はちょっと難しいんですけど、時間さえあれば、三鷹の森ジブリ美術館に行ってみたいし、レッサーパンダも見に行きたいですね。それと美味しいラーメンも食べたいです(笑)。

beabadoobeeインタビュー|ライブは私をベストな状態にしてくれるもの interview220902_beabadoobee_3
beabadoobeeインタビュー|ライブは私をベストな状態にしてくれるもの interview220902_beabadoobee_2

「どんな状況でも私がライブでやることは変わらない」

──2020年に1stアルバムをリリースした頃はコロナ禍真っ只中ということもあって、帯同する予定だったThe 1975との北米ライブも延期するなど、その影響は多大なものだったかと思います。ただ、2021年以降は徐々にライブも再開されており、ご自身も現在、世界を周遊するツアーに挑戦されていますが、あなたにとってライブはどんな存在なのでしょうか?

beabadoobee やっぱり、ライブは部屋で音楽を聴くのとはまた違った環境ですし、やる側の私にとってもみんなの前でパフォーマンスすることはすごく気持ちが良いことなんです。そういう意味でライブは、私を1番ベストな状態にしてくれるものだと言えますね。

──コロナ禍をきっかけに配信ライブが以前よりも音楽シーンに定着した印象がありますが、配信ライブについてはどのようにお考えでしょうか?

beabadoobee 配信ライブの場合、リアルライブと比べて観客のエナジーを感じにくい部分がどうしてもあるので、ライブをやる側としては、少し奇妙な感じがあります。ただ、場所や時間の問題でライブに実際に足を運べない人にとって、それが見られるということは非常にポジティブなことだと思います。でも、個人的にライブを見る場合は、やっぱりリアルライブの方が好きですね。とはいえ、私としては配信、リアルに関わらず、それを見ている観客に対して同じようにライブの熱量が伝わるものを提供したいと思っています。

──2022年に入ってからは『Beatpia』のリリースツアーもスタートされていますが、その中で訪れた世界各地のオーディエンスの反応はどういったものだったのでしょうか?

beabadoobee 例えば、フェスに出演して、何万人もの観客の前でライブをするときはやっぱりすごく盛り上がりますね。でも、時には数人しか観客がいない中でライブをやることもあるし、その時はフェスの時のようにはいきません。ただ、どんな状況でも私がライブでやることは変わらないし、毎回全力でやるだけです。だからこそ、本当に全てのライブが良い経験になっていますし、そこから学ぶことも沢山あるんですよ。

──『Beatpia』をリリース後、実際にアルバムの収録曲をライブでやってみて、以前の自分の曲とでは曲の構成の変化などを実感している部分はありますか?

beabadoobee 『Beatpia』と昔のアルバムとを比べると、今は自分が大人になったように感じます。特に歌詞に関してはその感覚が強いですね。例えば、以前、自分がスイートなラブソングだと思って作っていた曲でも、今、ライブでパフォーマンスすると全然そんな感じじゃないというか……。すごくめちゃくちゃで悲しい曲だなと感じることがあるんですよ。ただ、『Beatpia』のソングライティングに関しては、前作から時間が経っているし、そこからいろいろなことを学んで新しい知識を得たこともあって、以前よりは自分でも成長できていると思っています。

Beabadoobee – 10:36 (Official Live Video)

Beabadoobee – Last Day On Earth (Live on The Tonight Show Starring Jimmy Fallon)

Beabadoobee – Last Day On Earth (Live on The Tonight Show Starring Jimmy Fallon)

大型フェスでのライブへの向き合い方

──『Beatpia』を含めてこれまでリリースしてきた自分の曲の中で特にサマーソニックのようなフェスでのライブ向きだと思う曲はどの曲ですか?

beabadoobee “Cologne”と“Last Day On Earth”ですね。それと“10:36”もフェスで盛り上がる曲だと思います。

──いつもライブのセットリストを決める時はどんな基準で演奏する曲を決めているのでしょうか? またツアー中は1度セットリストを固定すると基本的には変えることはないのでしょうか?

beabadoobee 基本的にライブのセットリストは、スローな瞬間とスピーディーな瞬間をバランスよく織り交ぜながら、組み立てていくことを心がけています。ただ、やっぱり実際にやってみないとオーディエンスのリアクションがわからない部分もあるので、いくつかセットリストのパターンをあらかじめ用意しておいて、ツアー中に実際にライブで何回かやってみながら、その中で一番良いものを決めていくという感じです。あとツアーで何度も同じセットリストをやっていると飽きてしまうこともあるので、そのタイミングでセットリストを変えることもあります。

──今年はこれまでにコーチェラやグラストンベリーといった大規模なフェスにも出演しています。フェスサイズのライブとライブハウスなどでの単独公演ではライブセットを構成する上で違いはありますか?

beabadoobee やっぱり自分の単独公演の場合は、フェスよりもライブの持ち時間が長くなるので、単純にセットリストに入れる曲数の違いはありますね。あと例えば、ロック色が強いフェスに出演する場合は、それにあわせて自分もロックなテイストの曲を多くすることがあります。ただ、基本的にフェスでは毎回セットリストを変えるようなことはせず、できるだけ同じセットリストにするようにしています。

──今、あなたのほかにもリナ・サワヤマやノー・ロームといったイギリスを拠点に活動するアジア系のアーティストが世界の音楽シーンの最前線で活躍しています。今後、同じようにアジアや日本のアーティストもグローバルで活躍できる可能性はあると思いますか?

beabadoobee その可能性は十分にあると思いますね。今、アジアの音楽は才能あるアーティストたちが沢山出てきたことで世界の一部になってきていますし、特に日本のインディーロックシーンにはクールなアーティストがすごく多い。私としては彼らがもっとグローバルで活躍してくれることを期待しています。

──最後に日本のファンに向けて、何かメッセージをお願いします。

beabadoobee ここ日本でも私の音楽にこんなにも多くの人が注目してくれていることを知らなかったので、すごく驚いています。でも、そのことは光栄でクールなことだし、日本の皆さんが大好きなので本当に嬉しいです。これからも応援よろしくお願いします!

beabadoobeeインタビュー|ライブは私をベストな状態にしてくれるもの interview220902_beabadoobee_5
beabadoobeeインタビュー|ライブは私をベストな状態にしてくれるもの interview220902_beabadoobee_6

Text:Jun Fukunaga
Photo:Maho Korogi

PROFILE

beabadoobeeインタビュー|ライブは私をベストな状態にしてくれるもの interview220902_beabadoobee_8

beabadoobee

フィリピンのイロイロ市生まれロンドン育ちのビー・クリスティによるソロ・プロジェクト。2017年から本格的に音楽活動を開始し、ティーンエイジャーの持つ不安定さを上手く捉えた楽曲がZ世代の若者を中心に人気を集める。デビュー・シングル「Coffee」が数日で30万回以上ストリーミングされる。2019年には『Loveworm』と『Space Cadet』の2枚のEPをリリースしNMEアワード「Radar Award(新人賞)」を受賞。 BBCが有力新人を選出する名物企画「Sound of 2020」にノミネート、2020年にはThe 1975のUKアリーナ・ツアーのサポートアクトを務める。パウフー(Powfu)のヒット・シングル「death bed」にフィーチャーされ、米Billboard”Hot Rock & Alternative Songs”チャート1位を獲得、TikTokで41億回、Spotifyで5億回の再生を記録し全世界の配信チャートを席巻。2020年10月にデビュー・アルバム『Fake It Flowers』をリリースし英NMEで5点満点を獲得、UKアルバム・チャート初登場8位を記録した。アルバムはCDショップ大賞「洋楽賞」を受賞するなど日本でも高評価を得た。2021年には5枚目となるEP「Our Extended Play」をリリース。2022年8月に行われるサマーソニックにて初来日。

RELEASE INFORMATION

beabadoobeeインタビュー|ライブは私をベストな状態にしてくれるもの interview220902_beabadoobee_7

Beatpia

2022年7月15日(金)
品番:POCS-23024
レーベル:Dirty Hit
価格:¥2,750(tax incl.)

<トラックリスト>
1. Beatopia Cultsong
2. 10:36
3. Sunny day
4. See you Soon
5. Ripples
6. the perfect pair
7. broken cd
8. Talk
9. Lovesong
10. Picture of Us
11. fair song
12. Don’t get the deal
13. thinkerbell is overrated
14. You’re here that’s the thing
15. Back to Mars (日本盤ボーナストラック)
日本盤はボーナストラック1曲、解説、歌詞対訳付