2011年7月、多くの音楽ファンに惜しまれながら閉店したwarszawa(ワルシャワ)。インディ・ロックからアンダーグラウンド・ヒップホップ、エクスペリメンタル、はたまたストーナーロックまで。「これいいっすよ」とゆるゆるとオススメする柳澤akaヤナギシャワ氏によって、音楽観や人生まで狂わされた人は多いのでは?
良質なレコード屋さんに足しげく通い、目利きの出来るバイヤーさんによって未だ知らぬ音楽と出会う。そう、warszawaの新譜コーナーには本当に刺激が溢れていた。惜しくもお店はなくなってしまったが、店頭をウェブに移して活動を続けるwarzawaヤナギシャワ氏がQeticに登場! <ワルシャワのヤナギシャワが訊く>シリーズ企画として、刺激溢れる内容でお届けします!
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ライティングとステージでの動きは、まさにフラッシュ・ダンスを思わせるものであった。それは別としてビーチ・ハウスのライブは久々に音楽を聴いたなあという印象。演奏はレコードで聴いていたものと同じくらい完璧なもので、全て期待に応えてくれるようなものであった。改めて聴いていて思ったことは、ビーチ・ハウスは、超メロディックと言えるものではないけど、好きな人にとっては、彼等のメロディを理解していて、それが染み付いていて、潜在的に頭や体で一緒になって、倍かそれ以上のメロディを奏でているではないかと。だから、凄くメロディアスに聞こえ、心地好く幸せな気分になれるんじゃないかなって思う。
「まず、メロディや音楽は頭で考えるよりは、フィーリング=感じることとして作っているわ。というのは、本当に不思議でミステリックな事だけど、自分が感じたものが自然に音やメロディとなって、自分の内側から音楽として湧いてくる。それを聴いた人たちにも、私たちの音楽が自然に生まれてきたということが伝わって、その人なりのフィーリングが生まれてくる、そういう美しいサイクルになっていると思うの。」
「例えば、悲しい時に音楽を作る事になったとしても、その悲しい感情である必要はない。「ああ、こういう経験をしてきたからそれを書こう」とかでは無くて、自分が曲を書き始めたときに音を聴いて、それに対する自分の中にすでにある感情がポンと出てくるから、その感情に合う音をどんどん追って作っている感じ。そうやって自分の中から出てきたもので自分の感情という部分が形になっていく。そういう感じかしら。」
「ある事だけに目を向けてしまうと、まるで暗闇の中を何も見えない状態で探っているような感覚になる。だけど、すべてにおいてオープンに物事を見ていけば、自分が何に対してなのか良く分かっていなくても、何かを求めて、色んな答えが返ってくる。自分が求めていなかったものが生まれたりだとか、その自分さえ分からないけど、自分の中にあるものに気付いていく。「何か聴きたい」とか「何か作りたい」っていう気持ちが、最終的にそういうものを作り出していく。それが一番大事で、それが真ん中にあって出来上がるんじゃないかなって思うわ。」
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冒頭、いきなり長くなってしまったが、エリザベスはとても興味深い話をしてくれた。自身の中にあるものが何らかの要素と結びついて、それを少し距離感を保ちながら、音楽を表現していく感じなのだろうか。だとしたら、彼女のレベルではないが、自分もふとしたしょうもないネタから色々と妄想して膨らました文章を書くのが好きなのだが、それに近いとしたら嬉しい。まぁ、こちらは不真面目なんで彼女からしたら迷惑でしょうが。
「 “気持ち”と“クリエイティブなもの”が関連している事が沢山あると思うわ。それらは繋がっているっていう・・・何かに対する“欲しい”って気持ちが、何かを作っていくのかなって。人が人を好きになったり、逆だったり。木に対して興味を持つとか、そういうことが全て繋がっているのかなって。あともうひとつ重要なのが「真剣になり過ぎずに遊び心を持つこと」っていうのがすごく大事で、私とアレックスはそれを心がけていて、子供みたいに音で遊んだりとかするの。」
遊び心と言えば、『ブルーム』では、チープな感じのリズムマシーンの音で、カウント的に始まる曲が幾つかあり、今までもそんな感じの曲はあったけど、いつものもよりはある意味ファンキーでした。あれはなんか遊び心で入れたのだろうか、それとも、なにかもっと深い理由があるであろうか。
「自分ではチープと思ってなくて、今回のリズムはダイナミックですごく濃い、強いリズムだと思っているわ。なぜかっていうと、最初のアルバムでは生ドラムは一切使ってなくて、例えば70年代のオルガンの中にリズムを作れるものがあるんだけど、それを使ってリズムを録音していたの。でも、セカンドアルバムから生ドラムを入れるようになって、段々とそのミックスが濃くなっていって、4枚目のアルバムではダイナミックなリズムが作れたと思う。だから、もし今までと違うものを感じたと思うのであれば、ミクスチャ―というかオルガンでのリズムの上に生ドラムが重なっていたり、それがその時々で聴こえ方が違ってきたり、多分そういう部分なのかも。もちろん遊び心の要素が含まれているけど、自分の中では今回のアルバムが最もドラムのリズムがたくさん入っていてすごくダイナミックに感じる。そういう点で、もしかしたらすごくファンキーに聴こえるかもね。」
『ブルーム』は、前作の例えば“Norway”みたいな印象深い曲を、アルバム全体で埋め尽くしたようなとても濃密な作品である。どの曲も一聴してビーチ・ハウスと分かるもので、逆に言うと、ある程度雰囲気を絞った感じにも思えるものであった。そして、ここまでの作品を完成させたビーチ・ハウスの今後はどうなってゆくのだろうか。
「ビーチ・ハウスのサウンドという部分が構築されたことと、これまで経験してきた全てのことが繋がっていて、それを自分で完璧なものとしてアルバムの中に入れたかったから、そのパワーが濃密になったんじゃないかなって思っているわ。」
「今後に関しては、やっぱりアルバムをどんどんリリースしていきたいことが一つ。あと、これはいつになるか分からないし、音楽のライティングはもちろんなんだけど、物を書く方のライティングもやってみたいの。それと絵を描いているので、描き続けていきたい。そういうものは、お互いをインスパイアし合うから大切なものと思っているわ。もしサウンドトラックを作ったとして、日本の映画でできたらすっごく楽しくなるでしょうね(笑)。」
text by Yuji Yanagisawa/warzsawa
photo by Kayoko Yamamoto
★ビーチ・ハウスのショート・フィルム『フォーエヴァー・スティル』の本編が遂に公開!
本人たちが出演し、テキサス州の印象的な風景や野外での演奏シーンを含む26分45秒をお見逃しなく!!
『Forever Still』
Release Information
Now on sale! Artist:Beach House(ビーチ・ハウス) Title:Bloom(ブルーム) Pachinko Records UICO-1249 ¥2,300(tax incl.) Track List |