BlueHairs(ブルーヘアーズ)というバンドを知っているだろうか?
AYANO(Vo.)の透き通った歌声とHattory(Gt.)によるストレートでポジティブな楽曲が特徴的な6人組バンドだ。2017年に発表した“ドスコイLOVE”のMVが100万回以上再生され、赤坂BLITZでのワンマンライブを成功させると、勢いそのままに2018年メジャーデビュー。2019年には岩手県花巻市との共同エンターテインメントプロジェクト『HaNaMaKi-JaM』を発足させるなど、音楽にとどまらない活動を行っている。

BlueHairs – ドスコイLOVE

実はこのバンド、なんと全員が音楽活動の傍でビジネスパーソンとして働いている。しかも経営者である。この一点をとってみても、かなり異色のバンドであることがわかるだろう。多忙な日々のなか、音楽とビジネスの両立を成功させているというわけだ。

BlueHairsのギタリストでありIT会社の社長をつとめるHattoryは、「仕事をしながらでも音楽はできるし、年齢関係なく夢は叶えられる」と語る。では、いかにして彼らは音楽とビジネスを成功させ、なぜ継続できるのだろうか。

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Interview:Hattory(BlueHairs)

何歳になっても夢は叶えられる

━━BlueHairsはメンバーが全員経営者という異色のバンドです。結成のきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

全然ドラマチックなものではないんです。企業経営者の会で知り合ったメンバーで、忘年会の出し物としてバンド演奏をすることになったのがきっかけです。それで15年ぶりに楽器を引っ張り出してみたら、昔を思い出して楽しくなってしまって。1回だけでは物足りず、もう少しオフィシャルにやってみようということでバンドを結成しました。

━━結成当時から少しメンバーが変わっていますよね。

ボーカル、ドラム、キーボードが2代目です。初代ドラムとキーボードは引退しまして、その後ゴッチャン(Key.)とYuto(Dr.)が加入しました。

━━彼らも経営者なんでしょうか?

ゴッチャンはグローバルIT企業の経営陣で、海外子会社では社長も務めています。EROBEさん(コンガ)もIT系の経営者ですね。EROBEさんは他の5人と違っていて、役割は“全部”なんです。元々はギタリストですが、パーカッションや鍵盤など、楽曲毎にバンドにとって足りない音楽があればすべて彼が担当しています。音楽以外にも、バンドが真面目すぎてちょっと笑いが欲しい時はお笑い担当、派手さがほしい時にはダンス担当と、とにかくオールマイティーです。あえてオフィシャルサポートメンバーという新しい立ち位置なので、いつもライブ中に「正メンバーになりた〜い」ってお客さんに訴えかけていますね(笑)。他にもVTuberなど、BlueHairsメンバーの中で一番アクティブに活動しています。

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━━不思議な立ち位置ですよね(笑)。Hattoryさんの音楽的なバックグラウンドはどういうものでしょうか。

僕の一番のルーツは、たぶんフォークソングだと思います。小学生の頃に母親にフォークギターを教わったのが始まりでした。思春期には海外のバンドのコピーなんかもやりましたけど、楽曲のルーツは明らかにフォークで、ああいったメロディーやノスタルジックな何かから僕の曲はうまれています。フォークデュオの紙ふうせんとか、そういう世界観ですね。

━━バンドのコンセプトは「何歳になっても夢は叶えられる」です。

僕は高校生の頃、結構真面目に音楽をやっていて、当時からオリジナル曲を作成していて、ヤマハのコンテストに出て作詞・作曲賞をもらったりもしていたんです。明確にプロを目指していたわけではなかったかもしれないけど、がむしゃらに音楽をやっていました。BENもずっと音楽やっていて。ゴッチャンやEROBEさんはプロを目指して音楽をやっていたし、Yutoもドラマーとしてツアーを回っていました。だけどやっぱり、音楽って簡単にはいかないですよね。当時の僕らには知識も人脈もなかったし、勝手に頭打ちだと思ってしまったんです。そうしてなんとなく社会人になりました。時が経ち、こうしてまた音楽をやる機会を得るにあたって、今だからこそできることがあるんじゃないかと思い始めたんです。何歳になっても何度でもチャレンジできるし、そういうことを世の中に示せるんじゃないかと。

━━再チャレンジしたいと思っている人は多いと思います。

そうですよね。僕らがそれを示すことでポジティブなメッセージを受け取ってもらえたら良いなと思ったんです。だからこのコンセプトは、僕ら自身のチャレンジでもありました。

━━バンド結成時の夢は、もう一度音楽をやってプロになるということですか?

そうですね。「プロ」が何を示すのかにもよりますけど、自分の人生の中で音楽活動での結果を求めて一生懸命やっていくということですね。

━━それは叶ったと思いますが、今の夢は何ですか?

今も変わらないんです。もう少し僕らの認知度があがっていけば、実際に夢を叶えた人たちのエビデンスとして示すことができるし、どんな道を辿って来たかを参考として見せることができる。仕事をしながらでも、年齢も関係なくできるということを、夢ではなく現実として示したいんです。そのためには僕ら自身の存在を大きくしていくことがひとつテーマであるけども、やっぱり伝えたいことは「何歳になっても夢は叶えられる」ですね。

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24時間365日、曲を作れる状態にしている

━━仕事をしながら、という点がやはり凄いと思います。しかも経営者ですから、平均的な社会人よりも忙しいのではないですか。どうやってタイムマネジメントしているのでしょうか。

バンド全体でいうと、平日の昼間はみんな働いていて、会社が終わったあとや土日に集まって練習やライブをしています。とにかく夜と土日ですね。僕の場合は、それプラス作曲が入ってくる。でも作曲はそのスケジュールには入らないんです。

━━そうですよね。物理的に不可能なのでは……?

作作曲だけするみたいな時間はなかなか取れないので、隙間の時間を使っています。24時間365日、曲を作れる状態にしておいて、タクシーに乗ったり人を待っていたりする全ての隙間時間を使って曲をつくるんです。

━━それはかなり難しいように思えますが……。

もう少し具体的にいうと、作曲をするにあたっていろいろなきっかけやタネがあるじゃないですか。それをメモしておいて隙間時間に形にする。そうして何曲かストックしておくんです。で、そこからその時々に必要な曲を選んでDTMでデモを作ります。

━━しかし、普段の仕事と作曲では、使っている脳の筋肉が全然違うと思うんです。頭の切り替えはどうしているんですか?

僕の場合、割と一度に2つ以上の事を考えることができるタイプなのであまり脳を切替える必要がないんです。仕事のテーマを考えている時に音楽やバンドのことを考えることもありますし、その逆もあります。常にマルチタスクで進めたり、考えたりしながら、どれを瞬間瞬間で濃度高くやるか決めているくらいの感覚ですね。あと、僕は専門家みたいに1日中キーボードを触って作曲できるわけではないので、作曲まで至らなくても最低限ストーリーを記憶する努力をしています。誰だって悲しいことや嬉しいことはありますよね。日々の景色で「嫌だな」とか「微笑ましいな」と思ったりする。そういう日常のストーリーで琴線に触れたものや、自分にとって重要だった感情を大切に覚えるようにしているんです。そこにおのずと曲は生まれていくので。

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━━メモしておいて、隙間時間に形にする、とのことですが、具体的にはどんなことをメモしているんですか?

生きていれば嫌なことや悔しいことってたくさんあるじゃないですか。努力してもうまくいかないことだってあるし。そういう傷ついた時に出てくる言葉や何でそう感じたんだろう……みたいな理由を整理してメモすることが多いです。大昔だったら恋愛のテーマが多かったかもしれないですね。最近は、周りに家族が増えていくなかで、いろんな家族のあり方や悩みとかを知って、そういう人たちを元気づけられる音楽ってあるのかな? といった家族のストーリーについてはよくメモを残すようになりました。

━━人に元気になってほしい、という気持ちが大きなモチベーションですか?

2019年は特にそうでした。ツアーは《HappyBlue 2019》というタイトルにしたんですが、この1、2年は個人的に相当落ち込むことがあって、そういう時にいろんな音楽を聴いてなんとかラクになったり、少しだけ元気を取り戻したりしていたんです。音楽にはそういう力があると思ったし、そういう音楽の聴き方をしている人はきっとたくさんいますよね。特にいまは大変な時代ですし。僕ら大人世代は、プライベートだけじゃなくて仕事関係、社会や家族との付き合い方など、大変なことがたくさんあります。そんな時に僕らの音楽やライブが支えになったらいいな、という想いを込めて2019年は「HAPPY」をテーマにしてきました。

━━もう少し時間の使い方について聞きたいんですが、普段どれくらい睡眠を取っていますか?

8時間くらいは普通に寝ますし、ちょっと足らないなという時でも6〜7時間くらいは寝ます。睡眠時間を削ることは絶対にないですね。睡眠がいちばん大事です。朝は7時半から8時頃に起きるので特に早起きというわけでもないですね。ただ、夜遅くまでお酒を飲むのはやめました。IT業界の方は夜遅くまで飲む人も多いけど、音楽をやる以上、そういうのからは卒業です。あとテレビも見ないしゲームもやりません。基本、遊ぶ時間があれば寝る、みたいな。やっぱり、昼間は脳を使い続けなくてはいけないですから。仕事もハードで一生懸命やらなくてはいけないので、昼間の時間は絶対的にパーフェクトな状態でいなければいけない。睡眠時間が足りないとボヤっとしてしまうので、しっかり寝た方がよっぽど効率が良いですね。それが正しい時間の使い方だと思っています。

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地方のエッセンスをあらゆる方法で表現していきたい

━━仕事をしながらミュージシャンをやることの利点はありますか?

ありすぎて困っちゃうほどあります(笑)。音楽1本でやっている人とはよく比べられるし、音楽1本にした方が良い演奏や良い曲ができると思われがちですけど、必ずしもそうではないと思っているんです。音楽以外のことを一生懸命やっていることはすごく大事で、そのなかで感じたことやインプットしたことがたくさんの音楽的なテーマを与えてくれるからです。音楽業界には、若くて優秀な人が多いです。そういうなかで自分たち年配の人間が仕事もしながら楽曲制作する意味があるとすれば、一般社会で働いている人たちと同じような経験を日々していて、リアルに社会人が感じていることを同じように感じることができる。そういう強みはあると思っています。だから僕はむしろ、他のミュージシャンに比べて得している部分もあると思っているんです。聴いている人たちと同じような経験をリアルタイムで日常的にインプットしている、これは重要な感覚です。仕事をしていることが音楽にすごく役立っている。

━━その逆もありますか? つまり、音楽をやることで仕事にも役立つということが。

もちろんあります。仕事って、基本的にずっと同じ世界なんです。専門性という意味では、ある年齢以降は成長が止まり、だいたい同じことの繰り返しになりがちです。でも音楽をやることで、自分の知らなかった世界に接して、自分に足りなかったことを学ぶことができる。
例えば、昨年10月に発表した『青音Vol.02』というアルバムでプロデュース頂いた根岸孝旨さんからは制作の過程でより緻密なプロ意識についてたくさん指導を受けました。ツアーをサポート頂いているスタッフ陣からは、一瞬一瞬の表現へのこだわりを沢山学びました。それは以前の自分の延長線上にはなかったものでした。そういったインプットはすべて仕事に活かすことができるし、それによって得た新しい経験や発想からオリジナリティの高い仕事やアウトプットができます。だからこれも、他のビジネスマンと比べて僕は相当得していると思っています。自身のITの仕事でもイノベーションが止まらないのは音楽があるからこそですね。

━━ということは、いま音楽を始めたことがすごく重要なんですね。最後に、花巻市とコラボしたエンタメ発信プロジェクト『HaNaMaKi-JaM』について聞かせてください。花巻市とBlue Hairsは、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』をモチーフとした“星の涙 月の祈り”のMV制作がきっかけで組み始めたということですが、プロジェクトを継続しようと思ったのはなぜですか? というのも、メンバーに花巻市出身の方はひとりもいないですよね。

このプロジェクトは、地方発信のエンターテイメントを目指すコラボです。エンターテインメントといっても幅広いので、「音楽、映画、イベント」の3本立てでやるという計画でした。第2弾として花巻市に実在する食堂と実話を元に企画した映画『マルカン大食堂の贈り物』が完成したので、1月12日(日)に花巻市で先行上映し、映画と音楽の2本立てのライブを行います。その後は映画祭に出品する準備をしていきます。花巻市だけに止まらず、岩手、東北と大きくしていくのか、東北に限らず他の地域と一緒にやるのもいいかなと思っています。

映画「マルカン大食堂の贈り物」予告編

━━花巻市はモデルケースということですね?

そうですね。今回花巻市と一緒に取り組んできたコラボは他の地方都市でも参考に頂けるエッセンスが多々あるのではないかと思っていて。参考にしてもらえるところが多々あると思いますし、機会があれば僕らもまた色々な場所や人々とコラボをして様々な表現にチャレンジしていきたいですね。

━━「地方都市」でやることにこだわりが強いですか? Hattoryさんは神戸にもよく足を運んでいると聞きましたが。

母校である神戸大学の学園祭でライブをさせていただいたり、それがきっかけで地元のラジオに出演させていただいたりする機会がありました。地方には、東京では感じられないものがたくさんあります。ノスタルジックの原点がたくさん見つかるんです。それは景色かもしれないし、人とのコミュニケーションから感じる温かさかもしれないし、そういう人たちの持つストーリーかもしれない。すごく純然なエネルギーが溢れていて、とっても新鮮なんです。

━━Hattoryさんにとって、花巻市の魅力は何でしょうか。

花巻市は宮沢賢治さんの出身地で、街全体に文学的な素地が根付いているんです。街のあちこちに宮沢賢治が残したものやモニュメントがたくさんあるし、そういう街で暮らしている人たちは、やっぱり文学への興味や関心を自然と持っていると思います。根っこには凛としたもの、プライドやクリエイティビティを感じます。そういう場所って、地方にたくさんあると思うんです。土地が持っている濃いものが文学やエンターテイメントを産んでいる。住んでいる人にとっては当たり前すぎて意識しないかもしれないけど、僕からすると新鮮で、憧れの対象でもあり、美しいと感じます。

BlueHairs – 星の涙 月の祈り

━━Hattoryさんと同じように仕事をしながら創作活動をしている人、あるいは諦めてしまった人は多いと思います。そういった人たちに何かメッセージをいただけますでしょうか。

2通りあると思っていて、まず、趣味で音楽をやることはすごく豊かなことなので、無理ない範囲でバランスを取りながら長く続けてほしいと思います。何事も長く続けることは難しいですからね。

一方で、いまはそれほど大掛かりな準備をしなくてもいくらでも音楽を発信できる時代になりました。だから、仕事も音楽も両方本気でやるという人も、仕事と音楽をあまりスパッと分けてやらなくてもいいんじゃないかなとも思います。仕事も音楽も、どちらも自分の人生を前に進めるために重要なことなので。ただ、仕事と音楽を両立してやる以上、犠牲にしなければいけないこともたくさんあります。生半可な気持ちではできない。信じられないくらい勉強しなければいけないし、相当な時間を使う必要がある。するとどうしても物理的に溢れてしまうはずなんです。それを突破しなければならない。仕事と音楽を分けるならば、まず仕事の効率を死ぬ気であげる必要がある。たとえば、仕事で8時間かかっていたことを6時間でやり、2時間を音楽に使う。目の前の仕事のスピード感を突き詰めなければいけないと思います。

━━音楽のために仕事をさらにしっかりやる、ということですね。

仕事をしっかりやって、初めて両立のスタートラインに立てる。そういう厳しさはあると思うし、厳しさの先にボリュームを超えられるものがあると思います。偉そうに聞こえてしまうとよくないんですが、死ぬ気で音楽をやっている人は世の中にたくさんいるので、その人たちに勝たないといけないとなると、同じように、あるいはそれ以上に死ぬ気でやらなければいけないですよね。時間を50%:50%だと思うんじゃなくて、両方120%やる前提でどうすれば出来るか。それを一生懸命突き詰めた先に、道が開けていくのだろうと思っています。

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Text by Sotaro Yamada
Photo by Kana Tarumi

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BlueHairs
何歳になっても夢は叶えられる」そのコンセプトを元に集まった、年齢も仕事も異なるメンバーが数々の奇跡を経てBlueHairsを結成。
仕事と音楽を両方本気で頑張る二刀流バンドとして活動し、2017年リリースしたドスコイLOVEが100万再生、2018年1月24日の赤坂BLITZ満杯と、数々の奇跡を実現し2018年3月に「桜唄~scene2~」でソニーミュージックよりメジャーデビュー。
2018年12月には「ガムシャラでGO☆」が映画「港区おじさんTHE MOVIE」の主題歌に選ばられるなど注目のバンドとして期待されている。

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EVENT INFORMATION

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花巻×BlueHairs 映画&コンサート

2020.01.12(日)
OPEN 13:30/START 14:00
花巻なはんプラザ COMZホール
前売り券 ¥2,500/当日券 ¥3,000

LINE UP:
1、《柴田啓佑監督作品》主演・内田慈
『マルカン大食堂の贈り物』先行上映会&舞台挨拶
2、《映画主題歌/ふるさと》
『BlueHairsツアーライブ』花巻公演

TICKET:
なはんプラザ/マルカンビル1階/ゲストハウスmeinn/大衆食堂じゃんご

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