フランソワ・K(François K.)、ダニー・クリビット(Danny Krivit)、ホアキン・ジョー・クラウゼル(Joaquin “Joe” Claussell)のレジデントDJが至高のバック・トゥ・バックを紡いでいくNY発のパーティー<Body&SOUL>が5年ぶりに日本上陸し、2023年6月4日(日)にキラナガーデン豊洲にて開催される。2002年に日本で初開催され、以降2018年まで毎年連続で開催されてきたものの、2019年はオリンピック/パラリンピックのため、その翌年からはコロナ禍に突入し、2022年は開催直前で延期。そんな期間を乗り越えて、待望の開催となる。

本記事では、<Body&SOUL Live in Japan>のクリエイティブ・ディレクターを務める株式会社プリミティヴ(PRIMITIVE INC.)の大山 陽一氏がその歴史と真髄を振り返る。インタビューの聞き手はKunihiro Miki氏が担当した。(Qetic編集部)

バック・トゥ・バックの最高峰を享受できる約束の場所

──2019年のオリンピック/パラリンピック、2020年以降のコロナ禍による中止、そして昨年の開催直前での延期を経て5年ぶりの開催ですね。

ようやくですね。去年は楽しみにしてくれていたファンや、関係各所の皆さんに迷惑をかけてしまって本当に辛かったです。<Body&SOUL Live in Japan>は2002年にスタートして以降、場所を変えながらも16年間続けた毎年の恒例行事だったので、開催できない期間は個人的にも寂しい気持ちになっていたのですが、5年というブランクをどうにか乗り越えることができそうで嬉しく思っています。

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──海外アーティストのブッキングは来日直前のタイミングで取り消しになることが頻発するなど不安定な状況が続いていましたが、ようやくコロナ禍以前の状態に戻りつつあります。来日が完全にストップしていたこの数年間というのは、日本人のDJやアーティストたちがフックアップされたり新しい動きが生まれた有意義な期間だった反面、自分たちと出自の違うスタイルの音楽に生で触れる機会がなくなってしまった期間でもあったわけで。

海外の音が入ってくることで刺激を受けて、現地に行きたいと思う人がいたり、自分のプレイスタイルをさらに磨こうとネクストステージを目指すきっかけになったり。またはDJ同士のコミュニケーションのなかで「次は俺の国に来てよ」という感じで日本のDJが海外に進出するきっかけが生まれたりというオープンな交流は、歩みを止めてはいけないことの一つだと思っています。

──そういう刺激を長年にわたって日本のハウスミュージックファンに与つづけてきたのが<Body&SOUL>なわけですが、改めてその魅力を語るとすれば、第一になにを挙げますか?

まずは三者三様のパフォーマンスが連綿と繋がっていく最高峰のバック・トゥ・バックです。

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フランソワが教えてくれたのですが、DJとDJが交互に曲をかけ合うスタイル自体はデヴィッド・マンキューソもやっていたと。ただ彼はいわゆる「ロフトスタイル」。一曲を始まりから終わりまでかけるので、バック・トゥ・バックではなく「ワン・オン・ワン」と呼ばれるものでした。

お互いのレコードを音楽的にミックスし、化学反応を生み出すバック・トゥ・バックのスタイルは<Body&SOUL>の三人がダンスフロアで機能するように進化させてきたものなんです。今でこそバック・トゥ・バックは色々な現場に浸透して、初対面のDJ同士でやる場合もありますが、本来は深い信頼関係が築かれていて初めて上手くいくものだったりします。お互いのスタイルを熟知していて、相手の出方を読みつつ、協調して流れを作っていく時間もあれば、それぞれの個性をあえてぶつけ合ってスリリングな山場を作ることもできる。

例えばジョー(・クラウゼル)がエフェクトプレイで盛り上げた後に、ダニー(・クリヴィット)がちょっと一旦ここで落とそうかとレゲエをかけて、その後にフランソワ(・ケヴォーキアン)が倍速でドラムンベースを放り込んでくるみたいな(笑)。パーティーの間に色々な表情を見せてくれるんです。奇跡のような瞬間も何度も経験させてもらっているので<Body&SOUL>以上のバック・トゥ・バックは今の世の中に存在しないとさえ感じています。本国NYの<Body&SOUL>は25年以上も続いているのですが、積み重ねてきた歳月とコンビネーションが生み出す匠の技ですね。

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──2018年の<Body&SOUL Live in Japan>で印象に残ったのは、ハウスミュージックのリバイバルも影響してか、若いお客さんが例年より多かったことです。イベント自体は停滞していたこの5年間にも若いハウスファンは生まれているわけで、そういった人たちに来てもらうという意味でも今年の<Body&SOUL Live in Japan>は楽しみですね。

<Body&SOUL>をまだ知らない若い世代に向けて、23歳以下は一般前売よりもかなり安価な5,000円という値段設定にしてあります。サイズの小さいクラブやDJ BARが増えていることもあって、若者たちの遊びも仲間内だけで完結してしまう傾向があるのですが、様々な人たちが集まる開かれた場でのパーティーの楽しさを感じて貰えると思います。

逆に90年代から遊んでいるようなパパやママには、親子参加でも安心できるように、授乳やおむつ交換できるスペースや資格を持った保育士さんと一緒に様々なワークショップを楽しんだりもできるので家族で想い出をつくりに来て欲しいですね。

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ハウスミュージックを追求してきた、プリミティヴの歴史

──プリミティヴは長年<Body&SOUL>の日本版を企画してきたほかにも、マスターズ・アット・ワークやマーク・ファリナ、デリック・カーターなど、ニューヨークやシカゴのDJを中心とした来日公演を主催してきました。プロモーター/マネージメントとしてすごくカラーがはっきりしていると思うんですが、簡単にプリミティヴの歴史を教えてもらえますか。

プリミティヴ自体は2006年からスタートさせたのですが、そもそも20歳頃に渋谷のクラブで働いていた縁もあって90年代から2000年代にかけてパーティーやフェスを企画していたブランニューメイドという会社に入るんです。社長だったのはいまも現役で夜遊びを続けているT.Ishiharaさん(以下、石原さん)なのですが<Body&SOUL>を日本で開催するという企画がはじまり紆余曲折あって、2002年のヴェルファーレで第一回目の<Body&SOUL Live in Japan>が開催されます。

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2002年ヴェルファーレでのBody&SOUL

制作を進めている段階から、これはとんでもないパーティーになると感じてはいたのですが、初めて<Body&SOUL>の3人のプレイと、フロアのお客さんたちのバイブスを見て、ものすごい衝撃を受けました。音楽の持つ力とか素晴らしさっていうのを、そのときに初めて骨の髄まで味わったんです。20歳そこそこの自分でしたが、いま思い返せば人生観が変わった瞬間だったかもしれません。以降、日本での<Body&SOUL>は毎年続いていくのですが、会社にいるとやりたくてもできないことが出てくる。石原さんは2000年代の都市型フェスを牽引した<渚音楽祭>を作った人でもあるんですが、そういう雑食的な音楽性に向かうタイプなんですね。ジャンルもカルチャーも関係なく強引にまとめあげていくという(笑)。

それはそれで石原さんにしかできないことだし、良い結果に繋がることもあるのですが、対して自分はもう少しピュア志向で自分の好きなものだけを追求したかった。もともと20代で独立しようと考えていたこともあってプリミティヴの立ち上げに繋がっていくんです。

石原さんは結構めちゃくちゃな人間なので自分が辞めてから数年するとブランニューメイドはなくなってしまったのですが<Body&SOUL Live in Japan>では石原さんという偉大な神輿を担ぎながら(笑)、一緒にパーティーを作っています。

──海外のDJたちとのコネクションを築いたのはブランニューメイド時代ですか?

それも少しはあるかもしれませんが、自分はどちらかと言うとプロデューサー的な立ち位置でパーティーを作ってきたので、海外との直接のリレーションは多くは持っていなかった。そこはプリミティヴの創設メンバーでもある吹上大輔の力が大きいですね。元々はYellowでブッキングをガンガンやっていた人間で、海外とのネットワークを豊富に持っていたんです。

自分も吹上も、とにかくYellowで遊んでいたときに受けた影響が大きくて、それを自分たちなりに表現したかった。良いと思える音楽やカルチャーを時代が変わってもシェアしていきたい、残していきたい、というシンプルな動機から始まっていて、それは今もぶれないようにやっているつもりです。

アメリカ生まれのハウスミュージックも当然流行り廃りにさらされて、一時期はヨーロッパ勢におされてマーケットとしてはすごく小さくなったりとか、ニューヨークのシーン自体が昔ほど大きくなかったりするわけですが、それでもやっぱりクラブカルチャーが生まれた場所なわけで。デヴィッド・マンキューソのLoftから、ラリー・レヴァンのParadise Garageへと受け継がれた魂は<Body&SOUL>に脈々と息づいている。オリジネーターたちの作ってきたものっていうのは残っていくし、やり続けていると時代はまた回ってくる。新しいものは大切にしているけど、トレンドだけをフォローするのは自分たちの仕事じゃないと思っています。

本場の魅力を損なうことなく再現するために

──海外ブランドのフェスやイベントを日本に持ってくると、看板だけで中身や雰囲気は全くの別物というか、醍醐味が骨抜きになっていたりするケースも多いと思うんですが<Body&SOUL Live in Japan>がそうならず、本国と遜色のないバイブスのイベントを作れたのはなぜなんでしょうか?

それは、2002年に初めて<Body&SOUL Live in Japan>をやるときに、フランソワ、ダニー、ジョーの3人と何度もコミュニケーションを重ねたからだと思います。ただライセンス料を払って日本版を勝手に作るんじゃなくて、<Body&SOUL>の魂をこめるために彼らのディレクションのもとに作っていきました。
例えば、会場の選定にしてもフランソワを色々なヴェニューに連れていってるんです。ガーデンホールやリキッドルームとかをみていましたが、フランソワが選んだのはアンダーグラウンドなクラブの対極にあったヴェルファーレで。箱のカラーとか先入観がないからこそだと思うんですが、日本で<Body&SOUL>をやるならここだ、と。それで彼の指示のもとにサウンドシステムやライティング、デコレーションなどのイメージを作りあげていったんです。

音響に関してはヴェルファーレにあるシステムだけでは満足できる音が作れずに、かなりの数のスピーカーをインストールしていたし、屋外に移動してからもダンスミュージックに最適な音を追求していて、フロントだけでなくリアにもスピーカーを入れてフロアのどこに居ても迫力のある音圧を感じられるように設計しています。

色とりどりの風船も<Body&SOUL>では印象的だと思いますが、肌の色や性別、年齢などが分け隔てなく混ざりあう場であることが表現されていて、まだ若かった自分は当時メッセージの意味を十分理解しきれていなかったんですが、本当に良いパーティーというのは思想や哲学がしっかりと土台にないといけないんだってことを、その時に教えられた気がします。

──今年はお台場から豊洲へと会場を移しての開催ですね。

馴染みのあるお台場を離れたくはなかったのですが、音の制限の問題が出てきてしまい満足のいく<Body&SOUL>を実現させることが困難になってしまったんです。今回の会場となるキラナガーデン豊洲は普段はバーベキュー施設でまだ新しくとても綺麗なのですが、お台場と比べると決して大きくはありません。2000名限定の人数制限を<Body&SOUL>ではじめて設けました。既にグループやペアのチケットは完売で一般前売券もソールドアウトする可能性が高く申し訳ないのですが、その代わり音に関しては自信を持ってお届けします。

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今年の会場となるキラナガーデン豊洲

輝かしいハウスの歴史に光をあててきたライティングマスターAriel

──なるほど。例年以上に贅沢な<Body&SOUL>になりそうですね。

レインボーブリッジを眺める解放感のある屋外のロケーションでは、昼間から夜に移り変わっていく時間すらも、ひとつの演出になります。玄人のファンたちが楽しみしているのが、陽が落ちてから始まるArielのライティングです。

今の照明演出って基本的にはデジタルでコントロールされていて、8小節や16小節などでパターンを変えていくのがベーシックな方法なんですが、Arielはすべての照明の動きや色を操作ボタンのひとつひとつにアサインして、完全に人力でリアルタイムにライティングしています。こんな効率の悪いオペレーターは世界でもArielだけです(笑)。

だからこそ、一拍づつ音にはめることができるし、瞬間的なジョーのエフェクトプレイにもベストな光をあてることができる。音楽の持つ力を何倍にも引き上げてくれる4人目の<Body&SOUL>のメンバーです。

──当日が楽しみです。最後に楽しみしているお客さんにメッセージをお願いします。

この場を借りて感謝を伝えたいのですが、前売券を払い戻しせずに次の開催を信じて持ち続けてくれた方々が1000人もいたんです。本当に愛されているパーティーなんだなと胸が熱くなったし、我々は何よりもそういったファンを裏切らないようにオーガナイズしていかねばと想いを新たにしました。

ただ、そもそもDJたちの年齢を考えると1年に1度だとしても日本であと何回開催できるのかという……もちろんまだ衰えを感じることはありませんが、貴重な機会になってしまう前に、彼らが紡ぐ音楽の物語を楽しんで貰えればと思っています。

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会場限定発売となる新作Tシャツ

取材/文:Miki Kunihiro

INFORMATION

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Manhattan Portage presents Body&SOUL Live in Japan 2023

2023.06.04(日)OPEN 12:00/CLOSE 21:00
PLACE:KIRANAH GARDEN TOYOSU(キラナガーデン豊洲:東京都江東区豊洲6-5-27)
DJ’s:Joaquin”Joe”Claussell/Danny Krivit/François K.
LIGHTS:Ariel
TICKET:ADV ¥8,500/U-23 ¥5,000/VIP PASS ¥3,000 -ONLY 200 SETS-
TICKET PLAYGUIDE:楽天チケット/e+/Zaiko
DOOR TICKET:DOOR ¥10,000/U-23 ¥6,000

HP:www.bodyandsoul-japan.com
Instagram:https://www.instagram.com/bodyandsouljpn/
Twitter:https://twitter.com/bodyandsoul_jpn
DJ Mix:https://soundcloud.com/primitiveinc/sound-archives-01

TICKET

PRIMITIVE INC.

HP:https://www.primitive-inc.com/
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大山 陽一

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