途轍もない熱量に満ちた空間だった。4月にリリースしたメジャー1st EP『涙 滲むのは心の本音です.』を携えて東名阪と広島の4都市を回ったワンマンツアーの追加公演として、9月29日に東京・Spotify O-EASTにて開催されたbokula.のワンマンライブ<『涙 滲むのは心の本音です.』Release Tour 「僕らで時代を作ります。 〜これ“わや”じゃん〜」>で目撃したのはステージとフロアが渾然一体となって沸騰する最強で最高の光景だ。
バンド史上最大規模となるこのワンマン公演にて新曲“ハートにハグしよう”リリースをサプライズで発表して生披露、しかも翌日0時より配信スタートというスピード感でファンの度肝を抜いたbokula.を、そのリリース当日にキャッチ。まだ興奮冷めやらぬライブ直後の感想や新曲についての想いなど、率直な言葉で語ってもらった。新世代ロックバンドの筆頭株として注目を集める彼らの飾らない素顔に触れていただけたら幸いだ。またGt.&Vo.えいにはフォトセッションも敢行、ワンマンライブの翌日とは思えないほどの爽やかな写真もご覧いただきたい。
INTERVIEW
bokula.
「時代を作る」可能性が見えた
──O-EASTワンマン、お疲れさまでした! まさに“わや”(※bokula.の地元・広島の方言で“めちゃくちゃ”の意)と呼ぶにふさわしい、最高の盛り上がりでしたね。本番を迎えるにあたってみなさんはどんな光景を思い描いていらしたのでしょうか。
えい 正直なところ、思い描くとかはまったくないんですよ。意図してこんなふうにしたいとか、そういうものは全然なくて。その場で起こったことが正義というか、自分たちが好きにやったうえで生まれた景色があのフロアだったっていう感じなんですよね。
ふじいしゅんすけ ぼんやりと「こんな感じかな」って想像したりはしますけど、昨日はそれを超えるパワーをお客さんが出してくれてた気がします。そもそもbokula.って、ワンマンライブ自体、まだそんなに慣れてはいなかったんですよ。今回、5〜6月にかけて『涙 滲むのは心の本音です.』のリリースツアーをやってきて、それを経たからこその昨日だったので。
かじ 個人的には、さらに自分の視野が広がったなって思えたライブでした。今までも視野は広いつもりでいたんですけど、意外とまだまだ狭いところでしか見えてなかったことに気づく瞬間が多々あって。なので、終わったばかりですけど、早く次のライブがやりたいんです。
さとぴー メジャーデビューから半年近以上が経って、その半年の間、自分がbokula.のベースじゃなきゃいけない理由をずっと模索していたんですよね。自分の武器はなんなのか、自分は何ができるのか、それをどう見せたらいいんだろうってワンマンツアーの間もいろいろ試行錯誤していて、最近やっと自分のなかで腑に落ちたんです。昨日もそれをちゃんとアウトプットできた瞬間はあって。
──そういえば、さとぴーさんがステージから客席にダイブされた場面もありました。
さとぴー あれはアウトプットというか、単に勢い余っただけなんですけど(笑)。
えい でも、よかったと思う、すごく。最近はさとぴーがいちばんハメを外してるんですよ(笑)。
──MCでは、O-EASTがえいさんの憧れの場所だったこと、バンドにとってひとつの到達点でありターニングポイントでもあるとおっしゃっていましたね。
えい 僕の好きな先輩バンドが4〜5年前くらいにO-EASTでワンマンをやっていて、SNSに上げられていたライブ写真を見たときに、すごく憧れを持ったんです。俺たちもここに行かなきゃっていう焦りみたいな想いも同時に感じたし、ずっと目標になっていた場所だったので。
──そのぶんステージに立って感慨深いものもあったのでは?
えい もちろん「やった!」っていう気持ちはありましたけど、感慨は実はそんなになかったですね。そこで満足しちゃダメだなっていう想いのほうが強いというか。
ふじい たぶん立つ前のほうがあったよね。ライブをする前のほうが「ああ、来たなぁ!」って感じだったけど、立ってしまえば全部一緒、みたいな。
えい そう、いつも通り。
ふじい いちばん高まる瞬間ってリハーサルが終わってお客さんが会場に入っているときだったりするんですけど、いざ始まって、1音目を鳴らしたらもう同じなんですよ、会場がデカいとかお客さんがいっぱいいるとか関係なく。地道にこれまでやってきた積み重ねのおかげでそういう感覚でいられたんだと思います。
──タイトルに掲げていた「僕らで時代を作ります。」ですが、実際にそうなりそうな手応えはありましたか。
えい 昨日のライブでちょっと可能性を感じましたね。実感というか、このタイトルでよかったな思える瞬間が結構あって。最初はすげぇ大袈裟なことを言っちゃったなと思ったけど。
ふじい いいんだよ、大口叩いていこう!
一同 爆笑
──bokula.が考える「時代を作る」って具体的にはどんなものなんでしょう。
えい 「具体的に」って言われたらめちゃくちゃムズいな……でも、今のJ-POP界隈を含めて、ロックシーンのトップを狙いたいなとは思っているので。ライブもそうだけど、楽曲としてもちゃんと老若男女に受け入れられるバンドになりたい。それがある種、「時代を作る」ということなのかなって思います。もちろん、まだまだなんですけど。
──でも、大多数が求めるようなところに自分たちを寄せていくというわけではないんですよね?
えい 寄せていくつもりはまったくないです。例えば、歌詞は優しくなければいけないとか、曲調はキャッチーでなければいけないとか、今まではそれが王道と呼ばれる音楽の文化になってきていたところもあると思うんですけど、bokula.はbokula.として自分たちなりのロックを貫き続けていけたら、新しい文化が作れるんじゃないかなと思っていて。あくまでも自分たちが好きにやってることに対して、それを好きだと共鳴してくれる人の母数をどんどん大きくしたい。そのためにも手札は増やしていきたいと思っていますね。いろんな音楽を作るのは楽しいですし、僕の生きがいでもありますから。
サプライズでリリース発表
新境地の“ハートにハグしよう”
──ワンマンライブの翌日に配信リリースされた新曲“ハートにハグしよう”は、まさしくbokula.の新たな手札と呼びたい仕上がりですよね。ホーンをフィーチャーしたサウンドもとても新鮮で。
えい リファレンスは斉藤和義さんの“ずっと好きだった”なんですよ。キャッチーで、ロックンロールなんだけど温度のある楽曲を作りたいなと思っていたのが、この曲の始まりで。ホーンもわりと最初の段階から頭のなかで鳴っていましたね。今まではギターを歪ませてコードをジャカジャカ弾いてるようなものが自分のなかでは主流だったんですけど、「コードばっかり弾いていても雑音にしかならないよな」って思うようになってきて。音数を減らす美学みたいなところを最近は大事にしているので、イントロもリフで勝負してみたりとか。そうしたなかで彩りもつけたくてホーンを入れたっていうのもあります。
bokula. – ハートにハグしよう【Official MusicVideo】
──それにしても、ライブでいきなりリリースを告知して、日付が替わると同時に配信スタートというスピード感には驚かされました。メジャーデビューの発表(※デビュー前日のライブで発表、翌日にメジャー1stデジタルシングル“最愛のゆくえ.”をリリースした)もそうでしたけど、このバンドってサプライズが好きすぎません?
ふじい ウチのボーカルだけですよ。俺ら3人ですら知らないことが多々ありますからね(笑)。
さとぴー メンバーもサプライズされるっていう(笑)。
えい 昔から人に何かを仕掛けることに喜びを感じるんですよね。しかもライブでサプライズするっていうのは、お客さんもいちばん沸くし、同じ気持ちで共鳴し合えるじゃないですか。すごく大事なことなんだけど、それをサラッと言っちゃうのもウチらしいし。
──告知直後、どんな気持ちでこの曲を演奏されていたんですか。
ふじい ライブで披露するのは昨日で3回目だったんですけど、いやぁ、難しい曲ですよ(笑)。今、うちのボーカルが作ってくる曲の幅が広くなってるんですよね。「わあ、またこんな新しいことを取り入れてる!」って驚かされることが多くて。自分はバンド歴10年ぐらいになるんですけど、こんなにシンコペーションを取り入れた楽曲って今まで叩いたことがなかったんです。ということは、これが俺の次の課題なんだなって。“最愛のゆくえ.”もそうだったし、最近は曲が上がるたびにそう思わされることが多いんですよね。だからこの曲もライブで育てていくのがすごく楽しみで。
えい まだまだ驚かせちゃうよ! 引き出しはいっぱいあるから。
ふじい いいねぇ(笑)。
かじ ギターに関して言うと、この曲は今まででいちばん音が歪んでなくて。ロックバンドといえば大抵、ギターを歪ませてるんですけど、それだと良くも悪くもごまかしが効くんですよね。でも、この楽曲はほぼクリーンなので右手の弾き方がもろに音に出るんです。ちょっとでも集中を怠ったら鳴らないかもっていうくらい。
えい 実は繊細だよね。
かじ 本当に繊細。昨日はまだ体に馴染みきっていない感覚があったので、もっと極めたいなと思ってます。
さとぴー 僕は弾いていて楽しいですね。僕にとってこの曲は自分の持っていったベースラインがやっと採用された曲なんですよ。あれこれともがいて勉強してきたことが、ようやく実になったっていう。曲の展開とかめちゃくちゃ考えながら付けたベースラインなので、それを人前でも演奏できるのがすごく楽しい。
えい 初めて褒めましたもん、俺(笑)。
──じゃあ演奏しながら「どうだ! これが俺のベースラインだ!」みたいな?
さとぴー そう、「この音を聴いてくれ!」って(笑)。これからも、もっともっとカッコいいベースラインを作っていきたいですね。
「ウチのボーカル、ヤベぇっしょ!」
──歌詞に関してはいかがでしょう。これはウェディングソングと捉えてもいいんですよね?
えい ちょっとウェディングウェディングしすぎましたけどね(笑)。正直、歌詞の最後のほうに出てくる《今夜は白いドレスが似合うぜ》がなかったら別にウェディングじゃなくてもよかったんですよ。そこまでは普通に平凡な恋人たちの曲を書いていたのに、その1行が出てきちゃったことで急に結婚式の絵が浮かんできて。でも直接的なウェディングを描こうとしたわけではなく、あくまで比喩表現のつもりなんです。曲のなかの」君」も実際に白いドレスを着ているわけではないですからね。「白いドレスが似合いそうなくらい今日は特に綺麗だね」みたいな。シーンとしては6畳一間とか、そんなイメージ。
ふじい 夜に白いドレスってあんまり着ないもんね。結婚式ってだいたい昼間だし。
えい そうなんだよな。そもそもこの歌詞、5分くらいで書いたんですよ。だからあんまり深く考えてはいないんです。サビのこのメロディがずっと頭のなかで流れていて、いいメロだなって思っていたらパッと“ハートにハグしよう”ってフレーズが浮かんで、勝手に言葉がハマったというか。自分の経験とかではまったくないんですけど。
──だとしたら、なおさら5分はすごすぎです。
えい 最近はメロディもコード進行も降ってくることが多くて、いい曲が書けるときはホントすぐできるんですよね。むしろ悩んで煮詰まるほうが空回りしちゃうし、いい曲にはならないって最近わかってきて。ただ、そうは言っても、この曲をリリースするって決めるまでに30曲ぐらい作ってるんです(笑)。まったくの駄作もあれば、これと張り合えるぐらいの曲もあって。
──そのなかから、この曲がリリースに至った決め手はなんだったんでしょう。
えい 多様性ですかね。昨日みたいにフロアが沸騰するくらいのライブをやっている一面もあるけど、こんなポップに振り切った楽曲もできるんだよっていう、いろんな方向性や幅を見せられるのがbokula.だと思っているので。ロックに固執しないという意味でも新しい名刺代わり、新しい顔としてこの曲を届けたいな、と。
──ロックに固執しないというのは?
えい ロックバンドはこうあるべき、みたいな凝り固まった思想はもういらないなって思うんです。バンドマンならこういうライブをすべきとか……もちろん、そういうものを大事にするのもいいんですけど、bokula.の場合はそこだけにこだわらず新しいジャンルが開拓できるんじゃないかって。
──そう考えるようになったのはいつ頃からです?
えい 最近かなぁ?
ふじい うん。それこそメジャーデビューのタイミングと、(えいの)音楽的な意識が変化し始めたタイミングがマジで一緒だったんですよ。メジャーデビューしたからそうなったではなく、本当にたまたまタイミングが重なったっていう。
──たしかにメジャーデビューのあたりから、それまで縦一直線に伸びていた道がグッと横幅を広げたような感覚が楽曲を聴いていてあったんですよ。何がbokula.をそうさせたんだろうなと思っていて。
えい 責任感かもしれないですね。メンバーの前でこれを言うのはちょっと恥ずかしいんですけど、一応、僕が頭を張ってメンバーの生活を背負っているって想いはあるんですよ。僕自身、曲を作るのは好きだし、だったらできることは全部やって、使える武器は全部使っていったほうがいいよなって思い始めたのがメジャーデビューのタイミングだったんです。それからはちゃんと売れようって強く思うようになって。
──それは大事なことですね。
えい もともと思ってはいたんですけど、それこそロックに固執していたというか、ロックバンドとして譲れないものもいっぱいあるよなっていう拗らせがずっとあって。それが最近になってようやく、本当に自分の好きなことをしよう、自分にとってのグッドミュージックを作り続けようっていう意識に変わってきたんです。音楽でメンバーに飯食わせなきゃ、みたいなある種のプレッシャーも持ち続けているからこそ、楽曲に対してきちんとクオリティを求めることができているなとも思いますし。
──そうしたえいさんの変化はバンドにもいい形で波及していますよね、きっと。
ふじい めちゃくちゃしてますよ。「ウチのボーカル、ヤベぇっしょ!」って胸張って言えますもん。もっと好きにやっていいよって思ってますし、ホントありがとうって感じです。
えい そうやって口に出してくれるの、しゅんすけだけやからな(笑)。
さとぴー 俺も思ってるよ?
かじ 俺も。昨日だって開演前に俺がちょっと強張ってたら「まあ、まかしときんちゃい」って言ってくれて、ホント頼りになるなって。
えい ええわ、もう(笑) 。
さとぴー いや、でもマジでそうだから。ただ、頼りすぎるのもよくないなと思ってはいるんですよ。こっちもえいにカッコいいと思わせたいし、一緒に張り合っていけるようになりたい。そうすれば曲もさらに進化するじゃないですか。
──いい関係性ですね。えいさんにとっても、この3人がいることが原動力になってるんだなってよくわかります。
えい そうなんでしょうね。正直、僕ひとりでも音楽はできると思うんですよ。でも、それだと全然つまらないのも目に見えていて。この形態じゃなきゃ音楽を好きになれない気がするというか……音楽を作ることは本当に好きなので楽曲提供とかもしてますけど、やっぱりバンドがいい。バンドのロマンを突き詰めたいんです。
度胸と自信を携えて回る全国ツアー
──さて、この先についても伺わせてください。メジャーデビューからまもなく1年、bokula.として今後どうなっていきたいとかありますか。
えい ないですね(即答)。こうあらねばとか、こうなりたいとか、まったくないです。目の前にある一個一個のセクションを大事にしていくだけ。
──例えば今回のO-EASTのように、次に目標とする場所とかは?
えい そういう意味で言うなら、次のツアーを全箇所ソールドアウトさせたい、かな。
かじ・さとぴー・ふじい うん。
──2025年1月からスタートする<RE:セイテンノヘキレキツアー>ですね。全国8ヵ所で対バン公演、ファイナルの東京・Zepp Shinjukuはワンマン公演となっています。
えい 今回、ワンマンツアーを回れたことでひとつ、デカい軸はできた気がしてるんですよ。自分たちの強みや良さに気づけたし、今なら対バン相手が誰でも唯一無二感を持ってライブに臨める。その度胸と自信はつきましたね。
かじ だから、すごく楽しみだし、早く回りたいです。今までの対バンツアーでは対バン相手に対して怖気づいちゃうことも個人的にはあったんですけど、今度のツアーは「今の自分らは最高だな」ってちゃんと思いながら回れそうな気がしてますから。
──Zepp Shinjukuというさらにスケールアップした場所でワンマンを行うことに関してはいかがですか?
えい O-EASTは僕のなかで特別な場所でしたけど、Zepp Shinjukuに対してはちゃんと次のステップに行こうっていう気持ちだけですかね。逆に特別な思い入れがないぶん、自由に堂々とライブができるんじゃないかなって思います。そう思えるのも昨日のO-EASTであれだけのライブができたからですけど。
ふじい 昨日のライブはマジでそれぐらい大きかったですね。ツアー本編の最終日にLIQUIDROOMでワンマンをやらせてもらったときは「なんか今日の俺ら、お客さんに負けた感じがあったよな」ってライブが終わってすぐに話したんですよ。お客さんが盛り上がりすぎて逆にわからない、みたいな感じで。でも昨日はもう「こっちもやる気だぜ!」っていう、ステージもフロアもいちばんいい形のライブが体現できたからZepp Shinjukuに対してもフラットに楽しみやなって思えるんです。
さとぴー 昨日のライブは過去イチ短かったもんね、体感で。
えい ホントあっという間。
さとぴー それぐらい自分らも楽しめたし、すごく気持ちよかったんですよね。そうなれたのはワンマンツアーを通してちゃんと経験値を積み重ねてきたからだし、次のツアーでもまた何かしら進化してZepp Shinjukuを迎えると思うので。
──もはや期待しかないです。えいさんがおっしゃったバンドのロマンをどんどん突き詰めていってください。
一同 はい、ありがとうございます!
Text:本間夕子
Photo:Maho Korogi
INFORMATION
ハートにハグしよう
9月30日配信開始
bokula.
RE:セイテンノヘキレキツアー
1月11日(土)札幌SPiCE w/後日発表
1月13日(月祝)仙台enn 2nd w/後日発表
1月18日(土)名古屋CLUB QUATTRO w/後日発表
1月19日(日)金沢vanvan V4 w/後日発表
1月25日(土)広島CLUB QUATTRO w/後日発表
2月1日(土)大阪BIGCAT w/後日発表
2月2日(日)高松TOONICE w/後日発表
2月8日(土)福岡CB w/後日発表
2月11日(火祝)Zepp Shinjuku ※ワンマン
チケット料金:スタンディング 4,000円(D代別)
ファミリーマート先行:
10/17(木)13:00~10/28(月)23:59