世界興行収入 No.1シリーズのマーベル・スタジオ最新作『キャプテン・マーベル』が、ついに3月15日(金)、日本で公開された。昨年4月に公開された『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の衝撃的な結末に絶望感を味わったマーベルファンは、続けて8月に公開された『アントマン&ワスプ』でもそれを振り払えず(アントマンはあのテイストが最高なんだが……)。しかし、マーベルはこのタイミングで満を持してとっておきのヒーロー、キャプテン・マーベルを登場させた。

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『キャプテン・マーベル』は、宇宙からの脅威もヒーローたちの存在もまだ知られていなかった1990年代半ばのアメリカが舞台。原作ファンにも人気の高いキャプテン・マーベルが自らの過去と向き合い、ヒーローとして覚醒する過程を描くとともに、アベンジャーズ誕生の秘密が明かされていく。本作は、4月26日(金)に日本で公開する『アベンジャーズ/エンドゲーム』へ繋がる重要なエピソードなだけに、ファンは決して見逃すことのできない作品と言えるだろう。

この超大作の公開に合わせて、Qeticではさまざまな角度からキャプテン・マーベルを特集。今回は、本作のテーマである“女性の強さ”や“アイデンティティ”という観点から、リアルなボディーペイントが話題のアーティスト・チョーヒカルさんに試写直後のインタビューを敢行した。

これまで映画などで描かれる女性像にどこか不満があったというチョーヒカルさんだが、キャプテン・マーベルのカッコ良さにスッキリしたご様子。サノスの圧倒的強さに絶望したマーベルファンのみんな! 大丈夫だ! 地球にはキャプテン・マーベルがいる!

Interview:チョーヒカル

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キャプテン・マーベルがブッ飛ばす、ありがちな“女性像”

——いやー……面白かったですね。試写直後なので、まずは率直な感想を伺えますか?

もーめちゃくちゃ面白かったです! 終わった後も小声で「めちゃくちゃ面白かった」って言っちゃいましたもん。今まで見た作品と比べても、痛快さがズバ抜けてあったと思います。今の時代って女性がメインで描かれる作品がけっこうあると思うんですが、結局……すごく肝心なところで男性を入れてくるんですよ、多様な形で。あと物語の回収要素を“愛”にしちゃったりして、別に悪いわけじゃないんですけど「そういうことじゃないじゃん!」みたいな。この作品はキャプテン・マーベルが自分と向き合う過程にしっかりフォーカスが当たっていたのが良かったです。

——ストーリーが痛快でキャラクターもすごく魅力的に描かれていましたよね。

そう! 本当に恋愛が始まらなくて良かったです。それっぽい役が出てくると「ロマンスが始まるんじゃないか……」と思ってドキドキしちゃいました。やっぱり、これまで女性がメインの映画は愛で〜みたいな感じが多くて。でも違うじゃないですか。女性は、自分で自分のことを探って強くなれるっていう映画が観たかったんです。

——確かに「強くなるきっかけが愛」のストーリーはよく見ます。

多いですよね、そういう精神論みたいなのはあまり好きじゃなくて。今回も、すべては彼女の中にあったんですよ。

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——観るとそれがわかります。本作の告知では“サスペンスフル・アクション”という謳い文句があったので、もっとダークな世界観なのかと思ったらそんなことはなくて。もちろん謎解きの部分もあるのですが、ハートフルだったし、コメディ要素も多かったように感じます。

そうですね、めちゃめちゃハートフルでコメディ。キャプテン・マーベルは一つ一つのセリフがコミカルだったし、全体を通して面白かったですね。私は血がすごく出るような強めのアクションシーンとかは苦手なんですが、アクションシーンも痛快でした。

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——血すらも出させないほどの強さでしたね。

しかも「ヤバイぞ!」みたいな時に一回余裕を見せるような皮肉の効いたセリフを挟んでくるじゃないですか? あれいい……チャンスがあったらやりたい! ホント最強でしたね。あとこのシリーズの伏線回収に次ぐ伏線回収というか、すごいうまくストーリーが組まれていた気がします。マーベル好きの人だったら大喜びみたいなネタがたくさん入っていて良かったですね。

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——あと、時代で言うと本作は1990年代半ばのアメリカ・ロサンゼルスが舞台なので、街の様子や流れている音楽など、懐かしい小ネタもたくさんありました。

キャプテン・マーベルが落ちてきたビデオショップ(1990年代当時、アメリカ各地に存在したビデオレンタルチェーン店“ブロックバスター”)は、映画の中で見たことがあります。あと音楽がすごく入ってくる映画でしたね。戦闘シーンも大音量で音楽が流れていて気持ち良かった。やっぱり明るい音楽が流れている時に、悲しいことは起きないじゃないですか?

——安心感?

はい。心配なく最高のアクションが見られるぞって感じでしたね。

——あと、キャプテン・マーベルを演じるブリー・ラーソンと、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)シリーズではおなじみニック・フューリー役のサミュエル・L・ジャクソン。本作がマーベル作品以外を含めて3回目の共演になるのですが、この二人の掛け合いは見事でしたね。サミュエル・L・ジャクソンはCGで20年以上前に若返ったフューリーになっていましたが。

え! そうなんですか……あの一つ一つのシーンが。お金が掛かってますね。

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——ブリー・ラーソンの演技はいかがでしたか? ラーソンにとって初の本格的アクション映画なので、あれだけ動く彼女を観るのは新鮮だと思うのですが。

いい意味で異質な感じがしました。今まで小気味の良いことを言う女性ヒーロー役ってあまりいなかったような。ブラック・ウィドウともまた違うし、違う畑の人だからこそ持っている演技の魅力みたいなものが表現されているような気がしました。

——強い女性を描く時に出がちな“必死さ”を感じなかったですね。

頑張って、頑張って……というより、むしろ抑圧されていた、みたいな感じ。キャプテン・マーベルの力が解放された時にそう思いましたね。人間味100%でしたもん。

——力を解放した時の人間味はヤバかったですね。

ハハハ! めちゃくちゃ「楽勝だぜー!」って感じでしたね。「こんな強い人出しちゃって大丈夫?」ってぐらい。あと、いろいろなヒーローが持っている過去からくる重圧とか、それによって生まれた仁義みたいなものが重すぎず、自然体で強かったのですごく好感が持てました。

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チョーヒカルにとってのアイデンティティと原体験

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——本作はキャプテン・マーベルのアイデンティティの部分もテーマにあったと思うのですが、それもあまり重く描かれていないのが良かったのかなと。チョーヒカルさんはご両親が中国の方とのことですが、その点はどのように感じましたか?

私もその部分は彼女自身の内面にしっかりフィーチャーされていたので良かったと思います。私は両親が中国で、言ったら……地球人の両親を持って、日本に来た……今のは忘れてください。

——(一同)ハハハハハ! 

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日本生まれ日本育ちで、第一言語も日本語です。だから血とか愛国心とかは苦手で、大義のためにお国のためにみたいな感覚はよくわからなくて。日本も中国も好きですが、祖国みたいな価値観はあまり無いんです。

——その感覚はもしかしたらキャプテン・マーベルに通じる部分かもしれませんね。チョーヒカルさんが身体に絵を描き始めたきっかけとして、予備校に通っているときに「紙が無かったから身体に描いた」というエピソードがすごく好きです。

あ〜あれは落書きしたい時に紙が無くて。地下に画材屋さんがあったけど降りるのは面倒だし、紙も1枚36円とかして高いんですよ。それを買わなかったらキャラメルが3つ買える。「じゃあ手でいいじゃん!」と思って目を友達の手に描きました。

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——もともと人体そのものとか、身体に描くことに興味があったんですか?

絵を描くのが好きな人って、最初は人を描くことから入ると思うんですよ。でもやっぱ美大の受験は“みかんと鎖”とか描くんですよ。あとは“アクリル棒と花”とか、静物ばっかりなので。

——まず“人が描きたい”から、“人に描きたい”になった……?

まあそれは本当に紙の代わりだったんですけどね。でも18、19歳の頃の私は承認欲求の塊だったので、お恥ずかしい話ですが、それをTwitterに上げたらすごいイイねされて。初めて承認欲求が満たされたんです。昔から私はアナログなものが好きだったんですけど、今ってデジタルが発達していろいろなことが可能になっているので、「アナログで絵を描く技術ってもう必要ないんじゃないか」と思っていた時期があって。でも私が描くものって到底CGには見えないし、だから最初に手に目を描いた時にそれだけ反応があったことで、アナログにはアナログの強い魅力があるってことを再認識したんです。

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——それがチョーヒカルさんにしか描けないアートに繋がっていったんですね。少し強引に話を戻して申し訳ないのですが、これまでさまざまな人に描いてきたチョーヒカルさんが、例えばキャプテン・マーベルがキャンパスになった場合、何を描きますか?

やっぱりグースを描いちゃいますね。グースは一番描きがいがあって、奥行きも出せそう。

——ボディペイントでも動物をたくさん描かれてますもんね。猫好きですか?

猫めちゃめちゃ好きです。拾ってきた雑種の子を実家で飼ってますし、グースも飼いたいですね。猫の仕草のシーンもわかってるな〜って感じでした。「そういう行動する!」みたいな。

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——自然でしたね。あとキャプテン・マーベルは記憶を失って、夢によるフラッシュバックに悩まされるわけですが、チョーヒカルさんは夢をよく見ますか?

すっ……ごい、アカデミー賞ものの夢を見ますよ。

——……アカデミー賞?

めちゃくちゃ面白くて脚本賞受賞ぐらいの夢を見ます。でも起きて忘れて「あー!」みたいな。覚えている時は携帯にメモしたりするんですよ、「コッペパンに鉄を混ぜる」とか。それを人に食べさせるとすごい強くなって、その人を戦場に送りだす……。

——それは夢では面白……い? でも基本的にポジティブな夢が多いですか?

スパイものとかも見ますね。でも言われてみると、基本的に明るいかもしれません。

——まあでも今回のことがあって、キャプテン・マーベルも明るい夢を見られるでしょう。

ハハハ! 何ですかそのまとめ! そうだといいですね。

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キャプテン・マーベルにはこのまま100%自然体でいてほしい!

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——マーベル側もここまでシリーズが長くなってきたので、このタイミングで女性のヒーローを登場させて新しい風を吹き込むと同時に、新しい層の人にも観てほしいって想いがあると思います。

確かに、キーになるキャラクターにも女性が多かったですね。

——今回は監督や脚本、衣装デザインなど製作陣にも女性が多いですし。

多分そのみなさんも、これまで描かれがちだった女性キャラクターみたいなのが嫌いなんでしょうね、フフフ。そういう強い意志は感じました。私も同じ気持ちだったので、それを汲み取ってくれるヒーローの描き方やストーリーが嬉しかったです。

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——言えないことも多いですが、最後は希望で終われた気がします。そして、キャプテン・マーベルも登場する『アベンジャーズ/エンドゲーム』がもう来月に迫っていますね。

キャプテン・マーベルはずっとこのままでいてほしい! いろいろなことを経験して分厚いキャラクター……とならずに、このまま100%自然体で。これは願いです。ヒーロー映画の女性は強い人の奥さんで、家でずっと待っててくれて、負けそうな時に力をくれるとか、強さ的にはそれほどじゃないけどチームの一員で、機転を利かせて戦うみたいな感じが多かったので。キャプテン・マーベルみたいに、「ただただ強い!」っていうのはいいですよね。そういう女性像は新しかったです。コスチュームも女性キャラクターはセクシーなものを着せられがちだけど、今回はそういうのも無かった。この映画は小学校とかで教材として見せてほしいですね。

——教材になるマーベル映画、いいですね。あと海外の映画館だともっと「フォー!」とか盛り上がりそう。それほどシンプルに興奮するシーンが多かったです。

確かに! アメリカの映画館だともっとみんな喋りますよね。それにもっと爆笑してると思う。あと日本でまだマーベルの作品を見たことない人には、一番いい作品なんじゃないですか? ストーリーとしてもシリーズの最初の時代を描いている作品だし。初の単独女性主人公のヒーローってことですが、もはや女性っていう枠だけじゃない。あえて女性ヒーローを強く描くぞっていう感じが無かったし、「最強の女性が最高」だったっていうことだと思います。

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キャプテン・マーベル
大ヒット公開中

原題:Captain Marvel
監督:アンナ・ボーデン/ライアン・フレック
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ブリー・ラーソン、ジュード・ロウ、サミュエル・L・ジャクソン、クラーク・グレッグ 
全米公開:2019年3月8日
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン ©Marvel Studios 2019

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チョーヒカル

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interview&text by ラスカル(NaNo.works)

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Photo by 高見知香

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