世界興行収入 No.1 シリーズのマーベル・スタジオ最新作 『キャプテン・マーベル』が、とうとう3月15日(金)に日本で公開を迎え、2019年に公開された洋画の中でNo.1のオープニング記録を叩き出すなど、早くも大ヒットとなっている。マーベルヒーローの中で“最強”の一人として名高いキャプテン・マーベルが、いかにしてヒーローとして覚醒したのか? そしてそれが、アベンジャーズ誕生にどのように繋がるのか? 『キャプテン・マーベル』によって、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)シリーズにおける重要な1ピースがハマるとともに、本作は女性の強さ・美しさを新たな形で描いた作品と言えるだろう。
そこで今回は女性目線でこの作品を読み解くべく、Czecho No Republicのギターシンセヴォーカルを担当するタカハシマイさんにインタビュー。バンドでの活躍に留まらず、ファッションモデルやテレビ番組のMC、さらに今年は舞台『みみばしる』で女優デビューも果たした彼女に、本作の見どころや意外だったシーン、そして女性として共感する部分などを伺った。
Interview:タカハシマイ
キャプテン・マーベルのくじけない姿勢に共感
——試写を見てから少しだけ時間が空きましたが、率直な感想を聞かせてください。
私は小さい頃から映画が好きなおじいちゃんの影響でアクション系をよく見ていて、それこそジャッキー・チェンとかも好きなんですけど、アクション・シーンにめちゃくちゃ興奮して「超かっこいい!」と思いました。女性が戦うアクション映画はいろいろあると思うんですけど、とにかくキャプテン・マーベルの強さに感動しましたね。あとは、敵役のタロスとかスクラル人のキャラクターもすごく大好き。ああいう描き方もすごくいいなって。
——ヴィラン(敵)の描き方は意外性があって、僕も好きになりました。タカハシマイさんがジャッキー・チェンを好きというのは意外ですね。
ジャッキー・チェンは「これが好き!」というよりは、おじいちゃんと一緒にいろいろ見たのを覚えている感じです。あと最近、宇宙にも興味があって。『インターステラー』(クリストファー・ノーラン監督によるSF映画)を観たことがきっかけなんですが、さらにこの作品を観て、「世界はこうなっていくんだな〜」って。
——悟っちゃいましたか?
ハハハ! なっていくというか、なればいいな〜みたいに思いました。
——タカハシマイさんが、特にカッコいいと思ったシーンはどこでしたか?
やっぱりまずはスクラル人が地球に来た時に、電車でキャプテン・マーベルと戦うシーン!あれはおばあちゃんとかも……ビックリしましたね。
——キャプテン・マーベル役のブリー・ラーソンは、この作品のためにものすごいトレーニングをしていて、ほぼ自分でアクションをこなしているそうです。メイキング映像でその様子の一部が公開されているので、まだ見ていなければぜひ。
そうなんですね、ホントにカッコよかった。それにただカッコいいだけじゃなくて、すごくコミカルで笑っちゃうシーンも多かったです。観ている時に隣の方もすごい笑ってました。
——海外だともっと大爆笑しそうですね。
確かに! あと、展開がすごく早いなって感じました。こういうヒーローものって、まず力を得るところまでを描くことが多いけれど、もう最初から力を持っていてみたいな。
——MCUシリーズにおいても、“何かを乗り越えてヒーローになる”ケースがほとんどなので、最初から強いヒーローは珍しいかと。
そうですよね。あとは彼女の気の強さというか、挫折しない姿はすごく共感しましたね。記憶のフラッシュバックのシーンで、くじけず立ち上がるところはすごくグッと来ましたし、私もそうありたいと思いました。私も気の強い部分があるし、近いと思ったからグッと来たのかも。
——その意味では、タカハシマイさんはキャラクター的に誤解されることが多いんじゃないですか?
多いですね。何というか、着る物はワンピースとかカワイイ感じが好きですけど、中身は違うというか。だから、好きになってくれた人が「実際の私を知ってがっかりしたらどうしよう」とか思ったりも。お客さんの私に対するイメージを、そこまで壊さないようにしたいなとは思うんですけど……最近はもう出ちゃってますね、素の部分が。
——本作でキャプテン・マーベルは、記憶を失っているとともに周囲から「お前はこうあらねばならぬ」という風に教育されて葛藤するわけですが、タカハシマイさんも「周りの人たちが持つイメージに合わせなきゃ」と悩んだ時期はありましたか?
それは今でもありますね。でも「何のためにこの仕事をしているのか」を考えた時に、やっぱり誰かに楽しんでもらいたいとか、楽しい気持ちを共有したいからだと思って。例えばライブをしていても、お客さんと一緒にすごく高揚して、一つになったような瞬間は幸せを感じます。そういう人たちの気持ちを裏切りたくないっていうのはありますが、その人たちは私のことを、いわゆる“ゆるふわ女子”みたいに見ているかはわからないじゃないですか。そういう意味では最近、お芝居に挑戦した時に自分を見つめ直すことができて、「別にいいんじゃない」って思えるようになりました。吹っ切れたというか、もっと素直に自分を出したいなと思えたんです。
女性の媚びないエロスと、内から滲み出る美しさ
——先ほどの話で、先月までJ-WAVEと劇団ゴジゲンがコラボした舞台『みみばしる』でお芝居に初挑戦されていて、千秋楽のあとにInstagramで「表現することがより好きになった。音楽においても重要な事を学んだんだ」と仰ってましたね。
音楽の時はもちろん歌詞の内容を考えながら歌うんですけど、今までは本当の意味で「自分の人生を乗せたことが無かった」のかなと。歌詞を書く人は自分の人生を乗せて書く人が多いと思うんですけど、私はボーカルが書いたものを歌っていたので。舞台に初挑戦して、その経験から私は「歌詞に助けられながら歌っていた」ことに気づいたんです。ボーカルが書いた歌詞に私も元気付けられて、その元気付けられた私のパワーを、お客さんにも共有していた。でも今回の舞台では、自分の感情や、自分の人生をセリフに乗せていたんです。そこから音楽でも自分の人生を乗せて歌ったら、もっとお客さんに響くんじゃないかと思いました。
——それは大きな学びであり、これからの変化が楽しみですね。
はい。あと、人に自分を表現することがもっと好きになりましたね。稽古を1ヵ月間やって、20人ぐらいのキャストとずっと時間を共にしていたら、人をすごい好きになったんですよ。「こんなに心が開けているのは久しぶり」って思うぐらい。メンバーは毎日のように会うし、兄弟みたいな感じになれているけど、例えば友だちとかは、1ヵ月とか空くとけっこう緊張しちゃって。でも舞台を経験したことで、「人と一緒にいるのってこんなに楽しいんだ」って感じましたし、そこから自分の内面を人に出すことを楽しいって思えるようになりました。
——昨年はバンドのことも含めていろいろあったと思いますが、舞台など新しいことにチャレンジしている姿を見て、吹っ切れているような印象を受けました。その意味では、本作でもキャプテン・マーベルにとって “自分らしさへの解放”が大きなテーマとなっている。解放ゆえのあの強さ……なのでタカハシマイさんも今すごく強いと思います。
ハハハ! 今たぶん私は超強いと思います。キャプテン・マーベルも、いろいろわかってきてからスゴかったし、解放してましたね。私も自分の中にある気にかけていたものを解放でき始めている気がしますし、少しずつ強くなれていることを……願っています。
——キャプテン・マーベルも、いろいろな思惑に挟まれた結果、「私は私!」って自らを解放した姿がとても清々しかったですね。
そうですね。私の場合は、気にし過ぎている部分もあったと思います。勝手に吹っ切れてやればいい話だったのかもしれないけど、自分の中では考えちゃうところがあったんですね。
——そう簡単じゃないですよね。タカハシマイさんにとって、理想の女性像はありますか?
憧れとは違うかもしれないですけど、『(500)日のサマー』という映画で、ズーイー・デシャネルが演じるサマーのキャラは憧れますね。男性を振り回す感じとか媚びない感じがスカッとしますし、いい意味ですごくワガママなところがいいなって。そういう部分は少し見習って、やり過ぎない程度に自分を解放できればいいなって思います。
——高校を卒業して音楽をやっていこうと思ったタイミングで、椎名林檎さんに影響を受けたという話を過去のインタビューで拝見しました。あの方も媚びない女性ですよね。
確かに。でも意外とお茶目だったり、ふざけたりする一面もあって、すごく素敵だなと思います。
——女性ヒーローの描き方で言うと、本作は監督や脚本、衣装デザインなどにも女性クリエイターが起用されていて、キャプテン・マーベルの衣装は意図的に露出を抑えているそうです。
そうなんですね。そのあたりは男性目線だと、また違ってきそう。
——そのあたりも、まず女性であることが重要視されていない。フューリーとかをからかってみせる立ち振る舞いなども、新しい女性ヒーローの描き方のように感じました。
もちろん、露出をしてカッコいい女性も好きなんですよ。その違いって何でしょうね? セイント・ヴィンセントとかも好きで、最近はけっこう露出もしてますけど、媚びている感じじゃないですし。やっぱり内からにじみ出るものなんでしょうね。
——やっぱり今回のブリー・ラーソンだと、めちゃめちゃ身体を作り上げたのに隠すっていうところに、本当のエロスが宿るんじゃないですか。
ハハハ! そこか〜。先ほど言っていた鍛えてるメイキング映像を見てみます。
イメージしていなかった新しいヒーロー映画
——本作は1990年代の懐かしい曲が印象的な場面で使われていたのですが、タカハシマイさんが気になった曲はありましたか?
正直、細かくは覚えていないんですが……ニルヴァーナ(“Come As You Are”)は気が付きました。
——全体を通して、MCU初の女性作曲家であるパイナー・トプラクの手がけた音楽が使われているのですが、それに加えてノー・ダウトの“Just a Girl”や、holeの”Celebrity Skin”などが使われていました。
そういった部分も女性目線で作られているんですね。あと、戦闘シーンで音楽がガンガンかかっていて、キャプテン・マーベルの無敵感がスゴかった。
あれは爽快でしたね! そのほかで印象に残っているシーンはありますか?
あまり言えない部分だと思うんですけど、キャプテン・マーベルたちとスクラル人たちとの意外なシーンがあって、それはすごく印象に残っています。
——読者の方は、ぜひ劇場でそれを確かめてほしい。あ、猫のグースはいかがでしたか?
あれはかわいかったし……ビックリでしたよ。
——それも「ぜひ劇場で」というところで。
観る前に、すごく猫がかわいいって聞いていたのもあったので。
——意外性は抜群でしたね。改めて本作を観て、先日まで舞台にも出演されていましたし、「次はアクションに挑戦してみたい!」と思ったりしませんか?
ああ……でも元々、小さい頃に空手をやっていたんです。小さい頃って、自分に特殊能力があると思い込んでませんでしたか? 私の場合、「私、絶対強い」みたいに思っていて。アクションとか誰かを倒すっていうのは、すごくやってみたいです。
——ぜひその作品を観てみたいです。次はキャプテン・マーベルも出演することが決まっている、4月26日(金)公開の『アベンジャーズ/エンドゲーム』が迫っています。シリーズを追っている人はもちろん、本作をきっかけに「観てみよう!」と思う人も多いように感じます。
そうですね、私もすごく続きが気になりましたし、過去の作品も改めて観てみたい!
——改めて観ても、きっとキャプテン・マーベルが最強で無敵な気がします。唐突ですが、タカハシマイさんは自分が無敵だと思う瞬間はありますか?
それ……自分で言いますか? ハハハハ! でもライブの熱気がすごくて、「めちゃくちゃ最高!」みたいな時は無敵……なのかな。
——最後に、今までマーベル作品をあまり観てこなかった人に向けて、この作品の良さを伝えるとしたらどのように勧めますか?
私がイメージしていたヒーロー映画って、いろいろ過程はあるにしても、「ヒーロが敵をやっつけて、世界平和になりました」みたいな感じだったんです。でもこの作品は、まったくそうじゃ無かったのが良かったです。あとはやっぱり、女性に観てほしいですね。私自身がすごく共感できる部分が多かったし、笑える部分もグッとくる部分も詰まっていた。私が続きを観たいと思ったように、この作品を観たらマーベル作品自体にもすごく興味が湧くと思いますし、私はこのタイミングで『キャプテン・マーベル』を観られて良かったです。
キャプテン・マーベル
大ヒット公開中
原題:Captain Marvel
監督:アンナ・ボーデン/ライアン・フレック
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ブリー・ラーソン、ジュード・ロウ、サミュエル・L・ジャクソン、クラーク・グレッグ
全米公開:2019年3月8日
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン ©Marvel Studios 2019
S.H.Figuartsキャプテン・マーベル
¥6,480(tax incl.)
2019.03.30(土)発売
対象年齢:15才以上
商品特徴:頭部は「魂のデジタル彩色」で再現する圧倒的なクオリティ。交換用頭部パーツや、エフェクトパーツが付属。
発売元:BANDAI SPIRITS コレクターズ事業部
S.H.Figuarts キャプテン・マーベル | 魂ウェブ
タカハシマイ
interview&text by ラスカル(NaNo.works)