――8月にはベストアルバム『DISCOVER』もリリースされましたが、どんな思いで選曲されたんでしょうか。

僕の音楽的なパーソナリティを反映したディスクになっていると思うよ。特に今までケルト音楽を知らなかった人、カルロス・ヌニェスという人間を知らなかった人のためを思って作ったものなんだ。たとえばアメリカをツアーして知らなかった人のためにやった曲もあるし、すべてにおいてコンピレーションアルバムというか。オリジナルアルバム1枚1枚は、また違った目的を持っているけれど、本作はそのすべてをカヴァーできるようなものになっている。アイルランドをはじめとしたケルト音楽の世界もあるし、ケルト音楽とフラメンコの関わりがわかる曲もあるし、ラテンアメリカとの関わり、クラシックとの関わりがわかる曲もあるし、日本のアーティストとの共演も入っているよ。

【インタビュー】『ゲド戦記』や坂本龍一との共作で知られるガイタ奏者=カルロス・ヌニェスとは? 日本スペイン交流400年記念として来日する彼に迫る news130920_carlos-nunez_jk

――カルロスさんの開放的な生演奏はロックフェスティバルのような場所でも聴いてみたくなります。

過去にはスタジアムでロックバンドと一緒にやったこともあるんだよ。場所というものはいろんな違いがあると思うんだけど、画家が3メートル大の大きな絵を描くのと、ホントに小さな5cm角ぐらいの絵を描くのが手法や見え方が違うのと同じで、演奏家にとって場所というのは、何人の人に聴いてほしいのか? ということだと思う。小さな場所にも大きな場所にもそれぞれのエネルギーの燃やし方があるし、また、クラシックのための劇場というのは、クラシック音楽というものを学ぶ必要があると思うんだ。同じようにサッカー場のようなところでロックやポップスをやる場合も学ぶことがあったし。だからひとつひとつの場所でやること自体がチャレンジで、そういうことすべてが僕の音楽を前進させてくれる糧になっていると思う。

――ということは、また日本でもそうした場所でのライブに期待してもいいでしょうか?

もちろん。いろんな場所やスタイルで演奏する可能性があると思うよ。たとえば僕が演奏しながら、その隣で画家がペインティングをやるというのもアリだと思うし。日本で初めて演奏したのはもう20年前になるんだけど、その時はザ・チーフタンズと一緒に奈良の大仏の前で鼓童のドラマーの人たちと一緒にやったんだ。当時としては非常にざん新なことをやれて、その時のことは自分の人間としての在り方を変えてくれたと思ってるんだ。

――すごい。それはぜひ現代にアップデートして、またやっていただきたいですね。

もちろん、僕もやってみたいよ。

――期待しています。では最後に日本のリスナーへメッセージをお願いします。

若い人たちに伝えたいのだけど、自然と伝統に由来するシンプルなものを見つけ出してほしいと思っているんだ。というのは、自然とコンタクトをとることと、先人の知恵から学ぶことっていうのは僕たちをもっと自由にしてくれるはずだから。そしてもっと気持ちよく生きられるはずなんだ。今はアメリカがすべてのオピニオン・リーダーのようになっているけれど、そうじゃない何か一石を投じられると思うし、もっとユニバーサルなものを求めていいし、そのことで世界はつながっていくと思うんだ。

――確かにガリシアと小石浜という、こんなに離れた場所に似た文化があるわけですし。

まさにその通り。そういうことだよ。

【インタビュー】『ゲド戦記』や坂本龍一との共作で知られるガイタ奏者=カルロス・ヌニェスとは? 日本スペイン交流400年記念として来日する彼に迫る news130920_carlos-nunez_flyer

(text&interview by Yuka Ishizumi)

Event Information

日本スペイン交流400年記念「カルロス・ヌニェス特別公演」
2013.10.12(土)@すみだトリフォニーホール
2013.10.13(日)@所沢市民文化センターミューズ
2013.10.14(月・祝)@焼津文化会館

他出演:オレカTX/P・リカルド・ミーニョ
ゲスト・ダンサー:ヘスス・オルテガ、田村陽子

Release Information

Now on sale!
Artist:Carlos Nunez(カルロス・ヌニェス)
Title:Discover(ディスカヴァー ~ベスト・オブ・カルロス・ヌニェス)
Sony Music Japan International
SICP 30157
¥3,000(tax incl.)