——本作のコンセプトはどのように固まっていったんですか? 話し合いの成果だったのか、あなたたちの2年間の経験や体験から自ずと生まれたものだったのか、どうなんでしょうか。

コンセプトは夜。さっき話した通り、僕が書き始めた時点から元々ダークではあったんだけど、アラン・モウルダー(スマッシング・パンプキンズ、ライド、アークティック・モンキーズなどを手がけるプロデューサー)と一緒に作業したことで、よりハードになっていった。彼は、そういったサウンドのロック・レコードを沢山手がけているプロデューサーだからね。もともとそういうレコードにしたいというアイディアもあったし、作業の段階でよりヘビーになっていったんだ。

Circa Waves – Wake Up

——あなたたちが本作の制作において影響を受けたアーティストや作品があるとしたらそれは? また、なぜそれらのサウンドに惹かれたんですか?

制作中は色々聴いていたよ。スマッシング・パンプキンズ、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(Queens of the Stone Age)なんかは沢山聴いていたし、もっとモダンなところで言えば、アークティック・モンキーズも聴いていた。ファースト・アルバムに比べて、今回のアルバムはよりオープンなんだ。そういったバンドを含めた様々な要素を取り入れて、出来るだけビッグなサウンドを作ろうとしたからね。だから、90年代のフー・ファイターズみたいなバンドを聴き返した。ビッグなロック・バンドになることを恐れずに堂々とした音楽を作っていたバンド。ああいうビッグなロックサウンドを作ってプレイするバンドって、そんなに沢山はいないと思うんだよね。その境界線を、僕たちも押し広げたかったんだ。

——では、惹かれたのはそのビッグなサウンド?

だね。あと自信が魅力的だと思う。彼らのステージからはパワーを感じるし、アイコニックなステータスがあると思うんだ。

——前作は英・リヴァプールで生まれ育ったキッズの原風景が感じられる王道UKなサウンドだと思ったんですが、本作はアメリカ的ブルースやハードコア、はたまたフォークやカントリーの要素も多く感じられるユニバーサルなサウンドになっていますが、その理由は何だと言えますか?

レコードはヘビーなサウンドからスタートして、その後少しファースト・アルバムのような落ち着きがくる。その中に、アコースティックのラブソングもあるし、かと思えばダークで感情的な曲もある。このレコードには、色々な音が混ざっているんだ。というのも、今回は、音の旅のような作品を作りたかったんだよね。だからソフトな曲もヘビーな曲も両方入れるようにしたし、バランスを意識したんだ。

Circa Waves – Fire That Burns

——大きな変化の一方で、あなたたち固有のポップ・センス、メロディ・センスは本作でも健在です。むしろより洗練されていると言ってもいいかもしれません。曲作りはもちろんのこと、レコーディングにおいても前作とは大きくアプローチが異なったんじゃないかと感じますが、実際はいかがですか?

今回のアプローチは結構違ったね。まず、僕とアランで一緒にプロデュースしたし、ドラムに関しても、ロック・バンドのドラムサウンドだけではなくて、サンプルを使ったりしてヒップホップっぽいドラムを試したりもした。アランはナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)のレコードをプロデュースしたこともあるし、エレクトロニックのサンプルやドラムの知識が本当に豊富なんだよ。あと、このアルバムにはミニ・オーケストラが演奏しているかのように沢山ストリングスが使われている。前はそんなこと出来ると思ってなかったんだけどね。それもあって、このレコードは前回にくらべて大人っぽく聴こえると思う。新しい試みは、どれも素晴らしい経験だったよ。今回のレコードでは、音のレイヤーが断然厚くなっているんだ。

——そうなると、ライブで演奏するのが大変そうですね(笑)。

その通り(笑)。今ライブのリハーサルをしているところなんだけど、「うわ、俺たち何でこんなの作っちゃったんだろう」って思いながら練習してる(笑)。あと5人くらいメンバーが欲しいくらいなんだけど、頑張って自分たちでなんとかするよ(笑)。

Circa Waves – Stuck (Parr Street Studios 360 Session)

——ちなみに前作は5週間かそこらであっという間にレコーディングしてしまったと言いますよね。対して本作はどうでしたか? レコーディングはいつ、どこで、どのようなプロセスで行われたんですか?

今回も同じくらい。アランがロンドンのノースウエストにスタジオを持っているから、去年そのエリアにレコーディングの期間Airbnb(宿泊施設・民泊サービス)を借りてスタジオに通ったんだ。1週間に2.5曲くらい仕上げていった。スタジオに入る前からデモはしっかり作っていたから、スタジオに入っている間、何をすべきかはしっかりとわかっていたし、作業はスムーズだったね。時間は一切無駄にしなかった。さっき話したように、今回は音のレイヤーが多いから、出来るだけライブでレコーディングすることを心がけつつ、必要な部分は後から音を重ねていったんだ。僕とジョー(ファルコナー)でギターを重ねていったり、ベースとドラムだけ先に録って、その上からギターやボーカルを重ねたりね。

——さらに遡って、本作の曲作りはいつ、どのような環境で行われたものですか? ソングライティングのテーマになったのはあなたの個人的な体験による? それとも?

2015年の12月にツアーが終わって休みに入ったから、2016年の1月から4月にかけて僕が曲を書いたんだ。とにかく書きまくって、多分50曲くらい書いたんだけど、そこから今回のアルバムのイメージに合いそうなものをピックアップして、曲の形を整えていった。テーマは様々だよ。フィクションのものもあれば、自分の経験を歌ったものもある。ファースト・アルバムよりもフィクション性が強いかな。なぜかわからないけど、そういう曲を書いていたんだよね。今の自分は前回のアルバムを書いていた時の自分とは違うし、ファースト・アルバム以来の自分が積んだり見て来た色々な経験や観察、感覚が曲に現れているんだと思う。

——アラン・モウルダーがプロデュースを務めているのにも驚きました。モウルダーと仕事をすることになった経緯は?

前にプロデューサーを探していた時に、彼が興味を持ってくれていると聞いてアプローチをしてみたんだけど、返事がなかったんだ。でも、僕たちの友人の一人が彼の友人でもあって、彼がアランと車に乗っていた時に車で僕たちのバンドの話になったらしく、その時にアランが、何であのバンドのレコードをやらなかったんだろう? って言ったらしいんだ(笑)。で、友達が、お前が返事をしなかったからさって言ったらしくて、そこから話が進んで彼と作業することになった。アラン・モウルダーと仕事が出来る機会があれば、ノーというロック・ミュージシャンはいない。彼は、素晴らしい作品を多く手掛けているプロデューサーだからね。

——モウルダーから新たに学んだことは? 本作を作る上で最も助けになった彼の助言とは?

忍耐だな。曲をベターにするために、根気よく色々と試したよ。助言というか、彼は僕の頭の中にあったアイディアに手を伸ばして、それをつかんで外に出してくれた感じ。アイディアはあるけど自分だけではそれをどう形にすればいいのかわからないものを、彼が形にしてくれたんだ。それはすごく助けになったよ。
 
——曲名でもありアルバム・タイトルでもある『ディファレント・クリーチャーズ』に込めた意味とは?

音楽の世界、そしてバンドの中で、僕たちが以前とは違う生き物であるという意味。あと、同じタイトルの曲を書いている時がちょうどイギリスでシリアからの難民の受け入れ政策が話題になっている時期だったんだけど、20,000人しか受け入れられないという事実をすごく悲しいと思ったんだ。20,000という数字で、救える人が限られてしまうと思うとね。それを超えたら、例えあとたった5人、あと10人救いたい人がいたとしても受け入れられないのかって。歌詞の中の数字は、それを参照しているんだ。

——ありがとうございました!

こちらこそありがとう! 日本のみんなが、僕たちの新しいサウンドを気に入ってくれるといいけど。また来日出来る日を楽しみにしているよ!

RELEASE INFORMATION

ディファレント・クリーチャーズ

【インタビュー】サーカ・ウェーヴス 最新作『Different Creatures』疾走感に加わったダークなエッセンス 7a7203d2f2fc3e400e1ad12afbd8be03-700x700
NOW ON SALE
サーカ・ウェーヴス
製品番号 HSE-6360、HSE-6362
レーベル名Virgin/Hostess
デラックス(DVD付限定盤) ¥3,200(+tax)
通常盤 ¥2,400(+tax)

1.Wake Up
2.Fire That Burns
3.Goodbye
4.Out On My Own
5.Different Creatures
6.Crying Shame
7.Love’s Run Out
8.Stuck
9.A Night On the Broken Tiles
10.Without You
11.Old Friends
12.Travel Sick(日本盤ボーナストラック)
※限定盤にはボーナスDVD(2015年ブリクストン・アカデミー公演)が付属します
※日本盤はボーナストラック(1曲)、歌詞対訳、ライナーノーツ(粉川しの)付
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interview by 粉川しの