Calmは1997年のデビュー以来、数々のコンセプトと名義を使い分け、作品のリリース、DJそしてライブにプロデュースやリミックス活動など多岐にわたり活動を続けてきた音楽家だ。

DJとしては、来年で10周年を迎える自身のレギュラーパーティ<Bound for Everywhere>では1DJで10時間を超えるロングセットをアナログバイナルのみでプレイ。2本のレギュラーパーティをこなしながらも、全国でのクラブイベント、そして毎年数多くの野外フェスへの出演もこなしオーディエンスを盛り上げ、さらにはバンドCosmic Blessing Ensembleでは<フジロック・フェスティバル>や<頂-ITADAKI->などのビッグフェスにも出演を果たしている。

自身の名義の楽曲、ミックスCDのリリース、プロデュースやリミックス活動にバンド……どの活動においてもこだわりを強く持ち、一貫して流行として終わることない音と向き合い続けているCalm。

今回、音楽家としての音へのこだわりや、2017年にデビュー20周年を迎えるにあたり、2014年からはじまった4年計画。そしてそのメインとなる5年ぶりのリリースとなるCalm本人によるエレクトロニクスと多彩なミュージシャンによる生楽器たちとの音楽が融合されたアルバム『from my window』について。さらに今後の音楽家としてのCalmの活動や展望とは? 話を聞いてみた。

Interview:Calm

––––Calmさんは国内チルアウト、そしてバレアリックミュージックの先駆者と呼ばれていますが。どのようなきっかけでこのサウンドへと向かっていったのでしょうか? 

周りがジャンルの区分けをしていきますが、ジャンルという概念に囚われずに自分から出てくる素直な感情にしたがって楽曲製作をしています。その中でたまたま制作する楽曲が、そうゆうジャンルが好きな人たちに評価されたのかもしれませんね。

––––DJスタイルでは幅広い選曲でジャンルレスなプレイをするというイメージが強いですが、楽曲ではチルアウトな世界感の作品が多いように感じます。

特にCalm名義の時は自然と多くなってしまいますね(笑)。ずっとバンドをしていて、激しめの音も弾いていましたが、ひとりで楽曲制作をはじめるようになって、ギターではなくてシンセサイザーやサンプラーを使いはじめました。その時に機材に入っていた音やサンプリングする音源がバンドの時とは違った方向の音で、たまたまそういう音と出会って、この方向へ来たんだと思います。

––––2006年より自身が主宰する<Bound for Everywhere>では、ハウス、ディスコ、テクノ……オールジャンルな選曲に10時間を超えるロングセットで様々な世界観を伝えていますね。

自分のパーティではオープンからラストまでひとりでプレイしていますが、ピークタイムに向けた離陸や着地は、「ゆっくりとピークに向かって上がって、終演に向けてゆっくりと下がっていく。」というように長めに時間をとることができます。この時の離陸や着陸の時間はCalm名義の楽曲制作部分に近い感覚ですね。

––––さらにCalmさんのDJと言えば一貫したアナログプレイにこだわりを感じますよね。

小さい時から聴いているからかもしれませんが、自分では単純にアナログの音が一番しっくりくるんです。プレイしていても一番しっくりと感じます。自分のパーティでは10時間以上プレイするので300枚程度は持って行くので結構大変ですけどね。

––––1晩でアナログ300枚は凄いですよね……。アナログへのこだわりもそうですが、イベントやリリースしているミックスCDでも、離陸と着陸という概念をとても大切にしていますが、このこだわりについてもお伺いしてもよろしいですか?

デヴィッド・マンキューソの<ザ・ロフト>というパーティにのめり込んでいって、そこから離陸や着陸という概念を知り、大切にするようになりましたね。デヴィッド・マンキューソからは大きな影響を受けました。

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