シンガー・ソングライター・コナン・グレイ(Conan Gray)の約1年ぶりの新曲“Overdrive”は、自らが恋する相手との未来がどんなに不確かなものでも、その先の見えない運命に向かって、 全速力で走り抜けるような恋模様を描いた楽曲。
また、“Overdrive”のミュージック・ビデオはコナン自身が監督を務めたことも話題に。ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)、デュア・リパ(Dua Lipa)、マルーン5(Maroon 5)などを手掛ける豪華プロデューサー陣も参加している要注目のポップ・ソングだ。
デビュー・アルバム『Kid Krow』をリリースした際には、「Sad Pop Prince」とも呼ばれるようにもなったコナンが、今回制作したポジティブな楽曲について、そしてステイホーム中の話や曲作りのプロセスまでを語ったインタビューが到着。
Conan Gray – Overdrive
INTERVIEW:
Conan Gray
自分の感情を理解するために曲を書いて、
それがアルバムになる
──ステイホーム期間中は何をして過ごしていますか?
全然かっこいい話じゃないんだけど、友達とビデオゲームをよくやってるよ。友達にいっぱい電話もしてる。こんな時期を乗り越えられるのも全部友達のおかげだと思ってるよ。今は直接会うことができないから、彼らと話せるのはすごい良いことだよね。それと本を読んだり、たくさんテレビドラマを見たり、みんなもそうしてるんじゃないかな。あとは、たくさん曲を書いてるよ……ちょっと狂いそうになることもあるけど、いい感じだよ。
──“Heather”と“Maniac”はTikTokでバイラルヒットし、2つのトラックがヒットする稀有な快挙となりました。どのような要素が同世代からの支持や反響を呼んでいると思いますか?
僕は自分の人生について書いてるだけだよ。僕自身Z世代だし、この世代で生きている人間で、同年代のみんなと同じようにインターネットに触れて育ったんだ。僕はただ、自分が経験していることをそのまま書いてるだけだよ。曲に書いてみないと自分が何を感じているのか分からないことも多いんだよね。
だから、僕にとって曲を書くっていうのは……自分のために書いてるんだ。自分の感情を理解するために曲を書いて、それがアルバムになって、そこで僕が内緒にしてた考えとかをみんなに聞いてもらってる。でも、みんなが共感してくれていることに本当に感謝してるし、僕はそこまで狂ってないって分かって良かったよ。
──“Overdrive”では何について歌っていますか?
“Overdrive”は、自分の人生でやりたいと思っていたことを全部やって、将来のこととか、心配事とか、抑制とか、人が自分のことをどう思うかとか、そういったことを何も気にしないことについて歌ってるよ。僕は実は超ロマンチストで、道で素敵な人を見かけると、「ああ、あの人はとっても素敵そうだし、美しいし、僕はもうあの人を愛してるから一緒に海外に引っ越して、幸せな暮らしを送るんだ!」とかいつも考えちゃうんだ。
“Overdrive”は、見知らぬ美しい人と出会って、もし僕がこんなにシャイじゃなかったらその人とどんなことをしたいかって考えた曲。僕、めちゃめちゃ人見知りなんだよね。だから、そう、それはファンタジーなんだ。現実逃避で、ちょっとした白昼夢。
──何がきっかけで“Overdrive”を書こうと思ったのですか?
この曲を書こうと思ったきっかけは、僕が日々妄想しているファンタジーだよ。僕、本当に一日中ボーっとしてるんだよね。常に何か考えててさ。人のこととか、「こうなってたら」とか、こんな人生になってたかもしれないとか、いろいろ考えすぎてる。もし僕がまだ大学に行ってたら? 歌手になっていなかったら? もし曲を書き始めていなかったら? いつもそんなことばっかり考えている。
だから、“Overdrive”では、もし僕がいつもやりたいと思ってたことを全部やる勇気があったらっていう空想なんだ。見知らぬ人と残りの人生を一緒に生きていく勇気があったら? そんな無謀なことをいつも想像したり、考えたり。僕は本当に無謀な人間じゃないから、ちょっとした妄想なんだよ。そういう経験が日々あるからこそ、こんな気持ちにさせてくれて、曲を書きたくなった。
実はね、この曲、めちゃめちゃ早く書き終わったんだよ。本当に1行で歌詞が全部出てきてさ。最初に《Only met on the weekend(訳: 会ったのは週末だけ)》って歌い始めたら一曲全部歌っちゃったんだ。めっちゃ変だったよ! 何か僕の体に取り憑いてるの? って感じ。この曲を書くのはすごい面白かったな。トバイアス・ジェッソJr.と一緒に書いたんだけど、彼も「今何が起こった?」って感じで、僕だって「わからないよ!」って。クールだったね。
──もし歌手になっていなかったら何になっていたと思いますか?
間違いなくまだ大学に通っていると思う。勉強するのは大好きなんだ。あとは……コーヒーが大好きだからコーヒーショップで働いてみたいとも思うんだよね。僕、コーヒー中毒だから。毎朝起きられるのもコーヒーのおかげ。僕が生きている理由って言えるくらいだよ。コーヒーを作って人と話して……って想像できるんだよね。
──いつも写真でもコーヒーを持っているので好きなのが伝わってきます。
そう、常に持ってるんだ!
その自由なフィーリングこそが、
僕に本当に欠けていたものだった。
──“Overdrive”からは何を感じ取って欲しいですか?
リスナーに感じて欲しいのは、ちょっとした安心感とか現実逃避みたいなもので、とにかくみんなに楽しんで欲しいんだ。人を悲しい気分にさせる曲もあれば、パンツ一丁で跳んだり踊ったりする幸せな気分にさせる曲もある。今年は大変な年だったから、みんなに少しでも楽しんでもらいたかったんだ。
──“Overdrive”は、「Sad Pop Prince」とまで呼ばれるようになった『Kid Krow』に比べて、ポジティブで、虹のようなエネルギーを持った楽曲になっていますね。“Overdrive”はなぜ特別な方法で作られているんですか?
うん、“Overdrive”は意図的に「悲しくない」ものにしたよ。悲しくない曲を作りたかった。自分に「コナン、人を泣かせないものを出そうよ」って言い聞かせたんだ。うれし涙というか、人をホッとさせるようなものを出したくて。でも僕は地球上の何よりも悲しい曲を書くことが好き。だから、すぐにまたみんなを悲しませるような、憂鬱な曲を出すよ(笑)。でも、今年はポジティブな気持ちでスタートしたいと思ったんだ。
本当に単純なことなんだけど、「ちょっとだけ、少しだけ、物事が好転しているかもしれない」って気持ちで今年を迎えたいと思った。“Overdrive”はファンタジーとして、僕の人生のファンタジーとして存在しているんだ。自分が生きられたかもしれない人生。自分が生きたいって思う人生だね。
──今年も新曲のリリースがあるとしたら、それは“Overdrive”と同じようなエネルギーの楽曲でしょうか?
何とも言えないね。その時書きたいって思ったことを書くだけで、次に何が出てくるのかは全く分からないんだ。ただ成長し続けたいし、曲を書き続けたいし、自分が聴きたくなるような楽曲をリリースしたいんだ。
それに、僕は一つのジャンルとかムードの音楽しか聴かない人じゃない。そんな人間いないと思う。人間は多面的で、色んな考えを持ってるから、この先僕が出す曲は、どれもこれもありきたりだと思うね。悲しい曲もあれば、楽しい曲もあれば、混乱してるのもあるだろうね。生きている限り、毎日感じている感情は色々だからさ。
──コナン・グレイのハッピーなサイドをファンや世界に見せたいとおっしゃっていましたが、ファンにはどんな印象を与えたいと思っていましたか?
僕があまり見せないと自分の一面を見せたかったんだと思う。僕だっていつも悲惨なわけじゃないんだ。僕は何よりも友達を愛していて、“Overdrive”は友達と一緒に車に乗って大声で叫んでいるような気分になるんだ。今までは自分がどれだけ落ち込んでいるかについて歌って、人生がどれだけ美しいものなのかってあまり歌ったことなかったから変に聞こえるかもしれないね。
2019年は多くのことを当たり前のように受け入れてたけど、2020年になって自分に足りないものについて色々気づかされたと思う。“Overdrive”の感覚こそが、僕に欠けていたものだったんだよ。その自由なフィーリングこそが、僕に本当に欠けていたものだった。
「彼らのためにやらなきゃ」って思ったんだ。
──“Overdrive”のミュージック・ビデオの監督、撮影、編集をすべて自分で行ったそうですが、このビデオを作る上で特に力を入れたことは何ですか?
僕と、世界で一番の親友の一人であるディラン・マシュー(Dillon Matthew)と、僕らの共通の友達でビデオを作ったんだ。3人チームだったよ、パンデミックだからね。40人もスタッフがいる撮影現場なんて、今そんなことをしている人は非常識だと思うし、本当に無責任だと思う。でもそれはまた別の話だね。
このビデオでは、無謀さと興奮と自由さを純粋に表現したかっただけ。僕が道で見知らぬ人に出会うことにロマンを感じているように、自分の生き方を見せたかった。ビデオの中では、線路の向こう側に誰かを見かけて、突然、彼女との人生を想像してしまうんだけど、それが僕の生き方なんだ。
それは僕にとってとても現実的なことで、それをビデオで表したかった。僕はとてもロマンチックな人間なんだよね。自分の身に起こる全てのことを常にロマンチックにしているんだ。
──このミュージック・ビデオの撮影で苦労したことや大変だったことは何ですか?
とっても苦労したよ。こんなに小さいチームでこのビデオを撮影するのは本当に大変だったけど、とてもリアルで楽しかった。ビデオの中にはミスもたくさんあるけど、現実の中にある揺らぎのようなものを表したいって思ってたんだ。
そもそも僕はこのビデオを、飾った偽物のように艶やかなものじゃなくて、真実でリアルであって欲しかった。ディランが目の前でカメラを構えているだけで、とてもリアルだったんだ。まさにそれを描きたかった。もちろんタフだったし、すごく寒くて、なんでこんなに薄着の衣装を選んだんだろうとも思った。ビデオの撮影中ずっと寒かったんだよ! ただただ大変だったけど、リアルで現実味があるビデオが作れるなら多少ハードな撮影なんて構わないよ。
パンデミックの真っ只中に、セットに100人呼んで撮影したくなかったしね。それは良くないし、このご時世そんなことやっている人たち、他のミュージシャンたちにも目を覚まさせてもらいたいね。それは本当に良くないよ。
──今はとても危険ですよね。
危険なのに誰も気にしない、馬鹿げてるよ!
Conan Gray – Overdrive
──このミュージック・ビデオを撮影していた時、凍えそうだったと仰っていました。撮影現場での思い出に残るエピソードはありますか?
うん! 僕とビデオに出演してるサダが一緒に橋の上からプールに飛び込むシーンがあってね。あの夜は、外が4度くらいで、水はー7度くらいだったんだよ。ビデオの中ではすごく楽しそうに見えて、プールに飛び込むぜ! って感じなんだけど、凍えるような寒さだったよ! なんでこんなことをしたんだろうって、めっちゃ後悔してた。僕ってバカだな、頭おかしいんじゃないかって。まあ、一時的な挫折だったよ。
だからあのシーンを見る時には、凍えるような冷たい水の中に飛び込んだってことを思い出してほしい。僕はファンをそれだけ愛してるんだよ。「彼らのためにやらなきゃ」って思ったんだ。
──すごいストーリーですね!
うんうん。
──また、大学時代に映像の勉強をしていたそうですが、その知識も活かせたんでしょうか?
誰が僕の代わりになって世間に嘘をついたのかは知らないけど、大学は1ヶ月間だけ通って、すぐにレコード契約を結んだんだ(笑)! 予想してなかったけど、本当にほんの少しの間しか学校にいなかったんだ。それからツアーも始めたけど、引っ越すのが嫌だったからまだキャンパスに住んでいたよ。だから、キャンパスから週末にはスタジオに通うような生活をしていたよ。時間がなくて授業なんて受けてられなかったんだ。
レコーディングでニューヨークに行ったり、いつも仕事で忙しかったよ。まるでハンナ・モンタナのようだったね! 正直に言うと、1ヶ月間の大学生活では、それほど多くのことを学ぶことはできなかったよ……ほとんど何にもね。授業も全部サボってましたし。本当にひどかったね。
──全部独学だったんですね!
そうだね……うん、そう、そう! 僕がすごいんだよ。僕が、ただ頭がいいってことにしておこう。
──日本のファンへのメッセージをお願いします。
まずは僕のことと僕の音楽を好きになってくれて本当にありがとうございます。日本が恋しいよ。毎日毎日考えてる。みんなには本当に感謝しているよ。みんなに直接会って、一緒に僕の歌を歌って、また日本語を教えてもらえる日が待ちきれないよ。もう結構日本語忘れちゃっていて、恥ずかしいよ。
ただただ、彼らには本当に感謝しているって言いたい。彼らが無事でいてくれることを願っているし、早くみんなに安全なハグをしてあげられることを願っているよ。
本当にありがとう!
Conan Gray
米カリフォルニア州サンディエゴ出身のシンガー・ソングライター。アイルランド人の父親と日本人の母親を持ち、幼少期は日本の広島県で過ごす。歌手デビューする前は、TwitterやYouTubeで赤裸々な人生模様を世界と共有し、フォロワーとの強い繋がりを築き上げる。2018年のデビューEP『Sunset Season』以来、これまでに30億回以上の音楽ストリーム数を記録。エルトン・ジョンや テイラー・スウィフトなど数多くの著名人からの賛辞を受けるコナン・グレイは、自身の寝室を周囲に潜む暗闇からの逃避場所とし、 創作活動に取り組む場所へと作り替えた。
“フレンドリーで、可愛らしく、明るくて、クール。それでいてどこか切ない”、そんな彼が紡ぎだす思いと豊かなメロディ使いが同世代から絶大な支持を受け、2020年3月20日に発売したデビュー・アルバム『Kid Krow』は全米アルバムチャートで初登場5位、ポッ プ・アルバムとしては初登場1位に輝き、2020年における新人による最大のデビュー実績を記録。デビュー・アルバムリリース前に 行った3回の北米ツアーと2回のヨーロッパツアーは全公演完売。Billboard誌の「ベスト・ニュー・アーティスト」、さらにPeople誌の 「注目のアーティスト」にも選ばれ、Vogue, V Man, Teen Vogue, Forbesをはじめとする多くのメディアからも称賛を受ける。ベッドルームから世界へと活躍の場を広げる新世代ポップ・アイコン。