2017年のデビュー以来、CYNHN(スウィーニー)はアイドルシーンで大きな注目を集めてきた。ロシア語で『青色』の意味をもつグループ名どおり、でんぱ組.incを輩出したディアステージが誇る未完の大器は、今も猛烈なスピードで進化を続けている。
では、彼女たちは他のアイドルグループと何が違うのか? 一つは「ヴォーカルユニット」を謳っているだけあり、歌唱力は折り紙つきであること。本人たちも自信があると認めるというように、歌のハモりやリズム感、コンビネーションは目を見張るものがある。そして、もう一つは崎乃奏音、綾瀬志希、青柳透、桜坂真愛、月雲ねる、百瀬怜というメンバー6人のキャラが非常によく立っていること。こちらについては、このあとのインタビューでぜひとも確かめてもらいたい。
CYNHNは今年9月、綾瀬志希と青柳透がメインヴォーカルを務めた前作『タキサイキア/So Young』をリリースしたのに続き、12月には崎乃、月雲をそれぞれフィーチャーした最新シングル『絶交郷愁/雨色ホログラム』を発表したばかり。2019年にますます注目されるであろう6人組の魅力を知るため、本人たちを直撃した。
CYNHN Profile
桜坂真愛(オウサカマナリ)
5月15日生まれ
ディズニーが好き、尊敬するのは前田敦子。
百瀬怜(モモセレイ)
11月13日生まれ
ホラーとゲーム好きのMC担当
崎乃奏音(サキノソト)
3月29日生まれ、青森県在住
演歌と昭和が好き、目標は「歴史に残りたい」
青柳透(アオヤギトオル)
5月26日生まれ
特技は短距離走、可愛い女の子が好き
綾瀬志希(アヤセシキ)
3月14日生まれ
特技は白目(?)、少しドジな洋楽大好きっ子
月雲ねる(ツクモネル)
9月15日生まれ
好物はK-POPとプリキュアとアイスクリーム
Question1
CYNHNがもつヴォーカルの調和は、どのように育まれてきたのか?
冒頭でも記したように、CYNHNの魅力といえば個性的なユニゾンとハモり。ヴォーカルワーク。異なった声質をもつ6人の歌声は、それぞれの個性が組み合わさることで新たな輝きを放っている。では、メンバー6人は「歌」について、どんな意識で取り組んでいるのか? 日々の努力からユニークなカラオケ秘話まで語ってもらった。
——みなさん歌声がすごく綺麗だなーというのが、今回のシングルからも伝わってきました。ハモったり、交互に歌ったりするパートが多いと思うんですけど、それぞれの声を活かすためにどんなことを意識していますか?
月雲 歌割りはレコーディングするとき、その場で決めたりするんですけど。あえて真逆の声質の人を並べたりしながら、(メンバーそれぞれの)声の違いがわかりやすくなるように工夫したりしています。綾瀬ちゃんと私の声質が結構違うので連続で歌ってみたりとか。
綾瀬 みんな声質に特徴があるし歌い方もバラバラなので、だからこそ自分らしく歌おうと意識しています。
崎乃 私はCYNHNに入ってから歌い方を変えたんですよ。もともとは癖のない歌い方が一番だと思ってたんですけど、それだと6人の歌声を交互に聞いていったときにつまらなくて。全員が粒立って個性ある歌い方をしているほうが、音楽自体が立体的になるなと気づいたんですよね。だから、自分が歌うところは「ここはしゃくりあげて」とか意識して、そのワンフレーズが面白くて味のあるものにしようと工夫しています。
青柳 自分の声だけが目立っちゃうと上手く調和しない気がして。だから、みんなで歌うパートでは、あんまり自分の声っぽく歌わないようにしていて。逆に自分のパートでは、普段よりも癖をだすようにしようと。ソロパートで歌わせていただく機会も結構あるんですけど、そのときと印象が180度違うように明るい声で歌ってますね。
CYNHN(スウィーニー)「絶交郷愁(ゼッコウノスタルジック)」Music Video
——練習ってどんなことをしてるんでしょう?
桜坂 過去の動画を観ながら反省点を洗いざらい出して、その課題を一つずつクリアにしていったりとか。
崎乃 CYNHNはライブでハモりを入れてるんですけど、私はハモりが得意なので、みんなで練習するときとかに「こういう声で」「こういう口角で」とか言うようにしていて。そんなふうに、メンバー同士で教え合って練習したりします。
崎乃 あと、歌はカラオケで練習してるんですよ。いつも集まるのはJOYSOUNDのカラオケルーム。自分たちの曲を入れてもらってるから練習しやすいし。
綾瀬 そもそも私たちが選ばれたのも、JOYSOUNDさんとディアステージの共同オーディションなので。カラオケといったらJOYSOUNDだよね!
桜坂 なんかCMみたい(笑)。
——カラオケで練習してる時の雰囲気は?
綾瀬 そのときの切羽詰まり具合にもよりますね(笑)。
崎乃 マジでヤバイ時は鬼のような形相でやるんですけど(笑)。ちょっと余裕がある時は、途中で他の曲を歌い出したり。
——どんな曲を歌うんですか?
崎乃 一人一人で好みのジャンルが本当に違うんですよ。アニソンやアイドルが好きな子がいれば、ロックや洋楽が好きな子もいて。
——そしたら、みなさんのカラオケの十八番を教えてほしいです!
桜坂 オハコってなに……?
崎乃 桜坂さん、十八番がわかってません(笑)!
——自分のなかで得意な曲、鉄板ソングというか。
桜坂 なるほど(笑)。前田敦子さんの”セブンスコード”ですね。あの曲が一番点数が取れるし、前田敦子さんも好きなので一石二鳥みたいな。
青柳 私は”タッチ”。カラオケに行くとお父さんやお母さんが歌ってた時のことを思い出すので、二人が歌ってた曲を選ぶことが多いかもしれない。
崎乃 演歌や昭和の曲が好きなんですけど、カラオケで一番鬱憤を晴らせるが中森明菜さんの曲で。「イライラするわ」(“十戒”)「じれったい」(“少女A”)みたいなフレーズを大声で歌ってます。スッキリするのがカラオケの醍醐味だと思うし、みんな大声出そうぜ(笑)。
綾瀬 私はむしろライブで感情的になることが多いから、そこでストレス発散しちゃってるんですよね(笑)。だからカラオケでは、ゆったりした曲をどれだけ上手に歌えるかチャレンジすることが多いです。EGOISTさんの”Departures ~あなたにおくるアイの歌~”とか。あとは洋楽も大好きで歌うんですけど、みんなの前ではあんまり披露してないです。
百瀬 私って声が低くて可愛くないんです。ふぇのたすさんっていうバンドがすごい好きなんですけど、ライブだとキーが高くて歌えないんですよ。でも、カラオケだったら誰も見てないので一人でよく歌います。
——月雲さんはいかがでしょう?
崎乃 ねるちゃんが歌ってるあれ大好き、「ロマンティックあげ~るよ~♪」
月雲 あー、『ドラゴンボール』の曲だよね。ほかにも、『クリィミーマミ』『セーラームーン』とか古いアニメの曲を歌うことが多いです。声に合ってるから歌いやすい。
Question2
CYNHNが最近ハマっているカルチャーとは!?
カラオケのレパートリーにも6人それぞれの個性が垣間見えたところで、ここからもっとCYNHNのことを掘り下げてみよう。ということで、ここでは「最近ハマってるもの」について質問。音楽やファッション、カルチャー全般に至るまで、彼女たちの興味や関心を探るカジュアルな質問だったはずなのに、思わぬディープな方向へと話は進んでいった。
——次のお題は「最近ハマってるもの」です。一人ずつ順番に答えてもらえますか?
桜坂 えーっと、エッグマフィンにハマってます(笑)。手作りのやつをラップに包んで、よくお昼に持っていくんですけど。日によって卵の半熟具合が違くて、電車の中で黄身が飛び散っちゃったりして……。
——かわいそう(笑)。
桜坂 あ、最近は割とオシャレを意識するようになったんですよ。最近はスニーカーや靴にすごくハマっていますし、お化粧とか洋服のブランドとか、そういうのに目を向けるようになりました。あとは、よくディズニーランドに遊びに行ったりとか。(キャラでいうと)プーさんが特に好きです。
月雲 服が好きなんですけど、去年とは趣味が変わってきていて。もともとは可愛い系を着ていたんですけど、最近はストリート系ばっかりです。あとは海外のヒップホップが好きで。日本語じゃないから言ってる意味がわからないじゃないですか。でも韻を踏んでるところがいいっていうか……なんて言えばいいんだろう。とにかくラップが好き(笑)。
——最近よく聴いているのは?
月雲 BlackPinkともコラボしている、デュア・リパさんっていう方がいて。その人の曲をよく聴いてます。
Dua Lipa & BLACKPINK – Kiss and make up FMV
百瀬 私は年中無休でホラーが大好きです。日本のホラー映画をよく観るのと、ホラードキュメンタリーっていうジャンルがすっごく好きで。
——怖くないんですか?
百瀬 ちっとも怖くないです!
——オススメのホラー映画は?
百瀬 「仄暗い水の底から」ですね。子供の頃は怖かったんですけど、この年齢になって見返したら「なるほど」みたいな(笑)。ストーリーや設定を冷静に楽しめるようになったんですよね。だから怖くないんだけど、「わ、ゾッとする」みたいな。
——大人になったんですね。綾瀬さんは?
綾瀬 ごめんなさい、何の話でしたっけ?
——「最近ハマってるもの」です(笑)。
綾瀬 そうだ(笑)。猫の動画を観るのが好きですね。あと『コジコジ』のアニメを毎日見てます、すごく気持ちが落ち着くので。最近ハマってる音楽だと、メラニー・マルティネスさんっていう洋楽の方が好きです。音数がすごく少なくて、聴いてて疲れない感じがいいんですよ。レディオヘッドの曲もそうですよね。なんか歌詞に重みもあるし、「この歌詞は何を思って書いたんだろう?」みたいな。
——ちょっと闇を感じるけど、かなりの洋楽好きなんですね。青柳さんは?
青柳 お化粧とかは年中無休で好きなんですけど、最近は洋服や持ち物にチャイナモチーフが増えてて。ピアスとかリメイクのシャツとか。だから、原宿を歩き回ったり中華街まで行ったりしながらチャイナモチーフを探しています。
——フットワークが軽いんですね。
青柳 あと、『BANANA FISH』というアニメにハマってます。少年漫画や青年漫画がすごく好きなんです。だから、音楽もアニメのオープニングで気になった人を聴くことが多いですね。何年か前に『乱歩奇譚 Game of Laplace』というアニメがあって、amazarashiさんの曲が使われていたから聴くようになりました。
——なるほど、アニメや漫画が本当に好きなんですね。
青柳 そうなんです。amazarashiさんが最近発表した”リビングデッド”っていう曲のMVがあって。なんて言っていいのかわからないけど、いっぱい洗脳されている人がいて、みんな失禁したりとか嘔吐したりするんですけど、それを真夜中に見ちゃったら眠れなくなっちゃって。MVの基になった小説(『新言語秩序』)を夜更かしして読んでしまうくらい衝撃的でした。
amazarashi 『リビングデッド(検閲解除済み)』Music Video
——ディープですねー。では最後、崎乃さん。
崎乃 私は蛇にハマってます。爬虫類の顔が好きで、最近ハマってる蛇がいて。セイブシシバナヘビっていうんですけど、横から顔を覗いてみると、鼻がチョンッてなってるんですよ。子ヘビだと本当にちっちゃいんですけど、必死に這って歩いてるんです。何かのキャラクターみたいでメチャメチャ可愛いんですよ!
——そ、そうなんですか。
崎乃 セイブシシバナヘビちゃんが餌を食べてる動画は永遠に見てられますね。あと、ヘビの出産には2種類あって、卵が出てくるタイプと胎内で出産するタイプがいるんですよ。だからヘビが出産している動画を見ながら、「このヘビはどっちだろう?」って。元気がないときはヘビの出産動画がオススメですね。おっきいヘビからおっきい赤ちゃんが出てくるんですよ。
百瀬 マニアックすぎる(笑)。
崎乃 あとは、寺嶋由芙さんが大好きです。さっきも話したように、私は昭和のアイドルさんが好きなので、「古き良き時代から来ました」っていうキャッチフレーズからたまらなくて。楽曲にしてもそうで、昭和や平成初期にありそうなのをイイ感じに現代っぽくしているんですよ。それに何より、由芙さん自体が天使なんです! なのに、新しいシングルには「彼氏ができたの」という曲が入っていて。ドキドキするけどそんなところも好き。これからも由芙さんから目が離せない崎乃奏音です、ありがとうございました!
一同 パチパチパチ(拍手)。
寺嶋由芙 / 君にトロピタイナ(Short ver.)
Question3
“自分たちで考えて行動する”DIY精神について
これだけ世にアイドルが溢れかえっているなかで、CYNHNは他のユニットとの差別化に徹底してこだわっている。MCに対するモチベーションや、ユニット/一個人としての将来の目標まで、6人にたっぷり語ってもらった。
——他のユニットとは一風異なるライブMCが話題になっていますね。
崎乃 私たちはヴォーカルユニットとして活動していて、特別なキャッチコピーとかも言わないで、サラサラサラサラサラーっと自己紹介していく感じでやってます。ライブMCに関しても特徴的で、私たちのグループって一人しかツッコミがいないんですよ。百瀬怜しかツッコミがいない。1対5で、他は全員ボケみたいな感じ。
——もし百瀬さんが何もしないと、どうなっちゃう?
百瀬 スベり散らかしますね。誰も笑ってない大変な空気がステージ上に流れちゃう(苦笑)。だから頑張って日々ツッコんでます。
崎乃 だから、モモちゃんは芸人さんのラジオを聴いて勉強してるんだよね。
桜坂 MCはモモちゃんがいないと何にもできないんです、私たち。
ーーあまりにも好き勝手に喋っちゃうみたいな。
崎乃 基本的にうるさいですからね、CYNHNは。
青柳 ここ(青柳と桜坂)は年下コンビであんまり空気が読めないので、危険だから自由に行き過ぎないようにしています。なんか、押さえないと出ちゃうんだよね。
桜坂 その点、ねるは察知しながら喋っているイメージがあります。静かだけど喋るときは喋る、みたいな。
青柳 なんかポロって出た言葉が面白いよね、ねるちゃん。
——ライブについて今後の目標は?
一同 (声を揃えて)横浜アリーナ!
——それはなぜ?
崎乃 こないだの〈@JAM EXPO 2018〉で、でんぱ組.incさんが出演する前にCYNHNが1曲歌わせていただいたんですけど(〈DEARSTAGEスペシャルショーケース w/でんでんバンド〉)、その時の会場が横浜アリーナの広いステージで。みんなでそこからの景色を見てから、「次は自分たちだけで横アリを埋めたい!」っていう気持ちを強く共有しているんです。今はみんなで横アリをめざしてます。
——その目標を、今はどのくらい達成できていると思いますか?
崎乃 うーん……達成度は0.01%かな(苦笑)。
——その数値を100まで持っていくために、今後はどんなことをしていきたい?
青柳 まだ持ち曲も少ないし、まずは地道にやっていきたいですね。お客さんに満足してもらえるようにリリースイベントをやってきながら、力も少しずつついてると思うので。
崎乃 横浜アリもそうですけど、この6人でしか見ることができない景色があると思うので、固定概念に囚われず新しい景色を築いていきたいと思ってます。
綾瀬 どこかをめざすっていうよりも、自分たちがめざされる場所に行きたいなと思ってます! あと、CYNHNはヴォーカルユニットとして、ハモりやリズム感といった武器を持っているので、そういう長所をアピールしていきたいですね。
——では最後に、いちメンバーとしての目標を聞きたいです。どんな人物になりたいとか、どんなことをしていきたいとか。
青柳 私ってそもそも、CYNHNに入った動機が不純なんですよ。オーディションの特別審査員にでんぱ組.incさんのみりんさん(古川未鈴)がいらっしゃったので、申し込めばワンチャン会えるんじゃないかと思って(笑)。もともと可愛い女の子がすごく好きで、女の子の絵を描いたり、女の子の写真を撮ったりするのが大好きなんです。だから、自分がプロデュースしたメイクやお洋服を着てもらって、女の子の写真集みたいなのを作りたいですね。そうやって、自分にとっての可愛い女の子をどんどん共有していきたい。
崎乃 オーディションを受けた時からずっと、「歴史に残りたい」と言い続けていて。何かを語るうえで、崎乃奏音の名前は外せないなっていう感じになりたいんです。世界史に残りたいとかじゃないんですけど、この時代の何かを語るうえで「崎乃奏音はキーパーソン」とか「マストでな人物」だって言われるくらいの人物、唯一無二の存在になってから死にたいですね。
百瀬 CYNHNって歌のパフォーマンスはカッコいいのに、MCは変わってて面白いとよく言ってもらえるので、MCをもっと伸ばしていけるようにしたいですね。ラジオ番組(FM-FUJI「CYNHNの歌いまスウィーニー」)でもステージ上でも私がMCなので、みんなの面白さを潰さないようにまとめられるようになるのが目標です。あと、歌で足を引っ張ることがあるので、そっちも頑張っていけたらなと。
月雲 歌もダンスももっとパワーアップして、ステージにいるときと普段の自分が別人に思われるくらいのパフォーマンスをしたいです。あとは、ファッションに関わる仕事をしてみたいですね。自分でデザインしたり、(モデルとして)着てみたいとも思ってます。作曲にも興味があるので、挑戦できたらいいなと。
綾瀬 ちゃんと喋れるようになりたいっていうのも一つの目標なんですけど(笑)。私も音楽がずっと好きだったので、作詞作曲はいつかやってみたいし、一人で大きなステージに立つことも目標の一つですね。ゆくゆくは、自分の存在が誰かにとっての希望というか、一人一人にとって特別な存在になりたいというか。私のステージを見た人が「この人のライブを見るとすごく元気がでる!」と言ってくれたり、歌を歌うことに対して何かしらの感情を抱いてもらえたら嬉しいなって。みんなの心に綾瀬志希を存在させたいです。
桜坂 さっきの話にもあったように、私って昔から空気が読めないところがあって。周りと違うというか浮いていたんですよね。でも、ダウンタウンさんや市川美織さん、前田敦子さんがすごく好きなんですけど、みなさん周りと違う自分を持っていることに気づいたんです。批判も浴びたこともあるけど、自分らしさを貫きながら活躍されている。私もそういうふうに、自分の変わったところが認められるように頑張りたいし、もっと自分の個性を愛せるようになりたいですね。
edit by 小熊俊哉