3月19日に現在建て替え中のGinza Sony Parkでの「Park Live」の一環で無料配信ライブを行ったD.A.N.。昨年10月にリリースした3rdアルバム『NO MOON』では、中毒性の高いメロウグルーヴも内包しつつ、ブロークンビーツからジャングルなどより強靭でアタックの強いビートとSF的なスケール感を伴うエレクトロ・サウンドでグッとタフな音像を構築したことは記憶に新しい。

想像上の“月のない世界”が及ぼしうる影響と、コロナ禍の現実の世界が重なるような「終末」を感じさせるテーマを持った楽曲群は、一層マッシヴになったビートで肉体に訴えかける。また、より緻密に構築されたシンセやエレキ・チェロも渾然一体となって、未知の世界でありつつ、不思議なリアリティを伴った体感が残る。櫻木大悟(Gt、Vo、Syn)の綴るリリックも抽象的な中に、鋭さや問いかけが内包され、いい意味で聴き流すことができない。この強度は具体的な音像も意識されており、くるりやスピッツ、コーネリアスらを手掛ける名匠・高山徹がミックス・エンジニアを務めていることにも由来する。ポップミュージックのバランスとクオリティは、新しさや時代性と相反しないことを証明したアルバムでもある。なお、4月22日(金)には12インチ2枚組仕様で待望のアナログリリースも。マスタリング・エンジニアをUK「Metropolis Studio」のMatt Coltonが手掛け、ハーフ・スピード・カッティングを採用し、高精細のリマスター盤を実現したという。

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D.A.N.『NO MOON』

本作を携えた昨年のツアーではアルバムのサウンドを踏襲し、ドラムの川上輝がリズムマシンを操作する場面も増え、ライブのアプローチも変化してきた。今回のショーケースライブもその流れを組む編成と手法を取り、『NO MOON』からの新曲はもちろん、“SSWB”など、以前の楽曲も大幅なライブアレンジが加えられていた。

ライブ空間である解体工事中のGinza Sony Parkは地下駐車場の一角に異空間の如く存在し、往時の歩道の名残のような石畳と工事途中の建材などが散乱している。またこのライブには彼らの“Anthem”のミュージックビデオなども手掛けた映像作家Ryuichi Onoも参加。演奏とシンクロする映像のみならず、レーザーも用いた演出は、脳を直撃してイメージを拡張する。全5曲、約40分のショーケース後のメンバーに、独特なロケーションでのライブ、そして『NO MOON』を振り返りつつ、次に向かうモードを訊いた。

【Park Live】D.A.N. 2022.3.19(sat)21:00~

INTERVIEW:D.A.N.

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──まず今回のロケーションはどんな印象でしたか?

櫻木大悟(Gt、Vo、Syn/以下、櫻木) 駐車場から入ってくるんですけど、海外のクラブとかにありそうなインダストリアルな雰囲気。長い四角形の空間で非常に面白いなと思いました。

川上輝(Dr/以下、川上) ほんとに工事中だな、みたいな。

──床は銀座の昔の石畳のようで、地下でありつつ地上のような感覚もありました。

櫻木 不思議ですね。地下に潜るとこんなに変わるのかと。演奏してても面白かったです。

──Ryuichi Onoさんの演出は場所が決まってからオファーされたんですか?

櫻木 そうですね。Onoくんは僕らの曲のミュージックビデオも作ってくれてたり、すごくテクニカルなことをできる方なんで適任だったなと。あの縦に長い空間をより強調して、うまく活かせないかなというのを考えた時に、レーザーとかっていうのが相性がいいんじゃないかというのもあって、そういう演出ができるのはOnoくんしか周りにいないし、しかもユニーク。そうした条件がうまくマッチしてっていう感じがあるんじゃないですかね。

D.A.N. – Anthem(Official Video)

──映像プラスの演出ができる方だと。

櫻木 そうですね、あの空間を面白くしようっていうのが、最初にコンセプトを考える上での取っ掛かりだったような気がしますね。

──加えて今回のために新たに映像を作られたんでしょうか。

櫻木 そうだと思います。いろいろなパターンを仕込んでくれて。一応、音にもトリガーされた有機的な動きがあったので、面白かったですね。

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──解体中という場所のインスピレーションはありましたか?

櫻木 僕はあんまりなかったかもしれないです。でも単純に空間として面白いなって。あんまりああいう場所でライブすることはないので刺激的でしたね。

──海外でそういう空間に行かれたことは?

川上 パブとかもああいう感じの明るさだし。なんだろうな? クラブの喫煙所とか、ああいう感じのところに人がいて、知らない人にめちゃくちゃ声かけまくるみたいな。で、ビール臭い感じとか(笑)。あと、中国ツアー行ったときもちょっと路地入った変な感じのところもあったような気もするし。

櫻木 でもエルメスとかグッチとかハイブランドが軒を連ねる街中の地下にああいう空間があるって、結構面白いなと。

市川仁也(Ba/以下、市川) 「秘密基地」感。

──配信のライブの映像の導入が街から地下の駐車場へと変わっていく流れで。地上と地下の違いが面白かったです。

櫻木 ヨーロッパにはよくYouTubeのチャンネルとかでライブの企画、ああいうのがいっぱいあって。日本ではなかなか少ないので、そういう意味でも良かったのかなと思いますね。

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──D.A.N.の皆さんはコロナ以降、いくつか配信ライブ行っていると思うんですが、始めた頃と今で捉え方は変化してきましたか?

市川 配信ライブは普通になったなと。最初やった頃は配信ライブってものの見方がみんなわからなかった感じで。割と最初はチケットも普通に売って配信してたものを今回は無料とか、前回のツアーファイナルも無料でやったり。配信をYouTubeとかで結構簡単に観ることができるようになったのがコロナ前と今で全然違う。配信というもののハードルが低くなった感じがします。

──当初はライブの代替物のような感じでしたが、今は違いますね。

櫻木 もう一個の選択肢というか。僕らにとってはアウトプットの方法がまた増えたっていうのと、コロナ以降で配信のノウハウとか技術も向上していて。頻度が上がりますし、いいことですよね。

──ここからは『NO MOON』のリリースをされて、ツアーも終えられたので振り返りになるんですが、あのアルバムをリリースし、ツアーも完遂されてみていかがですか?

櫻木 また新しいライブの方法だったり……今はそこにかなりエネルギーを使っています。なんなら新しいアルバムを一枚作るぐらいの勢いで、新しい完成度の高いライブができるように努力してますね。特にリズムマシンを使った楽曲だったりが増えて、これまでのバンドサウンドとはまた違った側面をいかに面白くできるかが今後の鍵なんで、ちょっと今はそこに集中してる感じです。

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──なるほど。『NO MOON』はいい意味でアグレッシヴな作品だったと思うんです。

櫻木 そうですね、うん。

──市川さんのベースのアプローチも変わりましたね。ギター的な奏法やエレキチェロも弾かれるようになって。

市川 そうですね。かなりレンジは広がって。テル(川上)が生ドラムからリズムマシンとかエレクトロに行ったのもあるので、より楽器とか機材も、固定概念を全部取っ払ってやった方がたぶん今後作っていく上で面白いものができそうだなと。今後、割とベースとかギターとドラムというものから逸脱したもので表現できるようになったらいいなと思います。

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──『NO MOON』を作ったあとも続くエネルギーで、より面白いものを作っていこうと?

市川 たぶん世の中の影響とか、生きていれば自然と受けるんですよ。世界の変化とか、そういうのを見て自分の表現にまで意向を踏んでやろうとすると、たぶん何のためにやってんのかわからなくなるから、単純に自分たちが今やりたいもの、求めるものを作るのが大前提で、そこの過程の中に生活とかの影響が入ってくることは自然だと思うんです。世界がこうなってるからこうしよう、みたいになってくると本末転倒になるから、それはたぶん3人ともそうだと思う。

川上 作品を作るときは意図的にそういうものを組み込もうとかはないと思いますね。自然と日常生活を送っていて生まれる感情はあるかもしれない。例えば「元気な曲が作りたい」とかはあるかもしれないですけど、意図的に「世界に合わせて」とか「世界の情勢がこうだから」というのは、作品に対してないですね。

櫻木 無意識に出てくるぐらいが僕らのスタンスとしてはちょうどいいかなと思いますね。

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Text by Yuka Ishizumi
Photo by Takahiro Idenoshita

INFORMATION

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2022.04.22(金)
D.A.N.
初回生産限定盤
形態:2LP
¥4,000(+tax)
SSWB-015
SSWB/BAYON PRODUCTION
販売元:Tuff Vinyl

DISC 1
SIDE A
1. Anthem
2. Floating in Space feat. Utena Kobayashi
SIDE B
1. The Encounters feat. Takumi(MIRRROR)/tamanaramen
2. AntiphaseⅠ
3. Bend

DISC 2
SIDE C
1. Fallen Angle
2. AntiphaseⅡ
3. Aechmea
SIDE D
1. Take Your Time
2. Overthinker
3. AntiphaseⅢ
4. No Moon

12inch Vinyl『NO MOON』D.A.N.