DAISHI DANCEの作り出す音楽は、まぎれもなく“DANCE MUSIC”だ。この場合の“DANCE”とは、「踊る」そして「躍らせる」を兼ね備えているという意。彼の音楽は、身体を踊らせるのみならず、心を躍らせたり、広がっていく物語に更なる躍動を与えてくれるものばかり。そして、その中でも物語や情景を聴き手の中で、更に広げてくれる最たるものこそ、この『the ジブリ set』シリーズに他ならない。この『the ジブリ set』シリーズは、肉体的への呼び掛けよりは、聴く者に情景の広がりや物語の更なる深遠を促すもの。彼のオリジナル作品の多くに伺える、ピアノを中心としたメロディのエレガントさや美しさ、そして多分に含まれた抒情性や気品が、ジブリ作品の一連のメロディとベストマッチを見せている。

前作『the ジブリ set』(以下 : 『1』)から5年。この度届けられた『the ジブリ set 2』(以下 : 『2』)は、歌ものの比重もアップし、吉田兄弟の三味線や武田真治によるサックスといったフィーチャリングも特徴的。更なるDJならではのアプローチや流れもふんだんに織り込まれ、続編にして、新章を感じさせるものとなった。まるで一連のジブリ作品が内包している、生命力や自然との調和。自然治癒力。そして、観る者へのノスタルジーやこみ上げてくる甘酸っぱさも含め、あくまでもハウスミュージックという自身のフィールドにて、示し、表したかのような今作。原曲に愛着と敬意を表し、メロディを崩したり、過度にデフォルメさせることなく、共存することによる、よりジブリ映画の光景や物語への誘引とバリエーション、内包しているメッセージや訴えたいことも含めての引き出しには敬服するばかりだ。

Interview:DAISHI DANCE

元々の自分の楽曲スタイルはジブリからスタートした言っても過言じゃない

――この度、実に5年ぶりに『2』が発表されました。

元々『1』を出した時に“これも入れたかった…”って曲が幾つもあったんです。やっぱりジブリの音楽はとても良い楽曲が多いし、大好きなものばかりですからね。その時点から近いうちに続編を作ろうとは思っていたんです。とは言え、僕も作品を結構頻繁に出すタイプなので。ミックスCDやオリジナル、リミックス集等々、年に2〜3枚は出すのであっという間に時間が経っていて。だけど、2012年の秋に2013年のリリースプランを立てている中で、2013年は『1』から5年だし、新しいジブリ作品の公開も予定されていたので、出すならこのタイミングかなと。

――でも今作は、その5年というインターバルを経たが故の選曲にもなりましたね。

結局、今回も選曲ではかなり迷いましたけど。新しい映画の楽曲も入れたり、前回収録曲を新しく作り直したり。更にベスト的になったかなと思ってます。

――この『theジブリset』シリーズと、ご自身のオリジナル作品との差別化は意識したり?

結果DJしている自分が作るんで、ダンスミュージックの要素は入ってますけど、ジブリはジブリとして、別物としてとらえてはいます。CLUB系というよりは想像力を膨らませるリスニングアルバム。CLUB即戦力な作品は最近のオリジナル作品に集約しています。

――ちなみにDAISHIさんとジブリとの出会いは?

一番最初は小学校の頃に映画館で観た『となりのトトロ』でしたね。そこから全てジブリ作品はリアルタイムで映画館で観ています。高校生の頃からDJを始めて、その時から『となりのトトロ』に挿入されている“風のとおり道”に、ハウスの高揚感が合うんじゃないか? とずっと思っていて。数年後、楽曲制作に携わり始めた時、そのイメージを具現化する形で、和のメロディでピアノとビートが入っている楽曲を制作したんです。それが自分の1stアルバムに入っている“P.I.A.N.O.”って曲で。それを作ったのを機に、今の自分のスタイルでもある「メロディアスなダンスミュージック」というスタイルに出会えたところもあって。なので、元々の自分の楽曲スタイルはジブリからスタートした言っても過言じゃないんです。

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