2011年7月、多くの音楽ファンに惜しまれながら閉店したwarszawa(ワルシャワ)。インディ・ロックからアンダーグラウンド・ヒップホップ、エクスペリメンタル、はたまたストーナーロックまで。「これいいっすよ」とゆるゆるとオススメする柳澤akaヤナギシャワ氏によって、音楽観や人生まで狂わされた人は多いのでは?
良質なレコード屋さんに足しげく通い、目利きの出来るバイヤーさんによって未だ知らぬ音楽と出会う。そう、warszawaの新譜コーナーには本当に刺激が溢れていた。惜しくもお店はなくなってしまったが、店頭をウェブに移して活動を続けるwarzawaヤナギシャワ氏がQeticに登場! <ワルシャワのヤナギシャワが訊く>シリーズ企画として、刺激溢れる内容でお届けします!
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いつしか音楽の呼び方に“ポスト”という単語が流行るようになった。ポストロックにポストクラシカルとか、意味合いとしてはちょいと違うそれってことで、分り易くはある。ふと思えば、自分自身もポストな人生だなあ。ポスト社会人、ポスト世帯主、ポスト社長、など、色々経験してきたな。今後もポスト人並みってことでやってきます。そして、こちらにポストダブステップになるはずだったロンドンから登場したダークスター。しかし、彼等はその道を避けるように複合的な音楽を求めることになる。そもそも、ファースト・アルバム『ノース』の直前に、それまでのインスト中心のダブステップから、ジェイムス・バッテリーを加え、ヴォーカルを取り入れたロック寄りなサウンドに移行させたのはなぜだったのであろう。
「本当に偶然というか、自然な発展でそうなったんだ。メアリー・アン・ホブスのコンピレーションのためにレディオヘッドのカバーをレコーディングしたんだけど、その声がめちゃくちゃ音楽とマッチしたから、そこからどんどんレコーディングして、最終的にはアルバムの10曲中8曲にヴォーカルが入るまでそれを続けた。ダークスターは常にポップ・ミュージックに片足を突っ込んでいたから、こういう曲作りになるまでのプロセスは本当に自然で、すんなりこうなったんだ。」
メアリー・アン・ホブスとは、ダブステップやそれに近いビートサウンドをラジオ番組で紹介するお姉さんで、その界隈では誰もが敬意を払うゴッド姉さん。偶然とはいえ、急な展開だったのだろう。『ノース』でのヴォーカルは、それまでダークスターが続けていたダブステップのそれと少し外れるエレクトリック・ミュージックに、バッテリーの唄声が乗っかっているだけとも取れる作品で、少々付け焼き刃的なイメージがあった。しかし、『ニュース・フロム・ノーウェア』は大きく変った。『ノース』から比べると直接的なリズムはあえて排除しているように思える。それはバンド、またはロックな音楽であること意識したのだろうか。そして、いわゆるポストダブステップと呼ばれるようなものとも違う。
「俺たちは絶好調なんだ。俺たちは確実に色々な種類の音楽を沢山聴くし、本当に沢山のものから影響を受けてる。俺たちがダブステップのシーンから出てきたっていうのはあるけど、それはもう段々みせかけだけのシーンになってきたというか…でも俺たちは、そこから明らかに次へと進んでるんだ。オリジナルであることは大切だと思うし、なにか新しい、面白いことにトライするっていうのも重要だと思うんだ。」
「前回の『ノース』では、2人が作った曲に俺がヴォーカルを乗せたって形だったけど、今回は俺も曲を書いてるんだ。多分半分は書いてるんじゃないかな。絶対ってわけじゃないけど、エイデンと俺はギターやピアノで曲を書く事が多くて、ジェイムスは彼のバックグラウンドがDJだから、ビートやサウンドのテクスチャーから曲作りに入っていくことが多いんだ。俺たちは、しょっちゅう作ったトラックを交換し合ってる。全員同じプロ・ツールスっていうソフトウェアを使ってるんだけど、それを使って曲作りを始めるんだ。例えば俺の場合は、自分が作ったものをエイデンやジェイムスに渡して、それに対して彼らがそれぞれ作業して、それを俺に戻してって感じ。各自が手元にあるトラックに取り組んで、作業が終わったらまたそれを交換して…っていう流れだよ。俺たちそれぞれが、各自他のメンバーが持たない特徴的なやり方で作業するんだ。」
彼等がここまで変化をした原因があるとすれば、ジェイムス・バッテリーが作曲面での関わりがより多くなってるのかなと想像したのだか、意外とこのインタビューに答えてくれたジェイムス・ヤングもソングライターとしての役割を果たしていたようだ。メンバー3名で、2人もソングライターがいたら、それはもう立派なポップ・ミュージックだし、バンドと言っても良いであろう。そういえば、プロ・ツールズは自分も使っていたことがあったが、ソフトウェアは、今時ロックバンドも普通に使うし、特別な音楽制作手段ではない。バンドが楽器を演奏するくらい普通のこと。そうなると、ライヴはどのようにやるのか気になるところ。サポート・メンバーなどを加えたり、生演奏を強調するものになるのであろうか。
「俺たちは全てをトリオとしてやるんだ。俺は歌ってベース、ループ、サンプルをプレイして、ボーカル・ループ・ペダルとエフェクトを持つ。で、エイデンは、歌とキーボード、ループ、そしてエフェクトを担当してる。ジェイムスは、ビートとエクトラのループとかそういうのを管理しているよ。俺たち全員がAkaiMPCを使ってて、イーブンタイドのエフェクターを持ってるんだ。ライヴショーは、レコードよりも若干エナジーが多いけど、ハードコアかって聞かれるとわからないな。言葉で説明するのは難しい。Youtubeに演奏してるビデオが沢山あがってると思うから見てみて。それか実際ショーにきて、それをチェックするのもいいよね!」
そりゃあなた達のショーに行きたいさ、切実に。返答の感じだと、ライヴはなかなか楽しそうですね。パットを叩きながら唄うバンドって、なんて素敵じゃないですか。丁度よく<SonarSound Tokyo 2013>で来日するから、それまではYoutubeでも観て期待やら、色んなものを膨らまして待ってるよ。あ、それとハードコア云々は、いつぞやのいざこざからの、あくまでネタですが、熱いものを期待したい。それとついでに、まだダブステップは聴くのかって尋ねたんですが、、
「ダブステップは相当前に流行ってたもので、俺にとっては結構すぐに終わったジャンルなんだ。個人的には、俺がロンドンのウェアハウスに住んでた時のイーストロンドンでの楽しい時間のサウンドトラックって感じだったけど、そういう日々はもう過去の話だしね。」
と、わりとドライな返答。なんかこの感覚は分からなくもないんですよ。お店をやっていた時に、ダンス・ミュージックに辛くなった時期があった。音楽を制作する立場ではないが、聴かれるというよりは、使われるだけな感じが、売ってる側としてもなんか寂しくなったんです。たぶん彼もそれに近い感覚があったんじゃないだろうか。
ロックやインディって、善くも悪くもよ~く聞かなきゃ判らないんですよね。12インチの試聴のように針を飛ばして判断出来るほどクールではないし、少々厄介で面倒なもの。だけどそれが好きで、ついつい熱くなってしまう。『ニュース・フロム・ノーウェア』も、よく聴いてこそ魅力が伝わる音楽。ビーチ・ハウスやアニマル・コレクティヴと同じように聴いていてくれればいい。もちろん、ダブステップ・ファンだって同じようにゆっくり聴いてもらえばいいんです。うん、じっくり、あせらず、そしてたまにはほころびを見せてみよう。そうすればきっとダークスターは、あなたの生活にふと語りかける。それは彼が言うように・・・
「『ニュース・フロム・ノーウェア』は”解放される場所”なのさ。」
(text by Yuji Yanagisawa/warzsawa)
★ダークスター最新作『ニュース・フロム・ノーウェア』全曲視聴スタート!
<尖るロック>キャンペーンでダークスターがピックアップ!
現在、タワー・レコード渋谷店を中心に活きのいいインディ・ロック・バンドを特集する<尖るロック~REVENGE OF INDIE ROCK~>キャンペーンが開催されており、ダークスターの『News From Nowhere』もピックアップ中! レーベルサイトで全曲試聴したらタワレコの対象店舗もしくはオンラインショップでアルバムをゲットして、抽選で当たるレア賞品をゲットする流れがオススメ。賞品の中にはダークスターが出演する<SonarSound Tokyo2013>4月7日公演のチケットも!! 行きたい人はお早めに!!!
Release Information
Event Information
SónarSound Tokyo 2013 2013.04.06(土)@新木場ageHa / Studio Coast OPEN / START 21:00 Sherwood & Pinch、Boys Noize DJ Set、Actress and much more… ※オールナイト・イベントのため20歳未満入場不可 ※入場時にIDチェック有り。写真つき身分証必須 2013.04.07(日)@新木場ageHa / Studio Coast 前売チケット発売中! ■前売チケット取扱い■ ■先行販売■ 当日チケッ ト
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