々日本人が先代より慣れ親しんでいるお寿司。その文字を見ただけで実際の寿司ネタを想像してお腹がつい鳴ってしまう。そんなお寿司を「人間が食べている」映像ではなく、逆に「人間が食べられてしまう」映像を観ることになるとは、誰が予想をしていただろうか。そう、今回読者の皆様にご紹介するのは、巷で話題になっている『デッド寿司』!

本作の物語の主人公は天才的な寿司職人の娘として生まれたケイコ。寿司職人を目指して修行の日々を送る彼女は、家を飛び出し、とある温泉旅館で働くことになった。そんなある日、宴会のため旅館に宿泊していた小松製薬の社長に恨みを抱く男が出現。宴会の寿司を究極の「殺戮生物デッド寿司」へと変えてゆく…! 牙をむき襲い来るデッド寿司の大群に、ケイコは父との修行の中で叩き込まれたカンフーを使い立ち向かうのであった! ケイコの運命やいかに?!

【Interview】3秒前はトロだった?! 映画『デッド寿司』裏側をキーパーソン、松崎しげるにインタビュー!! 4c994481637c25976a786e0cbfe80a33-1

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監督は、『片腕マシンガール』『電人ザボーガー』など、独自の世界観でワールドワイドに人気を誇る井口昇。今作でも明るく過激でノリ良く、ちょっぴりエッチな井口節が絶好調! パニック、カンフー、コメディからファンタジーまで多彩な要素を詰め込んで最後は感動で包み込む、エンタメ要素が見事にミックスされている。また、おっちょこちょいだけど、曲がったことが大嫌いな主人公のケイコを演じているのは、小学生の頃からはじめた空手で黒帯を持つ武田梨奈。彼女を見守る澤田役には、大ヒット曲“愛のメモリー”が発売35周年を迎えてノリまくっている松崎しげる。 屈託のない笑顔と圧倒的な存在感で、大いに映画を盛り上げている。

そんな本作のキーパーソンである松崎氏に、今回の『デッド寿司』について急遽インタビューを遂行! 本作品について、また下町出身ならではのお寿司についての質問、そして終盤には松崎氏の夢など…盛りだくさんの内容となっている本インタビュー、必見です!!

Interview:松崎しげる

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――作品拝見しましたが、とても面白かったです。お寿司が人を襲うなんてとんでもない作品でしたが『デッド寿司』出演されていかがでしたか?

一言で言うとクレイジーだよね。僕ね、1番最初に台本もらった時にまずお断りしたんですよ。2回目来た時も、これ出来ないわって。普通台本を見るとどんな感じなのかだいたいわかるけれど、それが全く皆無で3回目もまたお断りしました。4回目には事務所にプロデューサーと僕の親友である作詞家の吉田象君が来て「松崎さん頼みますよ」って言うから、「うーん、わかんねえんだよ」って。「いや、入口行ったらすぐわかるような感じですけど」って言われて。皆事務所に来てるし「良いか、やろう!」 って。それでいつからか聞いたら明後日から、と。どうやら後から聞いたら僕以外はもう全然考えてなかったみたいですよ(笑)。井口監督自体は以前『ケータイ刑事』に出演したりしてよく知っていたから、作品へと入っていきやすかった部分はあったんだけど、自分では2日目くらいまでは暗中模索でやってた感じ。で、「ここでCGが飛びますんで」っていうから「おおなるほどね、どんな感じなの」って言ったら「いや、お寿司がこうパクパク動いて」って言われて(笑)。

――それは想像しがたいですね(笑)。

そう、その点では自分では初めての感覚だったな。音楽では、レコーディングの時に描いたイメージでやってみて、それが頭で思っているものと全く違う感覚だったっていう事は何百曲もある中で何回かあったけど。でも、お芝居の部分では初めての経験かな。芸能生活45年なんだけど、面白いよね。で、難しかったけれど、終わった時にはすごく面白かった。出来あがった時には、始めて自分がテレビに出たとき照れたように恥ずかしかったよ。でも、これでふと立ち止まると「ここはこうだよな」って指摘するポイントがわかってくるんだけど、ダメ出しをするよりも恥ずかしさが先に立っちゃって。良いのか悪いのかさっぱりわからない…今はそんな感じだね。そういう新鮮さが、自分にとっては良い経験をした宝物になっていることは確かだよ。本作の出来上がりを見た時に「あ、この監督って本当クレイジーだな」って思った。演じている時に想像していたものが突き破られる感じっていうのが井口監督の持ち前っていうのかな。だから海外で監督賞や作品賞を受賞するっていうのはわかるような気がする。彼の作品は「アナーキー」って言葉がぴったりなのかもしれない。

――感性が独特ですよね。ジンジャーブレッドやコンドームなど様々な物が人を襲うことがありますが、まさかのお寿司って言うのが。

日本を象徴する「寿司」を題材にしたっていうのは、後からよく考えたんだなって思ったね。海外で賞を取ってきたっていう部分から、海外の人にとって「お寿司=生モノ」として脅威として感じている部分をよく捉えたなと。あと、日本のイメージがこんなにクレイジーなものでいいのかなって思うけど、それはそれでいいのかなって思う。寿司のネタが急に怪獣化していくなんて、本当によく考えるよねえ。

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――そうですね。ちなみに本当に寿司に襲われたらどうしますか?

寿司に襲われたら? まあそんなことは無いと思うけど、やっぱり、寿司にアタリたくは無いよね。外国人にとってお寿司って「生で食べるの? 菌は大丈夫」みたいな感覚ってあるんだよね。俺でも、菌がくっついている事があるんじゃないかな~とか思うんだけどね、特に貝類。でもオレ、好きなんだな貝類が。でも今回あまり出てこなかったから、これで赤貝かなんか出てきたら最高なんだろうけどねえ。

――撮影現場でお寿司を見すぎて嫌になりませんでしたか?

それが、ぜんぜん嫌にならなかったんだよね。井口と話している時に、この作品やっているとお寿司が食いたくなくなるんじゃないかって話してたんだけど、逆に寿司食べたくなって、東京帰ってすぐに食べに行ったよ(笑)。

――笑。所で、劇中ではしげるさんご自身でお寿司を握るシーンがありましたが、握るための特別な指導を受けたりしましたか?

お寿司が好きだからそれは全然無かったね。下町出身だから、お寿司の握り方は見て覚えるというか。ぐっと握らず柔らかく握る、そう言う器用さはあるからね。ただ本当は右で持って左で握るらしいんだけど僕は反対なんだけど。でも「すしざんまい」の前の親父も包丁が左利きだったり、「こういう職人がいてもいいんだ」とチラっと頭に浮かんだし、握りに決まりは無いみたいだからね!

――下町出身ならではのお寿司の食べ方もあるんでしょうか?

そうだね、ネタの先をポンッと醤油につけるくらいかな。結構いいところの寿司屋に行くと「塩で食ってくれ」とか言われるけど、そういう規定は無くって、江戸の粋な食べ方って言ったら、大体箸を使わないっていうね。絶対に手でパクッと食べるっていうか…ああ、寿司、食いてえなあ(笑)!

――話は変わりますが、井口さんのように、いわゆる新進気鋭の若手クリエイターの作品に出演した際、今までの撮影と何か違うのか感じる部分などありましたか?

撮り方自体だね。今や4畳半で音楽作れる時代だから、それと同様映画もどんどんコンパクト化していて、音声にしてもライトにしてもすっごく高感度だし、本作のCGや今まで想像できなかった動きとか、夢を見れるようになったね。つまり2次元の世界・3次元の世界に入れるということで、素晴らしいと思うね。今までワンシーンで、1本のシーンを4時間も5時間もかかって撮っていた時代と違って、VTRやモニターを見ながらやれるので、もう1回撮り直しなど出来るっていうか。撮り方も早くなってきたからその分、撮影に入る前の準備段階――演じる方の専門家が考えること、頭の中で考えている脚本家とかで違うから皆が集まって色々なアイディアを出し合いその中の良いものを密に詰めてコラボレーションしていったら、もの凄い作品ができると感じたね。

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――今後の音楽活動や他の活動ににフィードバックがあったりしますか?

それはすごくあるね! 映画っていうのは喜怒哀楽がいっぱい詰まったところだから、それが音楽にも同じように色んな事が伝わる。今回予告編の時にスタジオに入ってコメントを言うんだけれど、その時にギターを弾きながら「カモーン!デッド寿司!」 とかシャウトして。井口監督が「この感じ! このエネルギーが良いんですよね! ヘビメタに近いロックなんでしょうね~!」とか言って作っていってったりして。

あと、この間井口君に「今度俺に映画音楽やらせてくれる?」 って言ったんだよね。それも自分の中で夢だったから。昔、作曲家の深町純さんが柴俊夫さんや西田敏行さんが出演しているドラマ『新・ぼっちゃん』でその頭から終わりまで全部、深町さんがピアノ1本で劇中のサウンドを作っていく、それがすっごく前衛的で良かった。ストリングスも何も使わない、新しい感覚で劇版のうたを聴かせてくれるっていうか。そういう面ではああ、自分でもやってみたい世界だなって。自分がこれから色々なことやるのは年齢的に遅いかもしれないけど、でも、もしかしたら俺にもそういうチャンスがあるかもしれないから。そうしたら台本をじっくり見ながら一生懸命考えるだろうね! 時代が変わっても人の気持ちは根本的に一緒だから。映像を観ながら自分が感じた、その雰囲気を音楽で伝えるっていうことを、井口君にやらせてくれるかもしれない。

――それはとっても素敵ですし楽しみです! それでは、最後の質問となりますが、松崎さんの黒さの秘訣をズバリ教えて下さい!

高校までずっと野球をやっていて、その後もこの世界に入った頃にもサーフィンやらマリンスポーツなどアウトドアばっかりやっていた。それで歌番組の時に歌い手が並ぶと「松崎って本当黒いよね。」って印象付けられてきて。でも11月から2月ぐらいまでは、やっぱり顔の色がだんだん白くなってくるから、自分で日焼けマシーンを買い込んでます。松崎しげる=色が黒い、 色が黒い=松崎しげる、っていうのは自分のプロモーション的な部分もあるし、一年中真っ黒でいられるよう努力をしていますよ。

――因みにどのネタを食べたら一番黒くなれますか?

とり貝がいいんじゃない?

text&interview by Yuka Yamane
photo by Ken Suzuki

デッド寿司

2013.01.19(土)より新宿武蔵野館 ほかレイトロードショー

2012年/日本/カラー/HD/92分/PG-12(C)オフィスウォーカー
監督・脚本:井口 昇
キャスト:武田梨奈、松崎しげる、須賀貴匡、仁科 貴、亜紗美、村田 唯、ジジ・ぶぅ、島津健太郎、手塚とおる、津田寛治
製作:オフィスウォーカー/制作プロダクション:西村映造
配給:ウォーカーピクチャーズ/配給協力:アーク エンタテインメント