ファン待望の『デッドプール&ウルヴァリン』が2024年7月24日(水)よりいよいよ世界最速公開! アメコミ界きっての問題児ヒーローがマルチバースを超えて大活躍、しかも今回コンビを組むのはあのウルヴァリン!今までの「X-MEN」シリーズでの世界、そしてマーベル・シネマティック・ユニバースがこの2人にひっかきまわされ新たなステージに!? もう期待しかありませんね。
なぜデッドプールはここまで愛されるのか? それはこのキャラの持つはちゃめちゃさ。特に毒舌、ヤバネタ満載のマシンガントークも彼の魅力です。さらに今回はウルヴァリンとの“混ぜるな危険”なバディ・ムービー。となると彼らのセリフの活きのよさをどう伝えるかがポイント。そこで『デッドプール&ウルヴァリン』の日本語字幕を担当する松崎広幸さんにお話を聞きました。松崎さんは多くの映画の字幕や吹替版を担当されています。そして「X-MEN」シリーズや「デッドプール」シリーズにも関わってきました。まさにウルヴァリンとデッドプールの言葉を知る男、松崎さんに本作の魅力、そして字幕作業時の苦労話等を語っていただきました。
INTERVIEW:
『デッドプール&ウルヴァリン』日本語字幕担当・松崎広幸
──お会いできて光栄です。早速ですが今回の『デッドプール&ウルヴァリン』は全アメコミ映画ファンが楽しみにしていると言っても過言ではない超期待作です。と同時に公開までネタバレ厳禁、徹底的な秘密主義だったと思います。こういう環境下での字幕制作は大変だったのではないですか?
おっしゃるとおりです。基本公開前の映画というのは情報管理が徹底されるものですが、この『デッドプール&ウルヴァリン』は特に厳しかったです。決まりとして、この作業をしていること自体を家族や知人にさえも言ってはならない、ということになってまして。スパイになったような気持ちでした(笑)。
──孤独な作業ですね(笑)。本作は20世紀フォックス(現・20世紀スタジオ)時代の「X-MEN」シリーズとMCUがつながるわけですから、かなりの情報量が予測されます。
はい、かなりの情報量です。ただ過去作を全部チェックしてないと楽しめないかというとそういうわけでもないかな。初めて観る人も十分楽しめるようになっていると思います。
──情報量といえば、そもそもデッドプールはよくしゃべるから、限られた文字数の中でセリフを表現するのは苦労されたのではないですか?
通常、字幕は1秒で4文字読ませるというのが基準なんですが、デッドプールの場合は1秒7-8文字ぶっこんだところもあります(笑)。まあこのキャラの持つテンションとか考えるとそうなりますね。それとアメリカンジョークというかダジャレや下ネタが多いんですが、これらの意味を完全に字幕で伝えるのは無理です。ただセリフの中身よりも「あ、ここはデッドプールがダジャレを言ってるんだな」とか「下ネタを絡ませてるな」という状況だけは伝わるように工夫しています。そもそも英語のダジャレを日本語のダジャレにしても、ほとんどの場合、面白くなることはないんですよ。ただここでダジャレをかましてくるデッドプールが面白い、という風に観客の皆さんが感じてもらえれば。
字幕翻訳は制約の中から元の映画の魅力を損なうことなく日本語にすることが重要だと、僕は考えています。完璧に表現することは当然ながら難しいですが、それでも自分の中の引き出しを使って翻訳する作業が必要となります。なので、実際に必要となるのは英語というより日本語の力であるような気がしていますね。
──なるほど……。予告を観ているとFワードも多いですよね? これなんかもまさに、「日本語でどう伝えるか?」にかかっていますよね。
Fワードを全部「クソ!」って訳すと、四六時中「クソ!クソ!」って言っている映画になってしまうので(笑)、場面に応じて違う言葉をあてています。今回の作品でも色々な言い回しを使っていますね。
──第四の壁(註:デッドプールは観客に向かって話しかけてきます。この能力のことを“第四の壁を超える力”と言います)もあるから、このあたりの字幕処理は複雑ではありませんか?
実は、デッドプールが第四の壁を超えるときは、カメラ目線で喋るという風に脚本上ではなっているんですよ。元のセリフも巧く作られていますし、字幕翻訳の際に工夫を尽くさなくても観客へノリが伝わるようになっているんです。
──松崎さんはアメコミ・ヒーロー映画以外にも幅広いジャンルの映画の字幕を手掛けています。他の映画とアメコミ・ヒーロー映画で字幕を付ける際、なにか違いがありますか?
ヒーロー映画の場合、そのヒーローがメジャーであればあるほど世の中的にはそのキャラに対するイメージが出来ていますよね。だからそのヒーローたちのことはある程度理解してから字幕にとりくむようにしています。
最初に『デッドプール』(2016)の字幕を手掛けた時は、デッドプールの一人称は“俺”にしてたんですが、“俺ちゃん”という言い方がファンの間で流通していることを知って、それを使ってみました。ただ“俺ちゃん”って結構字数をくうし、またずっと“俺ちゃん” “俺ちゃん”ってスクリーンに出すとうざったいんで(笑)何箇所かに絞って使うようにしています。
──今回の映画はデッドプールとウルヴァリンが主役なわけですが、この2人のキャラに対して松崎さんはどう思ってますか?
実はウルヴァリンはもともと知ってたんですよ、コミックの方で。僕は子どももころから英語の雑誌が好きでアメリカの映画雑誌とかアメコミに触れていたんです。小学3年生ぐらいの時にはハルクのコミックを持ってました。ただハルク=HULKを“フルク”だと思っていましたが(笑)。で、そうしたアメコミの中でウルヴァリンを知って。コミックのウルヴァリンは小男で豆タンクみたいなヒーローというイメージがありました(註:原作コミックのウルヴァリンは小柄なのです)。つまり全然スマートじゃない。だからヒュー・ジャックマンのウルヴァリンを見た時、自分の知っているウルヴァリンとは違うな、と思いましたね。
デッドプールは実は映画になるまで知らなくて、映画観た時、チャラいし、よくしゃべるし、マスクとるとグロいし、全然ヒーローっぽくない。だけどデッドプールの映画はアメリカはおろか日本でも大ヒットするなんて、ちょっとビックリしましたね。
──『デッドプール』がヒットしたのは、やっぱりこのキャラの魅力が伝わったからで、それは松崎さんの字幕によるところも大きいと思います。やっぱりデッドプールって“おしゃべりな傭兵”と言われるぐらいですから、トーク部分が魅力なので、松崎さんがそこをうまく伝えてくださったんだと。
そう言ってもらえると嬉しいんですが、字幕をやっている人間って、いつも自分の付けた字幕が映画の魅力の足を引っ張ってるんじゃないかって不安になるものです。
──そんなことはないです!今回もデッドプールとウルヴァリンのセリフに期待してます! 最後に本作を楽しみにしている日本のファンに一言いただけますか?
そうですね、映画の内容については触れられないので、あくまで字幕担当の視点で語らせていただくと、先ほど言ったように1秒=4文字の字数制限をぶっとばしてセリフを(字幕に)ぶっこんでいます(笑)。この映画を楽しめるかは皆さんの動体視力にかかっています(一同爆笑)。
公開前にお話を聞いたので、詳しい内容は聞けなかったのですが、松崎さんの言葉の端々から本作がいかにノリノリで面白い作品であるか感じることができました。
デッドプールもウルヴァリンもコミックが原作。そしてコミックであるならば吹き出し部分のセリフが重要です。映画においてはまさにこの吹き出し部分が字幕に該当するわけです。限られた字数の中で、キャラクターの魅力を最大限に伝える、これぞまさに松崎さんのスーパーパワー! 劇場でぜひデッドプールとウルヴァリンたちのセリフの掛け合いも楽しんでください。
Text by 杉山すぴ豊
「デッドプール&ウルヴァリン」予告|俺の世界を救いたいんだ編|7月24日(水)最速公開
INFORMATION
デッドプール&ウルヴァリン
7月24日(水)世界最速公開
©2024 20th Century Studios / ©and ™2024 MARVEL.
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
監督:ショーン・レヴィ(『フリー・ガイ』 『ナイト・ミュージアム』)
キャスト:ライアン・レイノルズ、ヒュー・ジャックマン
原題:『DEADPOOL & WOLVERINE』 US公開日:2024年7月26日